中国の武漢における肺炎の集団発生に関するWHO声明

2020年1月9日声明

中国当局は、武漢において肺炎で入院している患者で同定されたものは、新しいコロナウイルスであると予備的(preliminary)に決定をしました。中国の研究者は、1人の陽性患者の検体の分離株を用いてウイルス遺伝子の全体の塩基配列を明らかにしました。迅速に新規のウイルスを予備的(preliminary)に同定したことは貴重な成果であり、中国における新たなアウトブレイクへの対処能力の向上を示しています。

先週に中国当局から提供された武漢肺炎の症例に関する当初の情報(感染者の職業、場所、症状)から、集団発生を起こしうる病原体としてコロナウイルス(CoV)が示唆されました。その後、中国当局は検体検査にて、SARS-CoV、MERS-CoV、インフルエンザウイルス、鳥インフルエンザウイルス、アデノウイルス、及びその他の一般的な呼吸器感染を起こす病原体を除外したと報告しました。

コロナウイルス科のウイルスは、風邪などの重症化しづらい疾患とともにMERSやSARSなどの重症化する疾患の原因となるウイルスです。人から人へ伝播しやすいものもあれば、そうでないものもあります。中国当局によると、問題となっているウイルスは、患者によっては重症となりうるものであるとともに人々の間で容易に伝播はしないとのことです。

世界的には2002年のSARSや2012年のMERSなど、さまざまな分野で新しいコロナウイルスが定期的に発生しています。いくつかの既知のコロナウイルスは動物の間で伝播しており、人には感染していません。サーベイランスが向上することに併せて、コロナウイルスがより多く同定されやすくなります。

中国には、呼吸器疾患のアウトブレイクに対応し管理するためのしっかりとした公衆衛生の能力と資源があります。患者を治療するとともに疑い患者を隔離することに加えて、公衆衛生当局は、接触者の追跡調査、海産物市場での環境評価の実施、アウトブレイクの原因となっている病原体を同定するための調査に引き続き注力しています。

一連の状況の情報、アウトブレイクの疫学情報、臨床像を把握するために、より包括的な情報が今後の数週のうちに必要となります。発生源、伝播の様式、感染の程度及び対策を決定するには、さらなる調査も必要です。WHOは引き続き状況を注意深くモニターし、パートナーとともに、アウトブレイクを調査して対応するべく、中国に技術支援を提供する用意があります。

新しいウイルスが予備的(preliminary)に決定されたことは、各国の当局が病気を検知し対応することに役立ちます。この1週間で、肺炎の症状があり、武漢への旅行歴があると報告された人々がいくつかの国際空港で発見されました。

WHOは、旅行者に対して特段の対策(一般的な感染予防のための対応を超える特別な対策)を推奨していません。WHOは現在入手可能な情報に基づき、中国への渡航や貿易に対していかなる制限も行わないよう勧告します。

出典

WHO Statement Regarding Cluster of Pneumonia Cases in Wuhan, China
Statement|China  9 January 2020
https://www.who.int/china/news/detail/09-01-2020-who-statement-regarding-cluster-of-pneumonia-cases-in-wuhan-china