エボラウイルス病(スーダン型)- ウガンダ共和国(更新)

Disease outbreak news  2022年11月10日

ウガンダ共和国におけるエボラウイルス病の流行:主要な疫学的指標(2022年9月20日から11月7日)

 確定症例数 136
 推定症例数 21
 確定死亡者数 53
 回復症例数 62
 医療従事者における感染者数 18
 感染した地域数 8/147
 フォローアップ中の接触者数 1386
 最初の症例が確定してからの日数 48

発生の概要

9月20日に発生が宣言されてから11月7日までエボラウイルス(以下、「SUDV」という。)によるエボラウイルス病の確定患者136人、確定死亡者53人(CFR 38.9%)が報告され、2022年10月28日に公表された前回の報告からそれぞれ患者数が18%、死者数が66%増加しました。さらに、発生当初から推定患者21人の死亡が報告されており、最後の死亡は9月29日に通知されたものです。10月28日以降、医療従事者の間では、追加で3人の患者と3人の死亡が報告され、合計で18人の患者と7人の死亡が報告されています。
 
前回の報告以降、新たにマサカ(Masaka)県における感染が報告され、合計8つの地区から患者が報告されたことになります。最も感染者が多いのはムベンデ(Mubende)県で、全体の46%にあたる63人の感染者と死者全体の55%にあたる29人の死亡が確認され、次いでカサンダ(Kassanda)県で36%にあたる46人の感染者と36%にあたる19人の死亡が確認されています。ブニャンガブ(Bunyangabu)県とカガディ(Kagadi)県の2つの地区では、40日以上症例が報告されていません。
 
11月7日現在、7地区で合計1,386人の接触者が現在健康状態のフォローアップ下にあり、追跡調査率は92%です。10月31日の週には、1日平均1,586人の接触者がフォローアップされ、前週(10月24日の週)の1日平均1,896人より16%減少しています。この1週間に症状を発症した接触者は合計34人でした。流行開始以来、3,867人の接触者が登録され、そのうち登録者全体の68%にあたる2,237人が21日間のフォローアップ期間を終了しています。
 
11月7日現在、少なくとも2,835件のアラートの通知があり、1日平均にすると71件のアラートがあります。報告された全アラートのうち、約94%にあたる2,671件 が24時間以内に調査され、そのうち1,120件が疑い例として確認されました。24時間以内に調査されたアラートの割合は着実に増加しており、10月31日の週には、ほぼすべてのアラート(659件中657件)が24時間以内に調査され、そのうち31%にあたる203人が疑い例として確認されました。
 
流行開始以来、疑い例や同じ患者からの検体を含め合計2,139の検体が採取され、10月31日の週は419検体が採取されました(前週の377検体と比較して11%増)。


図1. 2022年11月7日時点のSUDVによるエボラウイルス病の発病日別患者数(確定・疑い)と確定例における死亡者数。
この図は、ウガンダ保健省およびWHOの状況報告書に記載されているデータをもとに再作成されています。
 
表1. 11月7日現在のSUDVによるエボラウイルス病の地区別患者数(確定および疑い)および確定例における死亡者数)。



図2. 2022年11月7日時点のSUDVによるエボラウイルス病の確定患者・死亡者の地区別分布地図。

公衆衛生上の取り組み

ウガンダにおける保健省、WHO、パートナーによる公衆衛生対応についての詳細は、保健省とWHOアフリカ地域事務所が共同で発行した最新の状況報告書(英語)(https://www.afro.who.int/countries/publications?country=879)を参照してください。
 
世界発生時対応ネットワーク(GOARN)のパートナーは、ウガンダでの対応活動を支援するため、主に症例管理、感染予防と管理、WASH、疫学と監視、検査所、リスクコミュニケーションとコミュニティ関与(RCCE)、安全で尊厳ある埋葬(SDB)のスタッフを派遣しています。

近隣諸国での対策と管理オペレーションの確立
 
近隣6カ国(ブルンジ、コンゴ民主共和国、ケニア、ルワンダ、南スーダン、タンザニア連合共和国)の保健省、国内および国際パートナー、WHOは、SUDV準備行動を支援しています。これらの活動には、SUDVのための多部門調整メカニズムの活性化、迅速対応チームの再研修、検査機関における再研修トレーニング、医療施設での感染予防と管理、SUDVのための監視システムの活性化と強化、コミュニティの関与とリスクコミュニケーション、入国地点(POE)でのスクリーニング、ケース管理能力の評価と強化、などが含まれます。
 
各国は、SUDVのコミュニティへの持ち込みを阻止するため、リスクの高い県や地区などの自治体レベルに管理オペレーション活動を伝達するよう要請されています。ウガンダ内の複数の高リスク地区とウガンダに隣接する6カ国における対策能力の機能を定量化・文書化し、実際の対策状況をリアルタイムでモニタリングするための、新しいオンラインの対策評価ツールが開発されました。
 
さらに、これら6カ国の外部の関係者が共同で対策の準備状況を評価します。合同評価ミッション(JAM)は、国レベルだけでなく、自治体レベルでリスクの高い県や地区においても同様に対策の準備状況を評価します。JAMの報告書は、すべての分野やリスクの高いすべての地域における対策の能力について詳細な情報を提供していきます。

WHOによるリスク評価

2022年11月1日、WHOは今回の流行のリスク評価を、国レベルでは高から非常に高に、地域レベルでは低から高に修正しましたが、世界レベルではリスクは低いままでした。
 
国レベルの非常に高いリスクは、承認された医療対策がないこと、SUDV発生の発見が遅れ、人口400万人以上で多くの近隣諸国と往来があるカンパラのような大都市を含む複数の地域にSUDVが広がったことなど、いくつかの要因が重なっていると推測されます。高リスクの濃厚接触者や有症状者が公共交通機関を利用して地区間を移動しているという報告もあり、症例発見に払われている努力にもかかわらず、一部の接触者が見落とされている可能性があること、感染地区におけるコミュニティへの介入に問題があると報告されていること、感染予防と制御(IPC)が最適化されていない様々な医療施設で多くの症例が発生していることなども要因となっています。
 
今回の流行は、2012年以来、ウガンダで初めて発生したスーダン型エボラウイルスによる流行です。ウガンダは近年、エボラウイルス病の発生に対応する能力を高めており、利用可能な資源を動員して組織化された地元の能力により、強固な対応を行っていますが、炭疽菌、新型コロナウイルス、クリミア・コンゴ出血熱、リフトバレー熱、黄熱などの発生や、食糧不安のといった複数の非常事態に同時に対応しているため、このまま患者数の増加が続き、発生が人口密度の高い他の地区まで拡大するとシステムが圧迫される可能性があります。
地域レベルでは、認可されたワクチンや治療薬の不足、近隣諸国内外の大規模な人口移動、国境を越えた監視体制が弱く、疾病拡大のリスクをさらに増幅させることに加え、前述のような複数の緊急事態に対応することによる保健システムのひっ迫などの理由から、リスクは高いと評価されています。
 
リスクは、入手可能で共有された情報に基づき、継続的に評価されることになります。

WHOからのアドバイス

SUDVの流行のコントロールを成功させるには、臨床管理、コミュニティへの介入、サーベイランスと接触者追跡、検査能力の強化など、一連の介入策を適用することが重要です。
 
医療施設が流行を拡大させるリスクを減らすために、医療におけるIPC対策(手指衛生、医療従事者のトレーニング、適切な個人防護具(PPE)供給、廃棄物管理、環境洗浄、消毒など)の実施と、その実施に対する継続的な監視と監督が必要です。安全で尊厳ある埋葬の提供、コミュニティ環境におけるIPCの支援(適切なWASH施設、手指衛生能力、安全な廃棄物管理など)、コミュニティへの介入と社会動員の確保は、進行中の感染を予防し緩和するために不可欠です。
 
症例が特定されたら、早期に支持療法を開始することで、SUDVによる死亡を大幅に減らすことができることが示されています。
 
ウガンダと近隣諸国の間では国境を越えた移動が多いため、国際的な感染拡大のリスクを軽減するためには、入国地点での積極的な監視体制を確立することが、発生時の対応において不可欠な要素となっています。
 
WHOは、今回の流行に関する利用可能な情報に基づき、ウガンダへの旅行や貿易を制限しないよう助言しています。

出典

Ebola disease caused by Sudan ebolavirus – Uganda
Disease Outbreak News 7 November 2022  
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2022-DON423