新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO) 2021年11月23日

世界の概況

2021年11月21日時点で、直近1週間(11月15日~21日)の新規感染者数は359万7,398人が報告され、6%増加して5週連続の増加となりました(図1)。ヨーロッパ地域で11%増加し、アメリカ地域と西太平洋地域は前週と同程度でした。減少幅が最も大きかったのは、東南アジア地域の11%でした。
 
新規死亡者数は5万1,373人が報告され、6%増加して2週連続の増加となりました。西太平洋地域(29%増)、アメリカ地域(19%増)、ヨーロッパ地域(3%増)の3地域で増加しました。減少幅が最も大きかったのは、アフリカ地域の30%でした。
 
WHOに報告されている全世界の累積感染者数は2億5,648万22人、累積死亡者数は514万5,002人となりました。
 
人口10万人当たりの新規感染者数が多いのは、ヨーロッパ地域(260.2人)とアメリカ地域(73.6人)で、人口10万人当たりの新規死亡者数が多いのは、ヨーロッパ地域(3.2人)とアメリカ地域(1.3人)でした。いずれも、前週と同地域でした。
 
直近1週間における新規感染者数が多い上位5か国は、アメリカ合衆国(558,538人:同程度)、ドイツ(333,473人:31%増加)、イギリス(281,063人:11%増加)、ロシア連邦(260,484人:同程度)、トルコ(163,835人:9%減少)でした。ドイツにおける大幅な増加が続いており、アメリカに次いで2番目に多い国となりました。
 
 
図1 2021年11月21日時点の週別・WHO管轄地域別のCOVID-19感染者数及び世界の死亡者数の推移


表1 2021年11月21日時点のWHO管轄地域別の新規・累積COVID-19確定症例数及び死亡者数

WHO管轄地域別の概況

アフリカ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は1万3,164人、新規死亡者数は385人でした。前週と比較して、新規感染者数は4%減少し、新規死亡者数は30%減少しました。地域全体の感染者は減少していますが、地域内の複数の国々(14/49:29%)において、10%以上の感染者の増加が報告されました。南アフリカ共和国は、82%の大幅な増加が報告されました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
南アフリカ共和国 3,498人 5.9人 82%増加
エチオピア 1,408人 1.2人 11%減少
レユニオン 1,308人 146.1人 77%増加
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
南アフリカ共和国 96人 1.0人未満 39%減少
エチオピア 59人 1.0人未満 28%減少
アルジェリア 38人 1.0人未満 6%増加
 

アメリカ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は75万3,140人、新規死亡者数は1万3,603人でした。前週と比較して、新規感染者数は同程度、新規死亡者数は19%増加しました。地域内の複数の国々(17/56:30%)において、10%以上の感染者の増加が報告されました。また、地域内の複数の国々(12/56:21%)で10%以上の死亡者の増加が報告されており、エクアドル(131%増)、メキシコ(50%増)、バハマ(50%増)で大幅に増加しました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
アメリカ合衆国 558,538人 168.7人 同程度
ブラジル 64,121人 30.2人 16%減少
カナダ 17,085人 45.3人 同程度
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
アメリカ合衆国 8,906人 2.7人 20%増加
ブラジル 1,879人 1.0人未満 31%増加
メキシコ 1,015人 1.0人未満 50%増加
 

東地中海地域

直近1週間で確認された新規感染者数は9万2,520人、新規死亡者数は1,917人でした。前週と比較して、新規感染者数は9%減少し、新規死亡者数は4%減少しました。いずれも、8月中旬から3か月間、減少傾向が続いています。地域内の一部の国々(5/22:22.7%)で10%以上の感染者の増加が報告されており、ジブチ(50%増)、アフガニスタン(49%増)、オマーン(39%増)、ヨルダン(35%増)、スーダン(34%増)で大幅に増加しました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
イラン・イスラム共和国 41,523人 49.4人 19%減少
ヨルダン 21,599人 211.7人 35%増加
エジプト 6,487人 6.3人 同程度
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イラン・イスラム共和国 810人 1.0人 7%減少
エジプト 437人 1.0人未満 同程度
イラク 159人 1.0人未満 同程度
 

ヨーロッパ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は242万7,657人、新規死亡者数は2万9,465人でした。前週と比較して、新規感染者数は11%増加し、新規死亡者数は3%増加しました。地域全体の新規感染者数は、世界全体の67%を占めています。9月末からの増加傾向は1か月半続いており、地域内の複数の国々(24/61:39%)において、10%以上の感染者の増加が報告されました。ドイツの感染者が30万人を超え、地域内で最も多くなりました。また、地域内の複数の国々(27/61:44%)で10%以上の死亡者の増加が報告されており、アイスランド(150%増)、デンマーク(88%増)、ポーランド(76%増)で大幅に増加しました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ドイツ 333,473人 401.0人 31%増加
イギリス 281,063人 414.0人 11%増加
ロシア連邦 260,484人 178.5人 同程度
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ロシア連邦 8,709人 6.0人 同程度
ウクライナ 4,567人 10.4人 同程度
ルーマニア 2,002人 10.4人 15%減少
 

東南アジア地域

直近1週間で確認された新規感染者数は13万6,120人、新規死亡者数は2,842人でした。前週と比較して、新規感染者数は11%減少し、新規死亡者数は19%減少しました。地域全体の新規感染者は、8月初旬から3か月以上の減少傾向が続いていますが、ブータンのみ新規感染者7人で10%以上の増加となりました。インドの死亡者が、地域全体の75%を占めています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
インド 73,106人 5.3人 11%減少
タイ 46,171人 66.1人 8%減少
スリランカ 5,084人 23.7人 19%減少
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
インド 2,132人 1.0人未満 22%減少
タイ 351人 1.0人未満 8%減少
スリランカ 132人 1.0人未満 同程度
 

西太平洋地域

直近1週間で確認された新規感染者数は17万4,797人、新規死亡者数は3,161人でした。前週と比較して、新規感染者数は同程度、新規死亡者数は29%増加しました。地域内の一部の国々(6/27:22%)で10%以上の感染者の増加が報告されており、北マリアナ諸島、韓国、パプアニューギニア、ニューカレドニア、ベトナム、ラオス人民民主共和国で大幅に増加しました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ベトナム 66,279人 68.1人 16%増加
マレーシア 40,600人 125.4人 同程度
韓国 19,965人 38.9人 29%増加
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
フィリピン 1,631人 1.5人 58%増加
ベトナム 667人 1.0人未満 22%増加
マレーシア 347人 1.1人 7%減少
 

変異株の状況

2021年5月31日、WHOは、新型コロナウイルスの変異株に関する一般の人々の議論を促進するために、懸念すべき変異株(VOC)及び注目すべき変異株(VOI)の言いやすい・覚えやすい新たな呼称を発表しました(表2・表3)。
 
表2 2021年11月23日時点の懸念すべき変異株(VOC)

【VOCの呼称】
・イギリス由来の変異株(B.1.1.7)→ アルファ株(2020年12月18日指定)
・南アフリカ由来の変異株(B.1.351)→ ベータ株(2020年12月18日指定)
・ブラジル由来の変異株(P.1)→ ガンマ株(2021年1月11日追加)
・インド由来の変異株(B.1.617.2)→ デルタ株(2021年5月11日VOIから変更)
 
表3 2021年11月16日時点の注目すべき変異株(VOI)

【VOIの呼称】
・ペルー由来の変異株(C.37)→ ラムダ株(2021年6月14日追加)
・コロンビア由来の変異株(B.1.621)→ ミュー株(2021年8月30日追加)

WHOは、加盟国の保健当局や研究機関、研究者と協力して、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株が感染や病気の特徴を変えていないか、また、各国当局が適用する公衆衛生・社会的措置(PHSM)の効果に影響を与えていないかを定期的に評価しています。WHOはこの評価に基づき、定義を見直して調整しています。変異株の最新の状況については、以下のページを新たに設けてとりまとめています。
 
SARS-CoV-2変異株の追跡
https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/
 
最近の変化と世界レベルでのVOCの地理的分布をよりよく反映させるために、VOC有病率の推定値と、これまでにWHOに公式または非公式に報告されたVOCの検出に関するデータを重ね合わせた改訂版の世界地図を示します(図2)。
 
国別の有病率は、GISAIDにアップロードされた過去60日以内の検体採取日のSARS-CoV-2の全配列の割合として算出され、現在のVOCの有病率が高い場所を示す3つのグループ(優位:51%以上、中程度:11%~50%、低度:10%以下)に分類しました。
 
現在のSARS-CoV-2の世界的な遺伝子疫学の特徴は、デルタ株が優位になっており、その他の変異株の有病率は低下しています。デルタ株はほとんどの国で、他のVOCを含む他の変異株を凌駕している状況です。過去60日間に採取されてGISAIDにアップロードされた84万5,087検体のうち、84万2,992検体(99.8%)がデルタ株、519検体(0.1%)がガンマ株、212検体(0.1%未満)がアルファ株、16検体(0.1%未満)がベータ株、残り0.1%がその他の流通している変異株(VOIの ミュー株とラムダ株を含む)でした。特に南米諸国では、デルタ株の増加が緩やかとなっており、他の型(ガンマ株、ラムダ株、ミュー株など)が、依然として報告の大部分を占めています。世界のVOC分布は、国ごとの検査戦略、解析能力の違い、報告のタイミングなど、サーベイランスの限界を十分に考慮して解釈する必要があります。
 
SARS-CoV-2の拡散と変異が進む中、デルタ株を含めた新たな変異の報告が続いています。デルタ株においては、新たに2つの系統が報告されており、現在は21Aに加えて、21I、21Jの3つがパンゴAY系統に分類されています(表2に21Jを追加)。
 
AY.4.2は、デルタ株の中で新たに指定されたパンゴ系統で、スパイクタンパクに2つの変異(A222V・Y145H)を含む3つの変異が追加されています。2021年7月以降、AY.4.2配列株の報告が増加しており、10月25日現在、42か国から26,000件以上のAY.4.2配列株がGISAIDに報告されています。報告の大部分(93%)は英国からで、AY.4.2の割合が徐々に増加しており、10月3日から10日までに報告された世界のデルタ株全体の5.9%を占めていることが推定されています。AY.4.2が及ぼす影響を評価するために、疫学的および実験的研究(感染性の変化や抗体能力の低下など)が進行中です。
 
※米国では、AY.4.2配列株を「デルタプラス」と称していますが、WHOは今回の報告時点で呼称を定めていません。
 
図2 2021年11月23日時点における直近60日間のVOCの流行状況

出典

COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 23 November 2021
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---23-november-2021

翻訳協力:関西空港検疫所