エボラウイルス病–コンゴ民主共和国(更新43)

Disease outbreak news:更新  2019年10月10日

エボラウイルス病(EVD)の報告された患者数はここ数週間で連続して減少しました。ただし、9月30日から10月6日までの疫学週に北キブ州とイトゥリ州で14人の新しく確定された患者が報告されています(図1)。2019年4月のエボラ感染伝播のピークのときには、週に126人の患者が発生しました。発生率が低下していることは喜ばしいことですが、発生の状況はアクセスと治安のレベルに大きく左右されるので、注意して解釈しなくてはいけません。

9月中旬、マンディマ保健区域のルウェンバ保健地域で深刻な治安上の事件が発生し、2週間以上にわたってアウトブレイク対応活動ができませんでした。対応活動における自信(信頼)と地域社会の関与を改善するために、議論と和解のためのオープンなフォーラムが、パートナーと市民社会とともに先週、ルウェンバで開催されました。対応活動は再開されていますが、制限がされたままです。アクセスが改善することによって、症例(疑い患者)の発見と接触の追跡が強化できる可能性があり、したがって、この地域における患者報告数と接触数が増加するかもしれません。

ホットスポットは都市部からより農村部に移っています。比較的、人口が集中している地域から到達が困難な農村部の共同体に移っているのです。過去21日間(9月18日から10月8日まで)に、10の保健区域から合計59の確定症例が報告されました(表1、図2)。およそ5分の4の症例は4つの保健区域から出ています。{マンディマ(31 %、n = 18)、マンバサ(29%、n = 17)、コマンダ(10%、n = 6)、オイチャ(8%、n = 5)。}これにより、さらなる課題がもたらされています。それは、非常に不安定な治安状況、いくつかの遠隔地へのアクセスの難しさ、不信感や誤解を解消するためのエボラ出血熱に対する啓発があまり進んでいないことやコミュニティとの関わりが遅れていること、そして症例数の過小報告(特に一部の採掘現場の周辺において)の可能性があることが挙げられます。コマンダとマンバサからの主要道路に沿った感染伝播が発生することは、国内の他の主要都市(キサンガニなど)に向かう西方への拡散の大きなリスクももたらします。

10月8日現在、合計3,207件のエボラウイルス病の症例が報告されており、そのうち3,093件が確定症例、114件が疑い症例であり、2,144件が死亡しました。(全体の致死率67%)。確定及び疑い症例の全体のなかで、59%(n = 1797)が女性、31%(n = 909)が18歳未満の子供、5%(n = 162)が医療従事者でした。
10月4日現在、このアウトブレイクのなかで1,000人がエボラウイルス病を生き延びています。 2018年11月以来、WHOの支援を受けて保健省と生物医学研究所は、生存者が地域社会に再統合することを支援するプログラムを実施しています。このプログラムは、治療センターから退院してから、1年間にわたってエボラウイルス病生存者に毎月の臨床、生物学、心理の観点からフォローアップを提供します。現在、ベニ、ビュトンボ、およびマンギナにある3つの診療所で提供しています。

現在の戦略的対応計画の第1柱のもと、2019年7月から12月までの期間におけるすべてのパートナーに求める資金の見積もりは、WHOの 1億2,000万から1億4,000万ドルを含めて、2億8,700万ドルです。 10月10日現在、WHOは6,040万ドルを受け取り、追加の資金を投入または約束されました。2019年12月から2020年の第1四半期までの対応に資金を提供するには、さらなる財源が要されます。

第5柱のもと、地域の準備体制に関してすべてのパートナーに対して求める資金は6,600万米ドルで、そのうちWHOは2,100万ドルを必要とします。 10月8日現在、WHOは160万米ドルを受け取っています。いくつかの追加の約束が果たされているところですが、近隣諸国の準備体制のための資金を増やすことが至急、必要です。 WHOは寄付者に寛大な支援を提供するよう呼びかけ続けています。このアウトブレイクが始まってからWHOが受け取った資金の概要はこちらからです。

図1:2019年10月8日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例および高度疑い例のデータ*


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*ここ数週間のデータは、症例の確認と報告、継続的なデータクリーニングの遅延の影響を受けます。その他の保健区域には、アリムボンゴ、アリワラ、ビエナ、ブニア、ゴマ、カルングタ、カイナ、コマンダ、キョンド、ロルワ、ルベロ、マングルジパ、マセレカ、ミュジヤンエーヌ、ムトワンガ、ムウェンガ、ニャンクンデ、ニーラゴンゴ、オイチャ、ピンガ、ルワンパラ、チョミア、ヴホヴィ

図2:2019年10月8日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例および高度疑い例のデータ*


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表1:2019年10月8日時点のコンゴ民主共和国北キブ州およびイトゥリ州の保健区域別のエボラウイルス病の確定例と影響を受けた保健地域の数**


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**過去21日間に発生した症例と被災した地域の合計は、最初の症例警報の日付に基づいており、確定日および保健省による毎日の報告とは異なる場合があります。
 

公衆衛生上の取り組み

保健省、WHO、およびパートナーによる公衆衛生対応の活動の詳細については、WHOアフリカ地域事務所が発行する最新の状況レポートを参照してください。
エボラ状況報告書:コンゴ民主共和国

WHOによるリスク評価

WHOは、疫学的状況とアウトブレイクの状況の変化を継続的にモニターして、変化し続ける状況に対応への支援が順応することを確保しています。2019年10月8日に実施した最新の評価では、国および地域のリスクのレベルは非常に高く維持されており、世界的なリスクレベルは低く維持されていると結論づけました。

過去1か月の対応は大幅に進歩しており、新たに確認された症例の数は着実に減少しています。大規模な大都市のホットスポットから農村部の保健区域へ感染伝播の継続がシフトしており、これらのエリアへのアクセスは難しく、治安上の課題に直面する可能性があるため警戒が必要です。対応の方略として現地の状況と準備態勢に順応し続けなければなりません。また、主要な輸送ルートを含んだアウトブレイクの影響を受けていない地域であっても、準備を強化し維持すべきです。

WHOからのアドバイス

WHOは、現在入手可能な情報に基づいて、コンゴ民主共和国への渡航および貿易に対していかなる制限もすべきでないと助言します。現在、人々をエボラウイルスから保護するための認可されたワクチンはありません。したがって、国境を越えた移動や影響を受ける国への/からの旅行者に対するビザの発行を制限するために、エボラワクチンの接種証明書を要求することは、合理的な根拠にもとづくものではありません。WHOは、この事象に関連する旅行および貿易を引き続き注意深くモニターし、必要に応じて検証します。現在、コンゴ民主共和国との間の国際交通を著しく妨げる旅行施策を実施している国はありません。旅行者は旅行前に医師の助言を得るべきであり、良好な衛生状態を保つべきです。詳細については、コンゴ民主共和国でのエボラウイルス病のアウトブレイクに関連する国際交通に関してWHOが推奨している事項を参照してください。

出典

Ebola virus disease - Democratic Republic of the Congo
Disease outbreak news: Update  10 October 2019
https://www.who.int/csr/don/10-october-2019-ebola-drc/en/