伝播型ワクチン由来ポリオウイルス2型-ガーナ共和国

Disease outbreak news  2019年9月6日

ナイジェリアと西アフリカでは、ナイジェリアのジガワ州(Jigawa)から始まった伝播型ワクチン由来ポリオウイルス2型(cVDPV2)のアウトブレイクの拡大が続いています。ガーナでは、トーゴ共和国に隣接する、北部のチェレポニ地区(Chereponi)にあるアンドニャマニュ(Ando-Nyamanu)で急性弛緩性麻痺(AFP)症例からcVDPV2が分離されました。症例は2019年7月27日に麻痺が出現した2歳の女児でした。便検体は2019年7月27日と28日に採取された後、より詳細な検査室での調査を行うために野口記念医学研究所(Noguchi Memorial Institute for Medical Research)の国立ポリオ研究室へ送られました。2019年8月17日に検査された検体はcVDPV2陽性でした。このAFP症例の検体のシークエンシングから、Sabin2型と比較して25のヌクレオチドの変異があること、また2018年にナイジェリアのジグソー(Jigsaw)州 のAFP症例と遺伝子配列が極めて類似した6のヌクレオチドが明らかになりました。それより前に、2019年6月11日にガーナの北部から採取した環境サンプルから、関連のあるcVDPV2株が分離されています。いずれの分離された株も、2018年にナイジェリアのジガワで発生したアウトブレイクに関連していました。過去には、これと同じ株がナイジェリア内とニジェール、ベナン、カメルーンで国際的に拡大したことがあります。

直近の固有の野生型ポリオウイルスは2000年に報告されました。これはガーナで報告されたcVDPV2のアウトブレイクのうち、初めて報告されたものです。

公衆衛生上の取り組み

ナイジェリア保健省は、IHR緊急委員会(IHR Emergency Committee)が発行した国際的なポリオウイルス拡大についての一時的勧告に沿う形で、このウイルスの検出が国家の公衆衛生上の緊急事態(national public health emergency)であることを宣言しました。

保健省とパートナーはアウトブレイクの緊急的な抑制と拡大予防のために活動しています。

2019年8月19日に、主要なステークホルダーと世界ポリオ根絶イニシアチブ(the Global Polio Eradication Initiative;GPEI)のパートナーによる緊急ミーティングが、対策活動について議論するために開催されました。これに応えて保健省とガーナ保健サービスは3つの迅速な対応を取りました。

1. ガーナ保健サービスとWHOからなる国のチームが、詳細な調査と対応策を実施している地域や地区のチームを支援するために配置されました。

2. 積極的なサーベイランスの強化、地域住民の免疫レベルの分析、包括的なアウトブレイクの対応を計画するとともに、十分な疫学調査と現地調査が現在進行しています。

3. リスク下にある地域は調査済みで、一価経口ポリオワクチン2型(mOPV2)に対するポリオ顧問団(the Polio Advisory Group)からの承認の後に、リスクの高い被災した地区と隣接した地区においてReactive Vaccination Campaignが計画されました。

WHOによるリスク評価

ガーナとナイジェリア間、そして西アフリカ内の人口移動、また地域の免疫やサーベイランスのギャップを考慮すると、西アフリカは、地域全域での分離されたcVDPV2のさらなる感染伝播や国際的な拡大のリスクは高いと考えられます。

WHOからのアドバイス

全ての国々、特にポリオの影響を受けた国や地域へ頻繁に渡航、接触する国では、あらゆる新種のウイルスの輸入を迅速に検出するために、また迅速な対応を促進するために、AFP症例のサーベイランスを強化することが重要です。国、領域、地域はまた、あらゆる新種のポリオウイルスの導入の影響を最小化するために地区単位で均一に高いルーチンの予防接種率を維持することが重要です。

WHOの国際旅行と保健(International Travel and Health)は、ポリオの影響を受けている地域へのすべての旅行者に完全なワクチン接種を推奨します。感染した地域の居住者(4週以上滞在した訪問者を含む)は、旅行の4週間から12カ月以内にOPVまたは不活性化ポリオワクチンの追加投与を受けるべきです。

国際保健規則(IHR2005)に基づいて開催された緊急委員会(Emergency Committee convened under the International Health Regulations (2005))の助言の通りに、ポリオウイルスの国際的な拡大を制限するための努力は、依然として国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(Public Health Emergency of International Concern;PHEIC)です。ポリオウイルスによる被害を受けている国々は暫定的な推奨の対象となります。PHEICの下で発行された暫定的な推奨に従うために、ポリオウイルスに感染した国は、アウトブレイクを国家公衆衛生上の緊急事態として宣言すべきで、全ての国際旅行者の予防接種を検討するべきです。

出典

Circulating vaccine-derived poliovirus type 2 – Republic of Ghana
Disease Outbreak News: 6 September 2019
https://www.who.int/csr/don/06-september-2019-polio-ghana/en/
 

翻訳

WHO健康開発総合研究センター
https://extranet.who.int/kobe_centre/ja