複数国におけるサル痘のアウトブレイク(更新5)

External Situation Report 5, 2022年9月7日
Date as received by WHO national authorities by 17:00 CEST, 5 September 2022
 
確定された患者数 死亡者数 国・地域数
 52996  18  102

リスクアセスメント  
世界的なリスク
WHO管轄地域別のリスク 欧州地域
アフリカ地域
北米・中南米地域
東地中海地域
東南アジア地域
西太平洋地域 低から中

焦点

・ヨーロッパやアメリカの地域で報告された患者数が、2022年8月29日~9月4日の週には、8月22日~28日の週と比較して減少し、世界的な減少が確認された。

・8月25日WHOはサル痘のサーベイランス、症例調査、接触者調査に関する暫定ガイダンスを、症状や疫学パラメータ−に関する最新の情報を盛り込み、国際保健上の緊急事態(PHEIC)宣言後に、事務局長によって出された暫定勧告と整合するよう更新した。

・9月1日WHOはスティグマと差別の防止に関する新しい公衆衛生上のアドバイスを発表した。サル痘に関連するスティグマと差別の理解、防止、対処のために包括的な言語を使用しコミュニケーションと地域の積極的な参加の暫定ガイダンスである。
 

疫学的な情報更新

2022年1月1日から9月4日までに、WHOの全6地域の102の国/地域から、52996例の確定患者と18例の死亡例がWHOに報告されている(表1)。2022年8月24日に発行された報告書の最終版以降、新たに11332例(27%増)と6名の死亡例、6カ国から症例が報告されました。過去7日間で、25カ国が週単位の患者数増加を報告し、最も増加したのはコロンビアであり、また南スーダンで最初の患者が報告された(2022年8月29日)。最大潜伏期間である21日以上、新規症例が報告されていない国は27カ国あった。
 
第35週(8月29日~9月4日)(n=5029)の世界全体の週間新規患者報告数は、第34週(8月22日~28日)(n=6746)に比べ25.5%減少し、アメリカ地域(-15%)、ヨーロッパ地域(-55%)で最大の減少が確認された。これらの減少にもかかわらず、過去4週間に報告された症例の大部分は、アメリカ地域(70.7%)とヨーロッパ地域(28.3%)で発生している。2022年8月22日から9月4日までに、ガーナ(n=3)、ベルギー(n=1)、ブラジル(n=1)、キューバ(n=1)で合計6人の死亡が報告されている。
 
9月4日現在、世界で最も多くの累積患者数を報告している10カ国は、アメリカ合衆国(n=19351)、スペイン(n=6645)、ブラジル(n=5197)、フランス(n=3646)、ドイツ(n=3493)、英国(n=3413)、ペルー(n=1546)、カナダ(n=1289)、オランダ(n=1172)およびポルトガル(n=871)である。これらの国々を合わせると、全世界で報告された症例の88.0%を占める。
 
図1 週毎に集計されたWHO管轄地域別のサル痘に係る新規感染者数を示したグラフ(2022年1月1日から9月4日17時(欧州夏時間)まで)


表1 WHOへ報告されたWHO管轄地域別のサル痘に係る累積感染者数及び死亡者数(2022年1月1日から9月4日17時(欧州夏時間)まで)

その他の重要な疫学的知見
・この感染症は、主に若年男性が罹患しており、データがある患者の98.2%(26953/27449)は男性で、年齢の中央値は36歳(四分位範囲:30~43歳)である。年齢についてデータがある症例のうち、0~17歳は1%未満で、そのうち0~4歳は43人(0.2%)でした。この割合は地域によって異なり、0-17歳の症例が最も多いのはアフリカ地域である(65 /163; 40%)。
・性的指向について報告されている症例では、95.2%(11923/12530)がゲイ、バイセクシャル、MSM(men who have sex with men)であった。感染経路の報告があるものでは、性行為時の皮膚・粘膜接触による感染が最も多く、8601件中7824件(91.0%)であった。
・感染経路が報告されている症例の大半は、性的接触のあるパーティーの場で感染した可能性が高く、感染経路が報告されている症例全体の4867例中2921例(60.0%)にあたる。HIVの感染状況が判明している症例では、44.9%(5576/12411)がHIV陽性であった。
 
図3 公式情報からWHOによって特定又は報告されたサル痘の確定された感染者に係る地理的分布(2022年月1日1日から9月4日17時00分(欧州夏時間)まで)

最新情報とWHOのアドバイス

WHOは引き続きアウトブレイクを注意深く監視し、対応し、加盟国やパートナーとの国際的な調整と情報共有を支援する。包括的な症例発見、接触者調査、検査室での検査法、隔離支援、臨床マネージメント、感染予防と感染対策の実施、リスクコミュニケーションと地域の積極的な参加、ワクチン接種活動を調整し、さらに現在進行中の疫学や対策研究を支援するため、加盟国によってClinical and public health incident responseが発動されている。

サーベイランス

WHOは、IHR通信による毎日のサル痘患者数および死亡者数の定期的な情報収集と、症例報告書(CRF)による詳細な情報収集を続けている。2022年8月25日に更新された、サル痘のサーベイランス、症例調査、接触者調査に関する暫定ガイダンスがサル痘サーベイランスの参考文書であり続けている。現在、WHOは世界中で報告された全確定症例の約89%についてCRFを受け取っており、最新の疫学情報はオンラインの2022 Monkeypox outbreak: Global trendsに記されている。
WHOは現在、パートナーと協力して、サル痘の下水サーベイランスの利用と地域社会におけるウイルスの有無や感染の監視における利点、技術的および資源的な課題の両方を調査している。

リスクコミュニケーションと地域の積極的な参加

WHOは、サル痘に関するリスクコミュニケーション地域の積極的な参加(RCCE)への活動を、最も影響を受ける人々に優先して実施している。一般市民からの質問や関心に焦点を当てた定期的なソーシャルリスニング活動から情報を得て、サル痘Q&Aページやその他の資料を定期的に更新し、症状や、家庭での療養、性行為時の皮膚・粘膜接触による感染リスクに関する最新情報の共有に重点を置いている。
WHOは、HIV、肝炎、性感染症(HHS)技術顧問グループの代表者とともに、計画の推進と資料の共同作成をするために、地域との協議を数回実施した。重要なメッセージと健康上のアドバイスを含むゲイ、バイセクシャル、MSM(men who have sex with men)のための公衆衛生ガイダンスを繰り返し発表した。
このアウトブレイクに対するRCCE活動の指針となる参考文書は、2022年6月24日に発表された暫定ガイダンスのままである。WHOは追加の公衆衛生上のアドバイスを発表した。サル痘に関連するスティグマや差別の理解、予防、対処における包括的な言語の使用したコミュニケーションと地域の積極的な参加に関する暫定ガイダンス」を9月1日に発表した。WHOは現在、セックスワーカーに対する健康アドバイスと、サル痘ワクチン接種に関するRCCEを支援するための計画を策定中である。
 

集会

WHOは親密な性的関係を持つ出会いを助長する可能性のあるもの、あるいは敷地内での性交を行う可能性のある公共の集まり(大小かかわらず)の主催者と関わり、個人防護策と、そのための行動をするように推進し、主催者にそのようなイベントの開催時にはリスクベースのアプローチを適用するように奨励した。リスク対策を実施できないイベントでは延期の可能性についても議論している。個人が選択するためのリスクコミュニケーションとイベント会場の定期的な清掃を含む感染予防と感染対策のために、すべての必要な情報が提供されなければならない。

出典

Multi-country outbreak of monkeypox, External situation report #5 - 7 September 2022
https://www.who.int/publications/m/item/multi-country-outbreak-of-monkeypox--external-situation-report--5---7-september-2022