伝播型ワクチン由来ポリオウイルス2型―アフリカ地域

Disease outbreak news:更新 2019年11月29日

伝播型ワクチン由来のポリオウイルス2型(cVDPV2)の発生は、西アフリカ、中央アフリカ、アフリカの角のいくつかの国で報告されています(詳細については、2019年7月31日に公開されたDisease outbreak newsをご覧ください)。このレポートは、アフリカの新たに影響を受けた国での現在のcVDPV2のアウトブレイクに関する状況の更新を提供します。 2016年9月以降、大陸では野生のポリオウイルスは検出されていません。

A.西アフリカおよびチャド湖(LCB)周辺領域

西アフリカおよびチャド湖周辺領域では、ナイジェリアのジガワ州を起源とするcVDPV2のアウトブレイクが拡大し続けています。今年の初めと2018年のカメルーン、ガーナ、ベナン、ニジェール共和国でのアウトブレイクの検出後、このウイルスは現在、チャド、トーゴ、コートジボワールで検出されています。

チャド

2019年10月16日、カメルーンに隣接するチャド西部のチャリバギルミ州のマンデリア準州で、急性弛緩性麻痺(AFP)の5歳未満の子供からcVDPV2が分離されました。麻痺の発症は9月9日でした。 2019年9月16日と17日にサンプルが採集されました。分離されたウイルスは、32ヌクレオチドの変異を伴い、2型のセービン株と遺伝的に異なることが報告されました。影響を受けた地理上の地域は、それより以前に一価の2型経口ポリオワクチン(mOPV2)ワクチン接種キャンペーンに参加したことがありません。

2019年10月28日の時点で、この国で報告されているcVDPV2の1つの症例があります。 世界保健機関(WHO)-ユニセフ(UNICEF)の定期予防接種の推定によると、1歳未満の子供の不活化ポリオワクチン(IPV)の接種率は、2018年に41%と推定されました。

トーゴ

2019年10月15日、東はベナン、西はガーナに隣接するプラトー州のエストモノ県で急性弛緩性麻痺を患う5歳未満の子供からcVDPV2が分離され、麻痺の発症は2019年9月13日でした。サンプルは2019年9月18日と19日に採取されました。分離されたウイルスは、35ヌクレオチドの変異によって2型のセービン 株と遺伝的に異なっていました。影響を受けた地域は、それより以前に一価の経口2型ポリオワクチンの予防接種キャンペーンに参加したことがありません。

これは国内で初めて報告されたcVDPV2のアウトブレイクであり、ナイジェリアのジガワ州で発生したアウトブレイクと遺伝的に関連しています。2019年10月28日の時点で、この国で報告されているcVDPV2の1つの症例があります。 WHO-ユニセフの定期予防接種の推定によると、2018年10月の定期予防接種スケジュールへの導入の遅れにより、1歳未満の子供のIPV接種率は2018年に20%と推定されました。土着の野生型ポリオウイルスが最後に報告されたのは1999年です。

コートジボワール

アビジャン州のアドジャメ-プラトー-アテクーベ(Adjame-Plateau-Attecoube)から1つのcVDPV2陽性の環境サンプルが報告されました。サンプルは2019年9月26日に採取されました。この陽性サンプルは、ナイジェリアのジガワ州でのアウトブレイクに関連しています。

B.東および南部アフリカ

ザンビア

ザンビアでは、2019年7月16日、コンゴ民主共和国(DRC)のオーカタンガ州に隣接するザンビアのルアプラ州のチエンギで、急性弛緩性麻痺を発症した5歳未満の子供からcVDPV2が分離されました。調査の一環として、2019年7月24日と29日に濃厚接触者とコミュニティの住人から34のサンプルが採集され、分離されたウイルスはセービン2型株から9個のヌクレオチドが変異しており、遺伝的に異なっていました。コミュニティの接触者のサンプルのうち2019年9月17日の2つは、VDPV2陽性でした。遺伝子の塩基配列決定により、2019年10月17日に上記の2つのサンプルでcVDPV2の存在が確認されました。影響を受けた地域は、それより以前に一価2型経口ポリオワクチンの予防接種キャンペーンに参加したことがありません。

現在のcVDPV2のアウトブレイクは、ザンビアで報告された最初のアウトブレイクです。 2019年10月28日の時点で、国は1例のcVDPV2症例を報告しています。不活化ポリオワクチンは、世界的な供給不足のため、2018年6月になってザンビアで導入されました。WHO-UNICEFの定期予防接種の推定によると、1歳未満の子供の不活化ポリオワクチン接種率は2018年に36%と推定されました。 最後の土着の野生型ポリオウイルスは1995年に報告されました。

さらに、中央アフリカおよびアフリカの角の他の国々でcVDPV2のアウトブレイクが報告されました。これらの国には、コンゴ民主共和国、中央アフリカ共和国、アンゴラ、エチオピア、ソマリア、ケニアが含まれます。さらに、モザンビークでもcVDPV2のアウトブレイクが報告されています。
 

公衆衛生上の取り組み

世界ポリオ根絶イニシアチブ(Global Polio Eradication Initiative)のパートナーは、アウトブレイクの影響を受ける保健省に必要なサポートを提供しています。分離されたウイルスの原因と起源を確認するために、疫学的およびウイルス学的フィールド調査が進行中です。能動的サーベイランスが強化されています。全国に準ずる規模で住民の免疫レベルが評価されています。そして、アウトブレイク対応の準備が行われています。国ごとのより詳細な公衆衛生上の取り組みを以下に要約します。

A.西アフリカおよびチャド湖(LCB)周辺流域

チャド

10月16日にcVDPV2が確認された後、チャドの保健大臣は10月19日に国家公衆衛生上の緊急事態の発生を宣言しました。即時対応キャンペーンは、一価の2型経口ポリオワクチンを使用して5歳未満の51,800人の子供を対象に、マンダレア県で11月2日から5日にかけて実施されました。ポリオキャンペーンの第1ラウンドは11月21~25日に実施され、第2ラウンドは12県を対象とし、5歳未満の子供789,418人を対象に12月13~17日に計画されます。

トーゴ

2019年10月15日にcVDPV2が確認された後、トーゴの保健大臣は、10月25日に国家公衆衛生上の緊急事態の発生を宣言しました。リスク評価が実施され、2019年10月23日にアドバイザリーグループに提示されました。一価の2型経口ポリオワクチンを使用した即時対応キャンペーンは、5歳未満の132,404人の子供を対象とする4つの県(エストモノ(Est Mono)、Thamba、アニエ(Anie)およびブリタ(Blitta))で2019年11月7日から10日に実施されました。ポリオキャンペーンの第1ラウンドは2019年11月21から24日に実施され、第2ラウンドは2019年12月5から8日に5つの5歳未満の子供513,768人を対象とする2つの地域(プラトーおよびセントラル地域)と17県を対象に計画されています。

コートジボワール

WHOは保健省と協力してサーベイランスを強化しています。

B.東および南部アフリカ

ザンビア

2019年10月17日にcVDPV2が確認された後、ザンビアの保健大臣は、2019年10月18日に国家公衆衛生上の緊急事態を宣言しました。一価の2型経口ポリオワクチンを使用した即時対応キャンペーンは、2019年11月6日~12日に5歳未満の141,312人の子供をターゲットにしてチェンゲ(Chienge)、ンチェレンゲ(Nchelenge)、カプタ(Kaputa)、ンサマ(Nsama)の4県で実施されました。ポリオキャンペーンの第1ラウンドは2019年11月26日から12月2日に、第2ラウンドは2019年12月17日から23日にかけて、それぞれ11県において5歳未満の337,215人の子供を対象として計画されています。

WHOによるリスク評価

国境を越えた人口移動、最適状態以下の免疫とサーベイランスにおけるギャップ、および2型ポリオウイルスに対する粘膜免疫の低下を考えると、アフリカにおけるcVDPV2のさらなる拡散または出現のリスクは依然として高いままです。 cVDPV2の検出は、ポリオウイルスの伝播のリスクと影響を最小限に抑えるために、あらゆる場所で高い定期予防接種率を維持することの重要性を強調しています。アウトブレイクの影響を受けている地域および特定された高リスク地域では、緊急かつ高い質のアウトブレイクへの対応を完全に実施することが重要です。

WHOは、疫学的状況と実施されているアウトブレイクへの対応措置を評価し続けます。

WHOからのアドバイス

特に、頻繁に旅行し、ポリオの影響を受けた国や地域と接触しているすべての国が、急性弛緩性麻痺症例のサーベイランスを強化して、新しいいかなるウイルスの輸入をも迅速に検出し、迅速な対応を促進することが重要です。国、準州、および地域は、新しいウイルスの導入による影響を最小限に抑えるために、地区レベルで定期的に高い予防接種率を維持する必要があります。

WHOの国際旅行と健康(のサイト)は、ポリオの流行地域のすべての旅行者と居住者にポリオに対する完全な予防接種を推奨しています。感染地域の居住者(および4週間以上の訪問者)は、旅行の4週間から12か月以内に、追加の経口ポリオワクチンまたは不活化ポリオワクチンの接種を受ける必要があります。

国際保健規則(2005)に基づいて召集された緊急委員会の助言によると、ポリオウイルスの国際的な広がりを制限する取り組みは、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)のままです。ポリオウイルス感染伝播の影響を受ける国は、一時的な勧告の対象です。 PHEICの下で発行された暫定勧告に準拠するために、ポリオウイルスに感染した国は、アウトブレイクを国の公衆衛生緊急事態として宣言し、すべての国際旅行者の予防接種を検討すべきです。

出典

Circulating vaccine-derived poliovirus type 2 - African Region
Disease outbreak news: Update   29 November 2019
https://www.who.int/csr/don/29-november-2019-polio-african-region/en/