エボラウイルス病 - コンゴ民主共和国(更新2:12回目アウトブレイクの終息宣言)

Disease outbreak news(WHO) 2021年5月4日

2021年5月3日、コンゴ民主共和国の保健大臣は、北キブ(Kivu)州のビエナ(Biena)、ミュジヤンエーヌ(Musienene)、カトワ(Katwa)、ブテンボ(Butembo)の4つの保健区域で流行したエボラウイルス病(EVD)のアウトブレイクについて、終息を宣言しました。この宣言は、WHOの勧告に従い、最後の感染者が2021年3月21日に2回目の陰性を確認されてから42日後(その後の新規感染者無し)に発表されました。
 
2021年2月7日、ビエナ(Biena)保健区域のマソヤ(Masoya)保健行政地域にあるムウェンエ(Mwenye)/マクモ(Makumo)の住民において、EVD陽性が判明したためアウトブレイクが宣言されました。現在までに、アウトブレイクの最初の症例の感染源は特定されていません。全体で12人の患者(確定症例11人、疑い症例1人)が報告されました。12人のうち8人(73%)は既知の接触者であり、全員がそれぞれ疫学的な感染経路でつながっていました。12人の患者は、全て北キブ(Kivu)州の4つの保健区域で報告され、2021年1月25日から2月26日までの期間に発症しました。これらの患者のうち6人が死亡し、6人は適切な治療を受け回復しました。12人のうち2人は、アウトブレイクの最初の患者をケアしている際に感染した医療従事者で、2人とも回復しています。最後の確定症例となった患者は、2021年3月1日に報告され、いずれも確定症例の家族でした。
 
1976年に初めてエボラウイルスが確認されて以来、コンゴ民主共和国で報告されたEVDのアウトブレイクは12回目で、北キブ(Kivu)州においては2回目となりました。
 
2021年2月7日から5月3日までのアウトブレイクの間、全ての確定症例及び疑い症例に対する調査が行われ、5つの保健区域における48の保健行政地域で1,194人の濃厚接触者が確認されました。現在までに、全ての接触者が21日間のフォローアップ期間を終了しています。専門チームは、感染伝播を見逃さないよう、確定症例と最後に接触してから42日間、追跡調査ができなかった接触者や避難している接触者などの捜索を続けました。アウトブレイクの期間中、州保健省のブテンボ(Butembo)とベニ(Beni)にある17の保健区域から、33,229件のアラートが報告されました。さらに、コンゴ民主共和国への入国者150万人以上がスクリーニングを受け、約2,000人がワクチン接種を受けました。

公衆衛生上の取り組み

公衆衛生上の対策は、WHOと協力してブテンボ(Butembo)保健省が調整しました。
 
今回のEVDアウトブレイクへの対応(2021年2月7日から2021年5月3日):
 
・ブテンボ(Butembo)を拠点とする管理者のうち、調整担当者を議長とし、関連する協力団体の参加を交え、日常的に対策会議を開催しました。
・国境に隣接する国々が監視体制を強化し、さらにEVD対策計画をとりまとめました。
・WHOの資金、物流、人材資源の支援を受け、保健区域及び保健行政区域の専門家による調査活動が行われました。さらに、WHOは、アラート監視システム(the alert surveillance system)を設け、的確で迅速なアラート報告を行うため、保健区域内におけるデータ管理担当者のトレーニングを支援しました。
・22のエントリー地点及びコントロール地点(PoE/PoC)を設置し、アウトブレイクの期間中に合計1,519,869回のスクリーニングを実施しました。
・アウトブレイクが発生してから5月1日までに、4,332検体が回収され、EVDの解析が行われました。
・2021年2月7日から3月31日の間に、1,898人がワクチン接種を受けました。内訳はビエナ(Biena)地域1,169人、カトワ(Katwa)360人、ブテンボ(Butembo)297人、ミュジヤンエーヌ(Musienene)72人でした。前線で働く医療従事者は、542人がワクチン接種を受けました。
・感染予防・管理(IPC)対策では、4つの保健区域における136か所の優先される医療施設の評価と、8つの保健区域における456の保健施設のモニタリングと支援が行われました。
・全ての保健区域で、感染リスクに関する情報共有や、コミュニティ参画活動が行われ、地域活動委員による家庭訪問やブテンボ(Butembo)、マバラコ(Mabalako)、カトワ(Katwa)保健区域内でのEVD啓発活動などが実施されました。

WHOのリスク評価

2021年5月3日、コンゴ民主共和国保健省は、最後の感染者が2回連続で陰性となった日から数えて42日(最大潜伏期間の2回相当)以上が経過したことを踏まえ、北キブ(Kivu)州におけるEVDのヒト-ヒト感染の終息を宣言しました。WHOは、同地域の監視システムが、新規感染者を発見する能力を有していたことを証明したと評価しています。同保健省は、公衆衛生上の監視システムの強化と統合を含む90日計画を立案しました。
 
WHOは、EVDが再発生する危険性はまだあると指摘しています。エボラウイルスは、コンゴ民主共和国の風土病として存在していることに加えて、生存者の体液に数か月間残存する可能性があり、まれに二次感染を引き起こすことがあります。さらに、大きなアウトブレイクの後に、散発的な症例が発生することも珍しくありません。コンゴ民主共和国におけるEVDの再流行は、公衆衛生上の大きな問題であり、アウトブレイク時に必要な準備と対策を実施する国の能力は、まだ大きな差があります。貧困、地域社会の不信、ヘルスシステムの脆弱性、そして政治的不安定など、環境的・社会経済的な要因が折り重なり、コンゴ民主共和国におけるEVDの発生速度を加速させています。 
 
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、コレラ、麻疹の発生など、他の健康上の緊急事態が、同国のEVD再発生に対する迅速な発見と対応を脅かす可能性もあります。
 
コンゴ民主共和国内で1例目のCOVID-19確定症例が発見された2020年3月10日から2021年5月1日までの期間に、累計29,962人のCOVID-19確定症例と766人の死亡者が報告されています。

WHOからのアドバイス

WHOは、ヒトへのEVD感染を減少させる効果的な方法として、以下のようなリスク低減策を助言しています。
 
・野生生物からヒトへの感染リスク(感染したフルーツバット、サル、類人猿との接触およびそれら生肉の摂取)の軽減:手袋やその他の適切な保護具で野生生物を扱い、消費する前に動物性食品(血液や肉)を確実に調理する。
 
・EVD症状を有する人々、特に体液との直接的または濃厚な接触によるヒトからヒトへの感染リスクの軽減:患者を世話する際には適切な個人用防護具(PPE)を着用し、患者との接触後や体液との接触時を含め、定期的な手洗いを実施する。
 
・EVD患者の早期発見、隔離、治療について、医療従事者の訓練と再訓練を継続するとともに、安全で尊厳のある埋葬とIPC対策に関する再訓練を実施する。医療施設でIPCに関する訓練を日常的に行われ、医療従事者のカリキュラムに組み込まれていることを確認する。
 
・EVD患者の管理や感染防止のために、PPEとIPC用備品が利用可能であることを確認する。
 
・EVD患者の管理(水処理、PPE廃棄物管理、トリアージ・スクリーニング能力などを含む)に備え、IPC対策の遵守に関する医療施設評価(スコアカード)を実施する。特定された格差に対処するための行動計画を策定、実施する施設への支援を継続する。
 
・国家的なIPCプログラムおよびIPCフォーカルポイントを設立し、将来のアウトブレイクに備えたIPC必要事項の策定およびIPC準備計画の実施に向けて、医療システムを支援する。
 
・医療従事者への予防接種を準備する。
 
・コミュニティと連携し、安全で尊厳のある埋葬方法を周知する。
 
現在のリスク評価と過去のアウトブレイクの証拠に基づいて、WHOは、コンゴ民主共和国への旅行および貿易のいかなる制限も行わないよう助言しています。

出典

Ebola virus disease - Guinea
Disease Outbreak News: Update 4 May 2021
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2021-DON325

翻訳協力:関西空港検疫所