新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO) 2021年10月19日

世界の概況

2021年10月17日時点で、直近1週間(10月11日~17日)の新規感染者数は276万3,957人が報告され、前週に引き続いて減少しました(図1)。ヨーロッパ地域を除く5地域で減少し、世界全体では前週から4%減少しました。減少幅が最も大きかったのはアフリカ地域の18%で、ヨーロッパ地域のみ7%の増加となりました。
 
新規死亡者数は4万6,140人が報告され、前週に引き続いて減少しました。ヨーロッパ地域と西太平洋地域を除く4地域で減少し、世界全体では前週から2%減少しました。減少幅が最も大きかったのはアフリカ地域の25%で、ヨーロッパ地域は4%、西太平洋地域は1%の増加となりました。
 
WHOに報告されている全世界の累積感染者数は2億4,023万9,218人、累積死亡者数は489万2,690人となりました。いずれも、8月以降の減少傾向が続いています。
 
人口10万人当たりの新規感染者数が多いのは、ヨーロッパ地域(145.6人)とアメリカ地域(79.9人)で、人口10万人当たりの新規死亡者数が多いのは、ヨーロッパ地域(1.9人)とアメリカ地域(1.8人)でした。いずれも、前週と同地域でした。
 
直近1週間における新規感染者数が多い上位5か国は、アメリカ合衆国(582,707人:11%減少)、イギリス(283,756人:14%増加)、ロシア連邦(217,322人:15%増加)、トルコ(213,981人:同程度)、インド(114,244人:18%減少)でした。
 
10月19日時点で、懸念すべき変異株(VOC)が報告されている国・地域の数は、アルファ株196(前週比+1)、ベータ株145(同前週)、ガンマ株99(同前週)、デルタ株193(前週比+2)でした。
 
 
図1 2021年10月17日時点の週別・WHO管轄地域別のCOVID-19感染者数及び世界の死亡者数の推移


表1 2021年10月17日時点のWHO管轄地域別の新規・累積COVID-19確定症例数及び死亡者数

WHO管轄地域別の概況

アフリカ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は27,606人、新規死亡者数は940人でした。前週と比較して、新規感染者数は18%減少し、新規死亡者数は25%減少しました。地域内のほとんどの国々(36/49:73%)で感染者の減少が報告されている一方で、13か国(28%)で15%以上の増加が報告されました。新規感染者の約3分の1は、エチオピアと南アフリカから報告されている状況です。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
エチオピア 4,706人 4.1人 22%減少
南アフリカ共和国 4,682人 7.9人 20%減少
カメルーン 3,003人 11.3人 同程度
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
南アフリカ共和国 295人 1.0人未満 45%減少
エチオピア 247人 1.0人未満 10%減少
ナイジェリア 59人 1.0人未満 181%増加
 

アメリカ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は816,860人、新規死亡者数は18,322人でした。前週と比較して、新規感染者数は14%減少し、新規死亡者数は1%減少しました。地域全体の患者発生率は減少傾向が続いていますが、一部の国々(9/56:16%)では、感染者の増加が報告されました。地域全体の死亡者数は前週と同程度でしたが、アメリカ合衆国では23%の増加が報告されました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
アメリカ合衆国 582,707人 176.0人 11%減少
ブラジル 76,746人 36.1人 27%減少
メキシコ 35,468人 27.5人 17%減少
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
アメリカ合衆国 11,158人 3.4人 23%増加
メキシコ 2,398人 1.9人 34%減少
ブラジル 2,244人 1.1人 30%減少
 

東地中海地域

直近1週間で確認された新規感染者数は136,074人、新規死亡者数は2,769人でした。前週と比較して、新規感染者数は6%減少し、新規死亡者数は8%減少しました。いずれも、8月中旬から減少傾向が続いています。地域内のほとんどの国々(15/22:68%)で感染者の減少が報告されている一方で、スーダンとアフガニスタンは、それぞれ22%、34%の増加が確認されました。死亡者数は、ほとんどの国々(17/22:77%)で減少が報告されている一方で、アフガニスタンとリビアは、それぞれ89%、11%の増加が確認されました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
イラン・イスラム共和国 81,785人 97.4人 同程度
イラク 11,628人 28.9人 22%減少
ヨルダン 7,718人 75.6人 8%増加
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イラン・イスラム共和国 1,506人 1.8人 同程度
エジプト 268人 1.0人未満 同程度
パキスタン 201人 1.0人未満 同程度
 

ヨーロッパ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は1,358,284人、新規死亡者数は17,998人でした。前週と比較して、新規感染者数は7%増加し、新規死亡者数は4%増加しました。地域内の半数以上の国々(35/61:57%)で、感染者の増加が報告されました。死亡者数は7月末から増加傾向が続いており、ルクセンブルク(200%)、デンマーク(83%)、スロバキア(82%)では、大幅な増加が確認されました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
イギリス 283,756人 418.0人 14%増加
ロシア連邦 217,322人 148.9人 15%増加
トルコ 213,981人 253.7人 同程度
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ロシア連邦 6,897人 4.7人 6%増加
ルーマニア 2,360人 12.2人 27%増加
ウクライナ 2,140人 4.9人 25%増加
 

東南アジア地域

直近1週間で確認された新規感染者数は214,984人、新規死亡者数は2,933人でした。前週と比較して、新規感染者数は13%減少し、新規死亡者数は19%減少しました。いずれも8月初旬から減少傾向が続いており、タイを除く地域内の全ての国々で減少が報告されました。タイは、新規感染者数が前週と同程度でした。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
インド 114,244人 8.3人 18%減少
タイ 72,817人 104.3人 同程度
ミャンマー 9,202人 16.9人 10%減少
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
インド 1,535人 1.0人未満 13%減少
タイ 582人 1.0人未満 14%減少
インドネシア 301人 1.0人未満 37%減少
 

西太平洋地域

直近1週間で確認された新規感染者数は210,149人、新規死亡者数は3,178人でした。前週と比較して、新規感染者数は16%減少し、新規死亡者数は1%増加しました。地域内のほとんどの国々(19/26:73%)で感染者の減少が報告され、8月中旬のピーク以降2か月間、減少傾向が続いています。しかし、複数の国々(8/26:31%)で死亡者の増加が報告されており、パプアニューギニアでは481%の増加が確認されました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
フィリピン 59,052人 53.9人 20%減少
マレーシア 52,321人 161.7人 18%減少
ベトナム 24,726人 25.4人 25%減少
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
フィリピン 1,075人 1.0人未満 27%増加
ベトナム 689人 1.0人未満 18%減少
マレーシア 593人 1.8人 15%減少
 

変異株の状況

2021年5月31日、WHOは、新型コロナウイルスの変異株に関する一般の人々の議論を促進するために、懸念すべき変異株(VOC)及び注目すべき変異株(VOI)の言いやすい・覚えやすい新たな呼称を発表しました(表2・表3)。
 
表2 2021年10月19日時点の懸念すべき変異株(VOC)


【VOCの呼称】
・イギリス由来の変異株(B.1.1.7)→ アルファ株(2020年12月18日指定)
・南アフリカ由来の変異株(B.1.351)→ ベータ株(2020年12月18日指定)
・ブラジル由来の変異株(P.1)→ ガンマ株(2021年1月11日追加)
・インド由来の変異株(B.1.617.2)→ デルタ株(2021年5月11日VOIから変更)
 
表3 2021年10月19日時点の注目すべき変異株(VOI)

【VOIの呼称】
・ペルー由来の変異株(C.37)→ ラムダ株(2021年6月14日追加)
・コロンビア由来の変異株(B.1.621)→ ミュー株(2021年8月30日追加)
 
WHOは、加盟国の保健当局や研究機関、研究者と協力して、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株が感染や病気の特徴を変えていないか、また、各国当局が適用する公衆衛生・社会的措置(PHSM)の効果に影響を与えていないかを定期的に評価しています。WHOはこの評価に基づき、定義を見直して調整しています。変異株の最新の状況については、以下のページを新たに設けてとりまとめています。
 
SARS-CoV-2変異株の追跡
https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/
 
 
現在の世界的なSARS-CoV-2の疫学的な特徴は、確認されている変異株の中でデルタ株が優勢になっており、他の変異株の有病率は低下しています(図2)。
 
図2 WHO管轄地域別の経時的なVOCまたはVOI配列の割合(2020年8月1日~2021年10月15日)


デルタ株は感染力が高いことから、多くの国々で他のVOCを含む他の変異株を凌駕しています。特に、南米のいくつかの国々では、デルタ株の伝播が他の地域よりも緩やかな傾向にあり、他の変異株(ガンマ、ミューなど)が依然として遺伝子配列の大きな割合を占めています。
 
最近の変化と世界レベルでのVOCの地理的分布をよりよく反映させるために、今回の報告では、VOC有病率の推定値と、これまでにWHOに公式または非公式に報告されたVOCの検出に関するデータを重ね合わせた改訂版の世界地図を示します(図3)。
  
国別の有病率は、GISAIDにアップロードされた過去60日以内の検体採取日のSARS-CoV-2の全配列の割合として算出され、現在のVOCの有病率が高い場所を示す3つのグループ(優位:51%以上、中程度:11%~50%、低度:10%以下)に分類しました。
 
図3 2021年10月19日時点における世界で循環しているVOCの割合








推定値の頑健性を確保するため、比率の推定は報告期間中に 100 検体以上の配列がアップロードされた国に限定しています。提出された配列が 100 検体未満の国については、提出された VOC配列の検出・非検出に関するデータ、および VOC 検出に関する過去の報告書を示しています。
 
現在の分布状況から、直近数か月の間にデルタ株が最も普及している変異株となり、世界中で広く伝播していることがわかります。しかし、一部の国々では、他のVOCや他の変異株が低いレベルで伝播しており、地域差が確認されています。
 
世界のVOC分布は、国ごとの検査対策や配列解析能力の違い、報告の遅れなど、サーベイランスの限界を十分に考慮した上で解釈する必要があります。現在、世界的にSARS-CoV-2のゲノムサーベイランスを強化し、配列解析の適用範囲や変異株の検出率を高めるための取り組みが行われています。

出典

COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 19 October 2021
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---19-october-2021

翻訳協力:関西空港検疫所