新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO) 2021年6月15日

世界の概況

2021年6月13日時点で、直近1週間(6月7日~13日)の新規感染者数は260万人以上が報告され、新規死亡者数は7万2,000人が報告されました。前週と比較して、新規感染者数は12%減少し、新規死亡者数は2%減少しました(図1)。全世界で報告された感染者数の累計が1億7,500万人を超えましたが、前週の感染者数は2021年2月以来の低水準となりました。アフリカ地域を除く全ての地域で、新規感染者数の減少が報告されました。新規感染者数は、東南アジア、欧州、西太平洋地域で顕著に減少しましたが、アメリカ地域と東地中海地域では、前週と同程度でした(表1)。新規死亡者数は、アフリカ地域と東南アジア地域を除く全ての地域で減少しましたが、世界的に見ると死亡率は依然として高く、1日当たり1万人以上の死亡者が報告されています。現在、WHO管轄の全地域において多くの国々が、ワクチンの入手、変異ウイルスの感染拡大、医療システムの過重な負担等の問題に直面しています。
直近1週間における新規感染者数が多い上位5か国は、インド(新規感染者数630,650人、31%減少)、ブラジル(新規感染者数454,710人、同程度)、アルゼンチン(新規感染者数177,693人、17%減少)、コロンビア(新規感染者数176,661人、同程度)、アメリカ合衆国(新規感染者数105,019人、6%増加)でした。

図1 2021年6月13日時点の週別・WHO管轄地域別のCOVID-19感染者数及び世界の死亡者数の推移


表1 2021年6月13日時点のWHO管轄地域別の新規・累積COVID-19確定症例数及び死亡者数



 

WHO管轄地域別の概況

アフリカ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は9万5,000人以上で、新規死亡者数は1,400人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は44%増加し、新規死亡者数は20%増加しました。新規感染者数は3週連続で大幅に増加しており、南部、東部、北部の国々で、過去最多の新規感染者数が報告されました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
南アフリカ共和国 47,934人 80.8人 48%増加
ザンビア 10,792人 58.7人 125%増加
ウガンダ 8,574人 18.7人 49%増加
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
南アフリカ共和国 724人 1.2人 28%増加
ケニア 132人 0.2人 7%増加
ナミビア 88人 3.5人 1%増加

アメリカ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は110万人以上で、新規死亡者数は約3万2,000人でした。前週と比較して、新規感染者数は同程度、新規死亡者数は7%減少しました。2021年4月中旬以降、全体的な感染者数は減少していますが、中南米の多くの国々では、感染者数、死亡者数ともに増加傾向が続いています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ブラジル 454,710人 213.9人 同程度
アルゼンチン 177,693人 393.2人 17%減少
コロンビア 176,661人 347.2人 1%増加
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ブラジル 13,393人 6.3人 14%増加
アルゼンチン 4,217人 9.3人 13%増加
コロンビア 3,725人 7.3人 同程度
 
 

東地中海地域

直近1週間で確認された新規感染者数は19万1,000人以上で、新規死亡者数は3,300人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は5%減少し、新規死亡者数は4%減少しました。全体的な感染者数の減少傾向は8週連続で報告されていますが、オマーン、チュニジア、アフガニスタンなど多くの国々で感染者数と死亡者数の増加が報告され始めています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
イラン・イスラム共和国 59,771人 71.2人 3%増加
イラク 29,013人 72.1人 3%増加
アラブ首長国連邦 14,820人 149.8人 6%増加
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イラン・イスラム共和国 970人 1.2人 19%減少
チュニジア 488人 4.1人 30%増加
パキスタン 444人 0.2人 13%減少
 

ヨーロッパ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は33万2,000人以上で、新規死亡者数は7,200人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は13%減少し、新規死亡者数は17%減少しました。地域全体でほとんどの国で減少または安定した傾向が続いていますが、ロシア連邦、イギリス、キルギスなど一部の国々では、前週と比較して感染者の増加が報告されています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ロシア連邦 82,250人 56.4人 31%増加
イギリス 46,825人 69.0人 52%増加
トルコ 42,841人 50.8人 8%減少
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ロシア連邦 2,463人 1.8人 1%増加
ドイツ 612人 0.7人 25%減少
トルコ 600人 0.7人 25%減少
 

東南アジア地域

直近1週間で確認された新規感染者数は76万3,000人以上で、新規死亡者数は2万6,000人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は27%減少し、新規死亡者数は12%増加しました。全体的な新規感染者数は急激な減少を続けていますが、インドの傾向を反映したもので、バングラデシュでは、感染者数の増加傾向が4週連続で報告されています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
インド 630,650人 45.7人 31%減少
インドネシア 55,320人 20.2人 38%増加
ネパール 20,348人 69.8人 34%減少
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
インド 23,625人 1.7人 14%増加
インドネシア 1,267人 0.5人 5%増加
ネパール 514人 1.8人 18%減少
 

西太平洋地域

直近1週間で確認された新規感染者数は12万4,000人以上で、新規死亡者数は2,300人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は10%減少し、新規死亡者数は7%減少しました。全体的には感染者数の減少傾向が報告されていますが、フィジー、ベトナム、モンゴルなどの一部の国々では感染者数が増加しています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
フィリピン 46,087人 42.1人 1%増加
マレーシア 41,630人 128.6人 20%減少
日本 13,499人 10.7人 28%減少
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
フィリピン 920人 0.8人 9%減少
マレーシア 553人 1.7人 14%減少
日本 510人 0.4人 15%減少
 

変異株の状況

2021年5月31日、WHOは、新型コロナウイルスの変異株に関する一般の人々の議論を促進するために、懸念すべき変異株(VOC)及び注目すべき変異株(VOI)の言いやすい・覚えやすい新たな呼称を発表しました。 
2021年6月14日、ペルーで2020年8月に初めて報告され、Pango系統C.37、GISAIDクレードGR/452Q.V1、NextStrainクレード20Dに割り当てられていた変異株が、VOIに指定され、WHOは「ラムダ(Lambda)」の呼称を付与しました。 
ラムダ株は、複数の国々の地域社会における実質的な感染率と関連しており、COVID-19の発生率の上昇と同時に有病率も上昇しています。2021年6月15日現在、WHOの5地域における29の国・地域・区域から、1,730以上の配列がGISAIDにアップロードされています。有病率の高さは、特に南米のチリ(提出された検体の全有病率31%)で報告されており、ペルー(有病率9%)、エクアドル(有病率8%)、アルゼンチン(有病率3%)からも報告されています。ペルーの保健当局は、2021年4月以降に確認されたCOVID-19症例の81%が、ラムダ株に関連していたと報告しています。アルゼンチンでは、2021年2月第3週からラムダ株の有病率が上昇していることが報告され、2021年4月2日から5月19日までの間に、COVID-19症例の37%がラムダ株であったことが報告されました。チリでは、過去60日間に報告されたCOVID-19症例の32%がラムダ株で、ガンマ株(33%)と同程度の割合で循環しており、同時期に報告されたアルファ株の有病率(4%)を上回りました。
  
【VOCの新呼称】
・イギリス由来の変異株(B.1.1.7)→ アルファ株
・南アフリカ由来の変異株(B.1.351)→ ベータ株
・ブラジル由来の変異株(P.1)→ ガンマ株
・インド由来の変異株(B.1.617.2)→ デルタ株
 
【VOIの新呼称】
・アメリカ合衆国由来の変異株(B.1.427/B.1.429)→ イプシロン株
・ブラジル由来の変異株(P.2)→ ゼータ株
・複数国由来の変異株(B.1.525) → イータ株
・フィリピン由来の変異株(P.3)→ シータ株
・アメリカ合衆国由来の変異株(B.1.526)→ イオタ株
・インド由来の変異株(B.1.617.1)→ カッパ株
・ペルー由来の変異株(C.37)→ ラムダ株(6月14日追加)

※インド由来の変異株(B.1.617.3)→ VOC・VOIの分類から除外
 
表2 2021年6月15日時点の懸念すべき変異株(VOC)・注目すべき変異株(VOI)
 

図2 2021年6月15日時点の懸念すべき変異株(VOC)の流行状況

出典

COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 15 June 2021
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---15-june-2021

 

翻訳協力:関西空港検疫所