エボラウイルス病-コンゴ民主共和国(更新33)

Disease outbreak news:更新  2019年8月2日

コンゴ民主共和国の北キブ州とイトゥリ州でのエボラウイルス病(EVD)のアウトブレイクは、最近の週と同様の感染強度で今週も続いており、過去6週間において平均で週に85例(週に79例から91例)でした(図1)。現在、コンゴ民主共和国以外ではエボラウイルス病の確定症例はありません。

7月30日、ゴマ市郊外のニーラゴンゴ(Nyiragongo)保健区域で、エボラウイルス病の確定症例が報告されました。この患者はイトゥリ州で鉱山労働者として働いており、いくつかのアウトブレイクのホットスポットを縦断し、そこでエボラウイルス病に感染した可能性が高いようです。現在、この症例が7月14日にゴマ(Goma)で特定された最初の症例との関連性を持っているという兆候はありません(18 July Disease Outbreak News 参照)。彼が病気で、保健施設に出向く前の数日間は地域社会の中にいたことを考えると、濃厚接触者への二次感染が予想されました。2人の家族、子供と配偶者は、その後、検査陽性となり、ゴマエボラ治療センター(ETC)で治療を受けています。接触者の間で感染が疑われる他の症例は、検査結果を待っています。数ヶ月の準備によって強化された、徹底的な接触者追跡とリングワクチン接種(包囲ワクチン接種)を含むかなりの規模の対応は、ゴマ市での三次感染または持続的な局地感染を防ぐ目的で、これらの症例の検出時に迅速に実施されました。それでもなお、チームは新しいケースに迅速に対応する準備ができています。 2019年8月1日の時点で、ゴマで4件のエボラウイルス病の確定症例があります。

2019年7月11日から7月31日までの21日間で、18の保健区域内の71の保健地域が新しい症例を報告し、北キブ州とイトゥリ州の664の保健地域の11%を占めています(表1、図2)。この期間中に、合計260の確定症例が報告され、その大部分はベニ(Beni)(52%、n = 135)およびマンディマ(Mandima)(16%、n = 41)の健康区域から来ました。マンディマ保健区域で報告された症例のほとんど(68%、n = 28)はソメ(Some)保健地域から来ており、ソメ保健地域はここ数週間で近隣のマンバサ(Manbasa)市に症例を播種しました。ソメ保健地域での対応は、地域社会とエボラ対策チームの間の緊張により、数週間にわたって困難でした。ただし、地域社会の視点を理解し、協同作業の共通の基盤を明らかにするために地域社会のリーダーと対話した後、状況は改善されました。 ビエナ(Biena)保健区域は最近、最後に報告された症例から21日間をクリアしました。しかしながら、ホットスポットは、疑い例と確定例とその接触者の移動を通じて他の地域における症例の源泉であり続け、これらの地域にウイルスが再導入されるリスクが高いため、チームは十分な能力と警戒を維持する必要があります。

2019年7月31日の時点で、確定された2619人と高度疑い症例94人を含む合計2713人のエボラウイルス病症例が報告され、そのうち1823人が死亡しました(全体の致死率67%)。確定例と高度疑い例の全症例のうち、56%(1527人)が女性であり、29%(773人)が18歳未満の子供でした。医療従事者の間での症例は増え続けており、累積感染者数は149人に達しています(全ての確定例と高度疑い例のうちの5%)。 2019年8月1日、コンゴ民主共和国政府がエボラのアウトブレイクを宣言してから1年を迎えました。国連パートナーは、コンゴ民主共和国の人々に対する私たちの集団的な関与を再確認し、アウトブレイクを終わらせるための連帯を呼びかけました。

図1:2019年7月31日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例及び高度疑い例のデータ*

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*ここ数週間のデータは、症例の確認と報告、継続的なデータクリーニングが遅れることがあります。その他の保健区域にはアリムボンゴ(Alimbongo)、アリワラ(Ariwara)、ビエナ、ブニア(Bunia)、ゴマ、カルングタ(Kalunguta)、カイナ(Kayna)、コマンダ(Komanda)、キョンド(Kyondo)、ルベロ(Lubero)、マングルジパ(Mangurujipa)、マセレカ(Masereka)、ムトワンガ(Mutwanga)、ニャンクンデ(Nyankunde)、ニーラゴンゴ、オイチャ(Oicha)、ルワンパラ(Rwampara)、チョミア(Tchomia)が含まれます。

図2:2019年8月1日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例及び高度疑い例のデータ*

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表1;2019年7月31日時点のコンゴ民主共和国北キブ州とイトゥリ州における保健区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、被害を受けた保健地域の数**

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**過去21日発生した症例と被災した地域は最初の症例警報の日付に基づいており、確定日及び保健省による毎日の報告とは異なる場合があります。

公衆衛生上の取り組み

保健省、WHO、パートナーによる公衆衛生上の取り組みに関する詳細については、WHOアフリカ地域事務所が発表した最新の状況報告をご参照ください。
エボラ状況報告:コンゴ民主共和国

 

WHOによるリスク評価

WHOは疫学的状況の変化とアウトブレイクの状況を継続的に監視して、対応への支援が進展する状況に適応していることを確実なものにします。直近の評価では国内および地域でのリスクレベルは非常に高いままで、国際的なリスクレベルは低いままであると結論づけられました。

北キブ州とイトゥリ州のアウトブレイクを受けた地域内では、ここ数カ月の間に認められた新たな(リスクの高い)地域への、あるいは国境を越えた感染拡大(拡大先での長引く局地的な感染伝播はありませんでしたが)を含め、かなりの感染伝播が継続しています。地域社会の中で死亡症例の割合が高いこと、サーベイランス下で接触者が明らかにされている新規症例の割合が低いこと、院内感染に関連した感染伝播の連鎖の存在、検出と隔離の持続的な遅延、政情不安定や地域社会の非協力のために地域社会へのアクセスに問題があることは、影響を受けた全ての地域社会における感染伝播のさらなる連鎖の可能性を増加させる要素となります。過去21日間の全般的な治安状況は概して穏やかで、対応作戦に大きな影響はありませんでしたが、作戦地域内の非国家武装グループの繰り返される目撃例と活動により、不安定さと懸念が残っていました。対応活動の要員および資産に対する脅威は引き続き記録されており、それは一部の方面、グループ、または個人による広範な地域社会の沈黙のレベルによって示されています。対応活動の継続性は、活動実施環境の綿密な監視と、それに相応する適切な治安対策の実施によって促進されます。新たなるリスクは、現在のアウトブレイクの長期間の継続、対応スタッフの間の疲労、および限られた人材と資金への継続的な負担によってもたらされます。

上述のリスクは、アウトブレイクが起きた地域からコンゴ民主共和国のその他の地域、および(セキュリティの)穴だらけの国境を越えた近隣諸国への頻繁な人口移動と併せて、コンゴ民主共和国と近隣諸国の両方における地理的拡大のリスクを高めます。反対に、近隣諸国におけるアウトブレイク対応体制の整備と準備活動は、症例を迅速に検出して地域への感染拡大を軽減する能力を高めてきました。これらの活動は継続して拡大しなければなりません。

WHOからのアドバイス

2019年7月17日、事務局長は国際保健規則(IHR)に基づいて緊急委員会を招集し、コンゴ民主共和国でのエボラのアウトブレイク状況を確認しました。事務局長は、アウトブレイクが国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)を構成するという緊急委員会の勧告を受け入れました。緊急委員会によって助言された一時的な勧告を含むさらなる情報は、声明WHO事務局長によるスピーチ、およびニュースリリースで利用可能です。
WHOは現在入手可能な情報に基づき、コンゴ民主共和国への渡航や貿易に対していかなる制限も行わないよう勧告します。現在のところ、エボラウイルスから人々を守るワクチンは認可されていません。したがって、国境を越えた移動や、影響を受けた国への/国からの渡航者にビザ発給の制限の基準として、エボラワクチンの接種証明書を要求することは合理的でありません。WHOは厳重な監視を継続し、必要であれば今回の事象に関連した渡航と貿易の措置を検証します。現在、コンゴ民主共和国との国際交通を著しく妨害するような渡航対策を実施している国はありません。渡航者は渡航前に医師の診察を受けるべきであり、良い衛生習慣を実践すべきです。さらなる情報はコンゴ民主共和国におけるエボラウイルス病アウトブレイクに関連した国際交通に対するWHOの推奨で利用可能です。

出典

Ebola virus disease -Democratic Republic of the Congo
Disease Outbreak News: 2 August 2019
https://www.who.int/csr/don/02-august-2019-ebola-drc/en/