マールブルグ病(終息) - ガーナ共和国

Disease outbreak news  2022年9月28日

発生状況一覧

2022年9月16日、ガーナ保健省は、同国のアシャンテ(Ashanti)州、サバンナ(Savannah)州およびウェスターン(Western)州を襲ったマールブルグ病(MVD)発生の終息を宣言しました。WHOの勧告に従い、この宣言は、2022年8月5日に確認された最後の症例の2回目の陰性化から42日(マールブルグ病の最大潜伏期間の2倍)後に行われました。

発生の概要

2022年6月28日から9月16日の間に、ガーナ保健省は、死者2名(CFR 67%)を含む3例のマールブルグ病の確定症例を報告しました。3例とも同一世帯の患者でした。
 
ガーナ保健省は、2022年7月1日に野口記念医学研究所(NMIMR)で逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により26歳男性(指標例)のマールブルグウイルスが確認され、7月7日にアウトブレイクを宣言しました。血液検体は確認のためダカール(Dakar)のパスツール研究所(Institute Pasteur)に送られました。発症は6月22日で、その後、鼻と口から出血しました。患者は2022年6月26日に病院に収容され、翌日死亡しました。
 
2人目の患者は生後14ヶ月の子供で、症状を発症して7月17日に入院し、入院3日目に死亡しました。3人目の患者、24歳女性は2022年7月26日に政府指定の隔離施設に入院しました。 
 
合計198人の接触者が特定され、監視され、推奨される最初の21日間の観察期間を終え、その後、保健当局によってさらに21日間延長されました。
 
2022年9月16日、保健省は、2022年8月5日の最後の確定症例の2回目の陰性化から42日(最大潜伏期間の2倍)後に、アウトブレイクの終息を宣言しました。

マールブルグ病の疫学

マールブルグ病(MVD)は,高い致死率(CFR;24-88%)を伴う流行性疾患です。発症初期には、臨床症状が類似しているため、他の多くの熱帯熱性疾患と区別して診断することが困難です。エボラウイルス病をはじめ、マラリア、腸チフス、レプトスピラ症、リケッチア感染症、ペストなど、他のウイルス性出血熱を除外する必要があります。ヒトのマールブルグ病感染は、ルーセットオオコウモリのコロニーが生息する鉱山や洞窟に長時間曝されることで発生することがあります。マールブルグウイルスは、感染者の血液、分泌物、臓器、その他の体液、およびこれらの体液で汚染された表面や材料(寝具、衣類など)と(粘膜や傷ついた皮膚が)直接接触することによりヒトからヒトに伝播します。
ウイルスを治療するための抗ウイルス剤やワクチンは承認されていませんが、支持療法(経口または点滴による水分補給)および対症療法により生存率が向上します。血液製剤、免疫療法、薬物療法など、さまざまな治療法の可能性が検討されています。
 
2021年、西アフリカのギニアで初めてマールブルグ病の集団発生が報告されました。遺伝子配列解析の結果、ガーナのマールブルグウイルス(MARV)ゲノムは、2021年のアウトブレイクからの配列と関連し、全体として、シエラレオネのコウモリおよび2004~2005年にアンゴラで発生したアウトブレイクから得られた配列と同一グループ化できることが示されました。

公衆衛生上の取組

全体的な対応
MoHは国内調整機構を設立し、WHOと他の主要パートナー、米国疾病管理センター(CDC)、ユニセフ、英国外務英連邦開発省(FCDO)によって対応活動が開始された。WHOは技術専門家を派遣し、感染予防と管理(IPC)の強化、調整、監視、調査、リスク評価などの支援を行っています。
 
調査と接触者追跡
 統合疾病監視と対応(IDSR)システムが導入され、報告されたアラートが確認されました。疫学的調査を含むサーベイランス活動が実施され、198人の接触者がフォローアップされました。
 
感染予防と管理
医療従事者は、症例の定義と感染予防について啓発されました。
 
ラボ検査
すべての疑い例について、野口記念医学研究所で検体検査が行われた。野口記念医学研究所とダカールのパスツール研究所では、確定症例2例のサンプルについてゲノム解読が行われた。
 
コミュニティへの参加
地域社会でのサーベイランスを強化するため、地域ベースの調査ボランティアのためのオリエンテーションが開催されました。

WHOによるリスク評価

ガーナで現在発生しているマールブルグ病は、2022年8月5日に確認された最後の症例の2回目の陰性化から42日間新たな症例の報告がなく、終息が宣言されました。これは、ガーナで報告された最初のマールブルグ病のアウトブレイクでした。西アフリカでは、マールブルグ病の発生は頻繁ではありません。直近のマールブルグ病の発生は、2021年8月にギニア共和国で報告されました(確定症例1例)。アフリカ地域で過去にマールブルグ病の発生が報告された国には、アンゴラ共和国、コンゴ民主共和国、ケニア共和国、南アフリカ共和国、ウガンダ共和国があります。
 
今回の発生源は疫学調査でまだ特定されておらず、地域ベースのサーベイランスを強化する必要性が浮き彫りになっています。この発生時のリスクは、国レベルでは高、地域レベルでは中、世界レベルでは低と評価されています。

WHOからのアドバイス

マールブルグウイルスのヒトからヒトへの伝播は、主に感染者の血液や体液との直接接触に関連しており、適切な感染対策が実施されていない場合には、医療関連でのマールブルグウイルス感染も報告されています。
 
医療施設における感染予防と管理
マールブルグウイルス病の疑いまたは確認された患者をケアする医療従事者は、血液および/または体液へのあらゆる暴露、および汚染された可能性のある環境との無防備な接触を避けるために、標準および感染ベースのIPC予防策を適用する必要があります。IPC予防策には以下が含まれます。
 
疑い症例の早期発見(スクリーニング、トリアージ)と隔離。
適切な隔離能力(インフラや人的資源を含む)。
医療従事者が手指衛生用品(石鹸と水またはアルコール系の手指消毒剤など)を使用できること。
医療従事者のための適切で入手しやすい個人防護具(PPE)。
安全な注射手技(使い捨ての注射針の使用が肝要)。
医療器具の汚染除去および滅菌のための手順徹底と資源の確保
感染性廃棄物の適切な管理
 
コミュニティベースのサーベイランスを含む統合的な疾病調査と対応活動は、影響を受けたすべての医療圏で引き続き強化されなければなりません。
 
感染予防と制御のための地域社会の認識
マールブルグウイルス病の危険因子と、ウイルスへの人体暴露を減らすために個人が取ることのできる防御手段についての認識を高めることが、人への感染と死亡を減らすための重要な手段です。主な公衆衛生コミュニケーションメッセージは以下の通りです。
 
感染した患者との直接の接触、特にその体液に起因する地域社会でのヒトからヒトへの感染リスクを低減すること。
マールブルグ病の患者との濃厚な身体的接触を避けること。
感染が疑われる患者は、自宅で管理するのではなく、治療と隔離のために直ちに医療施設に移送する必要があります。この移送の間、医療従事者は適切なPPEを着用する必要があります。
病院にいる病気の親族を見舞った後は、こまめに手洗いをする必要があります。
マールブルグに感染した地域社会は、さらなる感染や地域社会の偏見・汚名を避けるために、病気の性質そのものについて、また、治療センターへの早期受診や、死者の安全な埋葬など、必要な発生抑制措置について、住民が十分に情報を得られるように努力しなければなりません。マールブルグで死亡した人は、速やかに安全に埋葬されるべきです。
 
フルーツコウモリ、サル、類人猿との接触など、野生動物から人への感染リスクを低減することも大切です。
 
手袋などの適切な保護衣を着用し、野生動物を取り扱う。
血液や肉などの動物性食品は十分に加熱してから摂取し、生肉の摂取は避ける。
フルーツコウモリの生息する鉱山や洞窟での作業、研究活動、観光の際には、手袋やマスクなどの適切な保護衣を着用する。

出典

Marburg Virus Disease - Ghana
Disease Outbreak News 28 September 2022
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2022-DON409