黄熱-ベネズエラ

Disease outbreak news  2019年11月21日

2019年11月13日、国際保健規則(IHR)にもとづくベネズエラの国際窓口(NFP)とベネズエラPAHO / WHOカントリーオフィスは、ボリバル州で確認された黄熱の症例の情報を共有しました。患者は46歳の男性でボリバル州グランサバナ地方自治体の住民です。彼は症状が出現する以前の19日の間にはグランサバナのウリマン市の周辺にいました。症状が発現したのは2019年9月14日で、発熱、悪寒、悪心、嘔吐、鼻出血、点状出血、下痢が含まれていました。2019年9月26日にエレス市で状態が悪化し、市内の公的病院を受診し、中程度の脱水、歯茎からの出血、黄疸、胆石症、腹痛、肝腫大を伴っていました。2019年11月13日の時点で慢性腎不全と中程度の貧血があり、いまだに入院しています。

2019年9月26日に最初の血清検体が国の基準研究所であるカラカスのラファエル・ランゲル国立衛生研究所(頭文字はスペイン語でIHRR)に送られました。 2019年11月13日の逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって黄熱が陽性であり、2019年11月14日のRT-PCRによってデング熱は陰性でした。2019年10月10日に2回目の血清検体が採取されIHRRに送られており、結果はまだでていません。

ベネズエラの国土の大部分は、野生の黄熱のリスクがあると考えられており、この症例は、2005年以降ベネズエラで診断された黄熱において、初めて自生症例が確認されたことになります。

公衆衛生上の取り組み

11月12日に共同調査チーム(WHOカントリーオフィスとベネズエラ保健省)が設置され、リスクの明確化と対応計画の策定を行っています。汎米保健機構(PAHO)の予防接種(IM)ユニットはワクチン調達のための回転基金(Revolving Fund)と連動して、10月末に同国に到着したユニセフからの571,000回分の黄熱ワクチンの寄付を確保しました(詳細については、こちらをご覧ください)。

地元の公衆衛生当局は、ヒトおよび非ヒト霊長類における能動的および受動的な疫学的サーベイランス活動を強化しています。加えて戦略的な予防接種活動が計画されています。

WHOによるリスク評価

黄熱は、感染した蚊によって伝播する急性のウイルス性出血熱疾患であり、急速に広がるとともに深刻な公衆衛生への影響を引き起こす可能性があります。特別な治療法はないものの、生涯にわたって免疫を与える黄熱ワクチンの単回投与で病気を予防できます。脱水、呼吸不全、発熱の治療には支持療法が必要です。また、関連する細菌感染症の治療には抗菌薬が推奨されます。

この症例の感染の起源は、黄熱のリスクがあると判断された地域における、野生のものである可能性が高いです。ベネズエラは黄熱感染伝播のリスクがあると考えられています。

WHOからのアドバイス

この黄熱の症例の報告は、特に黄熱伝染と先住民族にとって都合の良い生態系を持つ地域で、黄熱に対する認識を持つこと、サーベイランスシステム(検査の能力を含む)を強化すること、黄熱ワクチン接種率の高い状態であること、これらのことを維持することが重要であることを示しています。

黄熱のリスク状態である地域を訪問又は滞在することを計画している旅行者には次のことを助言します。

・ベネズエラに旅行する生後9か月以上のすべての旅行者は、旅行の少なくとも10日前に黄熱に対する予防接種を勧めます。ただし、旅程が次の地域に限定されている旅行者を除きます。アラグア州、カラボボ州、ミランダ州、バルガス州、ヤラクイ州及び首都地区。旅程が次のエリアに限定されている旅行者には推奨しません。メリダ州、トルヒーリョ州及びタチラ州の標高2300m以上のすべての地域、ファルコン州及びララ州、 マルガリータ島;、カラカス首都地区並びにバレンシア市街地。( ここの地図をご覧ください)。
・ワクチンは生後6ヶ月未満の子供には禁忌であり、黄熱ウイルスによる感染のリスクが非常に高い可能性がある流行時を除き、生後6~8ヶ月の子供には推奨されません。
・60歳以上の方に予防接種をする前に注意を与えることが推奨されます。ワクチン接種を受けていない60歳以上の人には、通常はワクチンが推奨されますが、利益と不利益の評価をすべきでしょう。
・WHOが承認した黄熱ワクチンは単回投与で黄熱に対する生涯にわたる防護を与えることに十分です。ワクチンの追加接種は必要ありません。
・黄熱ウイルスは、流行の高い地域だけでなく、農村部での長期旅行中といった旅行者の旅程のなかで蚊に大量にさらされる場合は流行の少ない地域でも伝播する可能性があります。WHOは一般的な予防策として、蚊に刺されないようにすることを推奨しています。黄熱ウイルスの伝播の最大のリスクは日中と夕方の間にあります。
・1歳以上の旅行者のうちブラジルから到着した者、ブラジルの国内の空港を12時間以上トランジットした旅行者には、黄熱予防接種証明書が求められます。予防接種が求められない場合でも、その国において黄熱のリスクがないわけではないことに旅行者は注意してください。一部の人々の予防接種率は、特に先住民族の地域では適切ではないかもしれません。
・黄熱に対する予防接種の国際証明書は、初回だけの予防接種の10日後に有効になり、予防接種を受けた人の一生涯有効のままです。10年後の追加投与は保護のために必要ではなく、国への入国の条件として海外旅行者にはもはや必要ありません(詳細についてはこちらをご覧ください)。
・黄熱の症状と兆候について認識してください。
・ベクターが存在し地域での伝播の循環が確立されているような、特に黄熱伝染の危険がある地域に旅行している間や帰国してきたときにアドバイスを求めるようにヘルスケアを促進してください。

WHOは加盟国に対して、リスクおよび予防接種を含む予防について旅行者に十分な情報を提供するために必要なすべての活動を実施することを奨励します。 また、旅行者は黄熱の兆候や症状を認識するようなるべきであり、暴露したかもしれない後に兆候を示す場合は、すみやかに医学的助言を求めるよう指示されているべきです。

WHOは加盟国に対し、潜在的な流行地域に旅行する者に対して予防接種の実施状況のチェックを強化するように注意喚起します。流行地域で感染しウイルス血症の状態で帰国した旅行者は、ベクターが存在する地域で黄熱の地域循環を確立するリスクがあります。予防接種を受けるべきでない医学的な背景がある場合には、適切に当局によって証明されなければなりません。

このイベントで入手可能な情報に基づき、いかなる一般的な旅行または貿易の制限もベネズエラに適用することをWHOは推奨しません。

出典

Yellow fever-Bolivarian Republic of Venezuela
Disease outbreak news   21 November 2019
https://www.who.int/csr/don/21-november-2019-yellow-fever-venezuela/en/