エボラウイルス病-コンゴ民主共和国(更新35)

Disease outbreak news:更新  2019年8月15日

コンゴ民主共和国の北キブ州(Kivu)とイトゥリ州(Ituri)でのエボラウイルス病のアウトブレイクは、最近の週と同程度の感染強度で今週も続いていて、過去6週間の平均は週に81例(週に68例から91例)でした(図1)コンゴ民主共和国以外ではエボラウイルス病の確定例はありません。
今週、エボラウイルス病の治療に関するランダム化比較試験 (RCT)の初めてのデータが公表されました。今回のデータから、試験中の4つの治療法のうち2つがエボラウイルス病の治療法としてより効果的であることが示されました。この結果、このRCTに参加している4つのエボラ治療センターの入院患者は、より効果的な2つの治療を受けるため、これから無作為化される予定です。RCTに参加していない治療施設の患者は、プロトコルの人道的使用の原則に基づき、引き続きこれらの治療法を利用することができます。この変更は、エビデンスに基づいた最も救命率の高い最善の治療法を、それぞれの治療センターの患者が確実に受けられることに役立ちます。

本データは、症状出現後まもなく治療を受ける意志を示して治療を受けられた場合、救命率が増大することを示しています。それぞれの患者への最善の対症療法の提供、疾患の進行に対する厳重な監視、その他のあらゆる健康上の問題に対する取り組みは生命を救っており、最優先事項であり続けます。以下の更新報道発表からさらなる情報が入手できます。

現在までのゴマ(Goma)(n=1)とニーラゴンゴ(Nyiragongo)(n=3)の各保健地域で報告された合計4人の確定例に加えて、我々の直近の報告以降にゴマ市で報告された新規確定例はいませんでした。7月30日に報告された症例との直接的な接触により感染した2例は、ゴマ市のエボラ治療センターで治療を受け、8月13日に退院しました。ニーラゴンゴの合計203人の接触者は依然としてサーベイランス下にあります。

2019年7月24日から8月13日までの21日間で、17の保健区域内の66の保健地域が新規症例を報告しました(表1、図2)。この期間中に、合計228人の確定例が報告され、その大部分はベニ(Beni)(42%, n=96)とマンディマ(Mandima)(20%, n=46)の各保健区域のものでした。また1症例がロルヴァ(Lolwa)保健区域で確定されました。これは現在のところ同保健区域で最初の確定例です。本症例のために影響を受けた保健区域の総数は、このアウトブレイクの期間中に27に上りました。本症例はマンディマからロルヴァへ渡航し、症状が出現しました。現在、同保健区域でのエボラウイルス病の局地的な感染伝播のエビデンスはありません。接触者の厳密な同定とフォローアップが、局地的な感染伝播の可能性を最小化するために進められています。
感染の新規報告が、地域のヘルスポストやその他の施設で働く職員の中で続いています。直近の21日間で、11人の新規症例が各地の医療従事者の中から報告されました。内訳はベニ(n=3)、マンディマ(n=2)、そして以下カトワ(Katwa)、マバラコ(Mabalako)、マンバザ(Mambasa)、マセレカ(Masereka)、ムトワンガ(Mutwanga)、ヴホヴィ(Vuhovi)からは各1人ずつでした。累計で151(5%)の医療従事者が現在までに感染しています。
8月13日の時点で、2748人の確定例と94人の高度疑い例を含む、合計2842人のエボラウイルス病症例が報告されています。そのうち1905例は死亡しています(全体の症例致死率67%)。確定例と疑い例全体の内、57%(1608人)が女性、29%(815人)が18歳未満の小児でした。
コンゴ民主共和国でのエボラウイルス病を制御するための戦略的対応計画4の第1の柱が現在WHOのウェブサイトで確認できます。本計画のその他の柱と資金需要は、対応のパートナーによって仕上げられていて、継続的に発表していく予定です。

第1の柱はアウトブレイクへの中心的な公衆衛生上の対応を網羅しています。この計画に概説される保健対応を全てのパートナー機関が継続するために必要な資金は、WHOに対する1億2000万USドルから1億4000万USドルを含む2億8700万USドルです。これまでに1530万USドルを受け取っています。更なる資金提供の約束を取り付けていますがまだ受け取れていません。また、新規の資金提供に関する告知が行われているものの、WHOの作業は現金資金の不足に影響を受けています。資金の不足額は差し迫っていて危険な状態です。本アウトブレイクの開始以降にWHOが受け取った資金の要約はこちらからご覧になれます。

図1:2019年8月13日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例および高度疑い例のデータ*


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*ここ数週間のデータは、症例の確認と報告、継続的なデータクリーニングが遅れることがあります。その他の保健区域にはアリムボンゴ(Alimbongo)、アリワラ(Ariwara)、ビエナ(Biena)、ブニア(Bunia)、ゴマ、カルングタ(Kalunguta)、カイナ(Kayna)、コマンダ(Komanda)、キョンド(Kyondo)、ロルヴァ、ルベロ(Lubero)、マンバザ、マングルジパ(Manguredjipa)マセレカ、ミュジャンエーネ(Musienene)、ムトワンガ、ニャンクンデ(Nyankunde)、ニーラゴンゴ、オイチャ(Oicha)、ルワンパラ(Rwampara)、チョミア(Tchomia)、ヴホヴィが含まれます。


図2:2019年8月13日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例および高度疑い例のデータ*


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表1:2019年8月13日時点のコンゴ民主共和国北キブ州とイトゥリ州における保健区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、被害を受けた保健地域の数**


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**過去21日発生した症例と被災した地域は最初の症例警報の日付に基づいており、確定日及び保健省による毎日の報告とは異なる場合があります。
 

公衆衛生上の取り組み

保健省、WHO、パートナーによる公衆衛生上の取り組みに関するさらなる情報は、WHOアフリカ地域事務局が発表した最新の状況報告をご参照ください。
エボラ状況報告書:コンゴ民主共和国
 

WHOによるリスク評価

WHOは疫学的状況の変化とアウトブレイクの状況を継続的に監視して、対応への支援が進展する状況に適応していることを確実なものにします。2019年8月5日に実施された直近の評価では国内および地域でのリスクレベルは非常に高いままで、国際的なリスクレベルは低いままであると結論付けられました。

北キブ州とイトゥリ州のアウトブレイクを受けた地域内では、ここ数カ月の間に認められた新たなリスクの高い地域への感染拡大、国境を越えた拡大を含め、かなりの感染伝播が継続しています。しかし、拡大先での長引く局地的な感染伝播はありませんでした。地域社会の中で死亡症例の割合が高いこと、サーベイランス下で接触者が明らかにされている新規症例の割合が低いこと、院内感染に関連した感染伝播の連鎖の存在、症例の検出と隔離の持続的な遅延、政情不安定や地域社会の非協力のために地域社会へのアクセスに問題があることは、影響を受けた全ての地域社会において、さらに感染伝播の連鎖の可能性を増加させる要因となります。

上記の要素は、アウトブレイクが起きた地域からコンゴ民主共和国のその他の地域、およびセキュリティの穴だらけの国境を越えた近隣諸国への頻繁な人口移動と併せて、コンゴ民主共和国と近隣諸国の両方における地理的拡大のリスクを高めます。反対に、近隣諸国におけるアウトブレイクへの対応体制と準備活動は、症例を迅速に検出して地域への拡大を軽減する能力を高めてきました。これらの活動は継続して拡大しなければなりません。

WHOによるアドバイス

WHOは現在入手可能な情報に基づき、コンゴ民主共和国への渡航や貿易に対していかなる制限も行わないよう勧告します。現在のところ、エボラウイルスから人々を守るワクチンは認可されていません。したがって、国境を越えた移動やビザの発給の制限の基準として、エボラワクチンの接種証明書を要求することは合理的ではありません。WHOは厳重な監視を継続し、必要であれば今回の事象に関連した渡航と防衛機の措置を検証します。現在、コンゴ民主共和国との国際交通を著しく妨害するような渡航対策を実施している国はありません。渡航者は渡航前に医師の診察を受けるべきであり、良い衛生習慣を実践すべきです。さらなる情報は、WHOの推奨するコンゴ民主共和国におけるエボラウイルス病アウトブレイクに関連した国際交通にについてで確認可能です。

さらなる情報は、以下をご参照ください。

出典

Ebola virus disease – Democratic Republic of the Congo
Disease Outbreak News: 15 August 2019
https://www.who.int/csr/don/15-august-2019-ebola-drc/en/

翻訳

WHO健康開発総合研究センター
https://extranet.who.int/kobe_centre/ja