エボラウイルス病-コンゴ民主共和国(更新34)

Disease outbreak news:更新  2019年8月8日

コンゴ民主共和国の北キブ州(Kivu)とイトゥリ州(Ituri)でのエボラウイルス病のアウトブレイクは、最近の週と同等の感染強度で今週も続いており、過去6週間では平均で週に86の症例(週に80例から91例)が認められました(図1)。現在、コンゴ民主共和国以外でエボラウイルス病の確定例はありません。

2019年7月17日から8月6日までの21日間で、16の保健区域内の65の保健地域が新規症例を報告しました(表1、図2)。この期間中に、合計257例の確定例が報告され、その大部分はベニ(Beni)(46%, n=119)とマンディマ(Mandima)(23%, n=58)の保健区域のものです。マンディマ保健区域での最近の症例の大部分は、北部の保健地域であるソメ(Some)(n=39)とマユアノ(Mayuano)(n=8)から報告されています。過去21日間にマンバザ(Mambasa)保健区域で報告された8例の内、大部分はソメ保健地域と疫学的に関連していて、今までのところマンバザでの地域内感染に限られていました。

現在までにゴマ(Goma)保健区域(n=1)とニーラゴンゴ(Nyiragongo)保健区域(n=3)から合計4例の確定例が報告されたという、直近の我々の報告以降、ゴマ市で新規確定例は報告されていません。4例の内、2例は死亡し、残りの2例はエボラ治療センターに入院中です。ゴマ保健区域での最初の確定例(7月14日報告)に関連している全256人の接触者は、8月3日に21日間のフォローアップ期間を終えました。ニーラゴンゴにおける症例(確定例と疑い例)のうち、合計232人の接触者(114人のハイリスクの接触者を含む)は依然としてサーベイランス下にあります。進行中の予防接種活動は、必要な条件を満たしている接触者の大部分(98%)に行き渡っていて、接触者・接触者との接触者・最前線で働く現場作業員1314人が現在までに予防接種を受けています。

新規の感染は、地域のヘルスポストやその他の医療機関で働く職員の中からの報告が続いています。直近の21日間で14人の新規症例が報告されました。地域の内訳はマンディマ(n=5)、ベニ(Beni)(n=4)と、それぞれカトワ(Katwa)・マンバザ・マセレカ・オイチャ(Oicha)・ヴホヴィ(Vuhovi)から1例ずつでした。累積で149人(5%)の医療従事者が現在までに感染しています。

8月6日の時点で、2687人の確定例と94人の高度疑い例を含む合計2781人のエボラウイルス病症例が報告され、その内1866人が死亡しました(全体の症例致死率67%)。確定例と高度疑い例の全症例の内、56%(1572人)が女性、28%(791人)が18歳未満の小児でした。

図1:2019年8月6日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例および高度疑い例のデータ*


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*ここ数週間のデータは、症例の確認と報告、継続的なデータクリーニングが遅れることがあります。その他の保健区域にはアリムボンゴ(Alimbongo)、アリワラ(Ariwara)、ビエナ(Biena)、ブニア(Bunia)、ゴマ、カルングタ(Kalunguta)、カイナ(Kayna)、コマンダ(Komanda)、キョンド(Kyondo)、ルベロ(Lubero)、マングルジパ(Manguredjipa)、マセレカ(Masereka)、ムトワンガ(Mutwanga)、ニャンクンデ(Nyankunde)、オイチャ、ルワンパラ(Rwampara)、チョミア(Tchomia)が含まれます。


図2:2019年8月6日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例および高度疑い例のデータ*


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表1:2019年8月6日時点のコンゴ民主共和国北キブ州とイトゥリ州における保健区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、被害を受けた保健地域の数**


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**過去21日発生した症例と被災した地域は最初の症例警報の日付に基づいており、確定日及び保健省による毎日の報告とは異なる場合があります。
 

公衆衛生上の取り組み

保健省、WHO、パートナーによる公衆衛生上の取り組みに関する詳細については、WHOアフリカ地域事務局が発表した最新の状況報告書をご参照ください。
エボラ状況報告書:コンゴ民主共和国

WHOによるリスク評価

WHOは疫学的状況の変化とアウトブレイクの状況を継続的に監視して、対応への支援が進展する状況に適応していることを確実なものにします。2019年8月5日に実施された直近の評価では、国内および地域でのリスクレベルは非常に高いままで、国際的なリスクは低いままであると結論づけられました。

北キブ州とイトゥリ州のアウトブレイクの影響を受けた地域では、ここ数カ月間に認められた新たなリスクが高い地域への感染拡大、あるいは国境を越えた拡大を含め、かなりの感染伝播が継続しています。しかしながら拡大先での長引く局地的な感染伝播はありませんでした。地域社会の中で死亡症例の割合が高いこと、サーベイランス下で接触者が明らかにされている新規症例の割合が低いこと、院内感染に関連した感染伝播の連鎖の存在、症例の検出と隔離の持続的な遅延、政情不安定や地域社会の非協力のために地域社会へのアクセスに問題があることは、影響を受けた全ての地域における感染伝播のさらなる連鎖の可能性を増加させる要因となります。北キブ州の州都であり、人口200万人を超えるゴマでの確定例と地域での感染伝播についての報告は、コンゴ民主共和国内および近隣諸国への拡大の可能性を際立たせています。徹底的な接触者追跡や包囲接種を含む、数カ月に渡る準備によって強化された大規模な活動は、ゴマ市での第三の拡大や現地の長引く局地的な感染伝播の予防を目的として、症例の検出のために迅速に実施されました。

対応作業を行う地域全体で見られた非国家武装集団の継続的な駐留により、先週の治安情勢はさらに不安定になりました。ベニ保健区域では、民主同盟軍 (ADF) の構成員によるものと思われる攻撃が繰り返され、多くの市民が死傷しました。それに対し、同地域の継続的な政情不安定に抗議するデモが2019年8月7日にベニとマビビ(Mavivi)で行われ、続いてさらに大規模なデモが8月8日にベニで行われました。このデモは、有名な市民団体の指導者を含む6人の死亡者を出した、ベニとオイチャの中心線上にあるムボー(Mbau)でのADFの攻撃に対するものです。エボラウイルス病への対応作業は状況が落ち着くまで延期する状態が続きました。対応活動の継続性は、作業環境の厳重な監視と適切な安全保障策の安定した実行によって円滑になります。


アウトブレイクの影響を受けている地域からコンゴ民主共和国のその他の地域、あるいはセキュリティの穴だらけの国境を越えた近隣諸国への頻繁な人口移動を考慮すると、上述の要因はコンゴ民主共和国と近隣諸国の両方における地理的拡大のリスクを高めます。反対に、近隣諸国での十分なアウトブレイク対応体制の整備と準備活動は、症例を迅速に検出して地域への感染拡大を軽減する能力を高めてきました。これらの活動は継続して拡大しなければなりません。

WHOによるアドバイス

2019年7月17日に、事務局長は国際保健規則(IHR)に基づいて緊急委員会を招集し、コンゴ民主共和国でのエボラのアウトブレイク状況を確認しました。事務局長は、アウトブレイクが国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を構成するという緊急委員会の勧告を受け入れました。緊急委員会によって助言された一時的な勧告を含むさらなる情報は、声明WHO事務局長によるスピーチ、およびニュースリリースで確認可能です。

WHOは現在利用可能な情報に基づき、コンゴ民主共和国への渡航や貿易に対していかなる制限も行わないよう勧告します。現在のところエボラウイルスから人々を守るワクチンは認可されていません。したがって、国境を越えた移動や、影響を受けた国への渡航者、あるいは影響を受けた国からの渡航者にビザ発給の制限の基準としてエボラワクチンの接種証明書を要求することは合理的ではありません。WHOは厳重な監視を継続し、必要であれば今回の事象に関連した渡航と貿易の措置を検証します。現在、コンゴ民主共和国との国際交通を著しく妨害するような渡航対策を実施している国はありません。渡航者は渡航前に医師の診察を受けるべきであり、良い衛生習慣を実践すべきです。さらなる情報はWHOが推奨するコンゴ民主共和国におけるエボラウイルス病アウトブレイクに関連した国際交通についてで確認可能です。

さらなる情報は以下をご覧ください。 Ebola virus disease in the Democratic Republic of the Congo – Operational readiness and preparedness in neighbouring countries

出典

Ebola virus disease – Democratic Republic of the Congo
Disease Outbreak News: 8 August 2019
https://www.who.int/csr/don/08-august-2019-ebola-drc/en/

翻訳

WHO健康開発総合研究センター
https://extranet.who.int/kobe_centre/ja