黄熱-セネガル

Disease outbreak news  2020年12月29日

2020年10月から12月にかけて、セネガルの3つの地域の4つの保健地区から合計7人の黄熱病(YF)の確定症例が報告されています。発生地域の内訳として、タンバカウダ(Tambacounda)州キディラ(Kidira)保健地区の3つの地域からの確定症例4人、隣接するケドゥグー(Kedougou)州ケドゥグー保健地区からの確定症例1人、ケドゥグー州サラヤ(Saraya)保健地区からの確定症例1人、マタム(Matam)州ティロニュ(Thilogne)保健地区からの確定症例1人でした。
 
2020年10月18日、タンバクンダ(Tambacounda)州では、西ナイルウイルス感染症の調査中に、キディラ地方に住む40歳の女性からサンプルが採取されました。10月29日、Institut Pasteur de Dakar(IPD)はこの症例を黄熱病と確認しました。10月31日、IPDはキディラ保健地区のバケル保健地帯からの通知を受けて、2例目の黄熱病の確定症例の結果を国の保健当局に報告しました。症例はキディラ保健地区で発病し、10月31日に死亡した8歳の男児でした。11月12日、IPDは定期的なサーベイランスによって発見され11月5日に死亡した23歳の男性を3例目の確定症例として、国の保健当局に通知しました。11月16日には、キディラ保健地区の15歳の少年が4例目の確認症例として国の保健当局に報告されました。キディラ保健地区で報告された4人の患者のうち2人が死亡したのは、マタム地域病院とタンバクンダ地域病院の2つの病院でした。
 
ケドゥグー地域とマタム地域では、2020年12月に3人の確定症例が報告されており、それらのサンプルは様々な調査の中で採取されたものでした。
ケドゥグー地域では、IPDが実施した臨床検査の結果、地域から受け取った16のサンプルのうち、以下のものがあったことが判明しました。
・サラヤ地区在住の確定症例1人(ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、IgM陽性)
・ケドゥグー地区在住の確定症例1人(IgM陽性、プラーク低減中和テスト(PRNT)で確定)。および推定症例2人(IgM陽性、PRNT進行中)。
・マタム地域の確定症例1人(IgMとPRNTにより確定)
症例はティロニュ保健地区の90歳男性で、ダカールの民間診療所に入院しています。
 
キディラ保健地区での3例目の通知に先立って使用された戦略的リスク評価ツール(STAR:The Strategic Tool for Assessing Risks)では、黄熱病は「低」に分類され、小規模なアウトブレイクは見られるが、大規模なアウトブレイクではない可能性が高いとされています。

公衆衛生上の取り組み

保健省が迅速な対応を実施しています。推奨される対応活動には、地域住民の予防接種、サーベイランスの強化、リスクコミュニケーション、地域社会との連携、媒介生物の管理対策などがあります。ワクチンや運営のための追加的な金銭的な支援が国から要請される可能性があります。

WHOによるリスク評価

タンバカウダ(Tambacounda)州とケドゥグー(Kedougou)州で黄熱病患者が発生したことは、農村部でワクチンを接種していない人に黄熱病がヒト集団への感染拡大を助長する可能性を示しており、YFのリスクが高い地域に位置するすべての国において、高い集団免疫を維持することの重要性を示しています。最近の疫学調査では、非ヒト霊長類が生息するサバンナ地域に村々が存在することが報告されています。住宅地の郊外では、恒久的または一時的な水溜りが観察されています。
 
2007年、セネガルにて集団予防接種が行われましたが、国の東部では現在もなお黄熱病感染のリスクが高いと考えられます。特に農村部では野生の霊長類間での感染が持続するため、ワクチン接種を受けていない人は黄熱病への感染に対して脆弱な状態が続いています。また、感染した2つの地域へは容易に近づくことができず、ワクチン接種を促進する取り組みは困難となります。地域にある病院の集中治療室までは、道路事情が悪く、かつ地区から遠く(186km)離れています。影響を受けた地区は農村部であり、大部分が森林で構成されているため、媒介者を制御し、野生の霊長類とワクチン未接種の人を介した大規模な連鎖着的な複合感染を改善することが困難な状況です。
 
COVID-19のパンデミックは、医療システムへの負担が大きく、物理的な距離や地域社会の消極的な行動により、予防接種率を向上させる活動が思うように進まない可能性があります。予防接種サービスの中断は、たとえ短期間であっても、感染しやすい人の数を増やし、ワクチンで予防可能な病気のアウトブレイクの可能性を高めることになります。2020年12月27日現在、セネガルではCOVID-19の確定症例が18,523例、死亡例が387例報告されています。

WHOからのアドバイス

黄熱病は、感染した蚊によって感染する急性ウイルス性出血性疾患で、急速に拡大し、公衆衛生に深刻な影響を及ぼす可能性があります。特定の治療法はありませんが、黄熱ワクチンを単回接種することで予防することができ、生涯免疫力を維持することができます。脱水、呼吸不全、発熱を治療する対症療法、および合併する細菌感染症に対する抗菌薬による治療が推奨されます。
 
セネガルは、黄熱病疫病撲滅(EYE)戦略で優先順位の高い国とされています。2005年1月には、黄熱病ワクチンが定期接種に導入されました。ワクチン接種は、黄熱病の感染を防ぐための最も重要な方法です。WHOとその関係団体は、現在の流行を抑制し感染を阻止するために、都市の中心部に対する媒介生物の管理対策を実施し、地方自治体を引き続き支援します。
 
WHOは、セネガルに渡航する生後9ヶ月以上のすべての海外旅行者に黄熱病ワクチンの接種を推奨しています。また、セネガルでは黄熱病感染の危険性がある国からの9ヶ月以上の旅行者、および黄熱病感染の危険性がある国の空港で12時間以上乗り継ぎをした旅行者からは、黄熱病ワクチン接種証明書の提出が必要となります。
 
黄熱病ワクチンの接種は安全で効果が高く、生涯にわたって保護されます。国際保健規則(2005年)第3版に基づき、国際黄熱病ワクチン接種証明書の有効期限は接種者の寿命まで延長されます。黄熱病ワクチンの追加接種を入国の条件として海外旅行者に要求することはできません。
 
WHOは、COVID-19パンデミック時のワクチン接種活動のガイドラインを発表しており、現在、COVID-19パンデミック時の大量接種キャンペーンを実施するための具体的な運用ガイドラインを作成しています。状況が許す限り、EYE戦略によって黄熱病予防活動の迅速な再開を支援します。
 
WHOは加盟国に対し、ワクチン接種を含むリスクと予防策について旅行者に十分な情報を提供するために必要な措置を講じることを奨励しています。また、旅行者は黄熱病の兆候や症状に注意し、兆候が見られた場合は速やかに医師の診察を受ける必要があります。再発したウイルス感染者は、感染能力を持つ媒介者(霊長類や蚊)が存在する地域での黄熱病の局所的な感染サイクルを作り上げ、それを維持してしまう危険性があります。
 
今回の黄熱患者発生に関して入手した情報に基づく限り、WHOは、セネガルへの渡航および貿易を制限することは推奨していません。

出典

Yellow fever -Senegal
Disease outbreak news 29 December 2020
https://www.who.int/csr/don/29-december-2020-yellow-fever-senegal/en/