エボラウイルス病 - ギニア

Disease outbreak news(WHO) 2021年2月17日

2021年2月14日、ギニア保健省は、2021年1月18日から2月13日までの間に、ギニアのンゼレコレ(Nzerekore)県のグエケ(Gouecke)で発生したエボラウイルス病(EVD)症例のクラスターについて、WHOに通知しました。この症例は、2月1日に別の親戚(51歳の看護師)の埋葬に参加した後に、下痢、嘔吐、出血を発症しました。
 
クラスターの初発症例は、1月18日にグエケの保健センターで確認された看護師で、頭痛、体力低下、悪心、嘔吐、食欲不振、腹痛、高熱を発症しました。当初は、腸チフスと診断されましたが、高熱、嘔吐、下痢、衰弱が続いたため、1月23日にンゼレコレ県の医療施設で2回目の診察を受け、マラリアと診断されました。1月24日にンゼレコレ県の開業医の診察を受けていましたが、1月28日に死亡しました。2月1日に、グエケで感染予防策がない状態で埋葬されました。他の症例6人は、5人が家族、1人は看護師を診察した開業医です。
 
症例7人のうち、5人(4人は疑い症例、1人は確定症例)が死亡しました。残り2人の確定例は、現在、コナクリ(Conakry)とグエケの専門医療施設で、それぞれ隔離されています。
 
エボラウイルスの株は、まだ特定されていません。ウイルス株を確認するために、研究所での追加分析が行われています。
 
2月15日の時点で、192人の接触者が特定されており、このうち164人はンゼレコレ保健区域、28人はコナクリのラトマ保健区域です。報告時点で、近隣諸国に旅行した接触者は報告されていませんが、ンゼレコレはギニアで二番目の大都市であり、リベリアのガンタ(Ganta)、コートジボワールのダナネからの交通と、カンカンやマセンタなどギニアの他の主要都市への交通の中心に位置しています。そのため、EVD症例の近隣諸国への輸出が懸念されています。

公衆衛生上の取り組み

2月14日、EVDのアウトブレイクが宣言された後に、ギニア保健省は緊急会議を開催しました。
 
保健省、WHO、地球規模感染症に対する警報と対応ネットワーク(GOARN)のパートナー機関は、アウトブレイクを制御し、さらなる感染拡大を防ぐための対策を開始しました。対策を調整するために、保健省は、国及び地区の緊急事態管理委員会を発足しました。また、国民に対して、病気の蔓延を防ぐための措置を講じ、有症者を報告して治療を求めるように助言しました。疫学チームが現地に派遣され、症例の積極的な検索・治療、接触者の追跡・フォローアップ、感染の予防と管理について地域を支援します。計画中及び進行中の対策は、以下のとおりです。

・発生原因の特定
・全ての確定症例及び疑い症例の接触者の特定とフォローアップ
・全ての疑わしい症例の隔離及び治療の保証
・医療施設における感染予防・管理(IPC)対策の実施、トリアージプロセスの確立、PPEと手指衛生資源の供給、環境の洗浄・消毒のプロトコルの実装
・スコアカードを使用した医療施設のIPC準備の評価、行動計画の作成
・医療施設での積極的な症例発見を含む症例調査の強化
・地域内の全ての医療施設への警告及び通知
・疑い症例の検体を適時に検査する検査室の処理能力の支援
・最初の症状が現れた際の迅速な保健所への報告を含めた予防・感染防御措置の遵守に関する情報公開と意識の強化
・疑い症例、高度疑い例、確定症例の死亡時における安全で尊厳のある埋葬の促進
・ワクチン接種戦略を開始及び最前線で従事する職員へのワクチン接種
・応援職員の動員
・ンゼレコレのエボラ治療センターの能力強化
・ギニア当局とWHO、国際赤十字、ドイツ国際協力公社(GIZ)、UNICFF、UNFPAを含むパートナー機関による対策委員会の設立

ギニア当局に対するWHOの支援
・ワクチン、治療薬、試薬、個人用保護具の供給支援
・パートナー機関の一部
・対策の全ての支柱に関与し、各分野での対応強化に寄与
・調査、接触者の追跡、ワクチン接種を支援するための人材採用とンゼレコレへの派遣
・パートナーと協力してコミュニケーターと社会人類学者を配置し、リスクコミュニケーション及び地域社会との連携の強化
・後方支援、衛生備品、IPC資料の提供

WHOのリスク評価

WHOは、発生の規模、期間、発生源が不明であることから、国内での蔓延のリスクは非常に高いと考えています。潜在的な多数の接触者、国内の他の地域や近隣諸国への潜在的な感染拡大、現在の限られた地域の対策能力、ウイルス株の未確定が懸念されています。加えて、COVID-19の流行、最近の黄熱病と麻疹のアウトブレイクにより、公衆衛生システムに継続的な課題があります。
 
ギニアのンゼレコレ州は、以前にEVDのアウトブレイクが発生したシエラレオネとリベリアの国境に接しているため、WHOは、この地域のリスクが高いと評価しています。進行中のCOVID-19パンデミックにより、国境検問所で移動制限がかかっているにもかかわらず、国境を越えた移動がかなりの割合で引き続き発生しており、EVDが拡大するリスクをもたらします。
 
リスクが高い国々は、以下の準備を行うべきです。
・準備及び評価の実施
・準備計画の策定
・即時活動の計画
・準備のためのIMSの活動化

WHOからのアドバイス

WHOは、EVDの感染拡大を減少させる効果的な方法として、以下のようなリスク低減策を助言しています。
 
・EVD症例の早期発見、隔離、治療、安全で尊厳のある埋葬、IPC対策について、医療従事者の訓練と再訓練の継続
・医療従事者の予防接種の準備及び確定症例における包括的ワクチン接種の実施
・アウトブレイクに対応し、安全で尊厳のある埋葬を強化するための地域社会との連携
・病気の患者を管理し、医療施設や地域社会での感染防止のために、個人用保護具(PPE)とIPC用備品が利用可能であることの確認
・EVD症例を治療するための医療機器、必須医薬品、治療法が利用可能であることの確認
・患者紹介システムの確実な実施:指定されたエボラ治療センターへの紹介経路を備えた保健センターでのスクリーニングとトリアージ
・IPC対策の遵守に関する医療施設評価(スコアカード)の実施
・地域社会への教育による野生生物からヒトへの感染(フルーツバット、サル、類人猿との接触)のリスクの軽減:手袋やその他の適切な保護具で野生生物を扱い、消費する前に動物性食品(血液や肉)を徹底的に調理する。
・EVD症状を有する人々、特に体液との直接的または濃厚な接触によるヒトからヒトへの感染リスクの軽減:病気の患者の世話をする際には、適切なPPEを着用し、患者との接触後や体液との接触時を含めて、定期的に手洗いを実施する。
・生存者の一部の体液にウイルスが残留していることによる感染リスクの軽減するために、EVD生存者ケアプログラムを通じた医療、心理的支援、生物学的検査(2回連続の陰性確認)の提供を推奨。
 
現在のリスク評価と過去のアウトブレイクの証拠に基づいて、WHOは、ギニアへの旅行及び貿易のいかなる制限も行わないよう助言しています。

出典

Ebola virus disease - Guinea
 Disease Outbreak News: 17 February 2021
https://www.who.int/csr/don/17-february-2021-ebola-gin/en/
 

翻訳協力:関西空港検疫所