エボラウイルス病-コンゴ民主共和国(更新36)

Disease outbreak news:更新  2019年8月22日

コンゴ民主共和国の北キブ州とイトゥリ州でのエボラウイルス病(EVD)のアウトブレイクは、最近の週と同様の感染強度で今週も続いています(図1)。現在、コンゴ民主共和国以外ではエボラウイルス病の確定症例はありません。過去2~3週のアウトブレイクの状況は、新たな保健区域への症例の地理的な拡大ということに特徴づけられますが、症例数が多く、地域内の伝播が持続的に続き、感染のホットスポットとなっているベニ(Beni)、マンディマ(Mandima)およびビュトンボ(Butembo)における保健区域をまたいだ症例の出入りが起きているという状況が継続して見られます。2019年7月31日から8月20日までの過去21日間に、19の保健区域の中の69の保健地域から新たな症例の報告がありました。(表1、図2)この期間中、合計で216の確定例が報告され、その多くは、ベニ保健区域 (31%, n=66)、マンディマ保健区域 (18%, n=38)及びビュトンボ保健区域 (8%, n=18)における症例です。高い伝播のリスクは、マンバサ(Mambasa)市において過去21日間に14症例が報告された新たなクラスターに関連しています。早期に症例を探知し、調査を行い、強力に接触者を同定してフォローアップを行い、地域社会の関与を図るという対応がこれらホットスポットにおいて継続されています。

今週、2つの新たな保健区域において、症例の報告がありました。南キブ州のムウェンガ(Mwenga)保健区域と北キブ州のピンガ(Pinga)保健区域です。ムウェンガでは4例の確定例が報告されました。母親と子どもの2人が、南に移動する前にベニで1人の確定例に接触していました。この子どもの父親が続いて陽性と確認され、最初の患者がケアを受けた地域の医療施設において共患者となっていました。

ピンガでは、他の症例との明らかな疫学的連関がなく、最近のアウトブレイク地域への旅行歴や訪問者との接触歴がない1例の確定例が報告されました。ピンガは、対応に当たるチームにとって厳しい状況の地域です。遠隔であり、通信手段は限られ、治安のリスクと、感染者の家族や地域から受ける抵抗があります。

2019年8月20日の時点で、確定された2822人と高度疑い症例105人を含む合計2927人のエボラウイルス病症例が報告され、そのうち1961人が死亡しました(全体の致死率67%)。確定例と高度疑い例の全症例のうち、58%(1697人)が女性であり、28%(830人)が18歳未満の子供でした。現在までに、154人の医療従事者が感染しています。

先週、11人の追加の高度疑い例が確認されました。これらは、カトワ(Katwa)、キョンド(Kyondo)、ヴホヴィ(Vuhovi)及びマバラコ(Mabalako)の保健区域にある集落で2019年の3月から6月までの間に死亡した、アウトブレイクとの疫学的関連のある症例です。これらの症例は、エボラウイルス病の確定又は除外のための検体検査を行うのに必要な検体を得ることができなかったものです。

2019年8月19日、“ville morte”(死んだ街)と呼ばれる抗議活動が、ベニ、ビュトンボ及びオイチャ(Oicha)において、市民に対して行われた武装勢力の攻撃に対するものとして行われました。これはエボラ対策活動を一時的に中断させることになりました。活動は2019年8月20日に警戒を強めて再開しましたが、さらなるデモ活動が予想されています。エボラ対策活動の一時中断はしばしば、その後の症例数の増加と新たな地域への拡大をもたらすことになります。

図1:2019年8月20日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例及び高度疑い例のデータ*


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*ここ数週間のデータは、症例の確認と報告、継続的なデータクリーニングが遅れることがあります。その他の保健区域にはアリムボンゴ(Alimbongo)、アリワラ(Ariwara)、ビエナ、ブニア(Bunia)、ゴマ、カルングタ(Kalunguta)、カイナ(Kayna)、コマンダ(Komanda)、キョンド(Kyondo)、ロルヴァ(Lolwa)、ルベロ(Lubero)、マンバザ(Mambasa)、マングルジパ(Mangurujipa)、マセレカ(Masereka)、ミュジャンエーネ(Musienene)、ムトワンガ(Mutwanga)、ムウェンガ(Mwenga)、ニャンクンデ(Nyankunde)、ニーラゴンゴ、オイチャ(Oicha)、ピンガ(Pinga)、ルワンパラ(Rwampara)、チョミア(Tchomia)、ヴホヴィ(Vuhovi)が含まれます。

図2:2019年8月20日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例及び高度疑い例のデータ*


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表1:2019年8月20日時点のコンゴ民主共和国北キブ州とイトゥリ州における保健区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、被害を受けた保健地域の数**


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**過去21日発生した症例と被災した地域は最初の症例警報の日付に基づいており、確定日及び保健省による毎日の報告とは異なる場合があります。

公衆衛生上の取り組み

保健省、WHO、パートナーによる公衆衛生上の取り組みに関する詳細については、WHOアフリカ地域事務局が発表した最新の状況報告をご参照ください。
エボラ状況報告:コンゴ民主共和国
 

WHOによるリスク評価

WHOは疫学的状況の変化とアウトブレイクの状況を継続的に監視して、対応への支援が進展する状況に適応していることを確実なものにします。2019年8月5日に実施された直近の評価では国内および地域でのリスクレベルは非常に高いままで、国際的なリスクレベルは低いままであると結論づけられました。

コンゴ民主共和国におけるエボラウイルス病のアウトブレイクに対する対応は、継続する地域の不安定さ、不安、地域社会の抵抗や資金の不足などによって、いまも難しい課題です。今週報告された新たな確定症例数は全体ではわずかに減少する傾向にあるものの、新たな保健区域に拡がり続けています。曝露を受けた北キブ州のベニから南キブ州のムウェンガまで700kmを移動した事例でも示されています。地域社会の中で死亡症例の割合が高いこと、サーベイランス下で接触者が明らかにされている新規症例の割合が低いこと、起こりうる院内感染に関連した感染伝播の連鎖の存在、症例の検出と隔離の持続的な遅延、政情不安定や地域社会の非協力のために地域社会へのアクセスに問題があることは、影響を受けた全ての地域社会における感染伝播のさらなる連鎖の可能性を増加させる要素となります。

対応戦略は地域の状況に適応するために進化を続けますが、近隣諸国を含むアウトブレイクの影響を受けていない地域では、即時対応性と準備の活動のための能力が継続的に強化され維持される必要があります。 WHOは、アウトブレイクを終わらせるという共通の目標について、対応に関する自らの役割に責任を持つすべてのパートナーとともに、NGOと国連のパートナーらがすべての活動をまとめて加速する、より協調的なアプローチを求めています。

上述のリスクは、アウトブレイクが起きた地域からコンゴ民主共和国のその他の地域、および(セキュリティの)穴だらけの国境を越えた近隣諸国への頻繁な人口移動と併せて、コンゴ民主共和国と近隣諸国の両方における地理的拡大のリスクを高めます。反対に、近隣諸国におけるアウトブレイク対応体制の整備と準備活動は、症例を迅速に検出して地域への感染拡大を軽減する能力を高めてきました。これらの活動は継続して拡大し持続されなければなりません。

WHOからのアドバイス

WHOは現在入手可能な情報に基づき、コンゴ民主共和国への渡航や貿易に対していかなる制限も行わないよう勧告します。現在のところ、エボラウイルスから人々を守るワクチンは認可されていません。したがって、国境を越えた移動や、影響を受けた国への/国からの渡航者にビザ発給の制限の基準として、エボラワクチンの接種証明書を要求することは合理的でありません。WHOは厳重な監視を継続し、必要であれば今回の事象に関連した渡航と貿易の措置を検証します。現在、コンゴ民主共和国との国際交通を著しく妨害するような渡航対策を実施している国はありません。渡航者は渡航前に医師の診察を受けるべきであり、良い衛生習慣を実践すべきです。さらなる情報はコンゴ民主共和国におけるエボラウイルス病アウトブレイクに関連した国際交通に対するWHOの推奨で利用可能です。

出典

Ebola virus disease - Democratic Republic of the Congo
Disease outbreak news: Update  22 August 2019
https://www.who.int/csr/don/22-august-2019-ebola-drc/en/