新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO) 2021年11月16日

世界の概況

2021年11月14日時点で、直近1週間(11月8日~14日)の新規感染者数は334万6,517人が報告され、6%増加して4週連続の増加となりました(図1)。ヨーロッパ地域(8%増)、アメリカ地域(8%増)、西太平洋地域(6%増)の3地域で増加しました。減少幅が最も大きかったのは、アフリカ地域の33%でした。
 
新規死亡者数は4万9,584人が報告され、1%とわずかながら増加となりました。先週は減少に転じましたが、再び増加に転じました。ヨーロッパ地域(5%増)、アフリカ地域(3%増)、東南アジア地域(1%増)の3地域で増加しました。減少幅が最も大きかったのは、東地中海地域の14%でした。
 
WHOに報告されている全世界の累積感染者数は2億5,282万6,597人、累積死亡者数は509万2,761人となりました。
 
人口10万人当たりの新規感染者数が多いのは、ヨーロッパ地域(230人)とアメリカ地域(74.2人)で、人口10万人当たりの新規死亡者数が多いのは、ヨーロッパ地域(3.0人)とアメリカ地域(1.3人)でした。いずれも、前週と同地域でした。
 
直近1週間における新規感染者数が多い上位5か国は、アメリカ合衆国(550,684人:8%増加)、ロシア連邦(275,579人:同程度)、ドイツ(254,436人:50%増加)、イギリス(252,905人:同程度)、トルコ(180,167人:9%減少)でした。前週から引き続き、ドイツからの報告が大幅に増加しています。
 
 
図1 2021年11月14日時点の週別・WHO管轄地域別のCOVID-19感染者数及び世界の死亡者数の推移


表1 2021年11月14日時点のWHO管轄地域別の新規・累積COVID-19確定症例数及び死亡者数

WHO管轄地域別の概況

アフリカ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は1万3,674人、新規死亡者数は548人でした。前週と比較して、新規感染者数は33%減少し、新規死亡者数は3%増加しました。地域全体の感染者は減少していますが、地域内の複数の国々(15/49:31%)において、10%以上の感染者の増加が報告されました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
南アフリカ共和国 1,926人 3.2人 同程度
エチオピア 1,584人 1.4人 25%減少
カメルーン 1,371人 5.2人 26%減少
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
南アフリカ共和国 157人 1.0人未満 同程度
エチオピア 82人 1.0人未満 同程度
ナイジェリア 55人 1.0人未満 450%増加
 

アメリカ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は75万8,669人、新規死亡者数は1万2,791人でした。前週と比較して、新規感染者数は8%増加し、新規死亡者数は3%減少しました。地域内の複数の国々(19/59:22%)において、10%以上の感染者の増加が報告されました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
アメリカ合衆国 550,684人 166.4人 8%増加
ブラジル 76,738人 36.1人 11%増加
メキシコ 19,831人 15.4人 同程度
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
アメリカ合衆国 7,993人 2.4人 15%減少
メキシコ 1,458人 1.1人 同程度
ブラジル 1,431人 1.0人未満 10%減少
 

東地中海地域

直近1週間で確認された新規感染者数は10万1,743人、新規死亡者数は1,974人でした。前週と比較して、新規感染者数は9%減少し、新規死亡者数は14%減少しました。いずれも、8月中旬から3か月間、減少傾向が続いています。地域内の一部の国々(5/22:22.7%)において、10%以上の感染者の増加が報告されました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
イラン・イスラム共和国 51,315人 61.1人 20%減少
ヨルダン 15,964人 156.5人 24%増加
イラク 6,449人 16.0人 17%減少
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イラン・イスラム共和国 869人 1.0人 17%減少
エジプト 424人 1.0人未満 同程度
イラク 164人 1.0人未満 9%減少
 

ヨーロッパ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は214万5,966人、新規死亡者数は2万8,304人でした。前週と比較して、新規感染者数は8%増加し、新規死亡者数は5%増加しました。地域全体の新規感染者数は、世界全体の64%を占めています。9月末からの増加傾向は1か月以上続いており、地域内の半数近い国々(29/61:46%)で、10%以上の感染者の増加が報告されました。特に、ドイツの増加が顕著になっており、前週と比較して50%の増加が報告されました。また、地域内の複数の国々(23/61:38%)で10%以上の死亡者の増加が報告されており、ノルウェー(67%増)、スロバキア(58%増)、クロアチア(55%増)で大幅に増加しました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ロシア連邦 275,579人 188.8人 同程度
ドイツ 254,436人 305.9人 50%増加
イギリス 252,905人 372.5人 同程度
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ロシア連邦 8,276人 5.7人 同程度
ウクライナ 4,355人 10.0人 13%増加
ルーマニア 3,158人 16.3人 同程度
 

東南アジア地域

直近1週間で確認された新規感染者数は15万2,535人、新規死亡者数は3,530人でした。前週と比較して、新規感染者数は3%減少し、新規死亡者数は1%増加しました。感染者は8月初旬から3か月以上の減少傾向が続いています。死亡者は前週と同程度でしたが、1%とわずかながら増加しました。インドの死亡者が、地域全体の77%を占めています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
インド 81,771人 5.9人 同程度
タイ 50,411人 72.2人 10%減少
ミャンマー 6,446人 11.8人 同程度
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
インド 2,739人 1.0人未満 同程度
タイ 372人 1.0人未満 19%減少
スリランカ 139人 1.0人未満 23%増加
 

西太平洋地域

直近1週間で確認された新規感染者数は17万3,930人、新規死亡者数は2,437人でした。前週と比較して、新規感染者数6%増加し、新規死亡者数は5%減少しました。地域内の一部の国々(5/27:19%)において、感染者の増加が報告されており、フィジー(42%増)、ベトナム(26%増)、ニュージーランド(20%増)で大幅に増加しました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ベトナム 57,308人 58.9人 26%増加
未掲載      
未掲載      
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
フィリピン 1,033人 1.0人未満 14%減少
ベトナム 548人 1.0人未満 25%増加
マレーシア 375人 1.2人 同程度
 

変異株の状況

2021年5月31日、WHOは、新型コロナウイルスの変異株に関する一般の人々の議論を促進するために、懸念すべき変異株(VOC)及び注目すべき変異株(VOI)の言いやすい・覚えやすい新たな呼称を発表しました(表2・表3)。
 
表2 2021年11月16日時点の懸念すべき変異株(VOC)

【VOCの呼称】
・イギリス由来の変異株(B.1.1.7)→ アルファ株(2020年12月18日指定)
・南アフリカ由来の変異株(B.1.351)→ ベータ株(2020年12月18日指定)
・ブラジル由来の変異株(P.1)→ ガンマ株(2021年1月11日追加)
・インド由来の変異株(B.1.617.2)→ デルタ株(2021年5月11日VOIから変更)
 
表3 2021年11月16日時点の注目すべき変異株(VOI)
【VOIの呼称】
・ペルー由来の変異株(C.37)→ ラムダ株(2021年6月14日追加)
・コロンビア由来の変異株(B.1.621)→ ミュー株(2021年8月30日追加)

WHOは、加盟国の保健当局や研究機関、研究者と協力して、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株が感染や病気の特徴を変えていないか、また、各国当局が適用する公衆衛生・社会的措置(PHSM)の効果に影響を与えていないかを定期的に評価しています。WHOはこの評価に基づき、定義を見直して調整しています。変異株の最新の状況については、以下のページを新たに設けてとりまとめています。
 
SARS-CoV-2変異株の追跡
https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/
 
最近の変化と世界レベルでのVOCの地理的分布をよりよく反映させるために、VOC有病率の推定値と、これまでにWHOに公式または非公式に報告されたVOCの検出に関するデータを重ね合わせた改訂版の世界地図を示します(図2)。
 
国別の有病率は、GISAIDにアップロードされた過去60日以内の検体採取日のSARS-CoV-2の全配列の割合として算出され、現在のVOCの有病率が高い場所を示す3つのグループ(優位:51%以上、中程度:11%~50%、低度:10%以下)に分類しました。
 
現在のSARS-CoV-2の世界的な遺伝子疫学の特徴は、デルタ株が優位になっており、その他の変異株の有病率は低下しています。デルタ株はほとんどの国で、他のVOCを含む他の変異株を凌駕している状況です。過去60日間に採取されてGISAIDにアップロードされた79万9,645検体のうち、79万7,174検体(99.7%)がデルタ株、791検体(0.1%)がガンマ株、313検体(0.1%未満)がアルファ株、15検体(0.1%未満)がベータ株、残り0.1%がその他の流通している変異株(VOIの ミュー株とラムダ株を含む)でした。特に南米諸国では、デルタ株の増加が緩やかとなっており、他の型(ガンマ株、ラムダ株、ミュー株など)が、依然として報告の大部分を占めています。世界のVOC分布は、国ごとの検査戦略、解析能力の違い、報告のタイミングなど、サーベイランスの限界を十分に考慮して解釈する必要があります。
 
SARS-CoV-2の拡散と変異が進む中、デルタ株を含めた新たな変異の報告が続いています。デルタ株においては、新たに2つの系統が報告されており、現在は21Aに加えて、21I、21Jの3つがパンゴAY系統に分類されています(表2に21Jを追加)。
 
AY.4.2は、デルタ株の中で新たに指定されたパンゴ系統で、スパイクタンパクに2つの変異(A222V・Y145H)を含む3つの変異が追加されています。2021年7月以降、AY.4.2配列株の報告が増加しており、10月25日現在、42か国から26,000件以上のAY.4.2配列株がGISAIDに報告されています。報告の大部分(93%)は英国からで、AY.4.2の割合が徐々に増加しており、10月3日から10日までに報告された世界のデルタ株全体の5.9%を占めていることが推定されています。AY.4.2が及ぼす影響を評価するために、疫学的および実験的研究(感染性の変化や抗体能力の低下など)が進行中です。
 
※米国では、AY.4.2配列株を「デルタプラス」と称していますが、WHOは今回の報告時点で呼称を定めていません。
 
図2 2021年11月16日時点における直近60日間のVOCの流行状況

出典

COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 16 November 2021
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---16-november-2021

翻訳協力:関西空港検疫所