新型のコロナウイルスのアウトブレイクに関するIHR(国際保健規則)緊急委員会に関する声明

原文の公表は1月23日です。最新の情報を確認してください。

2020年1月23日 WHO Statement

中国及び韓国、日本、タイとシンガポールでの輸出例を含む新型コロナウイルスのアウトブレイクに関して、国際保健規則(IHR)の下でWHO事務局長が招集した緊急委員会の会議を2020年1月22日水曜日の12:00~16:30、23日木曜日の12:00~15:10(ジュネーブ時間)に開催しました。この委員会の役割はPHEIC(国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)の決定に関して、最終決定を行う事務局長に助言を与えることです。また委員会は、必要に応じて公衆衛生に関するアドバイスを提供したり、公式に一時的な推奨事項を提案したりします。

会議の議事録

緊急委員会のメンバーとアドバイザーは、電話会議によって招集されました。

事務局長は委員会を歓迎し彼らの支援に謝意を示しました。彼は会議を議長のDidier Houssin教授に引き渡しました。

Houssin教授も委員会の開催と進行を受けいれ事務局に発言権を与えました。

1月22日時点のWHOの法務部門とコンプライアンス、リスク管理、および倫理の部門の代表者が、委員会のメンバーにその役割と責任について説明しました。

委員会のメンバーは、機密保持の義務と、利益相反とみなされる可能性のある個人的、経済的、または専門的なつながりを開示する責任をリマインドされました。出席した各メンバーは調査を受けて、会議に関連する利益相反は無いと判断されました。

その後、議長は会議の議題を見直し、発表者を紹介しました。

1月23日、中国、日本、タイ、および韓国の保健省の代表者は、自国の状況に関する委員会を更新しました。中国では報告された症例数が増えており、今日時点では557人が確認されています。

結論とアドバイス

1月22日時点で、緊急委員会のメンバーはこのイベントがPHEICに該当するかどうかについて異なる意見を表明しました。この時点でのアドバイスとしては、当該イベントはPHEICに該当しないというものでした。しかしながら、委員会メンバーは状況の緊急性について一致した見解であり、状況をさらに調査するために数日以内に委員会を再招集することを提案しました。

1月22日に武漢で新たな封じ込め措置が発表された後、事務局長は1月23日に緊急委員会に再招集し、最新の疫学的な展開となされたリスク管理対応に関して中国当局から提供された情報を調査するよう求めました。

中国当局は、症例数、疑い症例数、流行している省が増加していること、そして現在報告されている症例において死亡率が4%(557人中17人)であることを示す新しい疫学情報を発表しました。また、武漢の四次感染の症例と武漢ではない地域の二次感染の症例及び湖北省ではない地域のいくつかの集団発生を報告しました。そして、強力な封じ込め策(武漢市および他の近隣都市の公共交通システムの閉鎖)をとることを説明しました。このプレゼンテーションの後、緊急委員会は日本、韓国、タイの展開について情報を得るとともに、シンガポールで新たな1つの疑い例があることを伝えられました。

委員会は、中国が現在のアウトブレイクを調査し封じ込めるために努力をしていることを歓迎しました。

次に示す事項が重要と見なされました。

ヒトからヒトへの感染がアウトブレイクしており、1.4~2.5の暫定的なR0推定値(1人の感染者が平均何人に感染症を引き起こすか)が提示されました。ある医療施設で増幅が起きていました。確定例のうち25%が重症であると報告されています。発生源は依然として不明であり(動物の可能性が最も高い)、ヒトからヒトへの伝播の程度はまだ明らかではありません。

数名のメンバーは、制限的かつ片が付かない状況でPHEICを宣言するのはまだ早すぎると考えました。

これらの異なる見解に基づいて、緊急委員会は次のアドバイスを策定します。

WHOに対して

約10日後または事務局長が必要と判断した場合にはそれ以前に、委員会を再召集する準備が整っています。

委員会は、国内の専門家を含むWHOの国際的な学際的ミッションを通じて進行中の取組を支援するよう促しました。このミッションは、アウトブレイクの動物源、ヒトからヒトへの感染の程度、中国の他の省でのスクリーニングの取組、これらの地域における重度の急性呼吸器感染症のモニタリングの強化、および封じ込めと緩和策を強化することになるでしょう。ミッションは状況とその潜在的な公衆衛生への影響の理解を支援するために、国際社会に情報を提供します。

WHOは、このアウトブレイクに対応するために必要なすべての技術的および運用上のサポートを、広範なパートナーネットワークを含む包括的なリスクコミュニケーション戦略を実施するための協力機関に引き続き提供すべきです。そうすれば、新型コロナウイルスに関する研究と科学的発展の進歩を可能にするでしょう。

展開する疫学的状況とPHEICを宣言するかどうかの制限的でどちらともつかない状況に直面することになり、WHOは中間レベルのアラートが許可されるようなより細やかなシステムを検討すべきです。そのようなシステムであれば、アウトブレイクの重大度、その影響、および必要な対策をよりよく反映し、医療対策を開発するための研究努力を含む国際的な調整の改善を促進します。

中国に対して

・国家、州、および都市レベルの危機管理システム、およびその他の国内対策を含む、政府間のリスク管理対策に関する詳細情報を提供してください。
・現在のアウトブレイクの抑制と被害の緩和のための合理的な公衆衛生対策を強化してください。
・特に中国の旧正月のお祝いの際に、中国全土で監視と積極的な症例発見を強化してください。
・WHOおよびパートナーと協力して、この新型コロナウイルスの疫学と進化を理解するための調査を実施してください。これには、新型コロナウイルスの原因、特に動物の地域での生息、人獣共通感染に関与する動物の把握、ヒトからヒトへの感染の可能性、感染がアウトブレイクしている場所、感染に関連する臨床的特徴、罹患率と死亡率を減らすために必要な治療が含まれます。
・遺伝子の塩基配列、医療従事者の感染及び集団発生の詳細などの全ての症例に関する完全なデータをWHOと引き続き共有してください。
・国際交通への干渉を最小限に抑えながら、さらなる評価と治療のために症状のある旅行者を早期に発見することを目的として、流行地域の国際空港と海港で出国時スクリーニングを実施してください。
・必要であれば、国内の空港、駅、長距離バス停でのスクリーニングを奨励します。

他の国々に対して

さらなる国際的な症例の輸出がどの国でも現れることが予想されます。したがって、積極的なサーベイランス、早期発見、隔離と症例管理、接触追跡と新型コロナウイルスの伝播の防止などについて、すべての国が封じ込めの準備を整えるべきです。そしてすべてのデータをWHOと共有すべきです。

IHR(国際保健規則)に従って、各国はWHOと情報を共有する必要があります。

技術的なアドバイスはこちらから入手できます。各国は、人の感染を減らし、二次感染と国際的な広がりを防止し、多分野にわたるコミュニケーションと協力を通じて、国際的な対応に貢献することに特に重点を置くべきです。各国はまた、WHOの旅行に関するアドバイスに従うべきです。

グローバルコミュニティに対して

これは新しいコロナウイルスであり、同様のコロナウイルスは定期的な情報共有と研究に多大な努力を必要とすることが以前に示されています。したがって、グローバルコミュニティはIHR(国際保健規則)の第44条に従って、連帯と協力を引き続き実行すべきです。この新しいウイルスの感染源の特定、ヒトからヒトへの感染の強さ、潜在的な患者の輸入の備え、必要な治療法を開発するための研究について、相互に支援すべきです。

事務局長は、委員会の助言に謝意を表しました。

出典

WHO Statement 23 January 2020
Statement on the meeting of the International Health Regulations (2005) Emergency Committee regarding the outbreak of novel coronavirus (2019-nCoV)
https://www.who.int/news-room/detail/23-01-2020-statement-on-the-meeting-of-the-international-health-regulations-(2005)-emergency-committee-regarding-the-outbreak-of-novel-coronavirus-(2019-ncov)