新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO) 2021年7月13日

世界の概況

2021年7月11日時点で、直近1週間(7月5日~7月11日)の新規感染者数は300万人以上が報告され、新規死亡者数は5万5,000人以上が報告されました。前週と比較して、新規感染者数は10%増加し、新規死亡者数は3%増加しました(図1)。1日当たりの新規感染者数の平均は40万人以上で、前週の平均37万人と比較して増加しました。これまでに全世界で報告された感染者の累計は1億8,600万人を超え、死亡者の累計は400万人に達しました。
 
アメリカ地域を除く全ての地域において、新規感染者数が増加しました。前週と比較して増加率が最も高かったのは東地中海地域(25%)で、次いでヨーロッパ地域(20%)が高い状況でした(表1)。アフリカ地域は最も低い増加率5%でしたが、死亡者数は50%増加しました。東南アジア地域では、死亡者数が大幅に増加(26%)しました。アメリカ地域では、患者数が3%減少し、死亡者数も11%減少しました。
 
直近1週間における新規感染者数が多い上位5か国は、ブラジル(新規感染者数333,030人、9%減少)、インド(新規感染者数291,789人、7%減少)、インドネシア(新規感染者数243,119人、44%増加)、イギリス(新規感染者数210,277人、30%増加)、コロンビア(新規感染者数174,320人、15%減少)、でした。また、過去1週間で人口10万人当たりの新規感染者数が最も多かったのは、ヴァージン諸島(2,497人)、セーシェル(763人)、キプロス(673人)、ジャージー(628人)、フィジー(490人)でした。
 
懸念すべき変異株(VOC)の状況について、アルファ株は178の国・地域(前週比+5)、ベータ株は123の国・地域(前週比+1)、ガンマ株は75の国・地域(前週比+1)、デルタ株は111の国・地域(前週比+7)で、それぞれ報告されています。各国の検査能力の向上やデータ収集が強化されている影響もあり、VOCを報告する国や地域が増加し続けています。アルファ株の報告が続いている一方で、デルタ株の感染拡大が進んでいます。
 
注目すべき変異株(VOI)は最新の評価に基づき、イプシロン株(B.1.427/B.1.429)、ゼータ株(P.2)、シータ株(P.3)は、7月6日にVOIから監視を継続する変異株に再分類されました。
 
図1 2021年7月11日時点の週別・WHO管轄地域別のCOVID-19感染者数及び世界の死亡者数の推移


表1 2021年7月11日時点のWHO管轄地域別の新規・累積COVID-19確定症例数及び死亡者数

 

WHO管轄地域別の概況

アフリカ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は21万3,000人以上で、新規死亡者数は5,000人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は5%増加し、新規死亡者数は50%増加しました。感染者数は9週連続、死亡者数は8週連続で増加しています。多くの国々で、感染者と死亡者の増加が報告されている中で、新規感染者の62%および新規死亡者の53%は、南アフリカ共和国からの報告となっています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
南アフリカ共和国 132,986人 224.2人 同程度
ジンバブエ 13,188人 88.7人 72%増加
ザンビア 12,302人 66.9人 25%減少
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
南アフリカ共和国 2,631人 4.4人 52%増加
ウガンダ 897人 2.0人 176%増加
ザンビア 378人 2.1人 12%減少
 

アメリカ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は96万2,000人以上で、新規死亡者数は2万3,000人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は3%減少し、新規死亡者数は11%減少しました。地域における新規感染者数は減少し続けていますが、ヴァージン諸島、マルティニーク、バルバドス、タークス・カイコス諸島などの小さな島々では、感染者の大幅な増加が報告されています。南・中央アメリカやカリブ海地域の多くの国々では、高いレベルの感染率と死亡率が報告され続けています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ブラジル 333,030人 156.7人 9%減少
コロンビア 174,320人 342.6人 15%減少
アメリカ合衆国 128,482人 38.8人 38%増加
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ブラジル 9,736人 4.6人 10%減少
コロンビア 4,008人 7.9人 9%減少
アルゼンチン 2,849人 6.3人 16%減少
 

東地中海地域

直近1週間で確認された新規感染者数は30万7,000人以上で、新規死亡者数は3,700人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は25%増加し、新規死亡者数は7%増加しました。新規感染者数は2か月ほど減少していましたが、4週連続で増加しています。
 
人口10万人当たりの新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
イラン・イスラム共和国 114,749人 136.6人 38%増加
イラク 56,535人 140.6人 29%増加
チュニジア 52,076人 440.6人 47%増加
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イラン・イスラム共和国 1,067人 1.3人 16%増加
チュニジア 983人 8.3人 44%増加
アフガニスタン 525人 1.3人 4%減少
 

ヨーロッパ地域

直近1週間で確認された新規感染者数65万3,000人以上で、新規死亡者数は6,900人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は20%増加し、新規死亡者数は同程度でした。新規感染者数の増加が続いています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
イギリス 210,277人 309.8人 30%増加
ロシア連邦 172,392人 118.1人 8%増加
スペイン 52,824人 111.6人 19%減少
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ロシア連邦 5,077人 3.5人 9%増加
トルコ 318人 0.4人 9%減少
ドイツ 201人 0.2人 27%減少
 

東南アジア地域

直近1週間で確認された新規感染者数は71万2,000人以上で、新規死亡者数は1万4,000人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は16%増加し、新規死亡者数は26%増加しました。地域全体の新規感染者数は、インドの傾向を反映して減少を続けていましたが、増加に転じており、新規死亡者数も増加傾向にあります。インドネシア、バングラデシュ、ミャンマー、タイなど一部の国々では、感染者と死亡者の大幅な増加が続いています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
インド 291,789人 21.1人 7%減少
インドネシア 243,119人 88.9人 44%増加
バングラデシュ 76,272人 46.3人 35%増加
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
インド 6,035人 0.4人 4%減少
インドネシア 5,882人 2.2人 71%増加
バングラデシュ 1,354人 0.8人 52%増加
 

西太平洋地域

直近1週間で確認された新規感染者数は14万7,000人以上で、新規死亡者数は1,800人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は15%増加し、新規死亡者数は3%減少しました。死亡者の推移は安定している一方で、感染者は3週連続で増加しています。マレーシア、カンボジア、フィジーは、増加傾向が続いています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
マレーシア 54,584人 168.6人 24%増加
フィリピン 36,706人 33.5人 5%減少
日本 13,314人 10.5人 22%増加
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
フィリピン 753人 0.7人 8%減少
マレーシア 633人 2.0人 15%増加
カンボジア 185人 1.1人 7%増加
 

変異株の状況

2021年5月31日、WHOは、新型コロナウイルスの変異株に関する一般の人々の議論を促進するために、懸念すべき変異株(VOC)及び注目すべき変異株(VOI)の言いやすい・覚えやすい新たな呼称を発表しました(表2・表3)。
 
また、VOCやVOIの影響についての理解が進み、サーベイランスや対応の必要性が高まっていることから、WHOは定義を定期的に見直し、調整しています。変異株の最新の状況については、以下のページを新たに設けてとりまとめています。
 
SARS-CoV-2変異株の追跡
https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/
 
6地域全てにおいて、デルタ株の感染者数が増加しています。7月13日現在、111の国と地域でデルタ株の感染が報告されており、今後数か月で世界的に主流の株になることが推測されています。デルタ株は感染力が強いため、特にワクチンの接種率が低い地域では、感染者数が大幅に増加し、医療システムへの負担が大きくなることが懸念されています。
 
デルタ株の流行に伴い、COVID-19に関連する世界的な公衆衛生上のリスクは非常に高い状態が続いています。世界全体の患者発生率は今でも高い状態(週に約300万人の新規感染者数に再び近づいている)にあり、多くの国々で増加しています。死亡率は、2021年4月末に記録したピーク以降、低下が続いていましたが、今週は死亡者数の微増が報告されており、ワクチン接種率が低い国々では、患者数、入院数、死亡者数の急激な増加が報告されています。
 
世界人口の約4分の1(24.7%)がCOVID-19ワクチンを少なくとも1回接種している(30億回以上)一方で、ワクチンの流通や接種状況には大きな格差があり、大部分のワクチンは少数の高・中所得国で使用されています。4種類のVOC全てについて、完全なワクチン接種で重症化や死亡を高いレベルで防ぐことができますが、感染、軽度・中程度の症状、感染への影響については様々な報告があります。ウイルスの進化と、潜在的な免疫逃避を含むすべての変異株の表現型の影響については、ワクチンの組成、接種戦略、接種率目標の将来的な調整の必要性を含め、綿密な監視と評価が必要です。
 
ワクチン、医療用酸素、個人保護具(PPE)、臨床検査、その他の重要な物資の供給不足は、感染被害が最も大きい国々において、パンデミックに対応するための重要な課題となっています。
  
【VOCの呼称】
・イギリス由来の変異株(B.1.1.7)→ アルファ株
・南アフリカ由来の変異株(B.1.351)→ ベータ株
・ブラジル由来の変異株(P.1)→ ガンマ株
・インド由来の変異株(B.1.617.2)→ デルタ株
 
【VOIの呼称】
・複数国由来の変異株(B.1.525) → イータ株
・アメリカ合衆国由来の変異株(B.1.526)→ イオタ株
・インド由来の変異株(B.1.617.1)→ カッパ株
・ペルー由来の変異株(C.37)→ ラムダ株(6月14日追加)
 
【監視を継続する変異株(VOIから除外)】
・アメリカ合衆国由来の変異株(B.1.427/B.1.429)→ イプシロン株(7月6日変更)
・ブラジル由来の変異株(P.2)→ ゼータ株(7月6日変更)
・フィリピン由来の変異株(P.3)→ シータ株(7月6日変更)

表2 2021年7月13日時点の懸念すべき変異株(VOC)


表3 2021年7月13日時点の注目すべき変異株(VOI)


図2 2021年7月13日時点の懸念すべき変異株(VOC)の流行状況

出典

COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 13 July 2021
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---13-july-2021

翻訳協力:関西空港検疫所