エボラウイルス病-コンゴ民主共和国(更新49)

Disease outbreak news:更新  2019年11月21日

先週(11月13日から19日まで)、北キブ州(Kivu)とイトゥリ州(Ituri)で現在も続いているエボラウイルス病のアウトブレイクの中から、7人の新規症例が報告されました。新規症例の報告がない期間が30日以上続いた後に、1人のエボラウイルス病症例をオイチャ保健区域(Oicha)が報告しました。本症例はコミュニティ内で死亡した者でした。この症例は、カルングタ(Kalunguta)、マンディマ(Mandima)、マバラコ(Mabalako)、オイチャ保健区域との関連があり、死亡後にベニ保健区域(Beni)内に輸送されていました。複数の専門分野に渡って構成されたチームは、この伝播の連鎖の調査に乗り出しました。曝露の原因は未だ明らかにされていません。検体は、原因となった症例を同定することを支援するためのウイルス塩基配列決定を行う目的で、カトワ保健区域(Katwa)の研究所に送られました。先週ベニとマバラコ保健区域で報告された全ての他の症例は、既知の伝播の連鎖との関連がありました。

今週は、対応をしている地域を含む複数の地域で、武力衝突に起因する治安にかかわる事象が発生しました。発生した地域にはベニ、オイチャ、キョンド(Kyondo)保健区域が含まれています。まず非政府武装組織に対する軍事的な作戦が現在進行していることにより衝突が発生し、続いて現地の人々による報復的な攻撃がありました。エボラウイルス病への対応を標的とした攻撃についての報告はありません。しかし不安感や関連するコミュニティによる抗議により、ベニ、ビュトンボ(Butembo)、オイチャ保健区域の中のいくつかの地域で、対応活動の休止につながっています。この攻撃と対応への混乱は、最近の進展を脅かしています。本アウトブレイクの期間中に以前見られたように、このような混乱は接触者追跡とサーベイランス活動に制限を加え、伝播の増大をしばしばもたらします。

過去21日間(10月30日から11月19日)で、28人の確定例が北キブ州とイトゥリ州の4つの感染伝播が続いている保健区域から報告されています(図2、表1)。大半は3つの保健区域で、内訳はマバラコ(50%, n=14)、ベニ(29%, n=8)、マンディマ(18%, n=5)です。症例のうちの大部分(93%, n=26)は既知の伝播の鎖に関連しています。伝播の鎖のうち2つの感染伝播が続いているものの中で最大のものは、長時間コミュニティの中で症状を示していた2例を含んでいて、これは2次的な伝播、3次的な伝播をもたらすものです。マンバサとビュトンボ保健区域は新規症例の報告なく21日間が過ぎています。
11月19日の時点で、合計3298人のエボラウイルス病症例が報告されています。そのうち3180人が確定例、118人が高度疑い例で、全体のうち2197人の症例が死亡しています(全体の症例致死率67%)。全体の確定例と高度疑い例のうち、56%(n=1859)が女性、28%(n=931)が18歳未満の小児、5%(n=163)が医療従事者でした。

図1:2019年11月19日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例および高度疑い例のデータ*

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*発症日が報告されていないn = 184症例を除く。ここ数週間のデータは、症例の確認と報告、継続的なデータクリーニングが保くれることがあります。その他の保健区域には、アリムボンゴ(Alimbongo)、アリワラ(Ariwara)、ビエナ(Biena)、ブニア(Bunia)、ゴマ(Goma)、カルングタ、カイナ(Kayna)、コマンダ(Komanda)、キョンド、ロルヴァ(Lolwa)、ルベロ(Lubero)、マングルジパ(Manguredjipa)、マセレカ(Masereka)、ミュジヤンエーヌ(Musienene)、ムトワンガ(Mutwanga)、ムウェンガ(Mwenga)、ニャンクンデ(Nyankunde)、ニーラゴンゴ(Nyiragongo)、パンガ(Pinga)、ルワンパラ(Rwampara)、チョミア(Tchomia)、ヴホヴィ(Vuhovi)が含まれます。

図2:2019年11月19日時点の保健地域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例および高度疑い例*

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表1:2019年11月19日時点のコンゴ民主共和国の北キブ州とイトゥリ州における保健区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、被害を受けた保健地域の数**

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**過去21日間に発生した症例と被災した地域は症例警報の日付に基づいており、確定日及び保健省による毎日の報告とは異なる場合があります。

公衆衛生上の取り組み

保健省、WHO、パートナーによる公衆衛生上の取り組みに関するさらなる情報は、WHOアフリカ地域事務局が発表した最新の状況報告をご参照ください。
エボラ状況報告書:コンゴ民主共和国
 

WHOによるリスクアセスメント

WHOは、対応支援が変化を続ける状況に適応できているかを確認するべく、疫学的状況の変化とアウトブレイクの状況を継続的に観察しています。直近の評価では国内および地域でのリスクレベルは非常に高いままで、国際的なリスクレベルは低いままであると結論付けられました。

発生率の低下は喜ばしいものですが、影響を受ける地域におけるアクセスと治安のレベルに状況が大きく左右されるので、注意して解釈しなければなりません。発生率の低下と並行して、より集中した地域で、ホットスポットが都市部から農村部の手の届きにくい地域にさらにシフトしています。これらの地域では対応するにあたり更なる課題をもたらします。著しく不安定な治安状態、アクセスが困難である遠隔地の地域があること、エボラの認知度が比較的低く、地域の関与が遅れているために不信と誤解が生じていること、そして、潜在的な症例を過少に報告することが、更なる課題に含まれます。医療を受けるためやその他の理由のために、ホットスポットの外部に移動する症例とともにアウトブレイクが再び分散されるリスクがあるため、最近の治安に関する事象や対応活動の混乱は、再燃のリスクが非常に高いことの重要性を示しています。このような環境では、再興の可能性が非常に高いままですし、医療を受けることやその他の理由でホットスポットの外に移動することに伴って、アウトブレイクが再び分散する可能性も同じく非常に高いままです。これらのリスクは、国際パートナーのコンソーシアム(共同事業体)からの支援を受けて、コンゴ民主共和国および近隣諸国における実質的な対応および準備活動によって引き続き軽減されることになります。

WHOからのアドバイス

WHOは現在入手可能な情報に基づき、コンゴ民主共和国への渡航や貿易に対していかなる制限も行わないよう勧告します。国境を越えた移動や影響を受けた国への/国からの渡航者にビザの発給の制限の基準として、エボラワクチンの接種証明書を要求することは合理的ではありません。WHOは厳重な監視を継続し、必要であれば今回の事象に関連した渡航と貿易の措置を検証します。現在、コンゴ民主共和国との国際交通を著しく妨害するような渡航対策を実施している国はありません。渡航者は渡航前に医師の診察を受けるべきであり、良い衛生習慣を実践すべきです。さらなる情報は、WHOの推奨するコンゴ民主共和国におけるエボラウイルス病アウトブレイクに関連した国際交通にについてで確認可能です。

さらなる情報は下記をご覧ください。
 

出典

Ebola virus disease – Democratic Republic of the Congo
Disease Outbreak News: 21 November 2019
https://www.who.int/csr/don/21-november-2019-ebola-drc/en/

翻訳

WHO健康開発総合研究センター
https://extranet.who.int/kobe_centre/ja