新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告
COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO) 2021年6月22日
世界の概況
2021年6月20日時点で、直近1週間(6月14日~20日)の新規感染者数は250万人以上が報告され、新規死亡者数は6万4,000人以上が報告されました。前週と比較して、新規感染者数は6%減少し、新規死亡者数は12%減少しました(図1)。全世界で報告された感染者数の累計が1億7,700万人を超えましたが、前週の感染者数は2021年2月以来の最低水準となりました。アメリカ地域と西太平洋地域は、前週と同程度の新規感染者数でしたが、東南アジア地域とヨーロッパ地域は、新規感染者数が減少しました。アフリカ地域では、前週と比較して新規感染者数が大幅に増加しました(表1)。世界的に見ると死亡率は依然として高く、1日当たり9,000人以上の死亡者が報告されています。過去1週間に新たに報告された死亡者数は、東地中海地域とアフリカ地域を除く全ての地域で減少しました。
直近1週間における新規感染者数が多い上位5か国は、ブラジル(新規感染者数505,344人、11%増加)、インド(新規感染者数441,976人、30%減少)、コロンビア(新規感染者数193,907人、10%増加)、アルゼンチン(新規感染者数149,673人、16%減少)、ロシア連邦(新規感染者数108,139人、31%増加)でした。
懸念すべき変異株(VOC)の状況について、アルファ株は170の国・地域(前週比+7)、ベータ株は119の国・地域(前週比+4)、ガンマ株は71の国・地域(前週比+3)、デルタ株は85の国・地域(前週比+6)で、それぞれ報告されています。各国の検査能力の向上やデータ収集が強化されている影響もあり、VOCを報告する国や地域が増加し続けています。アルファ株の報告が続いている一方で、デルタ株の拡大が進んでいます。
図1 2021年6月20日時点の週別・WHO管轄地域別のCOVID-19感染者数及び世界の死亡者数の推移

表1 2021年6月20日時点のWHO管轄地域別の新規・累積COVID-19確定症例数及び死亡者数

直近1週間における新規感染者数が多い上位5か国は、ブラジル(新規感染者数505,344人、11%増加)、インド(新規感染者数441,976人、30%減少)、コロンビア(新規感染者数193,907人、10%増加)、アルゼンチン(新規感染者数149,673人、16%減少)、ロシア連邦(新規感染者数108,139人、31%増加)でした。
懸念すべき変異株(VOC)の状況について、アルファ株は170の国・地域(前週比+7)、ベータ株は119の国・地域(前週比+4)、ガンマ株は71の国・地域(前週比+3)、デルタ株は85の国・地域(前週比+6)で、それぞれ報告されています。各国の検査能力の向上やデータ収集が強化されている影響もあり、VOCを報告する国や地域が増加し続けています。アルファ株の報告が続いている一方で、デルタ株の拡大が進んでいます。
図1 2021年6月20日時点の週別・WHO管轄地域別のCOVID-19感染者数及び世界の死亡者数の推移

表1 2021年6月20日時点のWHO管轄地域別の新規・累積COVID-19確定症例数及び死亡者数

WHO管轄地域別の概況
アフリカ地域
直近1週間で確認された新規感染者数は13万2,000人以上で、新規死亡者数は1,900人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は39%増加し、新規死亡者数は38%増加しており、世界的に見て最高の増加率となりました。南部と東部の国々において、過去1ヵ月間の新規感染者の増加が顕著になっています。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国

新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
南アフリカ共和国 | 70,739人 | 119.3人 | 48%増加 |
ザンビア | 16,641人 | 90.5人 | 54%増加 |
ウガンダ | 9,926人 | 18.7人 | 16%増加 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
南アフリカ共和国 | 937人 | 1.6人 | 29%増加 |
ザンビア | 230人 | 1.3人 | 271%増加 |
ウガンダ | 203人 | 0.4人 | 314%増加 |

アメリカ地域
直近1週間で確認された新規感染者数は110万人以上で、新規死亡者数は3万人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は同程度、新規死亡者数は4%減少しました。2021年4月中旬以降、全体的な感染者数は減少していますが、南・中央アメリカやカリブ海地域の多くの国々では、依然として高いレベルの感染率と死亡率が報告されています。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国

新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
ブラジル | 505,344人 | 237.7人 | 11%増加 |
コロンビア | 193,907人 | 381.1人 | 10%増加 |
アルゼンチン | 149,673人 | 331.2人 | 16%減少 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
ブラジル | 14,264人 | 6.7人 | 7%増加 |
コロンビア | 4,131人 | 8.1人 | 11%増加 |
アルゼンチン | 3,619人 | 8.0人 | 14%減少 |

東地中海地域
直近1週間で確認された新規感染者数は19万5,000人以上で、新規死亡者数は3,400人以上でした。前週と比較して、いずれも同程度の報告となりました。新規感染者数は2か月連続で減少していましたが、同程度に転じました。アフガニスタン、クウェート、ソマリア、シリアなど東地中海地域のほぼ半数の国々で、感染者と死亡者の増加が報告され始めています。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国

新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
イラン・イスラム共和国 | 66,452人 | 79.1人 | 11%増加 |
イラク | 32,614人 | 81.1人 | 12%増加 |
アラブ首長国連邦 | 14,162人 | 143.2人 | 4%減少 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
イラン・イスラム共和国 | 943人 | 1.1人 | 3%減少 |
アフガニスタン | 595人 | 1.5人 | 56%増加 |
チュニジア | 524人 | 4.4人 | 7%増加 |

ヨーロッパ地域
直近1週間で確認された新規感染者数は32万4,000人以上で、新規死亡者数は6,400人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は6%減少し、新規死亡者数は12%減少しました。地域全体でほとんどの国々で減少または安定した傾向が続いていますが、イギリス、イスラエル、キルギス、ポルトガル、ロシア連邦、スロバキアなど一部の国々では、前週と比較して感染者の増加が報告されています。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国

新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
ロシア連邦 | 108,139人 | 74.1人 | 31%増加 |
イギリス | 62,474人 | 92.0人 | 33%増加 |
トルコ | 39,773人 | 47.2人 | 7%減少 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
ロシア連邦 | 2,931人 | 2.0人 | 11%増加 |
ドイツ | 551人 | 0.7人 | 10%減少 |
トルコ | 454人 | 0.5人 | 24%減少 |

東南アジア地域
直近1週間で確認された新規感染者数は60万人以上で、新規死亡者数は1万9,000人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は21%減少し、新規死亡者数は26%減少しました。全体的な新規感染者数は急激な減少を続けていますが、インドの傾向を反映しています。ミャンマー、バングラデシュ、インドネシアなど一部の国々では、前週と比較して感染者と死亡者の増加が報告されています。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国

新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
インド | 441,976人 | 32.0人 | 30%減少 |
インドネシア | 78,551人 | 28.7人 | 42%増加 |
バングラデシュ | 24,746人 | 15.0人 | 55%増加 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
インド | 16,329人 | 1.2人 | 31%減少 |
インドネシア | 1,783人 | 0.7人 | 41%増加 |
バングラデシュ | 430人 | 0.3人 | 54%増加 |

西太平洋地域
近1週間で確認された新規感染者数は約12万4,000人で、新規死亡者数は約2,000人でした。前週と比較して、新規感染者数は同程度、新規死亡者数は9%増加しました。全体的には感染者の減少傾向が報告されていますが、フィジー、モンゴル、シンガポールなど一部の国々では、前週と比較して感染者数が増加しています。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国

新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
フィリピン | 44,875人 | 41.0人 | 3%減少 |
マレーシア | 38,911人 | 120.2人 | 7%減少 |
モンゴル | 17,255人 | 526.3人 | 74%増加 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
フィリピン | 886人 | 0.8人 | 4%減少 |
マレーシア | 504人 | 1.6人 | 9%減少 |
日本 | 367人 | 0.3人 | 28%減少 |

変異株の状況
2021年5月31日、WHOは、新型コロナウイルスの変異株に関する一般の人々の議論を促進するために、懸念すべき変異株(VOC)及び注目すべき変異株(VOI)の言いやすい・覚えやすい新たな呼称を発表しました。
デルタ株について、2つの新たなエビデンスが報告されました。
シンガポールで行われた研究では、デルタ株に感染すると、酸素供給、集中治療室(ICU)への入室、死亡のオッズが高くなることが示されました(補正後オッズ比aOR=4.90、95%CI 1.43-30.78)。さらに、VOCではない新型コロナウイルスに感染した場合と比較して、肺炎のオッズ比は1.88倍(95%CI 0.95-3.76)でした。さらに、PCRサイクル閾値(Ct値)が有意に低いことが確認されました。Ct値が低いほど、検体に含まれるウイルスのRNA量が多いことになります。また、本研究では、低いCt値(≦30)が持続する期間について、非VOC系統(13日)と比較して、デルタ株は期間が長い(中央値18日)ことも明らかになりました。
日本で行われた実効再生産数(1人の感染者から何人に感染が拡大するかを示す指標)を推定した研究では、アルファ株と比較して、デルタ株は感染性が高いことが示されました。2020年12月以前に日本国内で流通していたウイルス株と比較した場合、アルファ株の実効再生産数は1.56、デルタ株は1.78と推定されました。この結果は、WHOが過去に報告したアルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株の各変異株の感染力の概要と一致しています。
【VOCの新呼称】
・イギリス由来の変異株(B.1.1.7)→ アルファ株
・南アフリカ由来の変異株(B.1.351)→ ベータ株
・ブラジル由来の変異株(P.1)→ ガンマ株
・インド由来の変異株(B.1.617.2)→ デルタ株
【VOIの新呼称】
・アメリカ合衆国由来の変異株(B.1.427/B.1.429)→ イプシロン株
・ブラジル由来の変異株(P.2)→ ゼータ株
・複数国由来の変異株(B.1.525) → イータ株
・フィリピン由来の変異株(P.3)→ シータ株
・アメリカ合衆国由来の変異株(B.1.526)→ イオタ株
・インド由来の変異株(B.1.617.1)→ カッパ株
・ペルー由来の変異株(C.37)→ ラムダ株(6月14日追加)
インド由来の変異株(B.1.617.3)→ VOC・VOIの分類から除外
デルタ株について、2つの新たなエビデンスが報告されました。
シンガポールで行われた研究では、デルタ株に感染すると、酸素供給、集中治療室(ICU)への入室、死亡のオッズが高くなることが示されました(補正後オッズ比aOR=4.90、95%CI 1.43-30.78)。さらに、VOCではない新型コロナウイルスに感染した場合と比較して、肺炎のオッズ比は1.88倍(95%CI 0.95-3.76)でした。さらに、PCRサイクル閾値(Ct値)が有意に低いことが確認されました。Ct値が低いほど、検体に含まれるウイルスのRNA量が多いことになります。また、本研究では、低いCt値(≦30)が持続する期間について、非VOC系統(13日)と比較して、デルタ株は期間が長い(中央値18日)ことも明らかになりました。
日本で行われた実効再生産数(1人の感染者から何人に感染が拡大するかを示す指標)を推定した研究では、アルファ株と比較して、デルタ株は感染性が高いことが示されました。2020年12月以前に日本国内で流通していたウイルス株と比較した場合、アルファ株の実効再生産数は1.56、デルタ株は1.78と推定されました。この結果は、WHOが過去に報告したアルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株の各変異株の感染力の概要と一致しています。
【VOCの新呼称】
・イギリス由来の変異株(B.1.1.7)→ アルファ株
・南アフリカ由来の変異株(B.1.351)→ ベータ株
・ブラジル由来の変異株(P.1)→ ガンマ株
・インド由来の変異株(B.1.617.2)→ デルタ株
【VOIの新呼称】
・アメリカ合衆国由来の変異株(B.1.427/B.1.429)→ イプシロン株
・ブラジル由来の変異株(P.2)→ ゼータ株
・複数国由来の変異株(B.1.525) → イータ株
・フィリピン由来の変異株(P.3)→ シータ株
・アメリカ合衆国由来の変異株(B.1.526)→ イオタ株
・インド由来の変異株(B.1.617.1)→ カッパ株
・ペルー由来の変異株(C.37)→ ラムダ株(6月14日追加)
インド由来の変異株(B.1.617.3)→ VOC・VOIの分類から除外
表2 2021年6月22日時点の懸念すべき変異株(VOC)・注目すべき変異

図2 2021年6月22日時点の懸念すべき変異株(VOC)の流行状況

出典
COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 22 June 2021
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---22-june-2021
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 22 June 2021
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---22-june-2021