複数国におけるサル痘のアウトブレイク(更新8)

External Situation Report 8, published 19 October 2022
Date as received by WHO national authorities by 17:00 CEST, 17 October 2022
 
確定された感染者数 死亡者数 国・地域数
73,437人 29人 109
 
リスクアセスメント
世界的なリスク
WHO管轄地域別のリスク 欧州地域
アフリカ地域
北米・中南米地域
東地中海地域
東南アジア地域
西太平洋地域

焦点

2022年10月10日から10月16日までの週において、欧州地域及び北米・中南米地域で報告されたサル痘の感染者数は継続して減少しており、2022年8月以降の全体的な減少傾向の結果となっています。
 
2022年10月5日の状況報告以降において、4,537人の新規感染者数(6.6%増加)及び4人の新規死亡者数が報告されています。
 
WHOは、管轄地域事務所を通じ、感染の特徴及び動態をより理解するために、加盟国が使用する感染者調査フォームを詳細に支援するための手順を使用しています。
 
WHOは、調査及び他の地域(ガーナ、ナイジェリア、遠隔における湾岸疾病予防管理センター(地域別のリスク評価を行う湾岸調整評議会)を含む。)におけるサル痘の対応を最適化するために、過去2週間において、専門分野を跨いだ国別支援任務を実施しました。
 
WHOは、戦略的な対応及び世界的な支援を目的として、加盟国、協力者及び他の利害関係者とともにサル痘のアウトブレイクを阻止するための迅速な対応を取るために、三千三百八十二万ドルを求めています。
 
WHOは、サル痘に関する州規模の事前準備及び対応計画を開発するために、スーダン連邦保健省及び州保健省を支援しています。

疫学的な更新情報

2022年1月1日から10月16日までにWHO管轄である全6地域の109の国・地域から、73,437人の新規感染者数及び29人の新規死亡者数がWHOに報告されました(表1)。2022年10月5日に発表された複数国におけるサル痘のアウトブレイクに関する状況報告以降、4,537人の新規感染者数(6.6%の増加)及び4人の新規死亡者数が報告されました。
 
過去7日間で17か国が毎週の新規感染者数の増加を報告し、ペルーで7.7%と最大の増加が報告されました。過去7日間でモザンビーク、サンマリノ及びベトナムの新規3か国が最初の感染を報告しました(感染者数は、それぞれ1人となります。)。過去21日間において、49か国で新規感染者数が報告されませんでした(21日は、潜伏期間の最大値です。また、前回の報告より10か国増加しています。)。
 
世界的に毎週報告される新規感染者数は、疫学的第40週(2022年10月3日から10月9日まで。以下同じ。)の2,730人と比較し、疫学的第41週(2022年10月10から10月16日まで。以下同じ。)の2,167人まで20.6%減少しました(地域別では、欧州地域で28%及び北米・中南米地域で26%と最大の減少率でした。)。当該の増加にかかわらず、過去4週間に報告された新規感染者数の大多数は、北米・中南米地域(88.5%)及び欧州地域(9.2%)から報告されました。疫学的第40週において、ブラジルから4人の新規死亡者数が報告されました。アフリカ地域は、全体的に新規感染者数の中で最多の新規死亡者数を報告しています(29人中の13人、44.8%)。
 
2022年10月16日時点で、世界的に累積感染者数が多い10か国は、米国(27,128人)、ブラジル(8,621人)、スペイン(7,239人)、フランス(4,064人)、英国(3,673人)、ドイツ(3,651人)、ペルー(2,785人)、コロンビア(2,730人)、メキシコ(2,147人)及びカナダ(1,410人)です。当該の10か国を合算すると、今日に至るまでに世界的に報告された新規感染者数の86.4%を占めています。
 
図1 週毎に集計されたWHO管轄地域別のサル痘に係る新規感染者数を示したグラフ(2022年1月1日から10月16日17時(欧州夏時間)まで)
 
※当該のグラフについては、日曜日に終了する疫学的週を反映した週報を示しています。現在の週に係るデータについては、次回の状況報告で提示されます。
 
北米・中南米地域のサル痘の新規感染者数については、世界的に報告された累積率及び週毎の累積率が継続して最も高くなっています。当該地域の6か国(米国、ブラジル、ペルー、コロンビア、メキシコ及びカナダ)は、世界で最多の感染者数(64%)を持つ上位10か国に含まれており、感染者数の95%を占めています。6か国中の2か国であるメキシコ及びコロンビアが直近で上位10か国に追加され、当該地域の感染・伝播性が増加していることを示唆しています。感染経路に関する情報が利用可能な当該地域における感染者数の87%(8,182人)は、その地域での感染者です。
 
表1  WHOへ報告されたWHO管轄地域別のサル痘に係る累積感染者数及び死亡者数(2022年1月1日から10月16日17時(欧州夏時間)まで)
 
他の重要な疫学的知見
アウトブレイクは継続して主に若年男性に影響を与えており、利用可能なデータを伴う感染者数の97.1%(42,163人中の40,940人)は男性であり、年齢の中央値は35歳です(四分位範囲は、29から42まで。)。データが利用可能である感染者数の1.1%(477人)が0歳から17歳までであり、そのうち0.3%(128人)は0歳から4歳までです。この率は管轄地域によって異なり、0歳から17歳までの感染者の率が最も高いと報告された地域は北米・中南米地域でした(477人中の334人、70%)。
 
性的指向が報告された感染者のうち、87.9%(21,099人中の18,549人)がゲイ、バイセクシャル及び男性と性交渉を行う男性であると特定されました。報告された感染経路のうち、性交渉中の皮膚及び粘膜を介した接触感染が最も報告されており、感染曝露機会が報告された17,310人中の12,451人(71.9%)でした。
 
頻繁にありうる感染曝露状況を報告した中で、最も一般的に報告された感染曝露状況は性的接触のある集会であり、7,427人中の3,388人(45.6%)でした。
 
HIV状態と事前に判明しているサル痘感染者数のうち、50.3%(23,148人中の11,634人)がHIV陽性でした。
 
1以上の症状を報告した感染者の中で、最も一般的な症状は発疹であり、感染者の81.4%で報告され、次に発熱が58.8%、その次に全身性発疹及び性器発疹(それぞれ49.9%及び46.3%)となります。
 
図2 公式情報からWHOによって特定又は報告されたサル痘の感染者数に係る地理的分布(2022年月1日1日から10月16日17時00分(欧州夏時間)まで)


 
 

最新情報とWHOの助言

WHOは、継続してアウトブレイクを詳細に監視及び対応し、加盟国及びパートナーと国際的な調整及び情報共有を支援しています。加盟国は、進行中である疫学及び対応の研究を支援するためと同様に、包括的な感染者の発見、濃厚接触者の追跡、研究室の調査、支援を伴う隔離、臨床的な管理、感染予防及び管理の包括、リスクコミュニケーション及びコミュニティエンゲージメント及び予防接種活動を調整するために、臨床及び公衆衛生上のインシデント対応を開始しています。

感染予防及び管理

WHOは、サル痘疑い又は感染者を看護するときに、呼吸用保護具、手袋、ガウン及び保護眼鏡を使用することも含め、医療従事者向けの標準的な感染予防対策を遵守するよう医療機関に継続して助言しています。医療機関については、安全設計された医療機器の使用を促進することを含め、注射手技の安全性に関して医療従事者が適切に訓練を受講するよう確実にする必要があります。皮膚及び他の検体採取については、WHOの指針に従い、針刺し損傷による医療従事者の感染(複数の感染報告あり。)を防止する必要があります。鋭利な針については、メス及び他の医療器機が望ましい場合は、皮膚の病変除去に使用しないことです。清掃及び消毒の手順並びにリネン及び洗濯物の安全な取扱いについては、標準的な感染予防対策に基づき、特に注意を払うべきです。医療介護及び家庭環境における感染予防対策の指針については、サル痘の臨床管理及び感染予防対策に関する暫定対応指針で入手できます。
 
主催者は、集合場所、性交渉が行われる場所、個人的なサービス(例えば入れ墨)を受ける場所における状況では、職員がサル痘のリスク、感染経路、症状及び徴候を認識し、手指衛生、清掃及び消毒、リネンを含む共有使用物品の安全な取扱い及び洗濯や消毒の感染防止対策を実施するように、確認する必要があります。性的産業の従事者向けのWHO公衆衛生上の助言が利用可能となりました。
 

臨床及び治療

サル痘疑い又は感染者のクリニカルパスについては、臨床における全場面で確立する必要があります(一次予防、HIVや性感染症等を診療するクリニックを含む。)。クリニカルパスは、感染予防及び管理、トリアージ、検査、臨床的な評価及び管理のために、その地域に応じた感染者特定のスクリーニング及び標準的な手順の包括を確実にします。患者については、その地域における感染・伝播性の特徴及び疫学に基づき、臨床的な適応があれば、HIVその他性感染症の重複感染に関する検査を受ける必要があります。
 
大多数のサル痘感染者については、軽症であり、合併症を伴わず、限局的な皮疹、全身症状(発熱、頭痛、倦怠感又はリンパ節腫脹)を呈します。患者が受けるべき対症療法については、解熱のための解熱鎮痛剤、疼痛コントロール目的の経口又は局所鎮痛剤、皮膚病変を清潔に保持するための部分的なケア、栄養及び水分維持を奨励することがあります。
 
患者はときに入院を必要とする合併症を呈することがあり、最も一般的な理由としては疼痛に関連した隔離及び治療となります(鎮痛を必要とする重度の直腸肛門痛、細菌感染症を例とした合併症を含む。)。皮膚病変については、清潔に保持し、蜂窩織炎、膿瘍、筋炎、皮膚・軟部組織感染症の進行を例とした合併症(抗菌薬治療及び局所的な創傷治療を必要とする。)を経過観察する必要があります。その他の合併症については、直腸炎、尿道炎、呼吸苦、重症肺炎、角膜炎又は感染症(重度視力障害につながる。)、嘔吐・下痢(重度脱水につながる。)、電解質異常又は栄養失調、敗血症又はショック、頸部リンパ節腫脹(咽後膿瘍又は呼吸障害につながる。)、心筋炎、脳炎、他の神経学的異常を含みます。これらの感染者については、適切な専門家によって、最適な支持療法で治療し、評価する必要があります。
進行又は未治療であるHIV患者を例とした免疫不全の患者については、より広範な全身発疹を例として、サル痘の重症化又は合併症を伴うおそれがあります。サル痘感染者の中には、サル痘感染中に初めてHIVの診断を受ける感染者もいます。
サル痘に対する抗ウイルス薬の使用については、有効性及び安全性に関する科学的根拠の作成を迅速に行うために、標準化された設計手法及び臨床結果・データの収集ツールを使用した臨床研究に基づく必要があります。これが不可能であっても、安全性及び臨床結果(例えばサル痘に関するWHO臨床データプラットフォーム)に関するデータ収集(現在のアウトブレイクの状況で期待できる最小値を示す。)を用いたアクセス手順に基づく可能性があります。

ワクチン

現時点でサル痘に関する集団接種については、ワクチンの供給量にかかわらず、必要でなく、推奨もされないとWHOは考えています(3つのワクチンに関する利用可能な最善の科学的根拠を参照した独立性のある専門家による助言及び利害評価に基づく。)。予防接種については、公衆衛生上の介入を補完するための追加の手段として考慮するべきです(サル痘の予防接種に関する暫定指針)。
 
WHOは、曝露のおそれのある個人に対し曝露前予防接種を推奨しています。現在の複数の国におけるアウトブレイクで曝露のおそれが最も高い集団については、ゲイ、バイセクシャル、MSMです。他の曝露のおそれがある個人については、不特定多数の相手と性交渉を行う性産業の従事者、頻繁に曝露するおそれのある医療従事者、オルソポックスウイルス属を取り扱う研究室の職員、サル痘の診断検査を実施する臨床検査技師及びサル天然対応チームメンバーを含みます。
 
濃厚接触者については、曝露後予防接種が推奨されており、理想的には最初の曝露から4日以内(無症状の場合は、最大14日)となります。
 
健康な成人の場合、非複製ワクチン、最小複製ワクチン、複製ワクチンに基づくワクチンの使用が適切です。免疫不全者、HIV感染者、妊娠及び授乳中の女性については、非複製ワクチンを使用する必要があります。乳幼児については、非複製ワクチン又は最小複製ワクチンを使用する必要があります。
 
ワクチンの供給が限られる場合、小児、妊婦、免疫不全者(免疫抑制療法を受ける、又はHIVコントロール不良な患者を含む。)を例とする、重症化のおそれのある濃厚接触者については、状況に応じ、利害を考慮してワクチン接種を優先する必要があります。
 
WHOは、サル痘の戦略的な事前準備及び対応計画の流れで必要とされる重要な活動のみならず、予防接種プログラムの目標及び特定の対象を提示し、流行抑制における予防接種の役割を明確にする統合的な予防接種上の戦略を近日中に発表する予定です。
 
 

リスクコミュニケーション及びコミュニティエンゲージメント

WHOは、個人や集団がサル痘から自分自身や他の人を守り、必要に応じて予防接種、検査及び治療を求めるのを支援するために、ハイリスクの集団に関与し、リスクコミュニケーション活動を継続して実施しています。多くの国々で感染者数が増加しており、行動介入及び予防接種の重要性を強調することについては、継続して最優先事項となります。「サル痘は、もはやリスクではない。」という誤った情報が継続してオンライン上で拡散しています。
 
2022年10月6日にサル痘に関する非公式のWHO集団諮問会合が開催されました。当該の集団は、検査及び予防接種に関するアクセスの欠如、隔離が必要な人々に対する社会的支援の欠如、リスク及び資源の観点からHIV及びサル痘の重複感染に関する懸念を表明しました。リスクを伴う集団の知識、態度、実践、介入の認識及び影響を更に理解するための社会行動研究を実施するために、計画が進行中です。
 
サル痘に関連した偏見及び差別を理解し、防止し、かつ対処するために、公衆衛生上の助言が全国連言語で利用できます。性的産業従事者向けの公衆衛生上の助言については、同様に全国連言語で利用できます。

集会

サル痘の曝露のおそれがある状況については、パーティー、イベント、パレード、フェステイバル、コンサート、人が集まる特定の会合(サル痘の感染拡大のおそれがある皮膚及び皮膚の接触を伴う活動を含む。)を含みます。男性と性交渉を行う男性や公私のオンライン上のイベントに焦点を当てる集会については、親密な出会い及びその後のアウトブレイク拡大による曝露機会の増加を同様に助長します。
 
サル痘の感染者が発見された地域における集会の延期又はキャンセルについては、当初の予定である感染防止対策として要求されていない点に注意を払う必要があります。リスクに基づく感染防止対策については、集会を計画、変更又は延期するための意思決定に関する情報を提供することができ、サル痘を含む全てのハザードを考慮すべきであり、検討中のイベントの状況に合わせて調整し、定期的に繰り返す必要があります。
 
WHOは、保健当局、影響を受ける集団の代表者を伴う主催者、非政府組織、公務員、市民及び行動科学者に対して、いかなる個人及び集団における偏見を回避するための手法及び戦略に基づいて助言し、集会に関連した適切な介入の包括を支援するように推奨しています。
 
 

国・地域の更新情報

 

アフリカ地域におけるサル痘の状況報告

アフリカ地域では、2022年4月以降にサル痘の感染者数が急増しています。2022年1月1日から10月16日までに、当該地域の10か国から869人の新規感染者数及び13人の新規死亡者数がWHOに報告されました。当該地域については、世界的に報告された感染者数の1.2%(72,947人中の869人)及び死亡者数の50%(29人中の13人)に寄与しています。
 
疫学的第41週において、ナイジェリア(49人)、ガーナ(1人)及びモザンビーク(1人)のアフリカ地域の3か国で51人の新規感染者数が報告されました。当該地域で最多の感染者数を報告した3か国はナイジェリア(61%)、コンゴ民主共和国(23%)及びガーナ(12%)であり、3か国を合算すると、当該地域における感染者数の96%を占めています。当該地域の感染者数の半数以上(61%)は男性であり、年齢の中央値は27歳、四分位範囲は13歳から36歳までとなります。13人の新規死亡者数が当該地域から報告されており、ナイジェリア(7人)、ガーナ(4人)及びカメルーン(2人)となります。
 
WHOは、サル痘に係る国家的戦略事前準備及び対応計画の策定に関して各国を支援しています。サル痘感染者数が最多であり対応が優先されるガーナ及びナイジェリアにおいて高水準の支援をWHOは展開しており、中央アフリカ共和国及びコンゴ民主共和国への展開が計画されています。
 

ガーナへのアウトブレイク対応任務

技術支援については、2022年10月3日から10月7日まで行われ、国際保健規則のサル痘に関する緊急会合の暫定推奨事項に基づき、優先行動に関する対応、提唱及び技術関与を強化することを目的としていました。具体的な目的は、次のとおりです。 
  1. ワンヘルス対応活動の調整
  2. 感染・伝播性に関する類型を特徴化するための疫学調査
  3. 感染・伝播性の動態を理解するための社会環境の研究
  4. 施設及び集団の規模における調査(統合疾患調査及び対応)、臨床診断及び分子生物学的評価
  5. ワクチン及び治療薬の臨床試験に対する規制の事前準備
  6. リスク認識、医療を求める行動及び風説の管理に対処するためのリスクコミュニケーション及びコミュニティエンゲージメントの提供
 
 

任務からの知見及び推奨事項

ワンヘルス対応活動の調整
ガーナには強固な統治機構が整備されており、サル痘対応のためのインシデント管理支援チームの要諦が利用可能となっています。また、保健省、ガーナ保健サービス及び協力者の積極的な関与が対応の取組を強力に支援しています。ガーナは、あらゆる規模におけるサル痘のワンヘルス調整機構を制度化するよう推奨されています(地方における調整のための地域公衆衛生緊急実務センターを設立し、WHO及び協力者の推奨事項を考慮し、費用のかさむ戦略的事前準備及び対応計画を完成することを目的とする。)。
 
研究所
ガーナにおける複数の研究所は、サル痘ウイルスの検査能力を有します。試薬については、あらゆるメーカーから、あらゆる場所で入手できます。2か所以上の研究所にゲノム解析のための設備及び人員が配置されていますが、試薬が不足しています。国は、研究データを振り返り、最適な試薬を特定し、一貫した検査の整備、アルゴリズム及び標準的な手順の報告及び開発を行うよう推奨されています(標準化を確実にするために研究所間のコミュニケーション及びデータ共有を改善し、研究所の指針及び研究所への検体照会の手段を開発し、ガーナでサル痘ウイルスの遺伝的特性に関する研究及び将来の分子生物学的な検体採取上の戦略を開始し、報告化を標準化するために研究所の技術諮問会合を招集することを目的とする。)。
 
調査
調査機構については、公開情報源システムに基づく疫学的な知見を使用した予防的な情報及びデータ収集システムを通じて強化されています。結果は、ガーナがあらゆる規模で機能するIDSRシステムを持っていることを示しました。サル痘のアウトブレイクを調査して対応するために、訓練を受けた迅速対応チームがあります。また、ガーナには集団規模の調査システムがあり、疑い患者のトリアージ及び検証システムが存在します。ただし、国は、電子上の調査及びデータ管理システムへの移行を強化することが推奨されています(全てのサル痘感染者を追跡して調査するシステムを確立し、国家的調査システムの一環として民間施設がサル痘感染者を報告し、あらゆる規模におけるWHOの標準的な調査ツールの使用を適応・拡大することを目的とする。)。
 
感染者の管理
ガーナは、感染症管理に知悉したスタッフを訓練しています。隔離及び治療センターは、全16地域で利用可能です。国は、サル痘感染者及びその合併症を調査し、適時に報告するための臨床データ管理システムを構築するよう推奨されました(他の重度の臨床症状を管理するための新型コロナウイルス感染症センターを活用すること、サル痘患者を特定して管理するための医療施設の能力を強化することを目的とする。)。
 
リスクコミュニケーション及びコミュニティエンゲージメント
当該の任務については、ガーナに広範な協力体制が存在しており、体制構築の能力があることも確認されました。ガーナにおいては、リスクコミュニケーション及びコミュニティエンゲージメント(以下「RCCE」という。)のための複数の基盤があり、風説及び偏見を管理するための機構もあります。ガーナは、サル痘に関するRCCEを拡大するための機会(例えばハイリスクの集団に調整する。)を活用するように推奨されました(RCCEに関する技術諮問団体にあってはサル痘を懸念して戦略を見直し、当局にあってはサル痘に関して住民に継続してメッセージを送ることを目的とする。)。
 
 

スーダンにおけるサル痘の最新情報

スーダンは、2022年5月22日にハルツーム州から最初のサル痘感染者を報告しました。国立公衆衛生研究所における検査能力が限定されており、次いで疑い患者が報告されました。ドイツの施設における解析のために、2022年6月に15の検体が出荷されました。そのうち、14の検体が2022年10月に陽性と判明し、核酸増幅検査によってクレード1として分類されました。核酸増幅検査キットは2022年6月中旬に国立公衆衛生研究所に配布され、疑い患者に係る全ての検体の検査が可能となりました。
 
2022年10月15日時点において、スーダンの6州及び10地域から18人の新規感染者数が報告されています(西ダルフール(8人)、ゲダレフ(3人)、北ダルフール(3人)、ハルツーム(2人)、カッサラ(1人)及び中央ダルフール(1人))。西ダルフールから1人の死亡者数が報告されています(致死率5.8%)。 感染者数の大多数は、男性(78%)及び5歳未満(61%)です。
 
2022年10月15日時点において、スーダンの12州及び32地域から合計364人の疑い患者が報告されており、そのうち5州が難民及び国内避難民キャンプを主催しています。215人(59%)の検体が研究室における解析のために採取され、そのうち161人(74.8%)の検体の結果が陰性と判明しました。
 
スーダンの感染者の疫学及び曝露については、世界的に観察された疫学とは異なります。5歳未満の小児が主に影響を受けており、性交渉中の皮膚及び粘膜を介した接触感染は報告されていません。西ダルフール及び北ダルフールの疫学的な関連のある感染者については、動物曝露が報告されました(それぞれ野生の豚及びリス。広範囲であり、動物感染との関連は報告されていません。)。ゲダレフ及びカッサラの感染者は、難民の中に含まれています。
 
スーダン連邦保健省は、国内のサル痘対応を強化するために、カッサラ、ゲダレフ及び北ダルフールの各州に対し合計3回のワンヘルスサル痘発生対応任務を共に実施しました。それ以降において、連邦保健省及び州保健省は、WHOの技術支援を受け、州規模のサル痘の事前準備及び対応計画を策定することができました。
 

湾岸諸国におけるリスク評価

10月13日時点において、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア及びUAEから構成される湾岸協力会議の6か国中の4か国から、合計30人のサル痘の新規感染者数が報告されています。当該の6か国については、この地域における強固な医療システムを兼ね備えた国となります。
 
当該の6か国については、影響を受けた国からの多数の旅行者、将来的な国際的マスギャザリング及び既に感染者を報告している国における潜在的な感染リスクが継続して存在することにより、サル痘ウイルスに曝露するおそれがあります。世界及び地域的な健康保障に係る懸念例については、FIFAワールドカップ2022(2022年11月20日から12月18日までのカタール開催)があります。
 
湾岸疾病予防管理センターは、湾岸住民の曝露のおそれ及びサル痘の検出及び対応能力を検討する必要があることを考慮し、WHOと協力して次の質問に取り組みました。「サル痘ウイルスの感染は、湾岸諸国の住民にどのような影響を与えるか。」2022年10月9日及び10月10日にサウジアラビアのリヤドでワークショップが開催されました。演習及びその知見を要約した技術報告書は、提起された優先事項及び推奨事項とともに公開される予定です。

 

出典

World Health Organization. Multi-country outbreak of monkeypox External Situation Report 8, published 19 October 2022”.WHO.2022. https://www.who.int/publications/m/item/multi-country-outbreak-of-monkeypox--external-situation-report--8---19-october-2022, (参照2022-10-20).