鳥インフルエンザA（H10N3）のヒト感染例報告-中国
2021年5月31日、中華人民共和国の国家衛生健康委員会は、鳥インフルエンザA(H10N3)に感染した患者が1名確認されたことを、WHOに通知しました。これは、鳥インフルエンザA(H10N3)に感染した世界初のヒト症例です。症例は江蘇省鎮江市在住の41歳の男性です。4月23日に発熱と嘔気を認め、4月28日に地域病院の集中治療室に入院しました。この症例は現在、安定した状態にあります。インフルエンザに関してWHOの協力機関である中国疾病予防管理センター内の国立インフルエンザセンターは、検体の遺伝子配列の同定と分析を終了し、鳥由来のインフルエンザA（H10N3）ウイルスが検出されたことを確認しました。
疫学調査では、この症例には発症前に家禽類との明確な接触歴はありませんでした。また、周辺地域や家禽類からも鳥インフルエンザA（H10N3）は検出されていません。濃厚接触者も発症していません。地域や国の評価によると、本症例は鳥からヒトへの偶発的な感染であり、ヒトからヒトへの感染が起こる可能性は低いと考えられます。
公衆衛生上の取り組み
中国政府は、以下のようなモニタリング、予防および感染制御の対策を講じています。
・感染源についてのさらなる疫学調査
・発熱症例のモニタリングを含む監視体制の強化、患者住居を含む環境の消毒
・接触者の追跡と管理
・情報発信による公共への感染リスクの周知と感染予防の促進
・感染源についてのさらなる疫学調査
・発熱症例のモニタリングを含む監視体制の強化、患者住居を含む環境の消毒
・接触者の追跡と管理
・情報発信による公共への感染リスクの周知と感染予防の促進
WHOのリスク評価
今回の症例は、鳥インフルエンザA（H10N3）のヒトへの感染が初めて検出されたものです。これまでに、2013年後半から2014年前半にかけて、オーストラリアとエジプトにおいて鳥インフルエンザA（H10N7）のヒト感染例が報告され、中国では鳥インフルエンザA（H10N8）のヒト感染例が計3名報告されました。標的を絞ったサーベイランスにおいて、鳥インフルエンザA（H10N3）ウイルスは鳥から検出されていますが、鳥類間でのウイルスの流行の範囲や疫学は不明です。これまでに発見された鳥インフルエンザA（H10Nx）ウイルスとの違いを調べるため、現在、遺伝的、抗原的な特性の研究が行われています。
これまでに報告されている鳥インフルエンザウイルスのヒト感染例のほとんどは、感染した家禽類との接触や汚染された環境への暴露によるものでした。A（H10Nx）型を含む鳥インフルエンザウイルスが家禽類から引き続き検出されていることから、今後も散発的にヒト感染が起こる事が予測されます。現在得られている疫学的情報によると、鳥インフルエンザA（H10Nx）ウイルスは、ヒト－ヒト感染を持続的に生じさせる能力は獲得しておらず、ヒトへの感染拡大の可能性は低いと考えられます。仮に感染者が国外に移動した場合、渡航中およ び渡航後に別の国で発見される可能性があります。もしそのような事態が発生した場合でも、地域レベルで感染が広がる可能性は低いと考えられます。さらなる疫学的、ウイルス学的情報が得られた場合は、必要に応じてリスク評価が再度行われる予定です。
これまでに報告されている鳥インフルエンザウイルスのヒト感染例のほとんどは、感染した家禽類との接触や汚染された環境への暴露によるものでした。A（H10Nx）型を含む鳥インフルエンザウイルスが家禽類から引き続き検出されていることから、今後も散発的にヒト感染が起こる事が予測されます。現在得られている疫学的情報によると、鳥インフルエンザA（H10Nx）ウイルスは、ヒト－ヒト感染を持続的に生じさせる能力は獲得しておらず、ヒトへの感染拡大の可能性は低いと考えられます。仮に感染者が国外に移動した場合、渡航中およ び渡航後に別の国で発見される可能性があります。もしそのような事態が発生した場合でも、地域レベルで感染が広がる可能性は低いと考えられます。さらなる疫学的、ウイルス学的情報が得られた場合は、必要に応じてリスク評価が再度行われる予定です。
WHOからのアドバイス
今回の症例の発見は、インフルエンザの公衆衛生対策およびサーベイランスに関するWHOの現行の勧告を変更するものではありません。動物の市場や農場、生きた家禽などリスクの高い環境や、家禽や鳥の排泄物で汚染された可能性があるものとの接触を避けるべきです。頻回の手洗いや、アルコールの手指消毒剤を使用するなどの手指衛生が推奨されます。WHOは、旅行者に対して特別な対策を推奨しておらず、現在得られている情報に基づき、旅行や貿易の制限を行わないように助言しています。
インフルエンザウイルスは常に進化し続けているため、WHOは、人（または動物）の健康に影響を及ぼす可能性のある循環型インフルエンザウイルスに関連したウイルス学的、疫学的、臨床的変化を検出するための世界的なサーベイランスと、リスク評価のための即時的なウイルス共有の重要性を強調し続けています。
新型インフルエンザウイルスによるヒトへの感染は、国際保健規則（IHR）に基づき、全て通知されます。IHRの加盟国は、パンデミックを引き起こす可能性があるA型インフルエンザウイルスによるヒト感染が確認された場合は、直ちにWHOに通知することが義務付けられています。今回の報告では、疾病のエビデンスはありません。全てのヒト感染例に対して、徹底した調査が不可欠です。
インフルエンザウイルスは常に進化し続けているため、WHOは、人（または動物）の健康に影響を及ぼす可能性のある循環型インフルエンザウイルスに関連したウイルス学的、疫学的、臨床的変化を検出するための世界的なサーベイランスと、リスク評価のための即時的なウイルス共有の重要性を強調し続けています。
新型インフルエンザウイルスによるヒトへの感染は、国際保健規則（IHR）に基づき、全て通知されます。IHRの加盟国は、パンデミックを引き起こす可能性があるA型インフルエンザウイルスによるヒト感染が確認された場合は、直ちにWHOに通知することが義務付けられています。今回の報告では、疾病のエビデンスはありません。全てのヒト感染例に対して、徹底した調査が不可欠です。
出典
Human infection with avian influenza A(H10N3) - China
Disease Outbreak News: 10 June 2021
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/human-infection-with-avian-influenza-a(h10n3)-china
