エボラウイルス病-コンゴ民主共和国(更新)2020年1月23日付け

Disease outbreak news:更新  2020年1月23日

9人の新規確定例が1月15日から21日までに、現在も続いているコンゴ民主共和国のエボラウイルス病のアウトブレイクから報告されました。症例は全て北キブ州(Kivu)のベニ(Beni)保健区域から報告されました。症例のうち8人は症状が出現する以前に登録されていた接触者です。9人は全て、確定例との疫学的な関連があります。

過去21日間(2020年1月1日から1月21日)に、35人の確定例が北キブ州とイトゥリ州(Ituri)の5つのアウトブレイクが激化している保健区域内の、11の保健地域から報告されました(図1、図2、表1)。内訳はベニ(n=14)、マバラコ(Mabalako)(n=11)、ビュトンボ(Butembo)(n=5)、マンバサ(Mambasa)(n=4)、ミュジヤンエーヌ(Musienene)(n=1)です。ベニとマバラコの各保健区域は依然として現在もアウトブレイクのホットスポットであり、過去21日間の確定例の71%を報告しています。過去21日間のエボラウイルス病確定例の35人のうち、24人は隔離され、症状が出現したあとの最初の2日間以内に治療を受けています。これはその患者たちが生存する可能性が高まり、コミュニティ内の接触者に感染する可能性が低いことを意味します。過去21日間で、1人のエボラウイルス病確定例のみがコミュニティ内、エボラ治療センター外で死亡しました。

この数週間の間に、確定例との接触者は、食料やその他の必需品が供給される、確定済みのエボラウイルス病の接触者に割り当てられる支援的宿泊施設に宿泊する選択肢を提案されました。これにより、接触者の系統的な日々の経過観察が可能になり、また症状を示した接触者に対する早急な隔離と治療の提供が可能になります。結果として、過去21日間の隔離までの時間の中央値は、3日から1日に短縮しました(四分位範囲 0-3)。

各週に報告された新規確定例の人数は、過去6週に渡り安定した状態を保っていて、週に約14人のエボラウイルス病の新規症例が報告されています。加えて、接触者として名簿に載せられている症例の割合、検出の前にフォローされている症例の割合、症例の隔離までの時間の短縮といったサーベイランスの指標の改善は、好ましい兆候を示しています。

1月21日の時点で、3297人の確定例と119人の高度疑い例を含む、合計3416人のエボラウイルス病の症例が報告されていて、そのうち2238人が死亡しました(全体の症例致死率66%)(表1)。確定例と高度疑い例の総数のうち、56%(n=1912)が女性で、28%(n=963)が18歳未満の小児、報告された症例の全体のうち5%(n=172人)が医療従事者でした。

現在続いている伝播の鎖の分析

1月21日の時点で、現在の伝播の鎖は6の保健区域の13の保健地域から報告された82の確定例と高度疑い例から成っています。内訳はマバラコ、ベニ、ビエナ(Biena)、ビュトンボ、カトワ(Katwa)、ミュジヤンエーヌの各保健区域です。伝播の鎖は、マバラコ保健区域のアロヤ保健地域で、エボラウイルス病の再発として分類された1人の人に由来しています(Disease Outbreak News published on 19 December 2019で最初に報告された症例)。このアウトブレイクで記録されている最初の再発例であり、また唯一の再発例であるこの人物は、2019年6月に感染し、11月に再発し、12月に死亡しました。

さらなる分析からは、この人は隔離される前の9日間の、コミュニティ内で症状が出現していた間に29人の人々に直接的に感染させました。この症例から直接的に感染したこれらの症例は、29人のうち11人が院内感染である可能性があります。残りの52人の症例は、以降の伝播に由来しています。

この伝播の鎖の中の症例に曝露した場所に関する、利用可能な情報に基づくと、主な牽引役となったのは、症例の隔離の遅延(50%, 41/82)、院内感染の可能性(37%, 30/82)、葬儀の間に症例が曝露したコミュニティ内死亡(2%, 2/82)によるコミュニティの中で曝露した人々です。この伝播の鎖の中の、感染しやすい集団における単一の感染により生じた二次症例の、推定される人数である推定再生産数は、アロヤ保健地域に由来した伝播の鎖において標本数が限られている傾向があるため、全体の平均の再生産数から統計学的な有意差はありませんでした。これらの知見は症例の早期の同定と、安全で尊厳のある埋葬の重要性を強調しています。

図1:2020年1月21日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例と高度疑い例のデータ*

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*2020年1月21日時点で報告された、3416人の確定例および高度疑い例。発症日が報告されていないn=169の症例は除外します。ここ数週間のデータは、症例の確認と報告、現在進行中のデータクリーニングの遅延の影響を受けます。その他の保健区域には、アリムボンゴ(Alimbongo)、アリワラ(Ariwara)、ブニア(Bunia)、ゴマ(Goma)、カイナ(Kayna)、コマンダ(Komanda)、キョンド(Kyondo)、ロルヴァ(Lolwa)、ルベロ(Lubero)、マンディマ、、マングルジパ(Manguredjipa)、マセレカ(Masereka)、ムトワンガ(Mutwanga)、ムウェンガ(Mwenga)、ニャンクンデ(Nyankunde)、ニーラゴンゴ(Nyiragongo)、オイチャ(Oicha)、パンガ(Pinga)、ルワンパラ(Rwampara)、チョミア(Tchomia)、ヴホヴィ(Vuhovi)が含まれます。

図2:2020年1月21日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例および高度疑い例*


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表1:2020年1月21日時点の保健区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、被害を受けた保健地域の数**

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**過去21日間に発生した症例と被災した地域は症例警報の日付に基づいており、確定日及び保健省による毎日の報告とは異なる場合があります。
 

公衆衛生上の取り組み

保健省、WHO、パートナーによる公衆衛生上の取り組みに関するさらなる情報は、WHOアフリカ地域事務局が発表した最新の状況報告をご参照ください。
エボラ状況報告書:コンゴ民主共和国

WHOによるリスク評価

WHOは、対応支援が変化を続ける状況に適応できているかを確認するべく、疫学的状況の変化とアウトブレイクの状況を継続的に観察しています。直近の評価では国内および地域でのリスクレベルは非常に高いままで、国際的なリスクレベルは低いままであると結論付けられました。

WHOからのアドバイス

WHOは現在入手可能な情報に基づき、コンゴ民主共和国への渡航や貿易に対していかなる制限も行わないよう勧告します。国境を越えた移動や影響を受けた国への/国からの渡航者にビザの発給の制限の基準として、エボラワクチンの接種証明書を要求することは合理的ではありません。WHOは厳重な監視を継続し、必要であれば今回の事象に関連した渡航と貿易の措置を検証します。現在、コンゴ民主共和国との国際交通を著しく妨害するような渡航対策を実施している国はありません。渡航者は渡航前に医師の診察を受けるべきであり、良い衛生習慣を実践すべきです。さらなる情報は、「WHOの推奨するコンゴ民主共和国におけるエボラウイルス病アウトブレイクに関連した国際交通にについて」で確認可能です。

さらなる情報は下記をご覧ください。
 
 

出典

Ebola virus disease – Democratic Republic of the Congo
Disease outbreak news, 23 January 2020
https://www.who.int/csr/don/23-january-2020-ebola-drc/en/

翻訳

WHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)
https://extranet.who.int/kobe_centre/ja