エボラウイルス病(スーダン型)- ウガンダ共和国(更新2)

Disease outbreak news  2022年11月24日

ウガンダ共和国におけるエボラウイルス病の流行:主要な疫学的指標(2022年9月20日から11月21日)

 確定症例数 141
 推定症例数 22
 確定死亡者数 55
 回復症例数 79
 医療従事者における感染者数 19
 感染した地域数 9/147
 最初の症例が確定してからの日数 365
出典:ウガンダ保健省
 

発生の概要

9月20日の発生宣言以降11月21日現在までに、ウガンダ共和国(以下、「ウガンダ」という。)保健省からスーダン型エボラウイルス(以下、「SUDV」という。)によるエボラウイルス病の確定患者141人、確定死者55人(CFR39%)が報告されています。また、発生当初から推定患者22例(全例死亡)が報告されています。7名の死亡を含む19例は、医療従事者(HCW)です。
 
週次の確定症例報告数は、10月17日~23日の週にピークを迎えた後、3週連続で減少しています(図1)。11月7日の週には、カンパラ(Kampala)から80km離れたウガンダ東部に位置するジンジャ(Jinja)という今まで感染報告のなかった地区から確定患者1名と推定死亡例1例、その他地域からの患者を含めて合計5名の確定患者と1名の推定患者が報告されました。最新の確定症例は、11月14日にカンパラ地区からウガンダ保健省によって報告されました。


図1. 2022年11月21日時点のSUDVによるエボラウイルス病の確定症例数および推定症例数の症状発現日別推移(3日移動平均値付き)。出典:ウガンダにおけるエボラウイルス病の現状報告ー57
 
全体では男性患者の割合が57.5%と高く、年齢層は20-29歳が最も多く、次いで30-39歳となっています(図2)。また、10歳未満の小児が約25%を占めており、家庭内感染の可能性が示唆されています。

図2. 2022年11月21日時点のSUDVによるエボラウイルス病の確定および推定例の年齢・性別の分布。出典:ウガンダにおけるエボラウイルス病の現状報告ー57
  
11月10日のWHOのDONでの報告以降、新たにジンジャ県における感染が報告され、合計9地区でスーダン型エボラウイルス病の症例が確認されたことになります。最も感染者が多いのはムベンデ(Mubende)県で、全体の45%にあたる64人の感染者と死者全体の53%にあたる29人の死亡が確認され、次いでカサンダ(Kassanda)県で34%にあたる48人の感染者と36%にあたる20人の死亡が確認されています。ブニャンガブ(Bunyangabu)県とカガディ(Kagadi)県 の2つの地区では、42日以上症例が報告されていません。
 
表1. 11月21日現在のSUDVによるエボラウイルス病の地区別患者数および死者数(確定および推定)。


図3. 2022年11月21日時点のSUDVによるエボラウイルス病の確定患者・死亡者の地区別分布地図
 
ほとんどの感染発生地区で調査活動に大きな改善が見られるものの、新たに感染が発生した地区では、接触者追跡の不備が報告されています。このようなパフォーマンスの低さは、推定症例の未報告、未登録または行方不明の接触者の移動を含む高い人口移動、人的・物的資源の初期の不足などのさまざまな要因に起因する可能性があります。新たに感染した地区では、調査の強化計画が実施されています。
 
流行開始以来、4,652人の接触者が登録され、そのうち78%にあたる3,599人が21日間のフォローアップ期間を終了しています。
 
11月21日の時点で、ジンジャ県、カンパラ県、カサンダ県、マサカ(Masaka)県、ムベンデ県の5つで、合計700人の感染者がフォローアップ下に置かれています。11月14日の週の平均フォローアップ率は65%で、前週の91%と比較して26%減少しています。特にジンジャ県とマサカ県では平均42%、53%と低いフォローアップ率となっています。


11月7日以降、毎日のアラート数はWHOに定期的に報告されていませんが、検証されたアラート数は報告されています。11月14日の週には、1日平均159件となる少なくとも953件のアラートが確認され、そのうち35%にあたる335件は疑い例と定義されるものに合致していました。

公衆衛生上の取り組み

ウガンダにおける保健省、WHO、パートナーによる公衆衛生上の取り組みについての詳細は、保健省とWHOアフリカ地域事務局が共同で発表した最新の状況報告書をご覧ください(英語)。
https://www.afro.who.int/countries/publications?country=879.
 
このアウトブレイクへの対応に加え、保健省とWHOは、ウガンダで発生中のクリミア・コンゴ出血熱(以下、「CCHF」という。)にも対応しており、CCHFとSUDVによるエボラウイルス病の疑い例および確定例を効果的に隔離・治療するための臨床管理の支援と医療連携の促進を図っているところです。
 
世界発生時対応ネットワーク(GOARN) の支援要請を受け、11月22日現在、21のパートナー機関から52件の支援の申し出がありました。現在、GOARNを通じて6名の専門家が、症例管理、パートナー機関の調整、感染予防・管理などの業務に従事しています。さらに、水・衛生・保健(WaSH)、疫学・サーベイランス、検査能力といった分野でも支援の申し出が寄せられています。GOARN支援要請に加えて、パートナーは、複数の分野にわたって保健省主導の対応を支援し続けています。
 
WHOは、2022年10月から11月にかけて、試験に含める治療薬とワクチンの候補を特定し、スーダン型エボラウイルスに対するワクチンと治療薬の両候補の臨床試験プロトコルを起草するために専門家会議を開催しました。WHOはまた、既存の新型コロナウイルスのワクチン優先順位決定ワーキンググループ(WG)に対し、安全性、潜在的有効性、入手と実施に関する物流問題などに関する同様の考察を用いて、ウガンダで計画されている臨床試験に含めるSUDVワクチン候補の適合性を迅速に評価するために、新型コロナウイルスワクチン同様の権限を拡大利用するよう要請しました。専門家は、3つのワクチン候補を囲い込みワクチン接種試験に含めるべきであると勧告しました。メルク/IAVIのVSV-SUDV、セービン研究所のChAd3-SUDV、オックスフォード大学/ジェンナー研究所のbiEBOVです。これらのワクチン候補のうち1つの初回投与分は、間もなく同国に到着する予定です。
 
近隣諸国での対策と管理オペレーションの確立
WHOは、リスク評価を行った上で、周辺国の優先順位を見直しました。リスクがあると評価された周辺6カ国に加え、中央アフリカ共和国、エチオピア、ソマリア、スーダン、ジブチの5カ国が追加されています。これらの国々は、ウガンダとの間で活発な人口移動があります。WHOはこれらの国々との連携を開始しており、次回のDONレポートではその対策活動を報告する予定です。
 
近隣6カ国(ブルンジ、コンゴ民主共和国、ケニア、ルワンダ、南スーダン、タンザニア連合共和国)の保健省、国内および国際パートナー、そしてWHOは、SUDV準備活動を支援しています。
 
・ブルンジは、タンザニアやルワンダとの国境にある入国地点の強化など、今後の活動について州や地区と調整し、活動準備の規模を拡大しています。さらに、監視活動を強化するため、地域保健員や医療従事者の研修が続けられています。11月21日現在、すべてのアラートが調査され、SUDVは陰性となりました。
・コンゴ民主共和国は、入国地点のスタッフのトレーニングに準備の重点を置いています。11月21日現在、空港では98%の旅行者がスクリーニング検査を受けています。さらに、保健地区では、検査と症例管理における能力を強化しています。11月21日現在、すべてのアラートが調査され、SUDVは陰性という結果が出ています。
・ケニアは、WHOの支援を受けて、トレーナーの育成や包括的なシミュレーション演習を実施し、ケースマネジメントの能力強化に取り組んでいます。 また、リスクの高い地区の入国地点ではスクリーニングを実施しています。11月21日現在、すべてのアラートが調査され、SUDVは陰性であることが判明しています。
・ルワンダは、対応能力を拡大するための努力の指針として、緊急時対応計画を更新しています。具体的には、エボラ治療ユニット(ETU)の設立が進められています。また、保健省は、感染予防と管理、症例管理における中核的な能力を強化しています。具体的には、WHOが症例管理に関するトレーニングパッケージを開発し、実施しています。11月21日現在、すべてのアラートが調査され、SUDVは陰性となりました。
・南スーダンは、サーベイランス、症例管理、感染予防・制御の分野で能力を強化しています。地方レベルの医療従事者は、医療施設でのSUDV管理に関するトレーニングを受けています。さらに、この1週間で、SUDV関係者のための啓発トレーニングが終了しました。11月21日現在、すべてのアラートが調査され、SUDVは陰性という結果が出ています。
・タンザニア連合共和国は、安全で尊厳ある埋葬を含むIPCの分野で研修を実施しました。保健推進員はリスクコミュニケーションとコミュニティへの関与、メンタルヘルスと心理社会的支援に関するトレーニングを完了しました。11月21日現在、すべてのアラートは調査され、SUDVの結果は陰性でした。

WHOによるリスク評価

2022年11月4日、WHOは本事象のリスク評価を、国レベルでは高から極めて高に、地域レベルでは低から高に修正しましたが、世界レベルではリスクは低のままでした。
 
今後、入手可能かつ共有された情報に基づき、継続的にリスク評価が実施される予定です。

WHOからのアドバイス

SUDVによるエボラウイルス病の発生をうまくコントロールするには、症例管理、コミュニティへの関与、サーベイランスと接触者追跡、検査能力の強化、安全で尊厳ある埋葬など、一連の介入策を適用することが重要です。
 
医療従事者は、診断にかかわらず、患者をケアする際には常に標準予防策を講じる必要があります。医療施設がアウトブレイクを増幅させるリスクを減らすために、医療におけるIPC対策(例:手指衛生、医療従事者のトレーニング、適切な個人防護具(PPE)供給、廃棄物管理、環境洗浄、消毒など)の実施と、その継続的な監視と監督が必要である。
 
安全で尊厳ある埋葬の提供、コミュニティ環境におけるIPCの支援(適切なWASH施設、手指衛生能力、安全な廃棄物管理など)、コミュニティの関与と社会動員の確保は、進行中の感染を予防し緩和するために不可欠です。
 
患者が特定されたら、早期に支持療法を開始することで、生存率が大幅に改善されることが示されています。
 
ウガンダと近隣諸国の間では国境を越えた移動が多いため、国際的な感染拡大のリスクを軽減するために、入国地点での積極的な監視体制を確立することが、発生時の対応に不可欠な要素となっています。
 
SUDVに対して認可されたワクチンはありませんが、試験的に使用される予定のワクチン候補はあります。
 
WHOは、今回の流行に関する利用可能な情報に基づき、ウガンダへの渡航や貿易を制限しないよう助言しています。

出典

Ebola disease caused by Sudan ebolavirus – Uganda
Disease Outbreak News 24 November 2022
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2022-DON425