新型コロナウイルスのアウトブレイクについての国際渡航と貿易に関するWHOの助言を更新

WHO International travel and health 2020年1月24日

<原文の公表は2020年1月24日です。最新の情報を確認してください。>

これは、2020年1月10日にWHOが発行した、新型コロナウイルスのアウトブレイクに関するWHOの助言を更新したものです。10日以降、武漢市に関連する渡航症例がいくつかの国で報告されています。現時点での中国におけるアウトブレイクと輸出症例の詳細については、WHOが公表するアウトブレイクニュースと状況報告書を参照してください。

これまでのところ、このアウトブレイクで報告された主な臨床徴候と症状には、発熱、呼吸困難、および両側肺浸潤を示す胸部レントゲン写真が含まれます。2020年1月24日の時点で、おおむね武漢市においてヒトからヒトへの感染が確認されていますが、中国国内や国外の他の場所でも確認されています。新型コロナウイルスの疫学に関して、疾患の完全な臨床的特徴、ヒトからヒトへの感染のしやすさの強度、アウトブレイクの発生源について、決定的な結論を得るには十分ではありません。

海外旅行者:通常の予防策を実践してください

コロナウイルス科のウイルスは、一般的な風邪から中東呼吸器症候群(MERS)や重症急性呼吸器症候群(SARS)にわたる疾患を起こしうる呼吸器ウイルスの大きなファミリーです。旅行前、旅行中又は旅行後に呼吸器疾患を示唆する症状がある場合、旅行者は医師の診察を受け、旅行歴を医療提供者と共有することが推奨されます。

公衆衛生当局は、医療従事者、旅行診療所、旅行代理店、運送業者、および入国地点において、急性呼吸器感染症の一般的なリスクを減らすために、旅行者に情報を提供すべきです。
一般の方々向けのWHOの標準的な推奨事項は次のとおりであり、さまざまな病気への暴露と伝播を減らすことができます。これには、手指衛生および呼吸器衛生(咳エチケットなど)、安全な食品の慣行が含まれます。

・アルコール手指消毒剤または石鹸と水を使用して、頻繁に手を洗います。
・咳やくしゃみをするときは、曲げた肘やティッシュで口と鼻を覆います。その後、すぐにティッシュを捨てて、手を洗ってください。
・発熱や咳がある人との近距離でのやりとり(接触)を避けてください。
・発熱、咳、呼吸困難がある場合は、早期に医療機関を受診して、以前の旅行歴を医療提供者と共有してください。
・現在、新型コロナウイルス患者がアウトブレイクしている地域のライブマーケット(生きた動物を扱っている市場)を訪問する場合、生きている動物や動物と触れるものの表面との直接的で無防備な接触を避けてください。
・生または調理が不十分な動物製品を食べることは避けるべきです。生の肉、牛乳、または動物の臓器は、良好な食品安全のルールや手法に従って、未調理の食品を汚染しないように注意して取り扱われるべきです。

WHOウェブサイトでは技術的な文書を入手することができます。サーベイランスと症例定義に関するWHOの技術ガイダンス、検査機関ガイダンス、新型コロナウイルス感染症を疑ったときの臨床管理、新型コロナウイルス感染症を疑う患者の在宅ケア、感染予防と制御、リスクコミュニケーション、疾病対策に有用なパッケージ(専門家チームの取組、外部パートナーとの連携等)、動物から人への感染リスクを減らすことについて。
 

国際交通に関連した健康対策

現在のアウトブレイクは、国内および国際的な主要な輸送の結節点(ハブ)である武漢市で発生しました。1月の最後の週にある旧正月に大幅に増加すると見込まれる大規模な人口移動と、ヒトからヒトへの感染が観察されていることを考慮すると、新たな確定例が他の地域や国で、継続的に発生することは予想外のことではありません。

WHOは、新型コロナウイルスに関する現在入手可能な情報に基づき、できる限り国際交通の不必要な制限をしないで、病気の輸出または輸入のリスクを減らすための措置を実施すべきであると助言します。

中国当局によると、1月25日から中国で始まる春祭りの期間中、すべての不必要または重要でない大規模な集会を開催することは認められないことになりました。

新型コロナウイルスの感染が進行している国または地域(現在は中国)での出国時スクリーニングに関する助言

・症状のある旅行者を早期に発見し、評価と治療を行い、病気の輸出を防ぐことを目的として、国際交通への干渉を最小限に抑えながら、流行地の国際空港と港で出国時スクリーニングを実施します。
・出国時スクリーニングには、兆候と症状(38度を超える発熱、咳)の有無を確認すること、
流行地や汚染地域から移動してきた高リスクの接触または推定される動物の感染源への潜在的な暴露に関して、呼吸器感染症の症状がある乗客への聞き取りが含まれます。そして、症状を示した旅行者には、さらなる健康診断を指示し、新型コロナウイルスの検査をして、陽性が確認された患者を隔離し治療を受けてもらいます。
・必要であれば、国内の空港、鉄道の駅、長距離バスの駅でのスクリーニングを奨励します。
・確定患者と接触したか、潜在的な感染源に直接的さらされた旅行者は、医学的観察のもとに置かれるべきです。リスクの高い接触者は、潜伏期間(最大14日間)に旅行することを避けるべきです。
・出入国地点では、急性呼吸器感染症の一般的なリスクを減らし、必要な対策の意識を高めるために、健康情報のキャンペーンを実施します。そして、旅行者が新型コロナウイルスの感染を示唆する兆候や症状が出現したときに、どのように支援を得ることができるかの意識を高めます。

新型コロナウイルスの伝播がない国/地域での入国時のスクリーニングに関する助言

・これまでに得られた証拠から、入国時に潜在的な疑い患者を検出するための温度によるスクリーニングは、症状が出ていない旅行者や旅行中に熱をマスクさせている(解熱させている)旅行者を見逃す可能性があり、かなりの投資を必要とする可能性があることを示しています。しかしながら、現在の新型コロナウイルスのアウトブレイクの間には、輸出症例の大部分は入国スクリーニングによって検出されました。入国時の温度によるスクリーニングが、症状のある乗客の早期発見と医学的フォローアップのための紹介につながるのであれば、病気の輸入のリスクを減らす可能性があります。
・入国地点において、温度によるスクリーニングを実施するときには、リスクコミュニケーションのメッセージの普及が常に伴うべきです。ポスター、リーフレット、電子掲示板などを通じて行うことができます。病気の兆候や症状に関する旅行者の意識を高め、医療を求めるタイミングや旅行履歴の報告などを含めた、医療に対する適切な行動を促すことを目的とします。
・温度によるスクリーニングを実施している地域では、データの収集と分析のための適切なメカニズムを確立することが推奨されます。例えば、スクリーニングした乗客数、スクリーニング後に確認された、そして選別方法です。入国時のスクリーニングを実施する際、各国は国としての方針と対応能力を踏まえて検討すべきです。
・公衆衛生当局は、機内でのケース管理と報告のために、航空会社との協力を強化すべきです。呼吸器疾患の症状がある旅行者が検出された場合には、機内での感染症の疑い例を管理するための客室乗務員向けのIATAガイダンスに従うべきでしょう。

飛行機内で発見された病気の旅行者の手続きと、入国地点でのIHR能力の要件に関しては、以前のアドバイスは変更されていません。(2020年1月10日に発行されたWHOアドバイスを参照)。
WHOはこのイベントに関して、現在入手可能な情報に基づき、渡航や貿易に対していかなる制限を行わないよう勧告します。

出典

WHO International travel and health 24 January 2020
Updated WHO advice for international traffic in relation to the outbreak of the novel coronavirus 2019-nCoV
https://www.who.int/ith/2020-24-01-outbreak-of-Pneumonia-caused-by-new-coronavirus/en/