中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)- サウジアラビア王国

Disease outbreak news:Update   2019年3月29日

2019年2月1日から28日まで、サウジアラビアの国際保健規則(IHR)担当窓口は、10人の死亡を含む中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染症68症例を新たに報告しました。 2月に報告された68のMERS症例のうち、19症例がワディ・アドダワシル(Wadi Aldwasi)市以外の都市で発生しました。

このDisease outbreak newsの更新では上記の19人の症例について説明します。これらの症例のうち、15人が散発性であり、4人が2つの無関係な集団の一部として報告されました。集団1は、ブライダ(Buridah)市で2例発生しました。そして集団2はリヤド市で2例発生しました。以下のリンクは、報告された19人の症例の詳細を示しています。

MERS-CoV cases reported from 1 February through 28 February 2019

別のDisease outbreak newsとして、ワディ・アドダワシルにおいて49人をり患させ、そのアウトブレイク以来、合計52の症例を出し2月に7人の死亡をもたらしたアウトブレイクの最新情報を提供する予定です。

2012年から2019年2月28日までの間に、世界中で世界保健機関(WHO)に報告された検査室で確定されたMERS症例の総数は2,374人であり、823人の関連する死亡があります。世界的な数は、今日までに国際保健規則の下でWHOに報告された検査室で確定された症例の総数を反映しています。死亡の総数は、感染報告のあった加盟国のフォローアップを通じて現在までにWHOが把握している死亡が含まれています。

WHOによるリスク評価

MERS-CoVによる感染は高い罹患率と死亡率をもたらす重篤な疾患を引き起こす可能性があります。ヒトは直接的または間接的な感染したヒトコブラクダとの無防備な接触を通して、MERS-CoVに感染します。MERS-CoVはヒトとの間で感染伝播する能力が実証されています。これまでに観察された非持続性のヒトからヒトへの感染は主に医療施設で発生しています。

これらの新たな症例の報告はWHOによるMERS-CoVの全体的なリスク評価を変えるものではありません。WHOはMERS-CoV感染の新たな症例は中東から報告されると予測しています。また感染したヒトコブラクダ、動物性食品(例えば未加工のラクダのミルクの消費)もしくは患者(例えば医療施設における)への曝露によって感染したかもしれない個人によって、他国への感染例の流出が続くと予測しています。WHOは疫学的状況の監視と最新の利用可能な情報に基づいたリスク評価の実施を継続する予定です。

WHOからのアドバイス

現在の状況と入手可能な情報に基づいて、WHOはすべての加盟国に対し、急性呼吸器感染症に対するサーベイランスを継続し、あらゆる異常なパターンを注意深く見直すことを奨励しています。

感染予防と管理(IPC)対策は、医療施設でのMERS-CoVの拡大を防ぐために重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERSの初期症状は非特異的であるため、MERS-CoV感染症の患者を早期に特定することは必ずしも可能ではありません。したがって、医療従事者は、診断に関係なく、常にすべての患者に対して一貫した標準予防策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の症状のある患者に治療を行う場合は、飛沫感染予防策を標準予防策に追加する必要があります。 MERSの可能性のあるまたは確認された症例を治療するときには、接触感染予防策および眼の保護具を追加する必要があります。エアロゾルを発生させうる手技を行う際は、空気感染予防策を講じる必要があります。

早期の特定、症例の管理および隔離は、適切な感染予防および管理対策とともに、MERS-CoVの人から人への感染は予防が可能です。

MERS-CoV感染が確認された全ての感染者のうち約20%が中等度もしくは無症候性として報告されているため、WHOは、症状の有無にかかわらず、実施が可能であるならば、MERS-CoVに感染した患者の全ての接触者に対して、包括的な同定、フォローアップ、そして検査を実施することを推奨します。伝播における無症候性のMERS-CoV感染の役割ははっきりと理解されていません。しかしながら、無症候性のMERS-CoV感染者から他者へ伝播したという報告がなされています。

MERSは糖尿病、腎不全などの慢性肺疾患がある人々や免疫不全の人々に、より重篤な疾患を引き起こします。したがってこれらの人々はウイルスが潜在的に伝播しているということが知られている農場、市場、または家畜小屋などを訪れる際に、ヒトコブラクダとの濃厚接触を避けるべきです。一般的な衛生対策、例えば、動物に触れる前後には必ず手を洗うこと、病気の動物との接触を避けることなどは徹底すべきです。
食品衛生の手技は監視が必要です。ラクダの生ミルクや尿を飲むことは避けるべきであり、適切に加熱調理されていないラクダ肉を食べることも控えるべきです。

WHOはこの事象に関して、国境地点での特別なスクリーニングを勧告しておらず、現時点ではいかなる渡航や貿易の制限も推奨していません。

出典

Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)―The Kingdom of Saudi Arabia
Disease Outbreak News: Update  29 March 2019
https://www.who.int/csr/don/29-march-2019-mers-saudi-arabia/en/