エボラウイルス病-コンゴ民主共和国(更新31)

Disease outbreak news:更新  2019年7月18日

2019年7月17日に、WHO事務局長はコンゴ民主共和国内でのエボラのアウトブレイクの状況を再評価するために、国際保健規則(IHR)の下で緊急委員会を招集しました。本アウトブレイクに対して事務局長が委員会を招集したのは2018年8月のアウトブレイクの発表から4回目です(過去の会議は2018年10月、2019年4月、2019年6月に開催されています)。緊急委員会は本アウトブレイクを国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(Public Health Emergency of International Concern;PHEIC)とみなすと勧告し、事務局長はこれを認めました。これはウイルスの地理的拡大を含む、本アウトブレイクの最近の進展に基づいて決定されました。PHEICの発表は対応チームの実績の反映ではなく、国家および地域レベルでのリスクが高まる可能性と、このリスクを処理するために強固で協調的な活動の必要性の程度を認識するための尺度です。委員会とWHOは、いかなる渡航や貿易の制限も推奨しません。人々と物資の移動に悪影響を及ぼすことにより、エボラとの闘いを妨害し得るからです。委員会により暫定的に推奨される助言を含むさらなる情報が、声明WHO事務局長からのスピーチニュースリリースから利用できます。

北キブ州(Kivu)とイトゥリ州(Ituri)におけるエボラウイルス病のアウトブレイクは、直近の1週間は最近の数週間と同程度の伝播レベルで継続しています。アウトブレイクの伝播レベルが安定していることは、局地的な感染の影響を受けているエリアにとどめるための強力な対応活動を示唆する一方で、新たな地理的地域へのエボラウイルス病の拡大と、アウトブレイクの影響を受けている地域での不安定な治安情勢の継続がアウトブレイクの管理を複雑にし続けています。

この中の特徴的な例は、2019年7月14日のルワンダとの国境近くの約200万人が居住している都市であるゴマ(Goma)で報告されたエボラウイルス病確定例です。症例は男性で、ベニ(Beni)からバスでゴマへ移動し、到着すると同時に警報が出ている地元の保健所を訪ねました。本症例は同日、ゴマのエボラ治療センターに移動し、ビュトンボ(Butembo)のエボラ治療センターに搬送される途中で死亡しました。本症例の移動の履歴は把握されていて、全ての接触者が同定され、フォローアップを受けています。ゴマでは症例への接触者と、接触者との接触者への予防接種が2019年7月15日より開始されました。ゴマの都市部におけるエボラウイルス病症例の確定は以前から予測されていました。医療従事者の予防接種、感染予防と制御の集中的なトレーニング、サーベイランスの強化を含む準備活動は6カ月以上にわたり継続しています。隣接しているルワンダも準備活動を継続して実施しています。南キブ州のブカブ(Bukavu)に移動した本症例の接触者についての風評はすでに調査され、対応チームによって除外されています。

本アウトブレイクと直接関係のない出来事として、ウガンダ保健省によって用意、公表されWHOアフリカ地域事務局のウェブサイトに7月16日、17日に投稿された2つの状況報告書に確証がない情報が誤って掲載されていました。この情報はベニからの魚屋の女性の移動への懸念によるもので、エボラウイルス病に罹患した患者が、入院先のエボラ治療センターがあるベニから戻った後に1日ウガンダの都市へ移動したというものでした。継続的な調査から、この患者はエボラウイルス病の発症前にウガンダに渡航していることが示唆されました。この患者は旅行期間中にエボラウイルス病に感染していたということを最終的に除外することができないため、ウガンダとコンゴ民主共和国の両政府は厳重に潜在的に曝露した接触者を追跡しています。現在のところ、コンゴ民主共和国の国外でのエボラウイルス病の確定例は認められていません。
先週、対応に参加しているコミュニティのリーダーと現地ボランティアであるコンゴ民主共和国の国民がベニの別の場所で2人殺害されました。背後の動機や別の場所で起きた2つの殺人の間の関連は現在のところ未だ明らかではありません。治安維持部隊が現在これら2人の死亡者についての調査を実施しています。

2019年6月26日から7月16日までの21日間で、20の保険区域のうち67の保健地域が新規症例を報告し、これは北キブ州とイトゥリ州の664の保健地域の10%に相当します(図2)。この期間中、合計245人の確定例が報告され、その大部分はベニ(50%, n=123)、マバラコ(Mabalako)(15%, n=37)、カトワ(Katowa)(7%, n=18)、マンディマ(Mandima)(4%, n=10)、ビュトンボ(4%, n=9)の保険区域のものです。2019年7月16日の時点で、2428人の確定例及び94人の高度疑い例を含む合計2522人のエボラウイルス病症例が報告されました(表1)。ブニア(Bunia)、キョンド(Kyondo)、ミュジヤンエーヌ(Musienene)保健区域は、最後に症例が報告されてからの21日間を通過しました。しかしながらこれらの地域へのウイルスの再導入に対するリスクは依然として高いままであり、対応チームには十分な資金力と注意深さが要求されています。

1604人の確定例の死亡を含め、合計1698人の死亡が報告されています(全体の症例致死率67%)。年齢及び性別が分かっている2522人の確定例と高度疑い例のうち、56%(1423人)が女性、29%(720人)が18歳未満の小児でした。医療従事者の間で症例は増え続けており、累積感染者数は135人(全症例の5%)に増えました。

図1:2019年7月16日時点の保健区域別エボラウイルス病症例の発症週ごとの確定例および高度疑い例のデータ*


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*ここ数週間のデータは、症例の確認と報告、および継続的なデータのクリーニングが遅れることがあります。その他の保健区域には、アリムボンゴ(Alimbongo)、アリワラAriwara)、ビエナ(Biena)、ブニア、ゴマ、カルングタ(Kalunguta)、カイナ(Kayna)、コマンダ(Komanda)、キョンド、ルベロ(Lubero)、マングルジパ(Mangurujipa)、マセレカ(Masereka)、ムトワンガ(Mutwanga)、ニャンクンデ(Nyankunde)、オイチャ(Oicha)、ルワンパラ(Rwampara)、およびチョミア(Tchomia)が含まれます。

図2:2019年7月16日時点での保健区域別の発症週毎のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例*


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表1:2019年7月16日時点のコンゴ民主共和国北キヴ州およびイトゥリ州における保健区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、および影響を受けた保健地域の数**


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**過去21日間に発生した症例と地域の合計は、最初の症例アラートの日付に基づいており、確認日および保健省による毎日の報告とは異なる場合があります。

公衆衛生上の取り組み

保健省、WHO、およびパートナーによる公衆衛生上の取り組み活動に関する詳細については、WHOアフリカ地域事務所が発表した最新の状況報告を参照してください。
エボラ状況報告:コンゴ民主共和国

WHOによるリスク評価

WHOは、疫学的状況の変化とアウトブレイクの状況を継続的に監視して、対応への支援が進展する状況に適応していることを確実なものにします。直近の評価では、国内および地域のリスクレベルは非常に高いままで、国際的なリスクレベルは低いままであると結論付けられました。 2019年2月から5月中旬にかけて、毎週新しい患者の増加が見られ、それ以降は依然としてかなりの割合で発生しています。アウトブレイク対応を行っている主な3つの地域(ビュトンボ、ベニ、マンジーナ(Mangina))全てにおける非国家武装集団の活動の再開により、治安情勢は影響を受けています。活動が活発化している民主同盟軍(ADF)も、ベニ北東部において、コンゴ民主共和国政府軍(FARDC)との衝突を引き起こしています。現地の治安維持部隊は掃討作戦を実施し、対応活動はその後に円滑に進行しました。この期間中、コミュニティと対話ができないポケットが見られました。しかし、最近の地域社会との対話、アウトリーチ構想、および特定のホットスポットエリアへのアクセスの回復により、地域社会による対応活動および症例調査の取り組みに対する受け入れが改善されました。スタッフの安全と治安、活動のコミュニティを確保するために、作業を行うエリアは厳重に監視、評価され、また治安の緩和策が強化されています。確定例の中から報告された、地域社会での死亡の高い割合、サーベイランス下で接触者が知られている新規症例の割合が比較的低いこと、院内感染に関連した感染伝播の連鎖の存在、症例発見とエボラ治療センターにおける隔離の持続的遅延、高度疑い例に対する適時報告と対応における困難さは、アウトブレイクの影響を受けた地域社会でのさらなる感染伝播の連鎖の可能性を高め、コンゴ民主共和国内及び近隣諸国へのエボラウイルスの地理的リスクを高める全ての要因となります。不安の高まりがある期間に、アウトブレイクの影響を受けている地域からコンゴ民主共和国のその他の地域や穴だらけの国境を越えて近隣諸国へと人口移動が頻繁に起こることで、これらのリスクはさらに高まります。アウトブレイクの長期的な発生、対応スタッフの疲労、限られた資源に対する継続的な負担によって、新たなリスクが高まります。反対に、近隣諸国での実質的な即応体制の整備及び準備活動は、症例を迅速に検出して、地域への蔓延を軽減する能力が高いです。これらの努力を拡大し続ける必要があります。

WHOによるアドバイス

WHOは現在入手可能な情報に基づき、コンゴ民主共和国への渡航や貿易に対していかなる制限も行わないよう勧告します。現在のところ、エボラウイルスから人々を守るワクチンは認可されていません。したがって、国境を越えた移動や、影響を受けた国への/国からの渡航者に対してビザ発給の制限の基準として、エボラワクチンの接種証明書を要求することは合理的ではありません。WHOは厳重な監視を継続し、必要であれば今回の事象に関連した渡航と貿易の措置を検証します。現在、コンゴ民主共和国との間の国際交通を著しく妨害するような渡航対策を実施している国はありません。渡航者は渡航前に医師の診察を受けるべきであり、良い衛生慣習を実践すべきです。

さらなる情報は以下をご覧ください。

出典

Ebola virus disease – Democratic Republic of the Congo
Disease Outbreak News:Update  18 July 2019
https://www.who.int/csr/don/18-july-2019-ebola-drc/en/

翻訳

WHO健康開発総合研究センター
https://extranet.who.int/kobe_centre/ja