特集:小児と青年におけるCOVID-19の現状について

WHO COVID-19 Situation reportsより抜粋 2021月9月14日

 
子供や青年の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染は、成人と比較して一般的に重症度が低く、死亡者数も少ない状況です。重症化しないことは良い傾向ですが、症状が軽いことで検査の回数が減り、結果的に小児や青年の感染者数が実際よりも少なく計上されているという懸念があります。症状が軽いまたは症状のない子供や青年が感染した場合、地域社会における感染の一因となる可能性があります。したがって、子供や青年におけるSARS-CoV-2感染の症状、感染性、感染パターンを理解することは、全年齢を対象としたCOVID-19の対策を開発、適応、改善するために不可欠です。特に、ほとんどの地域において、12歳未満にワクチンを接種することができず、認可もされていません。

本報告では、5歳未満の小児、年長児(5~9歳)、若年青年(10~14歳)、年長青年(15~19歳)におけるSARS-CoV-2の感染獲得・伝播およびCOVID-19疾患に関する現在の知見をまとめています。また、若年成人(20~24歳)についても、発症率と死亡率に関する情報をまとめています。

小児、青年および若年成人における発症率と死亡率

全体として、COVID-19による小児、青年、若年成人の感染者数と死亡者数は、成人と比較して少ない状況です。2019年12月30日から2021年9月6日までにWHOに報告された年齢別の症例データに基づくと、世界の感染者数は、年齢区分に比例して増加しています(下表参照)。24歳までの年齢区分では、5歳未満の小児の割合が最も少なく、思春期(15~19歳)と若年成人(20~24歳)を合わせた年齢区分では、世界全体の患者数に占める割合が最も多くなりました。同年齢区分の死亡者数は、全世界の死亡者数に占める割合が0.5%未満でした。
 
年齢区分 累計感染者数 全体の割合 累計死亡者数 全体の割合**
5歳未満 1,599,073人 1.8% 1,704人 0.1%
5~14歳 5,622,295人 6.2% 1,218人 0.1%
15~24歳 13,071,320人 14.3% 6,327人 0.4%
 *全年齢層における累計感染者数:90,011,040人
 **全年齢層における累計死亡者数:1,752,008人

小児と青年における症状は?

通常、5歳未満の小児、年長児(5~9歳)および青年(10~19歳)は、25歳以上の成人と比較してSARS-CoV-2感染による症状が少なく、軽度であり、重度の症状を発症する可能性は低い状況です。これらの年齢区分では、症状が軽く、無症状であることから、医療機関を受診する頻度が低くなることで検査頻度が低くなり、報告されないケースも発生します。初期の報告では、重症化のリスクは年齢に依存しており、1歳未満では重症化しやすいことが示唆されていましたが、いくつかの文献では、新生児(生後28日目以内)の患者は、他の小児患者と比較して軽度であることが示されています。しかし、1歳未満の乳児や新生児は、肺炎やマラリアなどCOVID-19と症状が重なる疾患のリスクが高いことに注意する必要があります。さらに、現在の文献では、年齢別の集計は体系的に行われておらず、これらの研究結果は、パンデミックの時期や入院患者に重点を置いた内容など、状況に応じた報告となっています。

小児や青年は、長期にわたる臨床症状(COVID-19後の状態、もしくはSARS-CoV-2感染後の急性後遺症)を経験するという報告もありますが、その頻度や特徴についてはまだ調査中です。

さらに、ヨーロッパではSARS-CoV-2感染と一時的に関連した小児炎症性多系統症候群(PIMS-TS)、アメリカでは小児多系統炎症症候群(MIS-C)と呼ばれる炎症性症候群が、稀ながら発生することがあり、COVID-19からの回復を複雑にしています。

新小児と青年は成人と比較してSARS-CoV-2に感染しにくいのか?

SARS-CoV-2に感染するリスクは、感受性(宿主の生物学的要因)、ウイルスの生物学的特性、曝露の種類(出勤、通学など)に関連する環境要因、曝露の強度(地域社会での感染の度合い、公衆衛生・社会的措置の遵守)の組み合わせによって決定されます。

複数の集団におけるSARS-CoV-2血清検出率とウイルス排出量の研究では、小児や青年が成人と同じ割合で感染するかどうかについて調査されていますが、結果はまちまちの状況です。これは、調査がパンデミックの異なる時期に実施され、異なるレベルの公衆衛生・社会的措置の状況下にあったためと考えられます。しかしながら、あらゆる年齢層の子供がSARS-CoV-2に感染し、他者にウイルスを拡散する可能性があることは確認されています。

思春期におけるCOVID-19の世界的な発生率に関するデータによると、14歳未満よりも高い割合でSARS-CoV-2陽性となることが示唆されていますが、より詳細な情報を得るためには血清有病率調査が必要です。さらに、SARS-CoV-2の変異株に対する小児や青年の感受性に影響を与える要因について、より詳細な疫学的情報が緊急に必要です。

SARS-CoV-2感染伝播について、小児、年長児、青年の間で違いはあるのか?

COVID-19の発生は、中学校、サマーキャンプ、デイケアセンターなどで確認されており、特に物理的な距離をとっていない、マスクを着用していないといったリスクを軽減していない事例で発生しています。二次感染率を見ると、小児は青年や成人よりも感染力が弱いという予備的なエビデンス(証拠)が報告されています。

SARS-CoV-2に感染した小児や青年は、呼吸器系でウイルスを排出し、糞便中にもウイルスを排出する可能性があります。SARS-CoV-2陽性者のうち、症状発現後の同じ時点における検査結果で比較すると、SARS-CoV-2 のウイルスRNAの呼吸器系への排出量は、小児、青年、成人の間で同様であることが示唆されています。

SARS-CoV-2感染の症状別における年齢、ウイルス量、感染力の関係については、無症状者や軽症者を対象とした体系的な検査がほとんど行われていないため、包括的な調査が行われていません。

このように、SARS-CoV-2の年代別の相対的な感染力については、生物学的要因、宿主要因、ウイルス要因、環境要因の影響を明確にすることが困難であるため、依然として不明確な状況です。小児のみならず、成人と高齢者を比較することも困難です。

まとめ

一般的に、SARS-CoV-2に感染した小児や青年は、COVID-19の症状が軽いと言われていますが、デルタ型を含むSARS-CoV-2の変異株に感染した場合、同様の状況が続くかどうかを判断するには、さらなる調査が必要です。小児や青年への感染リスクは、地域社会での感染レベルやウイルス対策、宿主要因、ウイルス自体の生物学的要因などの状況に左右されます。しかし、全ての年齢の小児や青年が感染し、SARS-CoV-2を他者に感染させることもあります。年少の子供は年長の子供や青年に比べて感染しにくい可能性がありますが、SARS-CoV-2の感染全体に占める小児や青年の正確な要因については、さらなる調査が必要です。

特に12歳以下の小児については、予防接種を受ける資格がほとんどないため、物理的な距離をとる、手を清潔にする、咳をする際は肘を曲げティッシュで覆う、室内では十分な換気をする、マスクを着用するなどの公衆衛生・社会的措置が重要となります。学校では、全ての年齢層に対して一貫した適切な対策を講じる必要があります。

出典

COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 14 September 2021
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---14-september-2021

翻訳協力:関西空港検疫所