多国におけるサル痘のアウトブレイク(WHO2022年7月25日)

External Situation Reprt 2, published 25 July 2022
Date as received by WHO national authorities by 17:00 CEST, 22 July 2022

最重要点

国際保健規則緊急委員会は、多国におけるサル痘のアウトブレイク(ある特定かつ限定の地域で、ある感染症が通常の頻度を明らかに超えて発生した状態をいう。以下同じ。)に関する第2回緊急会議を2022年7月21日に開催しました。国際保健規則(2005)に則った委員及び顧問の見解及び他の要因を考慮し、WHO事務局長(以下「事務局長」という。)は2022年7月23日にこのアウトブレイクを国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(以下「PHEIC」という。)と宣言し、このアウトブレイクに関連した一時的な勧告を発行しました。事務局長は、「アウトブレイクについては、新しい感染経路を通じて世界中に急速に拡大しており、我々は無知であり、国際保健規則の基準を満たしています。適切な集団で適切な手法であればアウトブレイクを阻止することができます。」と述べています。感染・伝播を阻止し、かつ、アウトブレイクを制御するため、事務局長は一時的な勧告を発行しました。
 
現在WHO管轄の全6地域でサル痘の感染者が報告されています。7月6日に発表された状況報告以降に東南アジア地域で確定感染者が報告されました。
 
アフリカ地域におけるサル痘の最新のデータは、2021年4月以降と比較し、2022年の同期間の感染者数が大幅に増加していることを示しています。これは、部分的に各国の調査及び検査能力の強化に起因する可能性があります。当該地域では、2020年にサル痘の最多である疑い感染者数が報告されました。
 
WHOは、少なくとも週2回更新される「多国におけるサル痘のアウトブレイク(世界の傾向)」という表題の世界的な疫学報告を開始しました。感染者の地理的分布については、WHOの健康緊急ダッシュボードを使用して閲覧できます。この報告書は、調査、感染者の調査及び接触者の追跡に関するサル痘の中間指針で解説されているように、加盟国からWHOに提供される感染者報告フォーム(以下「CRF」という。)に焦点を当てています。ダッシュボードには、加盟国から報告された最新の累積感染者数及び死亡者数が毎日更新されて表示されます。これら2つのデータ製品は、2週間毎に作成される状況報告書を補完し、疫学的な情報を超えたサル痘のアウトブレイクに関するより包括的な更新情報を提供します。そして、それは以前のサル痘に関する疾病アウトブレイクニュースを後継したものです。
 

疫学的な更新情報

2022年1月1日から7月22日までにWHO管轄である全6地域の75の国・地域から、16,016人の新規感染者数及び5人の新規死亡者数がWHOに報告されました(表1)。2022年7月6日に発表された多国におけるサル痘のアウトブレイクに関する状況報告以降、9,989人の新規感染者数(166%の増加)及び2人の新規死亡者数が報告されました。新たに16の国・地域で新規感染者数が報告されました。過去7日間で37か国が毎週の新規感染者数の増加を報告しました。過去21日で新規感染者数の報告がなかった11の国・地域があります(21日は、潜伏期間の最大値です。)。
 
世界的に毎週報告される新規感染者数は、疫学的第28週(2022年7月11日から7月17日まで。)の2,740人と比較し、疫学的第29週(2022年7月18から24日まで。)の4,045人まで48%増加しました。過去4週間に報告された新規感染者数の大多数は、欧州地域(11,104人中の8,004人、72%)及び南北アメリカ地域(11,104人中の2,841人、26%)から通知されました。2022年7月22日時点で世界的に累積感染者数が多い10か国は、スペイン(3,125人)、米国(2,316人)、ドイツ(2,268人)、英国(2,137人)、フランス(1,453人)、オランダ(712人)、カナダ(615人)、ブラジル(592人)、ポルトガル(588人)及びイタリア(374人)です。この10か国を合わせると、これまでに世界で報告された新規感染者数の89%を占めています。
 
新たに罹患した国々で報告されたサル痘の局所的な感染については、過去にサル痘が報告されている西アフリカ諸国との疫学的な相関性を伴っておらず、このような感染は初となります。
 
図1 2022年1月1日から7月22日17時(欧州夏時間)までに週毎に集計された地域別のサル痘の新規感染者数を示したグラフ


表1 2022年1月1日から7月22日17時までにWHOへ報告された累積感染者数及び死亡者数に関するグラフ
 

他の重要な疫学的知見
 
性別に関するデータは、症例の73%(16,016人中の11,740人)で入手できます。これらのうち99%(11,740人中の11,613人)は男性であり、報告された新規感染者数の年齢の中央値は36歳です(四分位範囲は、31から43まで。)。18歳から44歳までの男性は、新規感染者数の77%を占めるため、このアウトブレイクの影響を不均衡に受け続けています。感染者数の1%(11,787人中の81人)未満は、年齢が0歳から17歳まででした。
 
性的指向が報告された新規感染者数のうち、98%(5,561人中の5,470人)がゲイ、バイセクシュアル及びMen who have sex with men(男性と性交渉を行う男性をいう。以下「MSM」という。)であると特定されました。HIV状態と報告されたサル痘感染者数の41%(4,614人中の1,873人)がHIV陽性でした。
 
現在までに319人が医療従事者であると報告されています。しかしながら、大半が医原性ではないと報告されており、残りの感染が医原性かどうか決めるために更なる調査が進行中です。
 
進行中であるサル痘のアウトブレイク(アフリカ地域の国々を除く。)は、ゲイ、バイセクシャル及びMSMと特定された男性及び1人以上の相手と直近で性交渉を持ったと報告された男性に影響を与え続けています。女性及び小児のみでなく他の男性でも新規感染者が報告されていますが、これらの新たな集団で感染が持続していることを提起する兆候はありません。
 
アフリカ地域におけるサル痘に関する直近の更新では、2022年4月以降に新規感染者数が2021年の同期間と比較して増加していると観察されています。2022年1月1日から7月8日まで2,087人の累積感染者数があり、そのうち203人のみが確定されました。確定された203人の感染者の致命率は、2%です。感染者固有のデータを伴う175人の確定された感染者数のうち、53%が男性であり、年齢の中央値は17歳でした(ゆえに、アフリカにおける感染者の統計は直近である過去のアウトブレイクと類似していますが、他の地域とは著しく異なります。)。
 

臨床症状

現在のアウトブレイクでは大半の感染者が軽症者ですが、サル痘ウイルスは特定の集団(小児、妊婦及び免疫不全状態にあるもの)で重症化する可能性があります。このアウトブレイクに関連した複数の感染者の臨床症状は非定型的であり、新たに発生した地域における多くの症例はサル痘の古典的な臨床像(発熱、リンパ節腫脹及びその後の四肢の発疹)を呈していません。
 
累積9,099人の感染者(57%、16,016人中の9,099人)が少なくとも1つの症状をきたしています。そのうち、90%の感染者(9,099人中の8,216人)にあっては局所性の発疹が報告されており、71%の感染者(9,099人中の6,477人)にあっては全身性の発疹が報告されており、49%の感染者(9,099人中の4,429人)にあっては発熱が報告されています(図2)。症状の分母を正確に特定することについては、症状を否定する報告が一般的に不足していること及び報告システム間で症状の定義が異なることから、困難となります。
 
図2  世界のサル痘感染者から報告された症状の頻度(累積9,099人。2022年7月22日時点。)
 

分子 上記の症状を報告した感染者数であり、感染者は複数の症状を報告できます。
分母 少なくとも2つの固有の症状を報告している国から少なくとも1つの症状を報告した感染者数(9,099人)。一般的に感染者数は確定した感染者数を含みます。欧州地域の場合、感染者数は確定感染者数及び疑い感染者数を含みます。発疹については、身体の部位で報告された発疹(全身、口腔、生殖器又は報告されていない特定の部位)を指します。リンパ節腫脹については、局所性又は全身性のリンパ節腫脹を指します。
 

緊急委員会

多国におけるサル痘のアウトブレイクに関する国際保健規則緊急委員会は、2022年7月21日に第2回会議を開催しました。事務局長は、国際保健規則(2005)に則った委員及び顧問の見解及び他の要因を考慮し、このアウトブレイクをPHEICと宣言し、このアウトブレイクに関連した一時的な勧告を発行しました。一時的な勧告は、それぞれ決定した特定のPHEICに関連して発行されており、国家機関に向けられたものであり、かつ、事務局長によって提案された勧告です。事務局長は、このアウトブレイクがPHEICを構成するかどうかを決定するための次の5つの要素を考慮しました。
 
1 各国から提供された情報(つまり、このウイルスが、これまで観察されたことのない多くの国々へ急速に拡散したことを示している。)
 
2 PHEICを宣言するための下記3つの要素を満たしている。
 (1) 異常な事態
 (2) 国際的な拡散により他国へ公衆衛生上の危機を構成する。
 (3) 国際的な対応の調整を潜在的に必要とする。
 
3 合意に今回達しなかった緊急委員会の助言
 
4 科学的な原則、科学的根拠及び他の関連した情報(現在未知である多くの情報)
 
5 人類の保健上のリスク、国際的な拡散及び国際社会に干渉を及ぼす可能性
 
多国におけるサル痘のアウトブレイクに関連して事務局長により発行された一時的な勧告は、締約国の様々なグループに適用されており、疫学的状況、感染・伝播性及び能力のパターンに基づいています。各締約国は、任意の時点でグループ1又はグループ2に分類されます。一部の締約国は、グループ3又はグループ4に分類される場合もあります。
 

調査及び研究

現在多国でアウトブレイクを引き起こしているサル痘ウイルスは2017年以降にゲノム解析された一部のゲノム(ナイジェリア由来)における特定の変異パターンを示しており、これは宿主酵素(APOBEC3デアミナーゼ)の活性を示しています。この特定の変異パターンは脊椎動物である宿主(おそらくヒト)へのウイルスの適応を示している可能性がありますが、当該期間の前及び当該期間中におけるウイルスゲノムからより多くの情報が必要です。
 
サル痘の調査、感染者の調査及び接触者の追跡に関するWHOの暫定指針は、検査、報告、感染者の調査及び接触者の追跡を概説しています。
 
WHOはサル痘感染者調査フォーム(以下「CIF」という。)及び最小限である集合データのCRFを準備しており、CRFはWHOに報告が要請されている最小限のデータを定義しています。現在WHOは、世界的に報告された累積の確定感染者のうち87%近くに関わるCRFを受け取っています。これらのデータの一貫性及び完成度は、各国で異なります。CRFの解析から、WHOはアウトブレイクの主要な特徴を記載した詳細な報告を発表しています。CIFを用いた詳細な感染者の調査を支援するための手順は、間もなく公開されます。
 
また、WHOは対応の追跡を通じて各国によるサル痘のアウトブレイクの対応に関する情報を体系的に収集するための準備をしています。

臨床的な管理、ワクチン及び治療法

ワクチン

WHOは、最近サル痘のワクチン及び予防接種に関する中間指針を作成しています。WHOは、加盟国に対し、多国におけるサル痘に関する現在の流行状況を考慮し、各国の予防接種技術諮問グループを招集して科学的根拠を検討し、かつ、各国の状況に関連したワクチンの使用に関する政策提言を作成するよう、強く推奨しています。曝露後予防は、接触者に対し、理想的には最初の曝露から4日以内(無症状の場合は、14日以内。)に発症予防のため推奨されます。曝露前の予防接種は、曝露のリスクがある医療従事者、オルソポックスウイルスを扱う検査室の職員、サル痘ウイルスの検査診断を行う臨床検査室の職員、アウトブレイク対応チームの構成員及びこのアウトブレイクで危機のある相手と結婚しているもの(例えば複数の相手と性交渉を行うもの)に推奨されています。天然痘又はサル痘のワクチン(潜在的な曝露前又は曝露後)を接種した個人の予防接種に関する全ての決定は、利害を考慮し、それぞれのケース毎に、医療提供者及び将来的なワクチン接種予定者との間で臨床的意思決定を共有する必要があります。
 
サル痘ウイルスのワクチンを使用している加盟国は、特にワクチンの有効性及び効果並びに安全性に関する科学的根拠の急速な作成増加のため、標準化された設計手法及びデータ収集ツール(臨床及び結果のデータを対象とする。)を使用した共同的な臨床研究の枠組みの中でそうするよう推奨されています。サル痘ワクチンを用いた臨床有効性試験(プラセボ対照)及びその予定に被験者の参加が可能であると考えられない場合、ワクチンの効果を評価するための様々な強固性のある研究デザインを使用して迅速に標準的なデータ収集手法を導入する必要があります。

他の重要な更新

集会
 
集会は、サル痘ウイルスの感染・伝播性を助長する環境となっている可能性があります。密、長時間及び頻繁の接触がサル痘ウイルスのより高い感染・伝播性のリスクを高めている可能性があるためです。しかしながら、このような事態は、公衆衛生上のメッセージを伴って特定の集団に貢献する機会となりえます。
 
一時的な勧告で示されているように、WHOは次の活動を推奨しています。集団にサル痘の感染歴がない、又は過去21日間に感染者が特定されていない国では、公衆衛生当局及び他の関係者は、密な接触活動又は親密な出会いがある状況や場所においてリスクに関する意思疎通及び地域社会を支援する取組に集中する必要があります。これには、主催者が個人的な感染曝露対策及びリスクを低減する活動を促進できるように、大規模及び小規模のイベントの主催者と関与して支援することが含まれます。
 
最近サル痘の輸入症例が発生した国又はサル痘ウイルスがヒトからヒトへ感染した国では、曝露のリスクがある集団を含め、保健当局及び他の関係者は、大小問わず、集会の主催者と連携する必要があります(密な接触及び親密な出会いを促進する可能性のあるものを含みます。)。感染曝露対策を促進し、そのようなイベントを開催するためにリスクに基づいた手法を採用し、かつ、リスク対策を実施できないイベントを延期する可能性を議論するためです。個人の選択に関するリスクについての意思疎通、イベント会場施設の定期的な清掃を含む感染予防対策に必要な全ての情報について、共有される必要があります。
 
参加者は、自分の健康、自らが関与する人々の健康及び集団の健康を最終的に維持することを目的とし、自分の決定及び行動に個人の責任を適用することを思い出す必要があります。これは、自発的な、又は突発的な集会にとって特に重要です。大規模集会の標準的な慣行であるため、当局及び主催者は、WHOが推奨するリスクに基づいた手法を意思決定に適用し、かつ、検討中の大規模又は小規模の社会的なイベントに合わせて調整することが求められます。このような手法については、サル痘に関連するものも含め、既存の全てのリスクを考慮に入れる必要があります。
 
6月28日にWHOは、現在のサル痘のアウトブレイク中における集会について公衆衛生上の助言を提供するための指針を発表しました(現在6の国連言語全てで利用できます。)。この助言については、大小問わない規模の集会に参加する人々も含めて主催者側の政府、公衆衛生当局、国際機関及び集会の企画実施に携わるスタッフに向けたものです。

出典

World Health Organization. Multi-country outbreak of monkeypox External Situation Report 2, published 25 July 2022”.WHO.2022. https://www.who.int/publications/m/item/multi-country-outbreak-of-monkeypox--external-situation-report--2---25-july-2022, (参照2022-07-31).