新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO) 2022年1月25日

世界の概況

2022年1月23日時点で、直近1週間(1月17日~1月23日)に報告された新規感染者数は2,136万2,288人で、前週と比較して5%増加しました。新規死亡者数は4万9,890人報告され、前週と比較して同程度でした(図1)。WHO管轄の6地域全体で、2,100万人以上の新規感染者が報告され、パンデミック開始以来、最多の週間感染者数を記録しました。また、5万人近い新規死亡者数も報告されました。2022年1月23日現在、全世界の累積感染者数は3億4,674万1,628人、累積死亡者数は558万4,374人となりました(表1)。
 
世界的に、新規感染者数の増加が緩やかになっています。東地中海地域で最も大きな増加率(39%)が報告され、東南アジア地域で36%、ヨーロッパ地域で13%の増加が報告されました。アフリカ地域で最も大きな減少率(31%)が報告され、アメリカ地域で10%の減少が報告されましたが、西太平洋地域は前週と同程度で変わりありませんでした。新規死亡者数は、東南アジア地域で最も大きな増加率(44%)が報告され、東地中海地域で15%、アメリカ地域で7%の増加が報告されました。アフリカ地域、西太平洋地域、ヨーロッパ地域は、それぞれ14%、12%、5%の減少が報告されました。
 
直近1週間における新規感染者数が多い上位5か国は、アメリカ合衆国(4,215,852人:24%減少)、フランス(2,443,821人:21%増加)、インド(2,115,100人:33%増加)、イタリア(1,231,741人:同程度)、ブラジル(824,579人:73%増加)でした。また、直近1週間における新規死亡者数が多い上位5か国は、アメリカ合衆国(10,795人:17%減少)、ロシア連邦(4,792人:7%減少)、インド(3,343人:47%増加)、イタリア(2,440人:24%増加)、イギリス(1,888人:同程度)でした。

図1 2022年1月23日時点の週別・WHO管轄地域別のCOVID-19感染者数及び世界の死亡者数の推移


表1 2022年1月23日時点のWHO管轄地域別の新規・累積COVID-19確定症例数及び死亡者数

WHO管轄地域別の概況

アフリカ地域

直近1週間の新規感染者数は13万1,322人、新規死亡者数は2,038人でした。前週と比較して新規感染者数は31%減少し、新規死亡者数は14%減少しました。地域内の一部の国々(4/41:8%)において、20%以上の感染者の増加が報告されています。アルジェリアで142%、レユニオンで93%、ブルキナファソで28%、タンザニアで20%の増加が報告されました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
レユニオン 31,401人 3,507.3人 93%増加
南アフリカ共和国 22,795人 38.4人 35%減少
アルジェリア 9,052人 20.6人 142%増加
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
南アフリカ共和国 785人 1.3人 13%減少
エチオピア 105人 1.0人未満 5%減少
ナミビア 98人 3.9人 8%減少
 

アメリカ地域

直近1週間の新規感染者数は735万6,674人、新規死亡者数は1万9,357人でした。前週と比較して、新規感染者数は10%減少し、新規死亡者数は7%増加しました。地域内の1/3の国々(18/56:32%)において、20%以上の感染者の増加が報告されています。ドミニカで176%(273人→754人)、エルサルバドルで156%(1,343人→3,435人)、ベネズエラで117%(6,003人→13,033人)と高い増加率が報告されました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
アメリカ合衆国 4,215,852人 1,273.7人 24%減少
ブラジル 824,579人 387.9人 73%増加
アルゼンチン 761,534人 1,685.0人 同程度
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
アメリカ合衆国 10,795人 3.3人 17%減少
ブラジル 1,767人 1.0人未満 81%増加
メキシコ 1,317人 1.0人 83%増加

東地中海地域

直近1週間で確認された新規感染者数は47万9,050人、新規死亡者数は1,232人でした。前週と比較して、新規感染者数は39%増加し、新規死亡者数は15%増加しました。地域内の半数以上の国々(13/22:59%)において、20%以上の感染者の増加が報告されています。イラクで178%(38,623人→13,877人)、アフガニスタンで156%(1,343人→3,435人)、パレスチナで140%(3,040人→7,239人)と高い増加率が報告されました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
チュニジア 66,015人 558.6人 67%増加
モロッコ 50,753人 137.5人 10%増加
レバノン 44,217人 647.8人 同程度
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
エジプト 207人 1.0人未満 12%増加
チュニジア 177人 1.5人 45%増加
イラン 158人 1.0人未満 20%減少
 

ヨーロッパ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は1,004万147人、新規死者数は2万1,259人でした。前週と比較して、新規感染者数は13%増加し、新規死者数は5%減少しました。地域内の半数の国々(34/61:55%)において、20%以上の感染者の増加が報告されています。コソボで339%(2,990人→13,126人)モルドバで138%(8,019人→19,083人)、アルメニアで132%(1,762人→4,094人)、と高い増加率が報告されました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
フランス 2,443,821人 3,757.4人 21%増加
イタリア 1,231,741人 2,065.2人 同程度
ドイツ 715,470人 860.3人 57%増加
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ロシア連邦 4,792人 3.3人 7%減少
イタリア 2,440人 4.1人 24%増加
イギリス 1,888人 2.8人 同程度

 

東南アジア地域

直近1週間で確認された新規感染者数は232万7,997人で、新規死亡者数は3,714人でした。前週と比較して、新規感染者数は36%増加し、新規死亡者数は44%増加しました。新規感染者数は、前回報告の145%増加と比較して緩やかな増加となりましたが、地域内の半数以上の国々(6/10:60%)において、20%以上の感染者の増加が報告されています。ブータンで390%(147人→721人)、バングラデシュで181%(24,011人→67,425人)、インドネシアで170%(5,545人→14,729人)と高い増加率が報告されました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
インド 2,115,100人 153.3人 33%増加
バングラデシュ 67,425人 40.9人 181%増加
ネパール 56,656人 194.4人 168%増加
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
インド 3,343人 1.0人未満 47%増加
タイ 107人 1.0人未満 7%増加
スリランカ 88人 1.0人未満 同程度

 

西太平洋地域

直近1週間で確認された新規感染者数は102万7,098人、新規死亡者数は2,576人でした。前週と比較して、新規感染者数は同程度、新規死亡者数は12%減少しました。
地域内の複数の国々(10/27:36%)において、20%以上の感染者の増加が報告されています。パラオで593%(46人→319人)、ニューカレドニアで220%(518人→1,659人)、シンガポールで211%(6,184人→19,290人)、日本で181%(231,502人→268,284人)、と高い増加率が報告されました。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
オーストラリア 302,608人 1,186.7人 36%減少
日本 268,284人 212.1人 159%増加
フィリピン 219,146人 200.0人 5%減少
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ベトナム 1,116人 1.0人未満 18%減少
フィリピン 548人 1.0人未満 24%減少
オーストラリア 430人 1.7人 49%増加
 

変異株の状況

2021年5月31日、WHOは、懸念すべき変異株(VOC)及び注目すべき変異株(VOI)の言いやすい・覚えやすい新たな呼称を発表しました(表2・表3)
 
表2 2022年1月25日時点の懸念すべき変異株(VOC)


【VOCの呼称】
・イギリス由来の変異株(B.1.1.7)→ アルファ株(2020年12月18日指定)
・南アフリカ由来の変異株(B.1.351)→ ベータ株(2020年12月18日指定)
・ブラジル由来の変異株(P.1)→ ガンマ株(2021年1月11日追加)
・インド由来の変異株(B.1.617.2)→ デルタ株(2021年5月11日VOIから変更)
・複数国由来の変異株(B.1.1.529)→ オミクロン株(2021年11月26日指定)
 
表3 2022年1月25日時点の注目すべき変異株(VOI)


【VOIの呼称】
・ペルー由来の変異株(C.37)→ ラムダ株(2021年6月14日追加)
・コロンビア由来の変異株(B.1.621)→ ミュー株(2021年8月30日追加)
 
WHOは定期的な評価に基づき、定義を見直して調整しています。変異株の最新の状況については、以下のページにとりまとめています。
 
SARS-CoV-2変異株の追跡
https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/
 
最近の変化と世界レベルでのVOCの地理的分布をよりよく反映させるために、過去30日間におけるデルタ株とオミクロン株の流行状況を示しています(図2)。
 
図2 2022年1月25日時点における過去30日間のデルタ株及びオミクロン株の流行状況


現在のSARS-CoV-2の世界的な遺伝子疫学の特徴は、オミクロン株が急速に拡大しており、デルタ株の流行は減少しています。また、アルファ株、ベータ株、ガンマ株は、非常に低いレベルの流行となっています。当初、オミクロン株は旅行者やそれに関係した症例の報告でしたが、現在は、多くの国々でクラスターや地域内の流行(市中感染)が報告されています。オミクロン株には、Pango系統のB.1.1.529、BA.1、BA.2、BA.3が含まれています。BA.1は2022年1月25日現在、GISAIDに提出された配列の98.8%を占めていますが、BA.2の割合が増加していると報告した国もあります。これらの配列は、全て「オミクロン株」の傘下としてWHOが監視を続けています。
 
過去30日間に採取されてGISAIDにアップロードされた37万2,680検体のうち、33万2,155検体(89.1%)がオミクロン株、3万9,804検体(10.7%)がデルタ株、28検体(0.1%未満)がガンマ株、4検体(0.1%未満)がアルファ株、2検体(0.1%未満)がその他の流行している変異株(VOIの ミュー株とラムダ株を含む)でした。
 
オミクロン株の感染力は、デルタ株と比較して、成長速度、二次感染速度、再生産数で優位となっており、その結果、世界的に急速にデルタ株に取って代わりつつあります。このオミクロン株の感染優位性は、既感染後やワクチン接種後の免疫回避能力によるところが大きいと考えられています。しかし、デルタ株と比較して、オミクロン株は肺よりも上気道の組織により速く感染することができるため、これが感染拡大の一因となっている可能性があります。イギリスとデンマークで行われた調査では、オミクロン株患者の家庭内接触者は、デルタ株患者の家庭内接触者に比べて感染率が高いことが示されました。イギリスの調査では、オミクロン株13.6%に対してデルタ株10.1%、デンマークの調査では、オミクロン株31%に対してデルタ株21%と、家庭内の二次感染率が高く、より感染しやすいことが示されました。さらに、インドと南アフリカで行われた研究では、オミクロン株の感染者はデルタ株の感染者と比較して、検査時に無症状の割合が高いことが報告されています。無症状の発生率が高いため、発見率が低くなり、さらなる感染伝播に寄与している可能性があります。
 
オミクロン株の疫学的な傾向は、以前の変異株による流行と比較すると、ほとんどの国々で患者発生率、入院数、死亡数の間に差がないことを示し続けています。これは、オミクロン株の本質的な重症度が低いこと(肺ではなく上気道での感染の可能性が高いなど)、ワクチン接種後の重症化に対する防御が保たれていることが要因であると考えられています。いくつかの研究において、オミクロン株の入院リスクや重症化リスクが、デルタ株と比較して評価されています。英国保健安全庁とケンブリッジ大学医学研究評議会(MRC)生物統計学ユニットによる解析では、オミクロン株はデルタ株と比較して、救急医療への受診や入院リスクは47%減少(ハザード比HR:0. 53、95%CI 0.50-0.57)し、救急医療からの入院リスクは66%減少(HR:0.33、95%CI 0.3-0.37)しました。しかし、ワクチン接種率が低い集団やSARS-CoV-2既感染の集団における重症度と入院への影響については、不明な点が残されています。
 
オミクロン株の免疫への影響は、これまでの変異株と比較して免疫を回避する能力が高いとされており、既感染者やワクチン接種者においても再感染を引き起こします。イギリスで行われた調査では、オミクロン株の再感染リスクは、デルタ株と比較して5.4倍高く、ワクチン未接種者では6.4倍高く、ワクチン接種者では5.0倍高いというデータが報告されています。また、同国の別の研究では、前回の感染時にウイルス量が少なかった(Ct値が高かった)感染者は、再感染のリスクが高くなることが示されています。
 
オミクロン株の治療への影響については、オミクロン株が治療薬や処置に与える影響を把握するための研究が進められています。副腎皮質ステロイドやサイトカインであるインターロイキン6(IL-6)を阻害する薬剤は、重症患者に引き続き有効であると予想されています。
 
オミクロン株の診断や検査への影響については、WHOが引き続き評価を行っています。しかし、日常的に使用されているPCR検査やWHO緊急時使用リストに承認されている抗原検出型迅速診断検査の診断精度は、オミクロン株による大きな影響は受けていないようです。
 

出典

COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 25 January 2022
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---25-january-2022




 
 

翻訳協力:関西空港検疫所