エボラウイルス病 - コンゴ民主共和国(更新18)

Disease outbreak news:更新   2019年4月18日

今週も、コンゴ民主共和国におけるエボラウイルス病(EVD)の発生が増加し続けました。しかし、それは北キブ州とイトゥリ州内の限られた地理的地域に限られたままでした。この最近の傾向は、過去および現在進行中の治安問題、特定の地域住民の間での不安、およびアウトブレイク対応チームに対するコミュニティの不信感が長引いていることが、一部は原因となっている可能性があります。以前はアクセスできなかったホットスポットで、症例検出と対応活動の改善が観察されています。

2019年3月27日から4月16日までの21日間で、11の保健区域内の55の保健地域で新しい症例が報告されました。これはこれまでにこのアウトブレイクの影響を受けた143の保健地域の39%(表1および図2)に相当します。この期間中に、合計249人の確定例がカトワ(Katwa)(124)、ヴホヴィ(Vuhovi)(40)、マンディマ(Mandima)(28)、ビュトンボ(Butembo)(24)、ベニ(Beni)(16)、オイチャ(Oicha)(6)、マバラコ(Mabalako)(5)、カルングタ(Kalunguta)(2)、マセレカ(Masereka)(2)、ムシェネネ(Musienene)(1)、およびルベロ(Lubero)(1)から報告されました。
4月16日現在、合計1290件の確定および高度疑いエボラウイルス病症例が報告されており、そのうち833人が死亡しました(致死率65%)。年齢と性別が報告されている1290症例中、56%(725人)が女性、28%(361人)が18歳未満の子供でした。り患した医療従事者の数は、32人の死亡を含めて89人(全症例の7%)に増加しました。現在までに、エボラ治療センター(ETCs)で治療を受けたエボラウイルス病患者のうち合計379人が退院しています。

2019年4月12日、スイスのジュネーブで国際保健規則(IHR)緊急委員会が開催され、エボラウイルス病のアウトブレイクが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」であるかどうかを議論し、対応についての勧告を提示しました。緊急事態委員会と国際保健機関(WHO)事務局長は、最近の症例数の増加と地域への蔓延の危険性が高いことから、深刻な懸念を改めて表明しましたが、様々な技術的専門家との協議および入手可能な疫学的データのさらなる検討により、現在のアウトブレイクは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を構成するものではないと結論づけられました。 4月12日の国際保健規則緊急委員会会議に関するWHOの声明全文について、ご覧ください。

現在行っている予防接種の努力は、先週いくつかの有望な結果を生み出しました。 2019年4月12日に、WHOと国立生物医学研究所(INRB)は、現在このアウトブレイクで利用されているrVSV-ZEBOV-GPワクチンの有効性に関する予備的な分析を発表しました(こちらの報告全文をご覧ください)。データは、ワクチン接種されていない人と比較して、ワクチン接種された人ではエボラ感染を予防する効果においてワクチンが顕著な有効性を示したことを示唆しました。 2019年4月2日から4日の間に、戦略諮問専門家グループ(SAGE)は、疫学的データを検討し、現在行っている予防接種の取り組みに対して新たに勧告を提示するための会議を開催しました。彼らは、予防接種の対象となる人々を6ヶ月以上の子供と授乳中の女性を含めてさらに拡大するよう求めました。 それはこれらの2つの集団において特に高いり患率と高い症例致死率を持っていることが観察されたからです(SAGE会議からのさらなる重要ポイントについてはこちらをご覧ください)。

知見に照らして、WHOとパートナーは現場で既存の予防接種戦略を進化させています。接触者追跡を強化し、知られている接触直後の接触者に予防接種を行うとともに、接触者の接触者のフォローアップと、これらのリスクのある個人に対するエボラの予防接種の徹底に重点が置かれています。現時点では、危険にさらされている人々に予防接種を行うためのさまざまなアプローチが採用されています。
・患者の居住地や以前に患者が訪れた他の場所でのサイトごとの予防接種
・ 医療従事者と現場の作業員(HCW / FLW)、および医療施設で働く他のリスクが高い人々への同時予防接種
・危険にさらされている人々が、居住地の外で合意された接種場所に招かれるポップアップ予防接種
・接触者および接触者の接触者が治安上の制約のために明確に確認できない場合は、村レベルで標的を絞った地理的予防接種が行われますが、事前に合意された接種場所に招かれて予防接種が行われます。

これらの戦略を通じて、23の予防接種実施チームが、報告された症例を取り巻く予防接種の輪の中で以前に観察されたギャップを効果的に解消しました。 2019年3月28日から4月16日までの期間に確認された257件のうち10件の予防接種の輪が現在保留中です。4月16日現在、合計102, 501人の接触者と接触者の接触者が予防接種を受けています。コンゴ民主共和国以外では、最前線の医療従事者の予防接種が2019年4月16日に隣接ルワンダで開始され、176人の医療従事者/現場の従業員がすでに予防接種を受けています。そしてワクチン接種戦略がエボラウイルス病の蔓延を遅らせるための効果的な手段になることが期待されています。

感染防止と管理(IPC)の取り組みも、この1週間で目覚しい進歩をもたらしました。 2019年2月から5月までの期間の実施事業計画を含む改訂された感染防止と管理戦略は、保健省によって承認されています。戦略と事業計画は、エボラ対応における感染防止と管理の特別委員会の国内調整活動、そして感染防止と管理委員会およびパートナーによる地方レベルでの活動の実施を導くことを目的としています。この事業シフトを支援する目的で、感染防止と管理の調整活動によって対処され得る伝播経路をよりよく理解するように、リスクコミュニケーションおよび地域社会関与の研究構想が展開されています。地域社会レベルで感染防止と管理をより適切に実施できるかについて、地域社会との対話によるフィードバックを蓄積して、新たな支援が提供されるでしょう。

エボラウイルス病のアウトブレイクは継続しており、この後数週間は症例数の増加が続く可能性がありますが、絶えず進展する状況に対応戦略を適応させるためにかなりの進捗があったことは注目されるべきです。このエボラウイルス病のアウトブレイクが現在起きている厳しい状況で強固な流行対応をしなければならないことによってもたらされる多くの課題にもかかわらず、WHOとパートナーは、北キブ州とイトゥリ州におけるエボラウイルス病のさらなる拡大を抑制するため、対応努力のあらゆる面を強化し続けています。

図1:2019年4月16日時点のエボラウイルス病症例の週ごとの確定例および高度疑い例のデータ*


*ここ数週間のデータでは、症例の確定と報告の遅れ、継続的中のデータクリーニングの遅れの影響を受けています。

図2:2019年4月15日時点でのコンゴ民主共和国北キブ州およびイトゥリ州の保健地域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例

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表1:2019年4月16日時点のコンゴ民主共和国北キブ州およびイトゥリ州における保健区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、および影響を受けた保健地域の数**



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**過去21日間に発生した症例と地域の合計は、最初の症例警報の日付に基づいており、確定日および保健省による毎日の報告とは異なる場合があります。

公衆衛生上の取り組み

保健省、WHO、およびパートナーによる公衆衛生上の取り組み活動に関する詳細情報については、WHOアフリカ地域事務局によって公表された最新の状況報告書を参照してください。

エボラ状況報告書:コンゴ民主共和国

WHOによるリスク評価

WHOは、疫学的状況の変化とアウトブレイクの状況を継続的に監視して、対応への支援が進展する状況に適応していることを確実なものにします。直近の評価では、国内および地域のリスクレベルは非常に高いままで、国際的なリスクレベルは低いままであると結論付けられました。 2019年2月下旬以降、毎週新しい患者の増加が続いています。全般的な治安状況の悪化と、政治的緊張と治安不穏によって悪化した地域社会の不信に基づく躊躇や拒絶、そして抵抗を示す孤立地帯(ポケット)が存続しています。アウトブレイクの影響を受けている地域において繰り返される一時停止と症例調査および対応活動の遅延により、介入の全体的な有効性が低下します。しかし、最近の地域社会との対話、アウトリーチ構想、および特定のホットスポットエリアへのアクセスの回復により、地域社会による対応活動および症例調査の取り組みに対する受け入れが改善されました。確定症例のうち報告される地域社会の中で死亡する症例の割合、サーベイランス下で接触者が知られている新規症例の割合が比較的低いこと、院内感染に関連する感染伝播連鎖の存在、症例発見とエボラ治療センターにおける隔離の持続的遅延、ならびに高度疑い例に対する適時報告と対応における困難さは、アウトブレイクの影響を受ける地域社会でのさらなる感染連鎖の可能性を高め、コンゴ民主共和国内および近隣諸国へのエボラウイルス病の地理的拡大のリスクを高めるすべての要因となります。アウトブレイクの影響を受けている地域から、コンゴ民主共和国の他の地域へ、そして不安の高まりの間に穴だらけの国境を越えて近隣諸国へと人口移動が頻繁に起こることで、これらのリスクはさらに高まります。現在のアウトブレイクの長期的な発生、対応スタッフの疲労、および限られた資源に対する継続的な負担によって、新たなリスクが生じます。反対に、優先医療施設での医療従事者や現場作業員の予防接種を含む、近隣諸国での実質的な即応体制の整備および準備活動は、症例を迅速に検出して地域への蔓延を軽減する能力を高めている可能性が高いのです。これは拡大し続ける必要があります。

WHOからのアドバイス

国際交通: WHOは現在入手可能な情報に基づき、コンゴ民主共和国への渡航や貿易に対していかなる制限も行わないよう勧告します。現在のところ、エボラウイルスから人々を守るワクチンは認可されていません。したがって、国境を越えた移動や、コンゴ民主共和国を離れる乗客に対してビザ発給の制限の基準として、エボラワクチンの接種証明書を要求することは合理的ではありません。WHOは厳重な監視を継続し、必要であれば今回の事象に関連した渡航と貿易の措置を検証します。現在、コンゴ民主共和国との間の国際交通を著しく妨害するような渡航対策を実施している国はありません。渡航者は渡航前に医師の診察を受けるべきであり、良い衛生慣習を実践すべきです。

出典

Ebola virus disease-Democratic Republic of the Congo
Disease outbreak news: Update   18 April 2019
https://www.who.int/csr/don/18-april-2019-ebola-drc/en/