黄熱–ナイジェリア(更新)

Disease outbreak news :更新  2019年12月17日

ナイジェリアでは、2018年と比較して2019年の確定例がほぼ3倍に増加し、黄熱ウイルスの伝播が激化したことを示唆する連続したアウトブレイクに対応しているところです。また、2017年9月にアウトブレイクして以来、これまで患者が発生したことのない地域で報告されることが続いています。2019年1月1日から12月10日までに、ナイジェリアに36あるすべての州の604自治体(774自治体中)と連邦首都圏において、黄熱の疑い例が計4,189件報告されました。

計3,547例の検体が採取され、207例が国内のネットワークに属する検査機関で検査され、免疫グロブリンM(IgM)陽性であることがわかりました。さらに19州から採取された197例が逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって陽性であることが確認されました。すべての症例(疑い例、高度疑い例、確定例)の致死率は5.1%であり、確定症例の致死率は12.2%です。

計197例の68%(134例)は確定例でありバウチ(Bauchi)、カツィナ(Katsina)、エド(Edo)、エボニー(Ebonyi)を含む4つの州から報告されました。エド州からの患者は2018年後半の即応的ワクチン接種キャンペーンを経て減少しました。2019年1月1日から12月10日までに確定例が115例(うち死亡例が23例)報告されており、内訳はバウチ(62症例)、カツィナ(38症例)およびベヌエ(Benue)(15症例)でした。これらは、国立の研究所で行われたRT-PCR検査及び/又はWHOアフリカ地域のレファレンス・ラボラトリ(標準検査機関)であるダカール・パスツール研究所(Institute Pasteur Dakar IPD)で行われたRT-PCR及び血清学的検査によって陽性でした。現在、さらなる疫学調査が進んでいます。

公衆衛生上の取り組み

アウトブレイクに対応した活動は、複数の機関(multi-agency)の黄熱インシデントマネジメントシステム(Incident Management System IMS)によって調整されて進められています。2019年11月5日には、バウチ、ベヌエ及びカツィナを含んだ広範囲の地域で黄熱の確定例の報告が急増したことから、緊急オペレーションセンター(EOC)が立ちあがりました(3回目)。サーベイランス、ケースマネジメントの支援及びリスクコミュニケーションといったアウトブレイク対応活動を支援するために、国内の即応チームがバウチ州及び蔓延しうる他の州に派遣されました。

国内の既存の検査機関のほかに、アブジャ(Abuja)、エド、エヌグ(Enugu)の各州の国立研究所ネットワークに新たな検査機関が追加されました。

バウチ州のアルカレリ(Alkaleri)自治体では対象を絞って対応活動が実施されています。しかしながら伝播が続いている報告があがっていることから、より多くの予防接種が必要であり、より広い地域を対象とすることが必要であることを示しています。カツィナ州では、州全体での予防的大規模予防接種キャンペーンを最近、遂行したところです。ただし、ワクチンへの信頼や治安の悪い地域へのアクセスに課題があることから、免疫ギャップを有する集団が取り残されてしまう可能性があります。近隣のカノ(Kano)州とカドゥナ(Kaduna)州では集団免疫が低く、人々が移動することによる拡散のリスクがあります。

黄熱の排除への戦略(the Eliminate Yellow Fever Epidemic)においてナイジェリアはリスクの高い国と見なされています。2024年までに、ナイジェリアのすべての州で黄熱からリスクのある人々を守るためのキャンペーン活動がなされると見込まれています。この計画はリスク、ワクチン及び実行可能性を踏まえて、今後、見直されたり、加速される可能性があります。現在、2019年に計画したフェーズ3の予防接種キャンペーンを完了したところであり、最近完了した大規模予防接種キャンペーンを評価しているところです。

WHOによるリスク評価

2019年8月以降、バウチ、ベヌエ、カツィナの各州で報告された黄熱のアウトブレイクの伝播は、他の複数の州に広がっており、黄熱の伝播が激化し、黄熱のアウトブレイクを拡大し増幅するリスクが高くなっています。これは、予防的な集団ワクチン接種キャンペーンがこれまで行われていない密集した都市部に黄熱が導入された場合、特に高いリスクです。リスクのあるエリアには、2017年以降に事前に報告された症例のないエリアと、カノやラゴスなどの都市部を含む、免疫不足の人口が多いエリアが含まれます。黄熱の予防的集団予防接種キャンペーンと定期予防接種を強化するための継続的な取り組みは、病気の蔓延と増幅のリスクを減らすための重要な活動です。

WHOは引き続き疫学的状況を監視し、最新の入手可能な情報に基づいてリスク評価をレビューします。入手可能な情報に基づいて、WHOは現在、全体的なリスクを全国レベルで高く、地域レベルで中程度、世界レベルで低いと評価しています。
ナイジェリアは、伝播型ワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV)、麻しん、サル痘、ラッサ熱、コレラのアウトブレイク、および北東部の人道危機など、いくつかの公衆衛生上の緊急事態に直面しています。

WHOからのアドバイス

黄熱は、感染した蚊によって伝播する急性ウイルス性出血性疾患であり、深刻な公衆衛生への影響を伴い、急速に広がる可能性があります。特定の治療法はありませんが、生涯免疫を提供する黄熱ワクチンの単回投与を使用して病気を予防できます。脱水、呼吸不全、発熱の治療には支持療法が必要です。関連する細菌感染症の治療には抗菌薬が推奨されます。
強化したサーベイランスによる黄熱の早期発見と調査は、黄熱のアウトブレイクのリスクを制御するためのカギとなります。蚊に刺されないようにすること(忌避剤、長い服を着るなど)は、黄熱の伝播のリスクを減らすための追加的な手段となります。都心部では、標的を絞ったベクターコントロール対策も伝播を遮断するのに役立ちます。

ナイジェリアでは黄熱ウイルスの持続的又は定期的な伝播があることが証明されているので、WHOはナイジェリアに行く9か月以上のすべての渡航者に黄熱の予防接種を推奨しています。ナイジェリアは、黄熱感染のリスク国から到着した1歳以上の渡航者に対して、黄熱予防接種証明書を求めています。(原文ママ)

WHOが承認した黄熱ワクチンは、安全で非常に効果的であり、感染に対する生涯にわたる保護を提供します。国際旅行の観点からは、国際保健規則(IHR 2005)の附属書7の修正により、黄熱に対する予防接種に関連した国際証明書の有効期間と、黄熱感染に対する予防接種による保護期間が10年から生涯に変更されています。したがって、2016年7月11日の時点で、既存または新規の証明書の両方に関して、国際予防接種証明書が最初に発行された日付に関係なく、WHO加盟国への入国条件として、渡航者にワクチンの再接種又は追加接種を要求することはできません。

2019年7月1日に、WHOは黄熱の伝播の危険にさらされている地域と、海外旅行者の予防接種に対応する勧告を更新しました。危険にさらされている国のリスト、および黄熱に対する予防接種の改訂された推奨事項は、WHOのWebサイト{International travel and health(ITH)}で入手できます。

WHOは、加盟国に対し、リスク及び予防接種といった予防策について、渡航者に十分な情報を提供するよう、必要なすべての活動をとるように奨励しています。渡航者は黄熱の兆候や症状を認識できるようにされるべきであり、病気の兆候が現れた場合には速やかに医学的助言を求めるよう説明されているべきです。ナイジェリアに帰国する旅行者のうち、高レベルの血中ウイルスに感染している可能性のある者は、伝播する能力を持つベクターがいる地域で、黄熱の伝播の地域の循環を構築してしまう可能性があります。

WHOはこのアウトブレイクに関して入手可能な情報に基づき、いかなる旅行又は貿易の制限をナイジェリアに適用することを推奨しません。

出典

Yellow fever - Nigeria
Disease outbreak news: update   17 December 2019
https://www.who.int/csr/don/17-december-2019-yellow-fever-nigeria/en/