コレラ―カメルーン共和国

Disease outbreak news   2021年12月16日

2021年に入ってから、カメルーンではコレラの散発的な発生が報告されています。2021年の第43週にあたる10月31日で終わる週において、カメルーンの保健当局はコレラの発生を宣言しました。現在、南西州に加え、中央州とリトラル(Littral)州からも患者が報告されています。2021年10月25日から12月10日の間に、この3地域では、コレラの疑い例309例、検査確定例4例、死者19人(致死率(CFR)6.1%)が累積的に報告されました。
 
南西州では、10月27日にエコンドティティ(Ekondo Titi)保健区域のバムーソ(Bamusso) 自治体のケッセ(Kesse)地区で最初の患者2人が報告されました。この患者から2つの便検体が採取され、ドゥアラ(Douala)のラキンティニー(Laquintinie)病院の検査所で培養によりコレラ陽性と確定されました。12月10日現在、エコンドティティ保健区域では、累積163の疑い例と7人の死者(CFR 4.3%)が確認されています。患者の66%は男性で、16.6%が5歳未満です。アウトブレイクは隣接するバカシ(Bakassi)保健区域にも広がり、95人の疑い患者と11人の死者(CFR 11.6%)が確認されています。
 
2021年10月28日、カメルーンの首都ヤウンデ( Yaoundé )の都市部にあるビアン=アシ(Biyem-Assi)保健区域のアコクンドエ(Akok-Ndoe)の保健地域から、南西州で報告された患者との疫学的に関連のないコレラの疑い例が中央州からも報告されました。迅速診断検査により便検体が陽性の判定を呈しました。10月29日、首都ヤウンデ(Yaoundé)のカメルーン・パスツール・センター(Pasteur Centre of Cameroon)で、便検体からコレラ菌が検出され、PCRと培養により陽性であることが確認されました。ビアン=アシ保健区域から、累積50人の疑い例と1人の死亡例(CFR 2%)が報告されています。このうち52%が男性で、8%が5歳未満でした。中央州では、これまでの最後の症例は、2021年11月11日に報告されました。
 
リトラル州では、2021年11月21日にドゥアラにあるラキンティニー(Laquintinie)病院の検査所で8歳の男子が培養によりコレラ患者であると確認されました。この症例は独立した症例で、他の疑われる症例はありません。彼の家族や近隣の人々も渡航歴がないと報告しています。

公衆衛生上の取り組み

調整
・流行地では、災害管理システムが発動され、対応の調整と地区のチームの支援を行っています。
・対応計画が練られ、保健省は、WHO、ユニセフ、国境なき医師団(MSF)などのヘルスパートナーとともに、対応計画のさまざまな分野を支援しています。
・調整会議は週2回開催され、状況報告書が作成され、関連するステークホルダーに状況が報告されています。
 
サーベイランス
・疫学的サーベイランス活動は、コミュニティベースのサーベイランスや積極的な症例発見を含め、継続的に行われています。
・南西州、中央州、沿岸州では、コレラ発生の疫学的初期調査が完了しました。
・近隣の保健区域や高リスクの地域では、監視活動が強化されています。
 
検査体制とケースマネージメント
・南西州(エコンドティティ)と中央州に緊急対応チームが配備されています。
・迅速診断テストキットとサンプル輸送媒体が流行地地に配備されました。
・バムッソ保健センター(Bamusso Health Centre)に14床のコレラ治療ユニット(CTU)が設置され、MSFの支援により治療ガイドラインが作成されました。コレラ症例管理キットが医療施設に配布され、治療は無料です。
・南西州のバカシ保健地区では、MSFによって経口補水液ポイント(ORP)が設置されました。
 
水、下水設備、衛生管理(WASH) 
・地域リーダーと選ばれた地域住民は、手洗い、浄水方法、家庭や公共スペースの消毒に関するトレーニングを受けました。
・流行地には浄水タブレット(Aquatab)が配布されました。
・コレラ治療ユニットではWASHが改善されました。
・地域保健職員は、コレラに関連する死者の安全な埋葬について訓練を受けました。
 
リスクコミュニケーションとコミュニティへの働きかけ
・国は、経口コレラワクチン(OCV)の要請書を作成し、コレラに対するワクチン供給に関する国際調整グループ(International Coordination Group of Vaccine Provision for Cholera: ICG)に送り、流行対策ワクチン接種キャンペーンを実施しました。
・リスクコミュニケーションとコミュニティ参加活動は継続中です。コミュニティと宗教指導者は、関係者とともに、ワクチン接種にコミュニティを動員するためのチームを支援しています。
・アクセスが困難な地域では、リスクコミュニケーション活動とともに、感染が疑われる患者の自宅の除染が行われています。

WHOによるリスク評価

コレラは、汚染された水や食品に含まれるコレラ菌(Vibrio cholerae)を体内に取りこむによって引き起こされる急性の腸管感染症です。重症化すると重度の脱水症状を引き起こし、治療せずに放置すると数時間で死に至ることもあります。主に、安全な水や適切な衛生設備へのアクセスが不十分であることが原因とされています。コレラ菌への曝露の頻度、曝露された人々、状況によって、急速に広がる可能性があります。
 
カメルーンでは、コレラが風土病として流行しています。2018年以降、現在の感染地域(南西州、中央州、リトラル州)を含む国内のさまざまな地域で、コレラの発生が毎年報告されています。南西州の流行地や首都ヤウンデにおける限られた安全な飲料水や医療施設へのアクセス、安全でない望ましくないWASH環境の要因となる文化的慣習など、いくつかのリスク要因が同国におけるビブリオコレラの蔓延・常在化に寄与しています。
 
首都ヤウンデの中心部に位置するビアン=アシ保健区域は、人口密度が高く、安全な飲料水と衛生設備へのアクセスが十分に整っていない地域です。このため、迅速な対策がとられないと、コレラの発生が急速に拡大する恐れがあります。
 
南西州の被災した保健区域(エコンド・ティティ、バカシ、モボンゲ(Mobonge))は、武力紛争が続く人道危機地帯に属しており、近隣の他の地域にコレラが拡散するリスクは排除できません。治安上の制約があり、地理的にアクセスしにくい地域かつ通信網が不十分なため、疫学的な更新が不定期で、患者の報告も過少になる可能性があります。住民は安全な飲料水やトイレへのアクセスがないかあったとしても限られており、全体的な衛生状態も不十分です。医療へのアクセスは限られており、患者は治療を受けるためにボートで長距離を移動しなければならないこともあります。
 
さらに、流行の起きた南西州はナイジェリアと国境を接しており、国境を越えた人口の移動が頻繁に起こっています。北部州では、カメルーンはナイジェリアのアダマワ(Adamawa)、ボルノ(Borno)、タラバ(Taraba)の各州と隣接しており、これらの州では現在コレラが流行しています。また、特にナイジェリアとカメルーンに隣接するチャド(Chad)共和国への感染拡大の危険性もあります。従って、国および地域レベルのリスクは高いと評価されます。世界レベルでは、リスクは低いと考えられています。

WHOからのアドバイス

WHOは、コレラの感染を防ぐために、安全な水と衛生設備へのアクセス、適切な廃棄物管理、食品衛生管理の実践、衛生習慣を改善することを推奨しています。公衆衛生に関する重要なコミュニケーション・メッセージを提供する必要があります。
 
特にコミュニティレベルでのサーベイランスの強化が推奨されます。死亡率を減少させるために、医療へのアクセスの改善を含む適切な症例管理を、流行地域で実施する必要があります。新しい地域に広がるリスクを減らすために、コレラの発生を迅速に検知し、対応するための国の準備と対策を確保することが必要です。コレラの発生は、人口の移動が活発な国境地帯で起こっているため、WHOは各国に対し、協力と定期的な情報共有を徹底するよう促しています。
 
WHOは、現在の流行に関する利用可能な情報に基づき、カメルーンへの渡航や貿易にいかなる制限をすることも推奨していません。

出典

Disease outbreak news: cholera – Cameroon
16 December 2021
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/cholera-cameroon