エボラウイルス病―コンゴ民主共和国(更新15)

Disease outbreak news 2019年3月21日

北キブ州およびイトゥリ州で発生したエボラウイルス病(EVD)のアウトブレイクでは、数週間にわたる全体的な減少の後、週ごとに報告された症例数が増加しています(図1)。 この上昇は予想外のことではなく、一部には、最近の治療センターへの直接攻撃やコミュニティの不信感など、セキュリティ上の課題が増加したことが原因であると考えられます。

カトワ(Katwa)、ビュトンボ(Butombo)、マセレカ(Masereka)、マンディマ(Mandima)からの報告が過去21日間で全症例の80%以上を占めています。 過去21日間に、これまでに影響を受けた130の保健地域のうちの38保健地域から合計97人の確定症例が報告されました(表1、図2)。 今週、エボラウイルス病は、ブニア(Bunia)保健区域で死亡した子供で確認されましたが、両親の健康状態は良好でした。 この症例はブニア保健区域からの最初の確定症例です。以前の症例は、2月上旬に隣接するルワンパラ保健区域において確認されました。感染源を突き止めるための調査が進行中ですが、現地の対応チームが適切に接触者の追跡調査、予防接種、サーベイランスの強化などの対応活動を迅速に実施しました。この地域における流行の地理的な広がりと高い移動性を考えると、エボラのリスクが新たな地域に広がったり、以前に影響を受けた地域に再び持ち込まれたりする危険性は引き続き高いままです。

対応チームは、アウトブレイクの影響を受けたすべての地域で完全に機能しています。 武装グループによって引き起こされている治安の悪化という継続的な困難さにもかかわらず、この対応に対する地域社会の受容には心強い改善があります。 予防接種に適格な人々の90%以上が接種を受け入れており、そしてこれらの人々の90%以上が追跡調査に参加しています。 現在までに、89,855人が予防接種を受けています。 予防接種チームは、何組かの家族がまだ介入を受け入れていない場所でリングワクチン接種(包囲接種)(ring)をフォローし続けています。

現地の検査室は前の週と同様の実施率を維持しています。平均して1,300検体が毎週検査され、累計で23,000以上の検体が所要時間48時間以内でこれまでにテストされています。エボラ治療センター(ETCs)とトランジットセンター(Transit Centres)は引き続き運営されており、カトワ・トランジットセンターは患者管理や地域社会での教育を支援している現地活動の非政府機関(ALIMA)によって拡大され、その地域でのアウトブレイクに対応する能力を高めています。これまでに、335人の患者が、未承認薬の研究的な監視下緊急使用(Monitored Emergency Use of Unregistered and Investigational Intervention)プロトコル(倫理的な使用)の下で4つの治験治療薬のうちの1つの投薬を受け、無作為抽出比較対照試験(RCT)プロトコルの下で80人の患者が受けています。

ビュトンボ、カトワ、ヴホヴィ(Vuhovi)の保健区域では、対応チームがさまざまなコミュニティ対話プラットフォームを通じてコミュニティとの関わりを続けてきました。 5つのコミュニティ対話プラットフォームが、カトワの3つの保健地域、ビュトンボの1つの保健地域、およびヴホヴィの1つの保健地域で組織されています。 このイニシアチブは、彼らの地域でのエボラ対応のための介入に関する決定に地域の人々が参加して主導することを可能にします。エボラウイルス病の影響を受けている他の地域では、継続的な活動は、コミュニティのフィードバックの体系的な収集とコミュニティのリーダーや影響力のある人との協議による活動の調整によるコミュニティの懸念への対応を含んでいます。地域社会への働きかけ(アウトリーチ)活動は、信仰上の指導者と市民社会グループ(女性と若者を含む)の協力のもとに、信仰上の集まりの場、市場、および学校で行われています。 市民社会団体および地域保健ボランティアもまた、定期的な戸別訪問による地域社会への働きかけ活動を支援しています。

アウトブレイクの始まりから2019年3月19日までに、980人のエボラウイルス病の症例1(915人が確定、65人が高度疑い)が報告されており、そのうち57%(554人)は女性、30%(293人)は18歳未満の子供でした。 累計では、症例は北キブ州およびイトゥリ州の21の保健区域にわたる339保健地域のうち130保健地域から報告されています(表1)。 全体として、610人の死亡(致死率:62%)が報告されており、317人の患者がエボラ治療センターでの治療後に退院しました。

図1:2019年3月19日時点のエボラウイルス病症例の週ごとの確定例および高度疑い例のデータ*

*ここ数週間のデータは、症例の確定と報告の遅れ、継続中のデータクリーニングの遅れの影響を受けています。

図2:2019年3月17日時点のコンゴ民主共和国北キブ州およびイトゥリ州における保健地域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例


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表1:2019年3月19日時点のコンゴ民主共和国北キブ州およびイトゥリ州の保健区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、および影響を受けた保健地域の数

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公衆衛生上の取り組み

保健省、WHOおよびパートナーによる公衆衛生上の取り組みの活動に関する詳細情報については、WHOアフリカ地域事務所によって公表された最新の状況報告書を参照してください。
Ebola situation reports: Democratic Republic of the Congo

WHOによるリスク評価

WHOは、疫学的状況の変化とアウトブレイクの状況を継続的に監視し、対応への支援が進化する状況に適応するようにします。直近の評価では、国内および地域のリスクレベルは非常に高いままですが、国際的なリスクレベルは低いままであると結論付けました。カトワとビュトンボでのエボラ治療センターへの攻撃は、エボラの対応を直接狙った最初の大規模で組織的な攻撃であり、コミュニティでの不信感のエピソードや戦闘隊同士の砲火に巻き込まれる危険性とは規模が異なります。加えて、政治的緊張と不安により悪化するコミュニティの抵抗と不信の孤立地帯(ポケット)の持続的な存在は、エボラウイルス病の影響を受けている地域で再発する一時的な症例調査の停止と対応活動の遅延をもたらし、介入の全体的な有効性を減らすことになりました。コミュニティ内での死亡の大部分は確定症例の中から報告されています。エボラ治療センターでの検出と分離の持続的な遅れ、タイムリーな報告と高度疑い例への対応における困難な課題、これらが全体的に流行の影響を受けたコミュニティにおけるさらなる感染伝播の連鎖の可能性やコンゴ民主共和国内から近隣諸国で地理的に拡大するリスクを増加させます。同様に、治安上の不安が高まっている時期には、人口移動の増加のリスクも予想されます。

WHOからのアドバイス

国際交通:WHOは、現在入手可能な情報に基づき、コンゴ民主共和国への渡航や貿易を制限しないように忠告します。現在のところエボラウイルスから人々を守るワクチンは認可されていません。したがって、国境を越えた移動やコンゴ民主共和国を離れる乗客に対してビザ発給の制限の基準として、エボラワクチンの予防接種証明書の要求することは、合理的ではありません。WHOは、厳重な監視を継続し、必要であれば今回の事象に関連した渡航と貿易の措置を検証します。 現在、コンゴ民主共和国との間の国際交通を著しく妨げるような旅行対策を実施している国はありません。渡航者は渡航前に医師の診察を受けるべきであり、そして良い衛生慣習を実践するべきです。

さらなる情報は以下をご参照してください。
Press briefing on Ebola, WHO Director-General Dr Tedros
WHO Director-General reiterates commitment to Ebola response despite another attack
WHO expresses concern over damage to Ebola treatment facilities in DRC
Ebola response in Democratic Republic of the Congo risks slowdown
SAGE interim recommendations on vaccination against EVD, 20 February 2019
Statement on the October 2018 meeting of the IHR Emergency Committee on the Ebola virus disease outbreak in the Democratic Republic of the Congo
WHO Interim recommendation Ebola vaccines
WHO recommendations for international travellers related to the Ebola Virus Disease outbreak in the Democratic Republic of the Congo
Ebola virus disease in the Democratic Republic of the Congo ― Operational readiness and preparedness in neighbouring countries
Ebola virus disease fact sheet

(註1)進行中の再分類、遡及調査および検査結果の入手可能性により、症例数が変更されることがあります。

出典

Ebola virus disease ― Democratic Republic of the Congo
Disease outbreak news: Update   21 March 2019
https://www.who.int/csr/don/21-march-2019-ebola-drc/en/