リフトバレー熱 -マヨット(フランス)

Disease outbrake news 2019年5月13日

2019年1月4日、フランスの国際保健規則(IHR)の担当窓口は、欧州連合の早期警戒および対応システムを通じて、マヨット(Mayotte)島で診断された5人のヒト土着性リフトバレー熱(RVF)の症例について世界保健機関(WHO)に通知しました。発症日は、2018年11月22日から12月31日までの範囲でした。

2018年11月から2019年5月3日までに、129人のヒトリフトバレー熱確定例および109の動物感染(23頭の小型反芻動物および86頭のウシ亜科動物)がマヨットで報告されています。 2019年3月の最後の3週間で症例数が着実に減少した後、2019年4月にわずかな増加が観察されました。2019年5月3日現在、新しいヒト症例が1例報告されましたが新たな感染動物の感染は報告されていません。ヒトリフトバレー熱の症例と動物感染の両方は、主に本島のグランテール(Grande-Terre)の中心部と北西部に位置しています。しかし、2019年3月末以降、本島の東部とマヨットのプチテール(Petite Terre)で、いくつかの新しい動物感染も検出されました。

公衆衛生上の取り組み

2019年1月のヒト症例の検出以降、以下の措置がとられました。
・ヒトと動物の健康のサーベイランス強化は、地元の保健当局によって実施されています。
・疾病情報の交換のために、ヒトと動物の衛生専門家の間での会合が、地域および全国レベルで開催されています。
・地元の保健当局は、蚊に刺されないための個人的な保護対策の重要性と感染防止のために生の肉や生乳の摂取を避けることを忘れさせないように牧畜業者と住民と定期的に連絡を取っています。
・迅速に症例を診断するために医療従事者の間の意識を高めます。
・生乳の商品化は2019年2月27日以降禁止されています。
・マヨットからの牛、生肉、生乳の輸出も2019年3月20日以降禁止されています。

WHOによるリスク評価

リフトバレー熱ウイルスは、違法な動物の移動、感受性のある動物の存在、そしてウイルスの伝播を局所的に維持するための媒介動物である蚊にとって好ましい環境を通じた近隣国からのウイルスの定期的な輸入という状況で、マヨット島で活発に伝播しています。 リフトバレー熱ウイルスは主にヤブカ(Aedes)およびイエカ(Culex)属に属している蚊だけでなく、ハマダラカ(Anopheles)、ヌマカ(Mansonia)および他の蚊属)によって伝播されます。 マヨットには、リフトバレー熱ウイルスの貯蔵庫として機能するAedesとCulexを含む15属に属する45種の文献上記載された種が知られていて、蚊の注目すべき種の豊富さがあります。マヨットの雨季(12月から4月)が終わったので、動物における蚊媒介感染のリスクは今後数ヶ月で減少するはずです。しかし、サイクロン「ケネス」通過後に関連した長時間の雨はリフトバレー熱症例の増加につながるかもしれません。

ヒトの感染の主な経路は、感染した動物の血液、体液、組織および臓器や流産した動物の胎児との直接的または間接的な接触によるものですが、感染した家畜を扱う場合、ヒトにとって非常に伝染性があります。獣医師、畜産農家および肉屋を含む高リスクグループは、感染を防ぐために安全な畜産および屠殺の慣行を実施すべきです。今日まで、ヒトからヒトへのリフトバレー熱ウイルスの感染は報告されていません。

リフトバレー熱の動物間の流行は、感染した家畜の死亡率や中絶率の高さ、動物製品(牛乳、肉)の安全性に対する国民の信頼の喪失、またアウトブレイクを制圧するために制定される可能性のある移動の禁止をもたらします。地方自治体は、リフトバレー熱のアウトブレイクを予防、検出、および対応するための適切な管理対策を実施し、多部門にわたるワン・ヘルス(One Health)アプローチを強化しました。それにもかかわらず、違法な牛の輸入の増加が予想される断食(Ramadan)の時期のために、2019年5月には症例と感染の潜在的な増加についての懸念があります。今日まで、この疾病がマヨットを越えて広がることを示唆する情報はありません。

WHOからのアドバイス

リフトバレー熱は、主に家畜(牛、羊、ラクダおよびヤギを含む)およびより少ない程度でヒトにり患するウイルス性人畜共通感染症です。 リフトバレー熱ウイルスは、潜在的に感染した家畜を取り扱う際にヒトにとって非常に伝染性があります。 リフトバレー熱感染の危険因子、ならびに媒介動物の防除や蚊に刺されないようにするための保護などの防護対策についての意識を高めることが、ヒトの感染や死亡を減らす鍵となります。リスク軽減のための公衆衛生メッセージは以下に焦点を当てるべきです。

・安全でない畜産と屠殺の慣行による、動物から人への感染の危険性を減らすこと。病気の動物やその組織を取り扱うとき、あるいは動物を屠殺するときは、手指衛生を訓練し、手袋およびその他の適切な保護具を着用すること。
・新鮮な血液、生乳、または動物組織の安全でない摂取による動物からヒトへの感染のリスクを、食べる前に徹底的に調理することによって減らすこと。
・殺虫剤が含浸された蚊帳、可能であれば個人用の虫除け剤、淡色の衣類(長袖のシャツやズボン)を使用し、媒介昆虫種の刺咬のピーク時間帯における野外活動を避けることによる、蚊の攻撃からの個人保護および地域社会保護の重要性。
・動物におけるリフトバレー熱のアウトブレイクはヒトの症例に先行するので、獣医および公衆衛生当局に早期警告を提供するには、積極的な動物の健康サーベイランスシステムの確立が不可欠です。リフトバレー熱が土着している地域における日常的な動物予防接種は、リフトバレー熱の動物間の流行を予防することができます。ワクチン接種キャンペーンは、ウイルスの注射針による伝播を介して群れ内での感染を拡大する可能性があるため、アウトブレイク中は推奨されません。

WHOは、この事象で入手可能な最新の情報に基づいて、マヨットへのいかなる渡航や貿易の制限も行わないよう勧告します。

出典

Rift Valley Fever - Mayotte (France)
Disease outbreak news   13 May 2019
https://www.who.int/csr/don/13-may-2019-rift-valley-fever-mayotte-france/en/