エボラウイルス病-コンゴ民主共和国(更新28)

Disease outbreak news:更新  2019年6月27日

北キブ州(North Kivu)とイトゥリ州(Ituri)におけるエボラウイルス病(EVD)の今週のアウトブレイクは安定したペースを維持しています。ベニ(Beni)においては、周辺地域での政情が不安定であった2日間の後、対応作業が一時的に中断されましたが、作業は広い範囲で再開されました。しかしながらミュジャンエーネ(Musienene)の町においては、対応作業を援助する医療従事者と地域の治安維持部隊に対して激しい武力威嚇が続いています。さらに、マングルジパ(Manguredjipa)保健区域のカンバウ(Kambau)保健地域における対応活動も、治安に関わる衝突以降、中断されています。

今週懸念が増大しているのは現ホットスポットで、2018年8月にエボラウイルス病が最初に報告された保健区域であるマバラコ(Mabalako)、特にアロヤ保健地域と、同年9月にエボラウイルス病が最初に報告された保健区域であるマンディマ(Mandima)です(図1)。新規症例が過去24日間に報告されていないヴホヴィ(Vuhovi)などの地域における散発的な再発生はさらに状況を悪化させています。長引く対応活動の中断期間の後にエボラウイルス病症例が同様の再燃を経験しているその他の地域として、コマンダ(Komanda)、マセレカ(Masereka)が挙げられます。

2019年6月5日から25日までの21日間で、19の保健区域のうち67の保健地域が新規症例を報告し、北キブ州とイトゥリ州の664の保健地域のうち10%を占めています(図2)。この期間中、合計252人の確定例が報告され、その大部分はマバラコ(35%, n=88)、ベニ(17%, n=43)、マンディマ(Mandima)(12%, n=30)、ビュトンボ(Butembo)(5%, n=13)、ミュジャンエーネ(5%, n=13)、カルングタ(Kalunguta)(5%, n=12)、カトワ(Katwa)(5%, n=12)保健区域のものです。2019年6月25日現在で、2183人の確定例と94人の高度疑い例を含む2277人のエボラウイルス病の症例が報告されました(表1)。確定例1437人の死亡を含む合計1531人の死亡が報告されました(全体の症例致死率67%)。年齢と性別が分かっている2277人の確定例と高度疑い例のうち、57%(1287人)が女性、29%(663人)が18歳未満の小児でした。医療従事者間で症例は増え続け、そのうち累積感染者数は129人に増えました(全症例の6%)。

マバラコでは6月5日から25日にかけて、合計88人の確定例が報告され、61例がアロヤ保健地域に集中していました。複数の感染の連鎖が家族関係との関連性で認められ、15例の感染は医療施設に関連していました。現在、マバラコにおける主要な課題は登録症例のフォローアップと、新規症例の検出の多さに反して報告された警報が少ないことの考察です。

マンディマにおいては、6月25日までに合計30人の症例が過去21日間に報告され、症例の大部分(22人)はビアカト・ミネス(Biakato Mines)、ビアカト・マイ( Biakato Mayi)、アリマ(Alima)の各保健地域から生じたものです。6症例の感染の連鎖は、新規症例が最初に医療施設で感染した自分の家族またはその他の患者に接触した人によるものと上記の期間に判明されました。現在までのマンディマにおける適時の警報の調査は、アクセスの不足と治安の悪さのために最適とは言えず、警報の73%しか24時間以内に徹底調査されませんでした。2019年6月13日に公表された、以前のエボラウイルス病のDisease Outbreak News以降、ウガンダ共和国からは新規エボラウイルス病症例または新たな死亡例は報告されていません。6月26日の時点で、108人の潜在的に曝露された接触者が同定されていて、サーベイランス下にあります。この中にはフォローアップを終えた13人も含まれています。

最後の接触者が7月3日にフォローアップを終えるまで、接触者は21日間毎日受診を継続します。全接触者が現在のところ無症状のままです。現在報告されている全14人の疑い例はエボラウイルス病の検査で陰性です。6月26日に、潜在的な接触者の包囲接種を完了しました。合計1063人が同意し、滞りなく予防接種できました。この中には74人の接触者と(34人は予防接種に対して不適格)、740人の接触者に接触したもの、249人の医療従事者が含まれます。

図1:2019年6月25日時点の保健区域別エボラウイルス病症例の発症週ごとの確定例および高度疑い例のデータ*


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*ここ数週間のデータは、症例の確認と報告、および継続的なデータのクリーニングが遅れることがあります。その他の保健区域には、アリムボンゴ(Alimbongo)、ビエナ(Biena)、ブニア(Bunia)、カルングタ、カイナ(Kayna)、コマンダ、キョンド(Kyondo)、ルベロ(Lubero)、マングルジパ(Mangurujipa)、マセレカ、ムトワンガ(Mutwanga)、ニャンクンデ(Nyankunde)、オイチャ(Oicha)、ルワンパラ(Rwampara)、チョミア(Tchomia)が含まれます。

図2:2019年6月25日時点でのコンゴ民主共和国北キブ州およびイトゥリ州の保健地域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例*


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表1:2019年6月25日時点のコンゴ民主共和国北キブ州およびイトゥリ州における保健区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、および被害を受けた保健地域の数*


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**過去21日間に発生した症例と被災した地域の合計は、最初の症例警報の日付に基づいており、確定日および保健省による毎日の報告とは異なる場合があります。
 

公衆衛生上の取り組み

保健省、WHO、パートナーによる公衆衛生上の取り組み活動に関する詳細については、WHOアフリカ地域事務所が発表した最新の状況報告をご参照ください。
エボラ状況報告書:コンゴ民主共和国
 

WHOによるリスク評価

WHOは、疫学的状況の変化とアウトブレイクの状況を継続的に監視して、対応への支援が進展する状況に適応していることを確実なものにします。直近の評価では、国内および地域のリスクレベルは非常に高いままで、国際的なリスクレベルは低いままであると結論付けられました。 2019年2月から5月中旬にかけて、毎週新しい患者の増加が続いています。全般的な治安状況の悪化と、特に過去4週間にわたる政治的緊張と治安不穏によって悪化した地域社会の不信に基づく躊躇や拒絶、そして抵抗を示す孤立地帯(ポケット)が存続しています。アウトブレイクの影響を受けている地域において繰り返される一時停止と症例調査および対応活動の遅延により、介入の全体的な有効性が低下しています。しかし、最近の地域社会との対話、アウトリーチ構想、および特定のホットスポットエリアへのアクセスの回復により、地域社会による対応活動および症例調査の取り組みに対する受け入れが改善されました。スタッフの安全と治安を確保するために治安の緩和策が強化されており、手続き上、運用上および物理的な治安上の課題が解決されています。確定症例のうち報告される地域社会の中で死亡する症例の高い割合、サーベイランス下で接触者が知られている新規症例の割合が比較的低いこと、院内感染に関連する感染伝播連鎖の存在、症例発見とエボラ治療センターにおける隔離の持続的遅延、ならびに高度疑い例に対する適時報告と対応における困難さは、アウトブレイクの影響を受ける地域社会でのさらなる感染連鎖の可能性を高め、コンゴ民主共和国内および近隣諸国へのエボラウイルス病の地理的拡大のリスクを高めるすべての要因となります。アウトブレイクの影響を受けている地域から、コンゴ民主共和国の他の地域へ、そして不安の高まりの間に穴だらけの国境を越えて近隣諸国へと人口移動が頻繁に起こることで、これらのリスクはさらに高まります。現在のアウトブレイクの長期的な発生、対応スタッフの疲労、および限られた資源に対する継続的な負担によって、新たなリスクが生じます。反対に、優先医療施設での医療従事者や現場作業員の予防接種を含む、近隣諸国での実質的な即応体制の整備および準備活動は、症例を迅速に検出して地域への蔓延を軽減する能力を高めている可能性が高いです。現時点でこれらの努力を拡大し続ける必要があります。

WHOによるアドバイス

WHOは現在入手可能な情報に基づき、コンゴ民主共和国への渡航や貿易に対していかなる制限も行わないよう勧告します。現在のところ、エボラウイルスから人々を守るワクチンは認可されていません。したがって、国境を越えた移動や、影響を受けた国への/国からの渡航者に対してビザ発給の制限の基準として、エボラワクチンの接種証明書を要求することは合理的ではありません。WHOは厳重な監視を継続し、必要であれば今回の事象に関連した渡航と貿易の措置を検証します。現在、コンゴ民主共和国との間の国際交通を著しく妨害するような渡航対策を実施している国はありません。渡航者は渡航前に医師の診察を受けるべきであり、良い衛生慣習を実践すべきです。

さらなる情報はこちらをご覧ください。

出典

Ebola virus disease – Democratic Republic of the Congo
Disease Outbreak News: 27 June 2019
https://www.who.int/csr/don/27-june-2019-ebola-drc/en/

翻訳

WHO健康開発総合研究センター
https://extranet.who.int/kobe_centre/ja