新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO) 2021年6月29日

世界の概況

2021年6月27日時点で、直近1週間(6月21日~27日)の新規感染者数は260万人以上が報告され、新規死亡者数は5万7,000人以上が報告されました。前週と比較して、新規感染者数は同程度、新規死亡者数は10%減少しました(図1)。2020年11月初旬以降の報告において、最も少ない新規死亡者数となりましたが、世界的に見ると、COVID-19の発生率は依然として非常に高く、過去1週間で毎日平均37万人以上の感染者が報告されています。これまでに全世界で報告された感染者の累計は1億8,000万人を超え、死亡者の累計は約400万人となりました。
 
アフリカ地域では、前週と比較して新規感染者数が33%、新規死亡者数が42%と大幅に増加しました(表1)。また、東地中海地域とヨーロッパ地域では、新規感染者数が増加しました。アフリカ地域を除く全ての地域で、過去1週間の新規死亡者数の減少が報告されました。
 
直近1週間における新規感染者数が多い上位5か国は、ブラジル(新規感染者数521,298人、3%増加)、インド(新規感染者数351,218人、12%増加)、コロンビア(新規感染者数204,132人、5%増加)、ロシア連邦(新規感染者数134,465人、24%増加)、アルゼンチン(新規感染者数131,824人、11%減少)でした。また、過去1週間で人口10万人当たりの新規感染者数が最も多かったのは、セーシェル(708人)、ナミビア(509人)、モンゴル(491人)でした。
 
懸念すべき変異株(VOC)の状況について、アルファ株は172の国・地域(前週比+2)、ベータ株は120の国・地域(前週比+1)、ガンマ株は72の国・地域(前週比+1)、デルタ株は96の国・地域(前週比+11)で、それぞれ報告されています。各国の検査能力の向上やデータ収集が強化されている影響もあり、VOCを報告する国や地域が増加し続けています。アルファ株の報告が続いている一方で、デルタ株の拡大が進んでいます。
 
図1 2021年6月27日時点の週別・WHO管轄地域別のCOVID-19感染者数及び世界の死亡者数の推移


表1 2021年6月27日時点のWHO管轄地域別の新規・累積COVID-19確定症例数及び死亡者数

WHO管轄地域別の概況

今回の報告から、一部の地域において、人口10万人当たりの割合を重視する表記に変更されています。

アフリカ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は17万7,000人以上で、新規死亡者数は2,700人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は34%増加し、新規死亡者数は42%増加しました。多くの国々で、感染者と死亡者の増加が報告されています。5月15日以降、地域内の感染者が急増しており、感染者の76%、死亡者の72%が南部の国々から報告されています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
南アフリカ共和国 103,697人 174.8人 47%増加
ザンビア 19,058人 103.7人 15%増加
ナミビア 12,944人 509.4人 71%増加
 
人口10万人当たりの新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ザンビア 20人
ナミビア 11人
ボツワナ 7人
 

アメリカ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は110万人以上で、新規死亡者数は3万人以上でした。前週と比較して、いずれも同程度の報告となりました。2021年4月中旬以降、全体的な感染者数は減少していますが、南・中央アメリカやカリブ海地域の多くの国々では、依然として高いレベルの感染率と死亡率が報告されています。他の5地域と比較して、過去1週間の人口10万人当たりの新規感染者数(111人)と新規死亡者数(3人)は、いずれも最多となりました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ブラジル 521,298人 245.2人 3%増加
コロンビア 204,132人 401.2人 5%増加
アルゼンチン 131,824人 291.7人 12%減少
 
人口10万人当たりの新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
パラグアイ 113人
コロンビア 90人
アルゼンチン 83人
 

東地中海地域

直近1週間で確認された新規感染者数は22万1,000人以上で、新規死亡者数は3,400人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は13%増加し、新規死亡者数は同程度でした。新規感染者数は2か月ほど減少していましたが、2021年3月末以降で最大となる増加に急転しました。過去1週間の人口10万人当たりの新規感染者数は30人、新規死亡者数は0.5人でした。
 
人口10万人当たりの新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
オマーン 348人
クゥェート 294人
チュニジア 189人
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イラン・イスラム共和国 857人 1.0人 9%減少
チュニジア 619人 5.2人 18%増加
アフガニスタン 528人 1.4人 11%減少
 

ヨーロッパ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は37万2,000人以上で、新規死亡者数は6,400人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は10%増加し、新規死亡者数は同程度でした。新規感染者数は2か月ほど減少していましたが、増加に転じました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ロシア連邦 134,465人 92.1人 24%増加
イギリス 96,843人 142.7人 55%増加
トルコ 38,936人 46.2人 2%減少
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ロシア連邦 3,921人 2.7人 34%増加
トルコ 402人 0.5人 11%減少
ドイツ 369人 0.4人 33%減少
 

東南アジア地域

直近1週間で確認された新規感染者数は57万3,000人以上で、新規死亡者数は1万3,000人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は5%減少し、新規死亡者数は33%減少しました。全体的な新規感染者数は急激な減少を続けていますが、インドの傾向を反映しています。ミャンマー(112%増加)、インドネシア(60%増加)、バングラデシュ(48%増加)など一部の国々では、前週と比較して感染者が大幅に増加しています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
インド 351,218人 25.5人 21%減少
インドネシア 125,395人 45.8人 60%増加
バングラデシュ 36,738人 22.3人 48%増加
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
インド 9,038人 0.7人 45%減少
インドネシア 2,476人 0.9人 39%増加
バングラデシュ 624人 0.4人 45%増加
 

西太平洋地域

直近1週間で確認された新規感染者数は11万6,000人以上で、新規死亡者数は1,800人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は6%減少し、新規死亡者数は13%減少しました。いずれも、5月中旬のピーク以降は減少傾向が続いています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
フィリピン 38,684人 35.3人 14%減少
マレーシア 37,347人 115.4人 4%減少
モンゴル 16,111人 491.4人 7%減少
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
フィリピン 706人 0.6人 20%減少
マレーシア 536人 1.7人 6%増加
日本 257人 0.2人 30%減少
 

変異株の状況

2021年5月31日、WHOは、新型コロナウイルスの変異株に関する一般の人々の議論を促進するために、懸念すべき変異株(VOC)及び注目すべき変異株(VOI)の言いやすい・覚えやすい新たな呼称を発表しました(表2)。
 
アルファ株と比較した場合、デルタ株の有効感染増加率は55%(95%CI:43~68%)と推定(=感染力約1.55倍)されます。感染性の増加を考慮すると、デルタ株は今後数か月の間に急速に他の変異株を凌駕し、支配的な変異株になると予想されます。6月29日現在、96の国と地域から感染者が報告されており、全世界に拡大しつつあります。
 
COVID-19ワクチンは26億5,000万回以上投与されていますが、その大部分は少数の高所得国で行われています。COVAX(COVID-19ワクチンを共同で購入し、途上国などに分配する国際的な枠組み)を通じたワクチンの提供により、高所得国と低所得国の間のワクチン投与の格差は縮小し始めていますが、世界の人口の大部分は依然として感染の影響を受けやすく、COVID-19を発症するリスクを抱えている状況です。
 
6月8日の更新以降、ファイザー社とバイオNテック社の共同開発ワクチンおよびアストラゼネカ社のワクチンにおいて、デルタ型に対する有効性を示す2つの研究が行われました。イギリスの研究においては、2回接種後の両ワクチンの効果について、わずかに減少したものの効果が維持されることが確認されました(ファイザー社・バイオNテック社ワクチン:88%、アストラゼネカ社ワクチン:67%)。
 
スコットランドの研究においては、ファイザー社・バイオNテック社ワクチンを2回接種して14日経過した後のワクチン効果について、デルタ株における症状を抑制する効果は83%(95%CI:78~87%)、感染を抑制する効果は79%(95%CI:75~82%)であったことが報告されました。これらの推定値は、アルファ株に対するワクチン効果の推定値と比較して、やや減少していました。アルファ株における症状を抑制する効果は92%(95%CI:88~94%)、感染を抑制する効果は92%(95%CI:90~93%)でした。
 
これらの研究を総括すると、デルタ株はアルファ株と比較して、症状や感染を予防するワクチン効果が中程度に低下することが示唆されています。なお、ウイルスの変異は常に起こりうるもので、ウイルスが流行すればするほど、変異の機会が増えることになります。現在確立されている実証済みの疾病管理方法によって感染を減らし、集団への流行を避けることが、公衆衛生に悪影響を及ぼす変異の発生を減らすための世界戦略の基本であり、重要な側面となります。
 
【VOCの新呼称】
・イギリス由来の変異株(B.1.1.7)→ アルファ株
・南アフリカ由来の変異株(B.1.351)→ ベータ株
・ブラジル由来の変異株(P.1)→ ガンマ株
・インド由来の変異株(B.1.617.2)→ デルタ株
 【VOIの新呼称】
・アメリカ合衆国由来の変異株(B.1.427/B.1.429)→ イプシロン株
・ブラジル由来の変異株(P.2)→ ゼータ株
・複数国由来の変異株(B.1.525) → イータ株
・フィリピン由来の変異株(P.3)→ シータ株
・アメリカ合衆国由来の変異株(B.1.526)→ イオタ株
・インド由来の変異株(B.1.617.1)→ カッパ株
・ペルー由来の変異株(C.37)→ ラムダ株(6月14日追加)

インド由来の変異株(B.1.617.3)→ VOC・VOIの分類から除外  
 
表2 2021年6月29日時点の懸念すべき変異株(VOC)・注目すべき変異株(VOI)

図2 2021年6月29日時点の懸念すべき変異株(VOC)の流行状況

出典

COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 29 June 2021
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---29-june-2021


 

翻訳協力:関西空港検疫所