エボラウイルス病 - コンゴ民主共和国(更新19)

Disease outbreak news:更新  2019年4月25日

今週は、エボラウイルス病(EVD)に対する取り組みの周囲で、治安上の事件の著しい増加が見られました。 4月19日、武装民兵によるカトワ(Katwa)の病院への攻撃により、世界保健機関(WHO)疫学者のRichard Mouzoko Kiboung博士が悲劇的に死亡し、他の2人の医療従事者が負傷しました。すべてのアウトブレイクに取り組んでいる人々の安全を確保するために、セキュリティ対策が強化されるまで、一部の危険度の高い保健地域(health area)ではエボラ対応活動は一時的に停止されています。

WHO、国連、およびコンゴ民主共和国政府は、現在の戦略上および運用上の治安対策を見直し、対応活動の現場における医療従事者の保護を確実にし、対応活動をカバーするすべての治安要素間の効果的な調整および情報共有を改善します。エボラウイルス病対応要員の住居周辺のセキュリティ境界の確立、固定した場所での安全の強化、地元警察と国連治安部隊の共同迅速対応チーム(QRT)の能力強化などを含む既存の運用上のセキュリティ対策も引き続き実施され強化されます。そして、追跡手順の遵守と夜間外出禁止令の遵守を確実にします。これらの対策およびその他の治安リスク管理プロセスは、変化する治安状況のニーズを現場で反映するために継続的に更新されます。

治安対策の見直しに加えて、様々な地域の指導者たちとの直接対話を通じた地域社会への働きかけへの取り組みも同様に強化されています。 1月以降、主にカトワとビュトンボ(Butembo)周辺で、地域社会での抵抗事件が顕著に増加しています。 4月の事件数は3月のレベルに達するか、それを超えると予想されます。地域社会の理解と受け入れを得ることは効果的なアウトブレイク対応を用意するわれわれの能力にとって不可欠であるため、地域社会の関与努力は、医療従事者に対する将来の安全保障上のリスクを軽減し、エボラウイルス病のホットスポットエリアの全体的な治安状況を改善します。

今週のコンゴ民主共和国におけるエボラウイルス病症例の発生率は、前の週と比較して落ち着きを見せています(図1)。ただし、この所見は慎重に解釈されるべきであり、最近の対応活動の中断や特定のホットスポット地域での症例報告に関連して解釈されるべきです。 2019年4月3日から23日までの21日間で、11の保健区域内の62の保健地域で新しい症例が報告されました。 147の保健地域の42%が今日までに影響を受けています(表1と図2)。この期間中、合計255人の確定症例がカトワ(132)、ビュトンボ(29)、ヴホヴィ(Vuhovi)(29)、マンディマ(Mandima)(21)、ベニ (Beni)(15)、マバラコ(Mabalako)(9)、カルングタ(Kalunguta)(6)、ミュジヤンエーヌ(Musienene)(6)、マセレカ(Masereka)(5)、オイチャ(Oicha)(2)、キョンド(Kyondo)(1)から報告されました。

4月23日の時点で、合計1367人の確定及び高度疑いエボラウイルス病症例が報告されており、そのうち885人が死亡しました(致死率65%)。全症例のうち56%(765人)が女性、28%(386人)が18歳未満の子供でした。影響を受けた医療従事者の数は、33人の死亡を含めて90人(全症例の7%)に増加しました。今日までに、エボラ治療センター(ETCs)で治療を受けた合計392人のエボラウイルス病患者が退院しました。

図1:2019年4月23日時点のエボラウイルス病症例の発症週ごと及び保健区域ごとの確定例および高度疑い例のデータ1)


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*その他の保健区域には以下が含まれます:ビエナ(Biena)、ブニア(Bunia)、カルングタ(Kalungutta)、ケイナ(Kayna)、コマンダ(Komanda)、キョンド(Kyondo)、ルベロ(Lubero)、マングルジパ(Mangurujipa)、マセレカ(Masereka)、ミュジヤンエーヌ(Musienene)、ムトワンガ(Mutwanga)、ニャンクンデ(Nyankunde)、オイチャ(Oicha)、ルワンパラ(Rwampara)、チョミア(Tchomia)..
 
図2:2019年4月23日時点でのコンゴ民主共和国北キブ州およびイトゥリ州の保健地域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例


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表1:2019年4月23日時点のコンゴ民主共和国北キブ州およびイトゥリ州の保健区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、および影響を受けた保健地域の数**


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**過去21日間に発生した症例と地域の合計は、最初の症例警報の日付に基づいており、確定日および保健省による毎日の報告とは異なる場合があります。
 

 

公衆衛生上の取り組み

保健省、WHO、およびパートナーによる公衆衛生上の取り組み活動に関する詳細については、WHOアフリカ地域事務所が発表した最新の状況報告書を参照してください。
エボラ状況報告書:コンゴ民主共和国
 

WHOのリスク評価

WHOは、疫学的状況の変化とアウトブレイクの状況を継続的に監視して、対応への支援が進展する状況に適応していることを確実なものにします。直近の評価では、国内および地域のリスクレベルは非常に高いままで、国際的なリスクレベルは低いままであると結論付けられました。 2019年2月下旬以降、毎週新しい患者の増加が続いています。全般的な治安状況の悪化と、政治的緊張と治安不穏によって悪化した地域社会の不信に基づく躊躇や拒絶、そして抵抗を示す孤立地帯(ポケット)が存続しています。アウトブレイクの影響を受けている地域において繰り返される一時停止と症例調査および対応活動の遅延により、介入の全体的な有効性が低下します。しかし、最近の地域社会との対話、アウトリーチ構想、および特定のホットスポットエリアへのアクセスの回復により、地域社会による対応活動および症例調査の取り組みに対する受け入れが改善されました。確定症例のうち報告される地域社会の中で死亡する症例の高い割合、サーベイランス下で接触者が分かっている新規症例の割合が比較的低いこと、院内感染に関連する感染伝播連鎖の存在、症例発見とエボラ治療センターにおける隔離の持続的遅延、ならびに高度疑い例に対する適時報告と対応における困難さは、アウトブレイクの影響を受ける地域社会でのさらなる感染連鎖の可能性を高め、コンゴ民主共和国内および近隣諸国へのエボラウイルス病の地理的拡大のリスクを高めるすべての要因となります。アウトブレイクの影響を受けている地域から、コンゴ民主共和国の他の地域へ、そして不安が高まっている間、穴だらけの国境を越えて近隣諸国へと人口移動が頻繁に起こることで、これらのリスクはさらに高まります。現在のアウトブレイクの長期的な発生、対応スタッフの疲労、および限られた資源に対する継続的な負担によって、新たなリスクが生じます。反対に、優先医療施設での医療従事者や現場作業員の予防接種を含む、近隣諸国での実質的な即応体制の整備および準備活動は、症例を迅速に検出して地域への蔓延を軽減する能力を高めている可能性が高いのです。これは拡大し続ける必要があります。

WHOからのアドバイス

国際交通: WHOは現在入手可能な情報に基づき、コンゴ民主共和国への渡航や貿易に対していかなる制限も行わないよう勧告します。現在のところ、エボラウイルスから人々を守るワクチンは認可されていません。したがって、国境を越えた移動や、コンゴ民主共和国を離れる乗客に対してビザ発給の制限の基準として、エボラワクチンの接種証明書を要求することは合理的ではありません。WHOは厳重な監視を継続し、必要であれば今回の事象に関連した渡航と貿易の措置を検証します。現在のところ、コンゴ民主共和国との国際的な往来を明らかに制限する渡航対策を実施している国はありません。渡航者は渡航前に医師の診察を受けるべきであり、良い衛生慣習を実践すべきです。

(註1)ここ数週間のデータでは、症例の確定と報告の遅れ、継続中のデータクリーニングの遅れの影響を受けています。

出典

Ebola virus disease ―Democratic Republic of the Congo
Disease outbreak news: Update   25 April 2019
https://www.who.int/csr/don/25-april-2019-ebola-drc/en/