環境検体中の伝播型ワクチン由来ポリオウイルス2型(cVDPV2)の検出-グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(英国)とアメリカ合衆国
Disease outbreak news 2022年9月14日
発生状況一覧
ここ数ヶ月、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(以下、「英国」という)とアメリカ合衆国(以下、「米国」という。)において、環境検体から遺伝子的に関連したセービン株2型ポリオウイルス(SL2)の検出が数件ありました。
英国では、2022年2月以降、ロンドンの国立生物学標準管理研究所(NIBSC)にあるWHO世界ポリオ研究所ネットワーク(GPLN)が、ロンドンから採取した下水検体からからセービン株2型ポリオウイルスの分離株を検出しています。5月24日と31日に採取された検体は、ワクチン由来ポリオウイルス2型(以下、「VDPV2」という。)と認定されるに十分な変異がありました。その後、2ヶ月以上経ってから新たにウイルスが検出されたため、8月8日にこれらの検体は「伝播型」VDPV2と分類されました。 9月5日現在、英国ではVDPV2に関連するヒトの症例は報告されていません。
米国では、2022年4月21日から8月26日の間にニューヨーク州ロックランド(Rockland)郡とその近隣の郡で採取された環境検体からセービン株2型ポリオウイルスが一貫して検出されています。7月下旬、ロックランド郡のワクチン未接種者がVDPV2に感染し、麻痺を呈した症例が報告されました。この症例は、最近の海外渡航歴はありませんでした。これは、2013年以降、国内で報告された初めてのポリオの症例です。5塩基以上の変化を含む環境ウイルス配列(8月3日と8月11日に採取)が検出され、いずれもロックランド郡で報告された症例に関連しているため、これらのウイルスは現在「伝播型」VDPV2として分類されています。
米国ニューヨーク州の環境検体から検出されたウイルスは、英国・ロンドンの下水検体およびイスラエル・エルサレム地区で2022年1月から6月にかけて採取された下水検体から検出されたウイルスと遺伝的に関連しています。
図-1 2022年2月から8月までの英国とアメリカにおける遺伝子連鎖型cVDPV2分離株の検出状況
英国では、2022年2月以降、ロンドンの国立生物学標準管理研究所(NIBSC)にあるWHO世界ポリオ研究所ネットワーク(GPLN)が、ロンドンから採取した下水検体からからセービン株2型ポリオウイルスの分離株を検出しています。5月24日と31日に採取された検体は、ワクチン由来ポリオウイルス2型(以下、「VDPV2」という。)と認定されるに十分な変異がありました。その後、2ヶ月以上経ってから新たにウイルスが検出されたため、8月8日にこれらの検体は「伝播型」VDPV2と分類されました。 9月5日現在、英国ではVDPV2に関連するヒトの症例は報告されていません。
米国では、2022年4月21日から8月26日の間にニューヨーク州ロックランド(Rockland)郡とその近隣の郡で採取された環境検体からセービン株2型ポリオウイルスが一貫して検出されています。7月下旬、ロックランド郡のワクチン未接種者がVDPV2に感染し、麻痺を呈した症例が報告されました。この症例は、最近の海外渡航歴はありませんでした。これは、2013年以降、国内で報告された初めてのポリオの症例です。5塩基以上の変化を含む環境ウイルス配列(8月3日と8月11日に採取)が検出され、いずれもロックランド郡で報告された症例に関連しているため、これらのウイルスは現在「伝播型」VDPV2として分類されています。
米国ニューヨーク州の環境検体から検出されたウイルスは、英国・ロンドンの下水検体およびイスラエル・エルサレム地区で2022年1月から6月にかけて採取された下水検体から検出されたウイルスと遺伝的に関連しています。
図-1 2022年2月から8月までの英国とアメリカにおける遺伝子連鎖型cVDPV2分離株の検出状況
公衆衛生上の取り組み
WHOは、各国当局と連携して、ウイルスの拡散の可能性と、世界のさまざまな場所から検出されたこれらの分離株に関する潜在的なリスクを判断するために、遺伝子および疫学的状況の評価を継続します。
英国における公衆衛生対策
英国健康安全保障庁(UKHSA)は、公衆衛生リスクの評価と対応策の実施を含むさらなる調査を行っています。これらの対策は以下の通りです:
・ポリオの環境、臨床、検査施設でのサーベイランスを強化。
・2022年6月にロンドンの5歳未満の子どもを対象とした予防接種キャッチアップキャンペーンを実施し、2022年8月にロンドンの1歳から9歳の子どもを対象とした不活化ポリオワクチン(IPV)の補助ブースターキャンペーンを開始しました。
・ロンドンにおけるVDPV2の検出について、公衆衛生専門家、保健医療専門家、検査機関職員に注意喚起しました。
・保健医療者は、新規移住者、亡命希望者、難民などの免疫不足の集団に重点を置いて、新たに登録された子どもや大人の定期予防接種が最新であることを確認することの重要性を再認識しました。
・地方および地域の検査機関は、エンテロウイルス陽性の便検体をすべてUKHSAに照会するよう要請された。
・ロンドン全域でのウイルスの蔓延の程度を評価するために、環境サンプリングを強化しています。さらに、全国にさまざまな下水道サンプリング地点が追加で設置されています。
米国における公衆衛生対策
・ポリオで汚染されている排水のサーベイランスの強化。
・ニューヨーク州のロックランド郡とオレンジ郡で、ポリオの予防接種を支援し、接種率を高めるための活動を継続中。ポリオウイルスに感染した可能性のあるロックランド郡の住民にIPVを提供する予防接種キャンペーンを開始するための計画が進行中。
・ニューヨーク州および近隣州の排水検体におけるポリオウイルス検査の実施と、臨床検体に対する確認検査の実施。
・米国全土における急性弛緩性脊髄炎(AFM)のサーベイランスを調整し、排水からポリオウイルスが検出された地域では、麻痺性・非麻痺性ポリオのサーベイランスを強化すること。
・ポリオに関する情報、ニューヨーク州の状況、ポリオの予防接種に関する情報を含む健康勧告が、州内および患者の居住する郡の医療機関や病院に発表されました。
・9月9日、ニューヨーク州では、ポリオによる州災害緊急事態が宣言されました。この宣言により、薬剤師などの医療従事者が追加でポリオワクチンを接種できるようになり、医療従事者がポリオ予防接種のStanding Order (医師以外のコメディカルがワクチン問診と接種をする)を出すことができるようになりました。
英国における公衆衛生対策
英国健康安全保障庁(UKHSA)は、公衆衛生リスクの評価と対応策の実施を含むさらなる調査を行っています。これらの対策は以下の通りです:
・ポリオの環境、臨床、検査施設でのサーベイランスを強化。
・2022年6月にロンドンの5歳未満の子どもを対象とした予防接種キャッチアップキャンペーンを実施し、2022年8月にロンドンの1歳から9歳の子どもを対象とした不活化ポリオワクチン(IPV)の補助ブースターキャンペーンを開始しました。
・ロンドンにおけるVDPV2の検出について、公衆衛生専門家、保健医療専門家、検査機関職員に注意喚起しました。
・保健医療者は、新規移住者、亡命希望者、難民などの免疫不足の集団に重点を置いて、新たに登録された子どもや大人の定期予防接種が最新であることを確認することの重要性を再認識しました。
・地方および地域の検査機関は、エンテロウイルス陽性の便検体をすべてUKHSAに照会するよう要請された。
・ロンドン全域でのウイルスの蔓延の程度を評価するために、環境サンプリングを強化しています。さらに、全国にさまざまな下水道サンプリング地点が追加で設置されています。
米国における公衆衛生対策
・ポリオで汚染されている排水のサーベイランスの強化。
・ニューヨーク州のロックランド郡とオレンジ郡で、ポリオの予防接種を支援し、接種率を高めるための活動を継続中。ポリオウイルスに感染した可能性のあるロックランド郡の住民にIPVを提供する予防接種キャンペーンを開始するための計画が進行中。
・ニューヨーク州および近隣州の排水検体におけるポリオウイルス検査の実施と、臨床検体に対する確認検査の実施。
・米国全土における急性弛緩性脊髄炎(AFM)のサーベイランスを調整し、排水からポリオウイルスが検出された地域では、麻痺性・非麻痺性ポリオのサーベイランスを強化すること。
・ポリオに関する情報、ニューヨーク州の状況、ポリオの予防接種に関する情報を含む健康勧告が、州内および患者の居住する郡の医療機関や病院に発表されました。
・9月9日、ニューヨーク州では、ポリオによる州災害緊急事態が宣言されました。この宣言により、薬剤師などの医療従事者が追加でポリオワクチンを接種できるようになり、医療従事者がポリオ予防接種のStanding Order (医師以外のコメディカルがワクチン問診と接種をする)を出すことができるようになりました。
WHOのリスク評価
英国と米国でcVDPV2が出現したことにより、ポリオが世界中で撲滅されるまで、ポリオ撲滅国がポリオの再感染や再出現のリスクにさらされることがあると再確認されました。このVDPV2株の検出は、以下の重要性を強調するものです。
・ポリオウイルスが蔓延した場合のリスクと影響を最小限に抑えるため、あらゆるレベル、あらゆる地域でポリオワクチンの定期接種を維持すること。
・VDPVの輸入や出現を適時に発見するための高感度な監視システムを持つこと。
WHOユニセフの推計によると、2021年に英国と米国で生後12カ月児を対象に評価した3回の定期接種ポリオワクチンの完遂率は、それぞれ93%、92%となっています。
WHOは、各国当局による継続的な調査、リスク評価、アウトブレイク対応を引き続き支援していきます。
・ポリオウイルスが蔓延した場合のリスクと影響を最小限に抑えるため、あらゆるレベル、あらゆる地域でポリオワクチンの定期接種を維持すること。
・VDPVの輸入や出現を適時に発見するための高感度な監視システムを持つこと。
WHOユニセフの推計によると、2021年に英国と米国で生後12カ月児を対象に評価した3回の定期接種ポリオワクチンの完遂率は、それぞれ93%、92%となっています。
WHOは、各国当局による継続的な調査、リスク評価、アウトブレイク対応を引き続き支援していきます。
WHOからのアドバイス
WHOは、すべての加盟国に対し、各地区・自治体におけるポリオワクチン接種率を95%以上に到達・維持することの重要性を表明しています。また、急性弛緩性麻痺率(AFP)、48時間以内に調査された症例の割合、適切な検体が得られた症例の割合という3つの主要サーベイランス指標について高い質を保つこと、ポリオウイルス感染の影響を最小限に抑え迅速に対応できるよう新たなウイルスの輸入またはVDPV出現を迅速に探知・対応するために補足(環境およびエンテロウイルス)ポリオウイルス監視の最適化と国家ポリオウイルス発生対応計画の更新の重要性を再度表明しています。
2022年6月に開催された第32回ポリオIHR緊急委員会は、国際保健規則(IHR2005)に基づき招集され、ポリオウイルスの国際的伝播のリスクは依然として国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)であることに同意、暫定勧告をさらに3ヶ月間延長することを勧告しました。
2022年6月に開催された第32回ポリオIHR緊急委員会は、国際保健規則(IHR2005)に基づき招集され、ポリオウイルスの国際的伝播のリスクは依然として国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)であることに同意、暫定勧告をさらに3ヶ月間延長することを勧告しました。
出典
Detection of circulating vaccine derived polio virus 2 (cVDPV2) in environmental samples– the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland and the United States of America
Disease Outbreak News 14 September 2022
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2022-DON408
Disease Outbreak News 14 September 2022
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2022-DON408