新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告
COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO) 2021年12月7日
世界の概況
2021年12月5日時点で、直近1週間(11月29日~12月5日)の新規感染者数は前週と同程度の4,105,073人が報告されました(図1)。前週と比較して、アフリカ地域では79%、アメリカ地域では21%増加しました。一方、西太平洋地域と東南アジア地域ではともに10%減少しました。
新規死亡者数は5万2,641人が報告され、前週と比較して10%増加しました。東南アジア地域で49%増加、アメリカ地域で38%増加しました。一方、東地中海地域は13%減少し、アフリカ地域も8%減少しました。
WHOに報告されている全世界の累積感染者数は2億6,481万5,815人、累積死亡者数は524万9,793人となりました。
人口10万人当たりの新規感染者数が多いのは、ヨーロッパ地域288.0人とアメリカ地域91.4人でした。これらの地域では、人口10万人当たりの新規死亡者数も多くなっており、ヨーロッパ地域3.1人、アメリカ地域1.3人でした。他の4地域は、人口10万人当たりの新規死亡者数が1人未満の状況です。
直近1週間における新規感染者数が多い上位5か国は、アメリカ合衆国(752,394人:30%増加)、ドイツ(396,429人:同程度)、イギリス(310,696人:同程度)、フランス(283,500人:49%増加)ロシア連邦(231,240人:同程度)でした。
新規死亡者数は5万2,641人が報告され、前週と比較して10%増加しました。東南アジア地域で49%増加、アメリカ地域で38%増加しました。一方、東地中海地域は13%減少し、アフリカ地域も8%減少しました。
WHOに報告されている全世界の累積感染者数は2億6,481万5,815人、累積死亡者数は524万9,793人となりました。
人口10万人当たりの新規感染者数が多いのは、ヨーロッパ地域288.0人とアメリカ地域91.4人でした。これらの地域では、人口10万人当たりの新規死亡者数も多くなっており、ヨーロッパ地域3.1人、アメリカ地域1.3人でした。他の4地域は、人口10万人当たりの新規死亡者数が1人未満の状況です。
直近1週間における新規感染者数が多い上位5か国は、アメリカ合衆国(752,394人:30%増加)、ドイツ(396,429人:同程度)、イギリス(310,696人:同程度)、フランス(283,500人:49%増加)ロシア連邦(231,240人:同程度)でした。
図1 2021年12月5日時点の週別・WHO管轄地域別のCOVID-19感染者数及び世界の死亡者数の推移
表1 2021年12月5日時点のWHO管轄地域別の新規・累積COVID-19確定症例数及び死亡者数
WHO管轄地域別の概況
アフリカ地域
直近1週間で確認された新規感染者数は7万9,491人、新規死亡者数は498人でした。前週と比較して、新規感染者数は79%増加しましたが、新規死亡者数は13%減少しました。地域内の半数近い国々(21/49:43%)において、10%以上の感染者の増加が報告されました。エスワティニで1,900%、ジンバブエで1,361%、モザンビークで1,207%、ナミビアで681%と大幅に増加しました。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国
新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
南アフリカ共和国 | 62,021人 | 104.6人 | 111%増加 |
ジンバブエ | 4,572人 | 30.8人 | 1,361%増加 |
レユニオン | 2,140人 | 239.0人 | 14%増加 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
南アフリカ共和国 | 174人 | 1.0人未満 | 21%減少 |
モーリシャス | 126人 | 9.9人 | 31%増加 |
エチオピア | 58人 | 1.0人未満 | 9%減少 |
アメリカ地域
直近1週間で確認された新規感染者数は93万5,062人、新規死亡者数は12,987人でした。前週と比較して、新規感染者数は21%増加し、新規死亡者数は38%増加しました。地域内の複数の国々(15/56:27%)において、10%以上の感染者の増加が報告されました。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国
新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
アメリカ合衆国 | 752,394人 | 227.3人 | 30%増加 |
ブラジル | 61,779人 | 29.1人 | 同程度 |
カナダ | 20,188人 | 53.5人 | 同程度 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
アメリカ合衆国 | 8,527人 | 2.6人 | 56%増加 |
ブラジル | 1,443人 | 1.0人未満 | 9%減少 |
メキシコ | 1,002人 | 1.0人未満 | 55%増加 |
東地中海地域
直近1週間で確認された新規感染者数は9万4,724人、新規死亡者数は1,622人でした。前週と比較して、新規感染者数は2%増加し、新規死亡者数は8%減少しました。今回の報告では、ほぼ半数の国々(10/22)で10%以上の感染者の増加が報告されています。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国
新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
ヨルダン | 32,108人 | 314.7人 | 15%増加 |
イラン・イスラム共和国 | 26,255人 | 31.3人 | 18%減少 |
レバノン | 10,406人 | 152.5人 | 11%増加 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
イラン・イスラム共和国 | 575人 | 1.0人未満 | 18%減少 |
エジプト | 377人 | 1.0人未満 | 13%減少 |
ヨルダン | 200人 | 2.0人 | 19%増加 |
ヨーロッパ地域
直近1週間で確認された新規感染者数は268万7,257人、新規死亡者数は2万8,990人でした。前週と比較して、新規感染者数は3%減少し、新規死亡者数は2%減少しました。10月中旬から新規感染者数の増加が続いていましたが、今回の報告は前週と同程度でした。地域内の複数の国々(11/61:18%)において、10%以上の感染者の増加が報告されています。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国
新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
ドイツ | 396,429人 | 476.7人 | 同程度 |
イギリス | 310,696人 | 457.7人 | 同程度 |
フランス | 283,500人 | 435.9人 | 49%増加 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
ロシア連邦 | 8,523人 | 5.8人 | 同程度 |
ウクライナ | 3,163人 | 7.2人 | 18%減少 |
ポーランド | 2,636人 | 6.9人 | 19%増加 |
東南アジア地域
直近1週間で確認された新規感染者数は10万9044人、新規死亡者数は5,324人でした。前週と比較して、新規感染者数は11%減少しましたが、新規死亡者数は49%増加しました。7月から新規感染者数の減少が続いています。新規感染者が10%以上増加したのは、東ティモールのみでした。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国
新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
インド | 60,732人 | 4.4人 | 同程度 |
タイ | 34,428人 | 49.3人 | 18%減少 |
スリランカ | 5,162人 | 24.1人 | 12%減少 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
インド | 4,772人 | 1.0人未満 | 65%増加 |
タイ | 237人 | 1.0人未満 | 26%減少 |
スリランカ | 156人 | 1.0人未満 | 12%減少 |
西太平洋地域
直近1週間で確認された新規感染者数は19万9,495人、新規死亡者数は3,220人でした。前週と比較して、新規感染者数は10%減少し、新規死亡者数は2%増加しました。11月初旬から増加していた新規感染者数は、今回の報告で減少に転じました。地域内の一部の国々(5/27:19%)で10%以上の感染者の増加が報告されており、フランス領ポリネシア(3,976%増)、中国(147%増)、北マリアナ諸島(75%増)、韓国(26%増)、フィジー共和国(20%)で大幅に増加しました。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国
新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
ベトナム | 97,374人 | 100.0人 | 14%減少 |
マレーシア | 34,897人 | 107.8人 | 8%減少 |
韓国 | 32,142人 | 62.7人 | 26%増加 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
ベトナム | 1,369人 | 1.4人 | 36%増加 |
フィリピン | 1,025人 | 1.0人未満 | 21%減少 |
韓国 | 304人 | 1.0人未満 | 11%増加 |
変異株の状況
2021年5月31日、WHOは、懸念すべき変異株(VOC)及び注目すべき変異株(VOI)の言いやすい・覚えやすい新たな呼称を発表しました(表2・表3)
また、WHOは定期的な評価に基づき、定義を見直して調整しています。変異株の最新の状況については、以下のページにとりまとめています。
SARS-CoV-2変異株の追跡
https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/
最近の変化と世界レベルでのVOCの地理的分布をよりよく反映させるために、VOC有病率の推定値と、これまでにWHOに公式または非公式に報告されたVOCの検出に関するデータを重ね合わせた改訂版の世界地図を示します(図2)。新たなVOCに指定されたオミクロン株については、一部の限定された国々で報告されています(図3)。
国別の有病率は、GISAIDにアップロードされた過去60日以内の検体採取日のSARS-CoV-2の全配列の割合として算出され、現在のVOCの有病率が高い場所を示す3つのグループ(優位:51%以上、中程度:11%~50%、低度:10%以下)に分類しました。
現在のSARS-CoV-2の世界的な遺伝子疫学の特徴は、デルタ株が優位になっており、その他の変異株の有病率は低下しています。11月26日にオミクロン株が新たにVOCに指定され、全世界の57か国で確認されています。ほとんどが旅行者であることが判明していますが、さらなる情報で変わる可能性があります。過去60日間に採取されてGISAIDにアップロードされた89万9, 935検体のうち、89万7, 886検体(99.8%)がデルタ株、713検体(0.1%)がオミクロン株、286検体(0.1%未満)がガンマ株、154検体(0.1%未満)がアルファ株、64検体(0.1%未満)がベータ株、残り0.1%がその他の流通している変異株(VOIの ミュー株とラムダ株を含む)でした。
世界のVOC分布は、国ごとの検査戦略、解析能力の違い、報告のタイミングなど、サーベイランスの限界を十分に考慮して解釈する必要があります。
また、WHOは定期的な評価に基づき、定義を見直して調整しています。変異株の最新の状況については、以下のページにとりまとめています。
SARS-CoV-2変異株の追跡
https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/
最近の変化と世界レベルでのVOCの地理的分布をよりよく反映させるために、VOC有病率の推定値と、これまでにWHOに公式または非公式に報告されたVOCの検出に関するデータを重ね合わせた改訂版の世界地図を示します(図2)。新たなVOCに指定されたオミクロン株については、一部の限定された国々で報告されています(図3)。
国別の有病率は、GISAIDにアップロードされた過去60日以内の検体採取日のSARS-CoV-2の全配列の割合として算出され、現在のVOCの有病率が高い場所を示す3つのグループ(優位:51%以上、中程度:11%~50%、低度:10%以下)に分類しました。
現在のSARS-CoV-2の世界的な遺伝子疫学の特徴は、デルタ株が優位になっており、その他の変異株の有病率は低下しています。11月26日にオミクロン株が新たにVOCに指定され、全世界の57か国で確認されています。ほとんどが旅行者であることが判明していますが、さらなる情報で変わる可能性があります。過去60日間に採取されてGISAIDにアップロードされた89万9, 935検体のうち、89万7, 886検体(99.8%)がデルタ株、713検体(0.1%)がオミクロン株、286検体(0.1%未満)がガンマ株、154検体(0.1%未満)がアルファ株、64検体(0.1%未満)がベータ株、残り0.1%がその他の流通している変異株(VOIの ミュー株とラムダ株を含む)でした。
世界のVOC分布は、国ごとの検査戦略、解析能力の違い、報告のタイミングなど、サーベイランスの限界を十分に考慮して解釈する必要があります。
表2 2021年12月7日時点の懸念すべき変異株(VOC)
【VOCの呼称】
・イギリス由来の変異株(B.1.1.7)→ アルファ株(2020年12月18日指定)
・南アフリカ由来の変異株(B.1.351)→ ベータ株(2020年12月18日指定)
・ブラジル由来の変異株(P.1)→ ガンマ株(2021年1月11日追加)
・インド由来の変異株(B.1.617.2)→ デルタ株(2021年5月11日VOIから変更)
・複数国由来の変異株(B.1.1.529)→ オミクロン株(2021年11月26日指定)
表3 2021年12月7日時点の注目すべき変異株(VOI)
【VOIの呼称】
・ペルー由来の変異株(C.37)→ ラムダ株(2021年6月14日追加)
・コロンビア由来の変異株(B.1.621)→ ミュー株(2021年8月30日追加)
・ペルー由来の変異株(C.37)→ ラムダ株(2021年6月14日追加)
・コロンビア由来の変異株(B.1.621)→ ミュー株(2021年8月30日追加)
図2 2021年12月7日時点における直近60日間のVOCの流行状況
図3 2021年12月7日(午後4時)時点におけるオミクロン株が確認された地域
VOCオミクロン株に関するアップデート
【背景】
オミクロン株は、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株に続いて、WHOが5番目のVOCに指定したSARS-CoV-2ウイルスの変異株です。今年11月9日に、南アフリカで採取された検体から初めて検出され、11月24日に初めて報告されました。WHOは、ウイルス進化に関する技術諮問グループ(TAG-VE)に招集し、スパイクタンパクの変異が26~32個と多いため感染力が増強していること、免疫を回避する可能性があること、南アフリカで再感染のリスクが高い兆候があるという疫学調査の初期報告を踏まえて、11月26日にオミクロン株をVOCに指定しました。本アップデートでは、疫学、伝播性、重症度、再感染リスク、診断法、ワクチン、治療法への潜在的な影響など、現在の状況を報告します。
オミクロン株がSARS-CoV-2ウイルスの疫学、感染性、重症度、予防、治療に対してどのような影響を及ぼす可能性があるのか、より多くのデータを分析することで判明するため、新たな情報が得られ次第、最新情報を報告します。
【疫学】
オミクロンが最初に報告された南アフリカでは、11月第2週以降、新規感染者数の増加が続いており、11月29日から12月5日までの間に、新規感染者62,021人が報告され、前週と比較して111%の増加となりました。また、検査陽性率(TPR)も11月7日の週の1.2%に対して、12月2日の週には22.4%と大幅に上昇しました。11月中旬にハウテン州で報告された患者数の増加は、大学生におけるクラスターの発生が原因の一つと考えられています。また、南アフリカに隣接する複数の国々においても、新規感染者数が増加しました。特に、エスワティニ(1,990%)、ジンバブエ(1,361%)、モザンビーク(1,207%)、ナミビア(681%)、レソト(219%)において、大幅に増加しました。これらの国々では、ワクチン接種率が非常に低く、ナミビアでは全人口の12.1%、レソトでは26.7%に留まっている状況でした。南アフリカのワクチン接種も、全人口の25.2%に留まっています。感染者数が増加した要因は不明ですが、オミクロン株の流行が始まり、VOCに指定された後に検査が強化されたこと、公衆衛生・社会的措置(PHSMs)が緩和されたことが、予防接種率の低さと相まって、感染者の増加につながったと示唆されています。
11月30日の更新以降、WHO所管のすべての地域で、さらに多くの国から確定症例が報告されています。2021年12月7日の時点で、オミクロン株が57カ国で確認されています。しかし、多くの国々、特に欧州諸国や米国は、デルタ株が流行の主流であるため、オミクロン株が世界的にどのような影響を与えるのかについて結論を出すのは、時期尚早と考えられています。
【感染力】
他の変異種よりもオミクロン株の感染者が増えると予測されていますが、これが感染力の高さを意味するかどうかは不明です。
欧州疾病予防管理センターは、SARS-CoV-2ウイルス感染者の1%がオミクロン株によるものと設定した場合、2022年1月1日までに感染者の増加率が120%を超え、3月1日までに感染者の増加率30%を超えて、ヨーロッパでの新規感染の50%以上を占め、ヨーロッパが世界の流行の主流になると予測しています。これらの試算は、いくつかの仮説に基づいており、オミクロン株の感染力の強さ、欧州地域への流入時期、人口構成、実施されている公衆衛生・社会的措置(PHSM)が含まれます。
クラスターや接触者、家庭内感染の詳細な調査など、現在行われている、または計画されている疫学調査を進めるとともに、ワクチン接種者や感染者を対象として、中和抗体活性やワクチンの効果に関する調査を行うことで、感染力の強さと免疫回避が影響し合って感染者の増加につながったのかを解明することができます。
【重症度】
現在、得られているデータは限られており、オミクロン株に感染した場合の症状と、他の変異株に感染した場合の症状において、どの程度重症度が変わるかを評価することは困難です。12月6日時点で、欧州連合18か国で確認された確定例212人のうち、情報が得られたものは、全て無症状または軽症でした。南アフリカでは、2021年11月28日~12月4日の週に、入院が82%増加(502人→ 912人)しましたが、どの程度オミクロン株の影響によるものか分析できていません。重症度がデルタ株と同等、あるいはさらに軽症であったとしても、より多くの人々が感染すれば、入院は増加し、感染者数の増加と死亡者数の増加には時間差が生じると予想されています。オミクロン株に感染した人々の臨床像を完全に理解するためには、さらに情報が必要であり、WHOは、臨床データ・プラットフォームを通じて入院患者のデータを収集し、共有することを各国に促しています。
【再感染リスク】
予備的な解析では、オミクロン株に存在する変異により、抗体の中和活性能力が低下すること、自然免疫による保護能力が低下することが示唆されています。これは、南アフリカで免疫が十分な人々に、感染が急速に拡がっている理由の説明になります。南アフリカでは、成人のワクチン接種率は約35%ですが、最近の疫学調査やモデリング研究によると、過去の感染で血清有病率が60~80%に上ると推測されています。
90日以上前に検査で感染が確認された南アフリカの約300万人のデータに基づくモデリング研究(査読前)によると、パンデミックの初期と比較して、2021年11月以降では再感染リスクが高いという結果が出ています。再感染および初感染の推定相対ハザード比は、オミクロン株の出現とともに上昇し、2020年6月~9月と比較して、2021年11月1日~27日は2.39(95%CI 1.88~3.11)でした。この情報は、オミクロン株の再感染リスクに関する初期評価にはなりますが、ワクチン接種者にどの程度感染または再感染するか、ブレイクスルー感染あるいは再感染した場合に、どの程度重症化するかを見極めるには、さらなる研究が必要です。
【診断に与える影響】
SARS-CoV-2感染症の診断には、遺伝子検査(NAAT、PCR)または抗原検査があります。複数の遺伝子を標的とするPCR検査は影響を受けないと考えられており、オミクロン株を含む全ての変異株を診断するために引き続き必要です。報告されているオミクロン株の遺伝子配列変異の大半は、スパイクタンパク質をコードしている部分に69-70の欠損変異があります。GASIDで公開されている配列には、この変異がないものもありますが、これが真にオミクロン遺伝子配列が多様であることを反映しているのか、それともアーチファクトなのかは、現時点では解明されていません。69-70欠損があると、一部のPCR診断法において、S遺伝子のターゲットが検出されないことがあります。逆に、このS遺伝子のドロップアウトが起こることを、オミクロン株を示唆するマーカーとして用いることができます。しかし、この欠損は、他のVOCでも見られるため、詳細な確認が必要です。また、オミクロン株の遺伝子配列の大部分は、31-33位に3か所のアミノ酸が欠損しており、ヌクレオキャプシドタンパク質のP13L部分に変異があります。
オミクロン株に存在する変異によって、ワクチン由来の免疫が低下する可能性があるかどうかを評価するためのデータや、追加接種量の使用を含めたワクチンの有効性に関するデータが必要です。WHOは、これらのデータが入手可能になった際には、加盟国と協力してモニタリングや評価を行っていきます。ワクチンの有効性に関する研究は、ワクチンがどのようにして感染や症状、重篤な合併症、そして死亡を防ぐのかを理解するために不可欠です。
【治療に与える影響】
WHOは引き続き研究者と協力して、オミクロン株に対する有効な治療法の解明に努めています。しかし、インターロイキン-6受容体拮抗薬とコルチコステロイドについては、重症者の管理に引き続き有効です。
【結論】
オミクロン株については、未だ多くの不明な点はありますが、TAG-VEやその他のグループがデータを確認、分析することで、数週間の間により多くの情報を得ることができます。また、各国がワクチン接種率の上昇に取り組むこと、サーベイランスを引き続き強化すること、初発の症例やクラスターをWHOに報告し、GISAIDなどの一般公開データベースで遺伝子配列を共有することが重要です。標準予防策として、屋内の換気を良くすること、適正なマスクを着用すること、人混みを避けること、手指衛生を徹底すること、他者との適切な物理的距離を保つことなどを行い、SARS-CoV-2ウイルスの拡大防止に努めてください。
オミクロン株は、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株に続いて、WHOが5番目のVOCに指定したSARS-CoV-2ウイルスの変異株です。今年11月9日に、南アフリカで採取された検体から初めて検出され、11月24日に初めて報告されました。WHOは、ウイルス進化に関する技術諮問グループ(TAG-VE)に招集し、スパイクタンパクの変異が26~32個と多いため感染力が増強していること、免疫を回避する可能性があること、南アフリカで再感染のリスクが高い兆候があるという疫学調査の初期報告を踏まえて、11月26日にオミクロン株をVOCに指定しました。本アップデートでは、疫学、伝播性、重症度、再感染リスク、診断法、ワクチン、治療法への潜在的な影響など、現在の状況を報告します。
オミクロン株がSARS-CoV-2ウイルスの疫学、感染性、重症度、予防、治療に対してどのような影響を及ぼす可能性があるのか、より多くのデータを分析することで判明するため、新たな情報が得られ次第、最新情報を報告します。
【疫学】
オミクロンが最初に報告された南アフリカでは、11月第2週以降、新規感染者数の増加が続いており、11月29日から12月5日までの間に、新規感染者62,021人が報告され、前週と比較して111%の増加となりました。また、検査陽性率(TPR)も11月7日の週の1.2%に対して、12月2日の週には22.4%と大幅に上昇しました。11月中旬にハウテン州で報告された患者数の増加は、大学生におけるクラスターの発生が原因の一つと考えられています。また、南アフリカに隣接する複数の国々においても、新規感染者数が増加しました。特に、エスワティニ(1,990%)、ジンバブエ(1,361%)、モザンビーク(1,207%)、ナミビア(681%)、レソト(219%)において、大幅に増加しました。これらの国々では、ワクチン接種率が非常に低く、ナミビアでは全人口の12.1%、レソトでは26.7%に留まっている状況でした。南アフリカのワクチン接種も、全人口の25.2%に留まっています。感染者数が増加した要因は不明ですが、オミクロン株の流行が始まり、VOCに指定された後に検査が強化されたこと、公衆衛生・社会的措置(PHSMs)が緩和されたことが、予防接種率の低さと相まって、感染者の増加につながったと示唆されています。
11月30日の更新以降、WHO所管のすべての地域で、さらに多くの国から確定症例が報告されています。2021年12月7日の時点で、オミクロン株が57カ国で確認されています。しかし、多くの国々、特に欧州諸国や米国は、デルタ株が流行の主流であるため、オミクロン株が世界的にどのような影響を与えるのかについて結論を出すのは、時期尚早と考えられています。
【感染力】
他の変異種よりもオミクロン株の感染者が増えると予測されていますが、これが感染力の高さを意味するかどうかは不明です。
欧州疾病予防管理センターは、SARS-CoV-2ウイルス感染者の1%がオミクロン株によるものと設定した場合、2022年1月1日までに感染者の増加率が120%を超え、3月1日までに感染者の増加率30%を超えて、ヨーロッパでの新規感染の50%以上を占め、ヨーロッパが世界の流行の主流になると予測しています。これらの試算は、いくつかの仮説に基づいており、オミクロン株の感染力の強さ、欧州地域への流入時期、人口構成、実施されている公衆衛生・社会的措置(PHSM)が含まれます。
クラスターや接触者、家庭内感染の詳細な調査など、現在行われている、または計画されている疫学調査を進めるとともに、ワクチン接種者や感染者を対象として、中和抗体活性やワクチンの効果に関する調査を行うことで、感染力の強さと免疫回避が影響し合って感染者の増加につながったのかを解明することができます。
【重症度】
現在、得られているデータは限られており、オミクロン株に感染した場合の症状と、他の変異株に感染した場合の症状において、どの程度重症度が変わるかを評価することは困難です。12月6日時点で、欧州連合18か国で確認された確定例212人のうち、情報が得られたものは、全て無症状または軽症でした。南アフリカでは、2021年11月28日~12月4日の週に、入院が82%増加(502人→ 912人)しましたが、どの程度オミクロン株の影響によるものか分析できていません。重症度がデルタ株と同等、あるいはさらに軽症であったとしても、より多くの人々が感染すれば、入院は増加し、感染者数の増加と死亡者数の増加には時間差が生じると予想されています。オミクロン株に感染した人々の臨床像を完全に理解するためには、さらに情報が必要であり、WHOは、臨床データ・プラットフォームを通じて入院患者のデータを収集し、共有することを各国に促しています。
【再感染リスク】
予備的な解析では、オミクロン株に存在する変異により、抗体の中和活性能力が低下すること、自然免疫による保護能力が低下することが示唆されています。これは、南アフリカで免疫が十分な人々に、感染が急速に拡がっている理由の説明になります。南アフリカでは、成人のワクチン接種率は約35%ですが、最近の疫学調査やモデリング研究によると、過去の感染で血清有病率が60~80%に上ると推測されています。
90日以上前に検査で感染が確認された南アフリカの約300万人のデータに基づくモデリング研究(査読前)によると、パンデミックの初期と比較して、2021年11月以降では再感染リスクが高いという結果が出ています。再感染および初感染の推定相対ハザード比は、オミクロン株の出現とともに上昇し、2020年6月~9月と比較して、2021年11月1日~27日は2.39(95%CI 1.88~3.11)でした。この情報は、オミクロン株の再感染リスクに関する初期評価にはなりますが、ワクチン接種者にどの程度感染または再感染するか、ブレイクスルー感染あるいは再感染した場合に、どの程度重症化するかを見極めるには、さらなる研究が必要です。
【診断に与える影響】
SARS-CoV-2感染症の診断には、遺伝子検査(NAAT、PCR)または抗原検査があります。複数の遺伝子を標的とするPCR検査は影響を受けないと考えられており、オミクロン株を含む全ての変異株を診断するために引き続き必要です。報告されているオミクロン株の遺伝子配列変異の大半は、スパイクタンパク質をコードしている部分に69-70の欠損変異があります。GASIDで公開されている配列には、この変異がないものもありますが、これが真にオミクロン遺伝子配列が多様であることを反映しているのか、それともアーチファクトなのかは、現時点では解明されていません。69-70欠損があると、一部のPCR診断法において、S遺伝子のターゲットが検出されないことがあります。逆に、このS遺伝子のドロップアウトが起こることを、オミクロン株を示唆するマーカーとして用いることができます。しかし、この欠損は、他のVOCでも見られるため、詳細な確認が必要です。また、オミクロン株の遺伝子配列の大部分は、31-33位に3か所のアミノ酸が欠損しており、ヌクレオキャプシドタンパク質のP13L部分に変異があります。
オミクロン株に存在する変異によって、ワクチン由来の免疫が低下する可能性があるかどうかを評価するためのデータや、追加接種量の使用を含めたワクチンの有効性に関するデータが必要です。WHOは、これらのデータが入手可能になった際には、加盟国と協力してモニタリングや評価を行っていきます。ワクチンの有効性に関する研究は、ワクチンがどのようにして感染や症状、重篤な合併症、そして死亡を防ぐのかを理解するために不可欠です。
【治療に与える影響】
WHOは引き続き研究者と協力して、オミクロン株に対する有効な治療法の解明に努めています。しかし、インターロイキン-6受容体拮抗薬とコルチコステロイドについては、重症者の管理に引き続き有効です。
【結論】
オミクロン株については、未だ多くの不明な点はありますが、TAG-VEやその他のグループがデータを確認、分析することで、数週間の間により多くの情報を得ることができます。また、各国がワクチン接種率の上昇に取り組むこと、サーベイランスを引き続き強化すること、初発の症例やクラスターをWHOに報告し、GISAIDなどの一般公開データベースで遺伝子配列を共有することが重要です。標準予防策として、屋内の換気を良くすること、適正なマスクを着用すること、人混みを避けること、手指衛生を徹底すること、他者との適切な物理的距離を保つことなどを行い、SARS-CoV-2ウイルスの拡大防止に努めてください。
出典
COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 30 November 2021
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---30-november-2021
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 30 November 2021
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---30-november-2021