エボラウイルス病 -コンゴ民主共和国(終息宣言)

Disease outbreak news  2022年9月29日

発生状況一覧

2022年9月27日、コンゴ民主共和国保健省は、北キヴ(North Kivu)州ベニ(Beni)保健区域のブタヌカ(Butanuka)保健区で発生したエボラウイルス病(EVD)の終息を宣言しました。WHOの勧告に従い、この宣言は最後に確認された唯一の患者の埋葬から42日後、つまりエボラウイルス感染症の最大潜伏期間の2倍を過ぎた後に発出されました。

発生の概要

2022年8月21日、コンゴ民主共和国保健省は、保健区域の死亡例で逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によりエボラウイルスが検査で確認されたことを受け、エボラウイルス病の発生を宣言しました。
 
この症例は46歳の女性で、7月23日から8月15日まで(23日間)、咳、頭痛、多関節痛(関節痛)、身体的無力感(全身倦怠感)などの症状があり、既存の併発症に関連した症状と考えられて入院・治療されました。患者は2022年8月15日に病院で死亡しました。遺体は遺族に返還され、検査結果の判明に先立つ8月16日に伝統的な方法で埋葬されました。
 
血液と口腔咽頭分泌物の検体は、8月15日にベニの国立生物医学研究所(INRB)でRT-PCRによりザイール型エボラウイルス陽性となり、これらは8月16日にゴマのRodolphe Mérieux INRB検査所でも同様に確定されました。エボラウイルス病の確定検査と遺伝子配列の解析後、保健省によって発生が宣言されました。
 
8月16日以降、新たな確定例または推定例は確認されていません。患者の182人の接触者のうち、172人が確認され、21日間監視されました。フォローアップされなかった10人の接触者は、連絡が取れませんでした。
 
発生源を特定するための調査は現在も継続中です。

公衆衛生上の取組

全体的な対応
保健省は、WHOや他のパートナーとともに、流行を制御し、さらなる拡大を防止するための対応策を実施しました。国家および地区の緊急管理委員会が対応を調整するために発足しました。学際的なチームが配備され、積極的に患者の捜索と治療を行い、接触者を特定し、連絡を取り、フォローアップし、発生予防と制御のための介入について地域社会に啓蒙しました。
 
注意喚起と検査
このアウトブレイク中、2022年8月21日から9月27日まで、ベニ保健地区から合計9,173件のアラートが報告され、その前例dえ調査が行われました。そのうち607件(7%)がエボラウイルス病の疑い例として確定し、合計682の検体がエボラウイルス病の検査にかけられました。
 
入国地点
入国地で登録された旅行者2,608人のうち2,390人(92%)がエボラウイルス病のスクリーニングを受け、ウイルスは検出されませんでした。
 
ワクチン接種
9月27日現在、感染の発生した保健区域で550人が囲い込み戦略を用いて、接触者や接触者の接触者を対象にエボラウイルス病の予防接種を受けました。最前線の医療従事者がワクチン接種者の大半を占めています(483人)。

WHOによるリスク評価

コンゴ民主共和国におけるこの最新のエボラウイルス病流行は、2022年8月16日に最後の唯一の確定患者が埋葬されてから42日間、新たな症例の報告がなく、終息したと宣言されています。この症例は、北キヴ州、イトゥリ(Ituri)州、南キヴ(South Kivu)州で発生した2018~2020年のアウトブレイクと遺伝的に関連しています。(このアウトブレイクの詳細については、2018-2020年の事象に関連するWHOアウトブレイクアカウントを参照してください)。この直近のアウトブレイクの発生源はまだ特定されていません。
 
エボラウイルス病が同国で流行していることを考えると、今後の発生は想定外ではありません。エボラウイルスは人獣共通感染(enzootic)であり、最近の再発生は、直近の流行からの生存者のウイルスによるものです。エボラウイルス病の再発生は、コンゴ民主共和国における公衆衛生上の大きな懸念です。同国の回復、準備、および発生への対応能力には、依然としてギャップが残っています。コンゴ民主共和国では、新型コロナウイルス感染症、コレラ、麻しん、ポリオ、黄熱、サル痘などの流行が同時に発生し、また、東部地域での人道危機的状況が長引いているため、保健制度と利用できる資源に大きな負担がかかっています。
 
北キヴ州などの特定の地域では、コミュニティーの不信感、脆弱な保健システム、政情不安などの環境的・社会経済的要因が重なり、エボラウイルス病の新たな発生のリスクを高める可能性があります。さらに、症例検出能力や、検査施設での確定能力、サーベイランスの強化における様々な検出能力の向上は、エボラウイルス病発生の検出頻度の上昇につながる可能性もあります。しかしながら、WHOは、治安に関する継続的な課題と保健システムの課題(疫学調査、医療現場におけるIPCプログラムと実践)が、新型コロナウイルス感染症やその他の進行中のアウトブレイクの発生と相まって、エボラウイルス病の再発生を迅速に検知し対応する同国の能力に影響を与えることを懸念しています。

WHOからのアドバイス

WHOは、ヒトへのエボラウイルス病感染を減らす効果的な方法として、以下のリスク低減策を提言しています。
 
感染したフルーツコウモリや霊長類との接触やそれらの生肉の摂取による野生動物からヒトへの感染リスクを低減すること。動物の取り扱いには手袋など適切な保護衣を着用すること。
エボラウイルス病の症状を持つ人々との直接または濃厚な接触、特に彼らの体液によるヒトからヒトへの伝播のリスクを低減する。病気の患者の世話をする際には、適切な個人用保護具を着用すること。入院中の患者を見舞った後や、体液に触れたり接触したりした後は、こまめに手洗いをすることが必要です。
エボラウイルス病患者の早期発見、隔離、治療のための医療従事者の教育と再教育、安全で尊厳ある埋葬のための再教育を継続すること。
エボラウイルス病からの生存者の体液の一部にウイルスが残存していることから起こりうる感染のリスクを軽減すること。WHOは、エボラウイルス病生存者へのケアプログラムを通じて、医療ケア、心理的サポート、生物学的検査(連続2回陰性になるまで)を提供することを推奨している。WHOは、血液検査でエボラウイルスが陰性であった回復期の男女患者の隔離は推奨していない。
医療システムにおけるIPCプログラムを強化することにより、医療を介した感染の増幅を抑えること。
エボラウイルス病患者の早期発見、隔離、治療のための医療従事者の継続的なトレーニング、安全で尊厳のある埋葬とIPC囲い込み戦略に関する再トレーニングを提供すること。
コミュニティと連携し、安全で尊厳のある埋葬の実践を強化すること。
リスクの高い地域や国において、後方支援のための能力を構築し、維持すること。
現在のリスク評価とエボラウイルス病の発生に関する過去の実績に基づき、WHOはコンゴ民主共和国への旅行と貿易を制限しないよう勧告しています。

出典

Ebola Virus Disease –Democratic Republic of the Congo
Disease Outbreak News 29 September 2022
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2022-DON411