新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告
COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO) 2021年6月1日
世界の概況
2021年5月30日時点で、直近1週間の新規感染者数は350万人以上が報告され、新規死亡者数は7万8,000人が報告されました。前週と比較して、新規感染者数は15%減少し、新規死亡者数は7%減少しました(図1)。前週の新規感染者数と新規死亡者数の減少幅は、ヨーロッパ地域と東南アジア地域が最も大きくなりました。アフリカ地域と西太平洋地域は新規感染者数が増加し、アメリカ地域と東地中海地域は前週と同程度でした(表1)。アフリカ地域では新規死亡者数の増加が報告されましたが、ヨーロッパ地域と東地中海地域では減少が報告され、西太平洋地域とアメリカ地域では、前週と同程度でした。世界全体の感染者数は5週連続、死亡者数は4週連続で減少を続けていますが、いずれもまだ高水準にあり、全地域の多くの国々で大幅な増加が報告されています。
直近1週間における新規感染者数が多い上位5か国は、インド(新規感染者数1,364,668人、26%減少)、ブラジル(新規感染者数420,981人、7%減少)、アルゼンチン(新規感染者数219,910人、3%増加)、アメリカ合衆国(新規感染者数153,587人、18%減少)、コロンビア(新規感染者数150,517人、40%増加)でした。
図1 2021年5月30日時点の週別・WHO管轄地域別のCOVID-19感染者数及び世界の死亡者数の推移

表1 2021年5月30日時点のWHO管轄地域別の新規・累積COVID-19確定症例数及び死亡者数

直近1週間における新規感染者数が多い上位5か国は、インド(新規感染者数1,364,668人、26%減少)、ブラジル(新規感染者数420,981人、7%減少)、アルゼンチン(新規感染者数219,910人、3%増加)、アメリカ合衆国(新規感染者数153,587人、18%減少)、コロンビア(新規感染者数150,517人、40%増加)でした。
図1 2021年5月30日時点の週別・WHO管轄地域別のCOVID-19感染者数及び世界の死亡者数の推移

表1 2021年5月30日時点のWHO管轄地域別の新規・累積COVID-19確定症例数及び死亡者数

WHO管轄地域別の概況
アフリカ地域
直近1週間で確認された新規感染者数は5万2,000人以上で、新規死亡者数は1,100人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は22%増加し、新規死亡者数は11%増加しました。新規感染者数は4週間、同程度の割合で推移していましたが、増加に転じました。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国

新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
南アフリカ共和国 | 26,498人 | 44.7人 | 24%増加 |
ウガンダ | 2,424人 | 5.3人 | 191%増加 |
ケニア | 2,377人 | 4.4人 | 13%減少 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
南アフリカ共和国 | 591人 | 1.0人 | 同程度 |
ケニア | 92人 | 0.2人 | 92%増加 |
エチオピア | 75人 | 0.1人 | 18%減少 |

アメリカ地域
直近1週間で確認された新規感染者数は120万人で、新規死亡者数は約3万1,000人以上でした。新規感染者数、新規死亡者数ともに、前週と同程度の報告数でした。新規感染者数は4週連続で安定しており、新規死亡者数は3週連続で安定している状況です。アルゼンチンの増加傾向が続いています。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国

新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
ブラジル | 420,981人 | 198.1人 | 7%減少 |
アルゼンチン | 219,910人 | 486.6人 | 3%増加 |
アメリカ合衆国 | 153,587人 | 46.4人 | 18%減少 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
ブラジル | 12,736人 | 6.0人 | 7%減少 |
アメリカ合衆国 | 4,596人 | 1.4人 | 14%増加 |
コロンビア | 3,488人 | 6.9人 | 同程度 |

東地中海地域
直近1週間で確認された新規感染者数は21万2,000人以上で、新規死亡者数は3,500人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は同程度で、新規死亡者数は18%減少しました。新規感染者数は過去3週間、小幅な減少が確認されており、新規死亡者数は過去5週間、急激に減少しています。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国

新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
イラン・イスラム共和国 | 69,331人 | 82.5人 | 17%減少 |
イラク | 29,459人 | 73.2人 | 8%増加 |
バーレーン | 20,829人 | 1224.1人 | 32%増加 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
イラン・イスラム共和国 | 1,360人 | 1.6人 | 22%減少 |
パキスタン | 503人 | 0.2人 | 29%減少 |
チュニジア | 392人 | 3.3人 | 3%減少 |

ヨーロッパ地域
直近1週間で確認された新規感染者数は43万1,000人以下で、新規死亡者数は1万1,000人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は26%減少し、新規死亡者数は17%減少しました。新規感染者数は6週連続、新規死亡者数は7週連続で急激に減少しています。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国

新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
ロシア連邦 | 61,937人 | 42.4人 | 同程度 |
フランス | 60,600人 | 93.2人 | 26%減少 |
トルコ | 57,330人 | 68.0人 | 20%減少 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
ロシア連邦 | 2,680人 | 1.8人 | 3%増加 |
トルコ | 1,200人 | 1.4人 | 22%減少 |
ウクライナ | 1,104人 | 2.5人 | 15%減少 |

東南アジア地域
直近1週間で確認された新規感染者数は150万人以上で、新規死亡者数は2万9,000人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は24%減少し、新規死亡者数は8%減少しました。新規感染者数は、3週連続で急激に減少しており、新規死亡者数は、2021年3月初旬以来の減少となりました。いずれも、インドの減少が反映されています。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国

新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
インド | 1,364,668人 | 98.9人 | 26%減少 |
ネパール | 47,779人 | 164.0人 | 18%減少 |
インドネシア | 39,986人 | 14.6人 | 20%増加 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
インド | 26,706人 | 1.9人 | 8%減少 |
インドネシア | 1,057人 | 0.4人 | 15%減少 |
ネパール | 1,010人 | 3.5人 | 22%減少 |

西太平洋地域
直近1週間で確認された新規感染者数は13万9,000人以上で、新規死亡者数は2,100人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は6%増加し、新規死亡者数は同程度でした。いずれも、パンデミック開始以降の最高水準が続いています。なお、マレーシアで新規感染者数が急増しており、フィリピンと日本を含めた3か国が地域全体の大部分を占めています。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国

新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
マレーシア | 53,419人 | 165.0人 | 38%増加 |
フィリピン | 38,362人 | 35.0人 | 4%減少 |
日本 | 27,400人 | 21.7人 | 24%減少 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
フィリピン | 776人 | 0.7人 | 13%減少 |
日本 | 684人 | 0.5人 | 12%減少 |
マレーシア | 451人 | 1.4人 | 35%増加 |

変異株の状況
2021年5月31日、WHOは、新型コロナウイルスの変異株に関する一般の人々の議論を促進するために、注目すべき変異株(VOI)および懸念すべき変異株(VOC)の言いやすい・覚えやすい新たな呼称を発表しました。新たな呼称の必要性は、以下の理由から生じました。
・複数の異なるゲノム命名法が存在し、科学的には重要な役割を果たしているが、付与される呼称が複雑であるため、変異株に関する一般の議論が複雑になっていること(例:B.1.617.2、21A/S:478Kなど)
・変異株が最初に発見された国や地域の名前を呼称として使用することは、一般的で簡単に認識できるが、差別や偏見の原因になる可能性があること
WHOは現在、世界的に分類されたVOCおよびVOIにギリシャ語アルファベットに基づく呼称を割り当てており(表2)、今後、新たに指定された世界的なVOCおよびVOIには、順次新しい呼称を割り当てていく方針です。また、ギリシャ語アルファベット24文字の全てが割り当てられた場合は、他の呼称リストを発表する予定です。
特定の変異株がもたらす世界的な公衆衛生上のリスクについての理解が深まるにつれ、WHOは、世界的なVOIとVOCのリストを継続的に更新していきます。これは、新たな変異株の出現、疫学の変化(例えば、いくつかの変異株の発生率が急速に低下しているなど)、新しい証拠が利用可能になり共有される際に、表現型の影響に関する理解を調整するために必要です。
インドで初めて検出されたVOCの一つであるB.1.617について、これまでの入手可能な情報から新たな定義が可能となりました。B.1.617 ウイルスは、B.1.617.1、B.1.617.2、B.1.617.3 の 3 つの系統に分けられていました。当初、B.1.617.1およびB.1.617.2の系統について得られた知見は、2021年5月11日にB.1.617を世界的なVOCに指定するために使用されました。それ以降、B.1.617.2は公衆衛生上のリスクが高いことが明らかになり、他の系統は感染率が低いことが確認されました。この最新情報を反映して、B.1.617は以下のように定義が変更されました。
・B.1.617.2は引き続きVOCであり、呼称をデルタ株とします。デルタ株は、感染性が著しく増加しており、この変異株に関連したアウトブレイクを報告する国が増えています。デルタ株の影響に関する研究は、WHOにとって最優先事項です。
・B.1.617.1はVOIに再分類され、カッパ株と命名されました。特定の地域における感染性が高まっている一方で、世界的な感染率は減少傾向です。カッパ株は、今後も定期的にモニターして再評価する予定です。
・B.1.617.3は、VOIおよびVOCいずれの分類からも除外されました。
フランスで初めて検出された、B.1.616変異株について、病院での異常な集団感染から探知され、VOIに分類されていましたが、除外されました。当局の報告によると、2021年4月下旬以降、フランス国内外でさらなる検出は報告されていません。B.1.616は、疾患の重症度を高める可能性があり、鼻咽頭からの検出数が減少していた特性から、今後も地域的・局地的な監視を続けることが賢明である。
現在、VOCまたはVOIに分類されていない変異株は、新型コロナウイルスの全体的な変異の一環として引き続き監視され、公衆衛生上のリスクの増加を示す新たな証拠が確認された場合は、再評価されて新たに分類される可能性があります。
戦略的なゲノム配列解析などにより、変異体を検出するためのサーベイランス活動が国や地域レベルで強化されている状況を反映して、VOCを報告する国や地域の数は増加の一途をたどっています(図2)。
ウイルスの変異は予期されるものであり、新型コロナウイルスの流行に比例して、変異の機会は増えていきます。COVID-19戦略的準備・対応計画に記載されている確立された実証済みの疾病管理方法によって感染を減らし、集団への流行を避けることは、公衆衛生に悪影響を及ぼす変異の発生を減らすための世界的な戦略の重要な側面となります。VOCが広く流行している複数の国々で得られたエビデンスによると、医療施設での感染予防・管理(IPC)対策を含む公衆衛生・社会対策(PHSM)の強化は、COVID-19の患者発生率の減少に効果的であり、入院や死亡の減少につながっていることが示されています。
【主な呼称変更のまとめ】
・イギリス由来の変異株(B.1.1.7)→ アルファ株(VOC)
・南アフリカ由来の変異株(B.1.351)→ デルタ株(VOC)
・ブラジル由来の変異株(P.1)→ ガンマ株(VOC)
・インド由来の変異株(B.1.617.2)→ デルタ株(VOC)
・インド由来の変異株(B.1.617.1)→ カッパ株(VOIに再分類)
・インド由来の変異株(B.1.617.3)→ VOC・VOIの分類から除外
表2 2021年5月31日時点の懸念すべき変異株(VOC)・注目すべき変異株(VOI)

図2 2021年6月1日時点の懸念すべき変異株(VOC)の流行状況

・複数の異なるゲノム命名法が存在し、科学的には重要な役割を果たしているが、付与される呼称が複雑であるため、変異株に関する一般の議論が複雑になっていること(例:B.1.617.2、21A/S:478Kなど)
・変異株が最初に発見された国や地域の名前を呼称として使用することは、一般的で簡単に認識できるが、差別や偏見の原因になる可能性があること
WHOは現在、世界的に分類されたVOCおよびVOIにギリシャ語アルファベットに基づく呼称を割り当てており(表2)、今後、新たに指定された世界的なVOCおよびVOIには、順次新しい呼称を割り当てていく方針です。また、ギリシャ語アルファベット24文字の全てが割り当てられた場合は、他の呼称リストを発表する予定です。
特定の変異株がもたらす世界的な公衆衛生上のリスクについての理解が深まるにつれ、WHOは、世界的なVOIとVOCのリストを継続的に更新していきます。これは、新たな変異株の出現、疫学の変化(例えば、いくつかの変異株の発生率が急速に低下しているなど)、新しい証拠が利用可能になり共有される際に、表現型の影響に関する理解を調整するために必要です。
インドで初めて検出されたVOCの一つであるB.1.617について、これまでの入手可能な情報から新たな定義が可能となりました。B.1.617 ウイルスは、B.1.617.1、B.1.617.2、B.1.617.3 の 3 つの系統に分けられていました。当初、B.1.617.1およびB.1.617.2の系統について得られた知見は、2021年5月11日にB.1.617を世界的なVOCに指定するために使用されました。それ以降、B.1.617.2は公衆衛生上のリスクが高いことが明らかになり、他の系統は感染率が低いことが確認されました。この最新情報を反映して、B.1.617は以下のように定義が変更されました。
・B.1.617.2は引き続きVOCであり、呼称をデルタ株とします。デルタ株は、感染性が著しく増加しており、この変異株に関連したアウトブレイクを報告する国が増えています。デルタ株の影響に関する研究は、WHOにとって最優先事項です。
・B.1.617.1はVOIに再分類され、カッパ株と命名されました。特定の地域における感染性が高まっている一方で、世界的な感染率は減少傾向です。カッパ株は、今後も定期的にモニターして再評価する予定です。
・B.1.617.3は、VOIおよびVOCいずれの分類からも除外されました。
フランスで初めて検出された、B.1.616変異株について、病院での異常な集団感染から探知され、VOIに分類されていましたが、除外されました。当局の報告によると、2021年4月下旬以降、フランス国内外でさらなる検出は報告されていません。B.1.616は、疾患の重症度を高める可能性があり、鼻咽頭からの検出数が減少していた特性から、今後も地域的・局地的な監視を続けることが賢明である。
現在、VOCまたはVOIに分類されていない変異株は、新型コロナウイルスの全体的な変異の一環として引き続き監視され、公衆衛生上のリスクの増加を示す新たな証拠が確認された場合は、再評価されて新たに分類される可能性があります。
戦略的なゲノム配列解析などにより、変異体を検出するためのサーベイランス活動が国や地域レベルで強化されている状況を反映して、VOCを報告する国や地域の数は増加の一途をたどっています(図2)。
ウイルスの変異は予期されるものであり、新型コロナウイルスの流行に比例して、変異の機会は増えていきます。COVID-19戦略的準備・対応計画に記載されている確立された実証済みの疾病管理方法によって感染を減らし、集団への流行を避けることは、公衆衛生に悪影響を及ぼす変異の発生を減らすための世界的な戦略の重要な側面となります。VOCが広く流行している複数の国々で得られたエビデンスによると、医療施設での感染予防・管理(IPC)対策を含む公衆衛生・社会対策(PHSM)の強化は、COVID-19の患者発生率の減少に効果的であり、入院や死亡の減少につながっていることが示されています。
【主な呼称変更のまとめ】
・イギリス由来の変異株(B.1.1.7)→ アルファ株(VOC)
・南アフリカ由来の変異株(B.1.351)→ デルタ株(VOC)
・ブラジル由来の変異株(P.1)→ ガンマ株(VOC)
・インド由来の変異株(B.1.617.2)→ デルタ株(VOC)
・インド由来の変異株(B.1.617.1)→ カッパ株(VOIに再分類)
・インド由来の変異株(B.1.617.3)→ VOC・VOIの分類から除外
表2 2021年5月31日時点の懸念すべき変異株(VOC)・注目すべき変異株(VOI)

図2 2021年6月1日時点の懸念すべき変異株(VOC)の流行状況

出典
COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 1 June 2021
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---1-june-2021
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 1 June 2021
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---1-june-2021