デング熱–アフガニスタン

Disease outbreak news   2019年12月13日

2019年5月1日、パキスタンとインドでデング熱の患者が増えていることに対応して、アフガニスタンの保健当局はデング熱のモニタリングを強化しました。 この警戒強化の一環として、カブールの中央公衆衛生研究所(CPHL)は、クリミア・コンゴ出血熱(CCHF)陰性の検体について、デング熱が陽性かどうか検体をレビューするといった、デング熱の疑い症例の検出のための調査を拡大しました。

クリミア・コンゴ出血熱(CCHF)が陰性であると試験された40のサンプルに対して鑑別診断と検査を実施しました。2019年10月1日から12月4日の間に、CPHLによるデング熱の検査で40のサンプルのうち14(PCRで13例、IgMで1例)例がデング熱検査陽性となりました。14例のデング熱確定例のうち、7例は流行国への旅行歴がなかったことから、おそらく自生例と考えられます。この自生の7例のうち1例は出血熱のために死亡しました。他の6人の患者はデング熱の流行国に旅行していました。パキスタンへ4人、インドへ2人です。患者1人については旅行歴が不明でした。14症例のうち12例(86%)は男性であり、21歳から55歳までの方でした。

14症例は6つの州から報告されました:ファーリヤーブ州(Faryab)(1症例)、カブール州(Kabul)(3症例)、およびパキスタンに隣接し、デング熱の大きなアウトブレイクが進行中である4州。:パクティカ州(Paktita)(原文ママ)(1症例);ラグマーン州(Laghman)(1症例);パクティア州(Paktya)(2症例);ナンガルハール州(Nangarhar)(6症例)。
これはアフガニスタンにおける自生のデング熱感染(地域のなかで感染したことを意味する)の最初の報告となります。デング熱に関する以前の報告は流行国への旅行歴がある患者のものでした。

2018年、ベクターのサーベイランスが初めて実施されました。当局は、ヤブカの分子細胞生物学的な確認を行うために、東アフガニスタンのホースト州から6つの蚊のサンプルをシンガポールのWHOコラボレーションセンターに送りました。それらのうち4つはAedes albopictus(ヒトスジシマカ)であることがわかりました。ホースト州とナンガルハール州からヤブカの追加のサンプルが収集され、形態学的にヒトスジシマカとAedes aegypti(ネッタイシマカ)であることがわかりました。

公衆衛生上の取り組み

・現在のデング熱の状況に対処するため、2019年11月25日に副大臣をトップとするハイレベルの緊急の会合が開催されました。
・公衆衛生省は次の事項を含む対応のための活動のためのポイントを起案しました。高リスク地域を特定するための国のマラリア及びリーシュマニア症対応プログラムとの連携、デング熱のサーベイランス(ベクターの監視、デング熱の検査室での検査の実施、症例の管理、即応チームの派遣を含む)です。
・WHOアフガニスタン事務所は公衆衛生省と協力して、デング熱に関する国家計画を策定しているところであり、2020年の最初の四半期にベクターコントロール活動を開始することを目指して、将来のモニタリング及びサーベイランスのために、診断されたすべての患者のマッピングを実施することにしています。
・症例の定義と診断治療のためのガイドラインの作成について、WHOは公衆衛生省を支援しているところです。
・WHOはベクターのサーベイランス計画を提案し、ホースト州においてさらなるベクターの監視が進められています。これはより良い対応をするために必要な支援を実施することにつながります。

WHOによるリスク評価

デング熱は、蚊が媒介し流行する病気であり、公衆衛生に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

アフガニスタンで自生の感染が報告されたのは今回が初めてです。この病気は深刻な公衆衛生への影響を踏まえると懸念すべき要因となります。

アフガニスタンでは、継続的な紛争、頻繁な自然災害、繰り返される人々の移動、多数傷病者が発生する事案、そして地域の感染症アウトブレイクによって、折り重なった人道的緊急事態が発生しています。2018年のアフガニスタン健康調査によると、30分以内にプライマリヘルスケア施設(PHC)を受診することができるのは人口の57%であり、のべ2時間かけて受診することができるのは人口の90%です。また、国はデング熱のアウトブレイク及び制御する能力が限定的である状態が続いています。

流行した6つの州における自生のデング熱の患者は、これまでにはウイルスが記録されたことがないアフガニスタンの他の地域にリスクをもたらします。雨季に多数人口が移動することは、現在のデング熱のアウトブレイクを蔓延させたり激化させる可能性を高めます。
アフガニスタンにおいて効果的な制御プログラムが策定されていないことは、アウトブレイクを抑制するためには、アフガニスタンの取り組みが容易でないことを示しています。ホースト州とナンガルハール州の現在の冬の状況は、蚊の繁殖を抑制し、伝播のリスクを減らすことが見込まれます。しかしながらヒトスジシマカは、温帯に分布する種で、寒冷抵抗性の卵で、越冬する能力があります。

WHOからのアドバイス

病気に対して特別な治療法がないので、予防はデング熱の感染のリスクを減らすための最も効果的な方法です。デング熱ウイルスの伝播を制御又は防止する主な方法は、次に示す活動によってベクターである蚊を撲滅することを目的としています。

・環境管理及び改良(発生源を除去及び薬剤による駆除)によって蚊が産卵する場所を減らすこと
・固形のごみを適切に廃棄し、人為的に作ってしまう生息地を除去すること
・家庭用の水貯蔵容器をカバーをかけること、空にすること、清掃すること
・洗浄できない屋外の水貯蔵容器に適切な殺虫剤を使うこと
・防虫剤、網戸、長袖の衣類、蚊帳、殺虫剤で処理された材料、蚊取り線香、液体蚊取り器といった個人及び家庭用の蚊よけの道具を使うこと。防虫剤は、露出した皮膚または衣服に用いるべきです。
・住民の意識を高め、住民活動への参加を促して、持続的なベクターの制御に参加させること
・緊急時のベクターの制御の手段として、アウトブレイク中に殺虫剤を散布すること
・ツールを用いて積極的なベクターの監視及び調査をすること。これは有効性を判断するためすべきことです。
・デング熱の患者を注意深く、医療的に発見し管理すること。これによってデング熱の重症化を防ぎ死亡率を大幅に減らすことができます。

WHOは、現在、得られることのできる情報に基づき、アフガニスタンへ又はアフガニスタンからの旅行又は貿易のいかなる制限も適用することは推奨しません。

出典

Dengue fever ― Afghanistan
Disease outbreak news   13 December 2019
https://www.who.int/csr/don/13-december-2019-dengue-afghanistan/en/