新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告
COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO) 2022年1月11日
世界の概況
2021年1月9日時点で、直近1週間(1月3日~1月9日)に報告された新規感染者数は1,515万4,666人で、前週と比較して55%と大幅に増加しました。新規死亡者数は4万3,461人報告され、前週と比較して3%増加しました(図1)。
WHOに報告されている全世界の累積感染者数は3億435 万207人、累積死亡者数は548万2,865人となりました(表1)。
新規感染者数は、アフリカ地域(11%減)を除く全ての地域で増加しており、最も大きな増加は東南アジア地域の418%で、西太平洋地域は122%、東地中海地域は86%、アメリカ地域は78%、ヨーロッパ地域は31%の増加となりました。新規死亡者数が増加したのは、アフリカ地域(84%増)とアメリカ地域(26%増)のみでした。西太平洋地域は前週と同程度で、東地中海沿岸地域は11%、ヨーロッパ地域は10%、東南アジア地域は6%の減少となりました。
人口10万人当たりの新規感染者数が多いのは、ヨーロッパ地域765.8人とアメリカ地域597.9人でした。これらの地域では、引き続き人口10万人当たりの新規死亡者数も多く、ヨーロッパ地域で2.2人、アメリカ地域で1.4人でした。他の4地域は、人口10万人当たりの新規死亡者数が1人未満の状況が続いています。
直近1週間における新規感染者数が多い上位5か国は、アメリカ合衆国(4,610,359人:73%増加)、フランス(1,597,203人:46%増加)、イギリス(1,217,258人:10%増加)、イタリア(1,014,358人:57%増加)、インド(638,872人:524%増加)でした。
WHOに報告されている全世界の累積感染者数は3億435 万207人、累積死亡者数は548万2,865人となりました(表1)。
新規感染者数は、アフリカ地域(11%減)を除く全ての地域で増加しており、最も大きな増加は東南アジア地域の418%で、西太平洋地域は122%、東地中海地域は86%、アメリカ地域は78%、ヨーロッパ地域は31%の増加となりました。新規死亡者数が増加したのは、アフリカ地域(84%増)とアメリカ地域(26%増)のみでした。西太平洋地域は前週と同程度で、東地中海沿岸地域は11%、ヨーロッパ地域は10%、東南アジア地域は6%の減少となりました。
人口10万人当たりの新規感染者数が多いのは、ヨーロッパ地域765.8人とアメリカ地域597.9人でした。これらの地域では、引き続き人口10万人当たりの新規死亡者数も多く、ヨーロッパ地域で2.2人、アメリカ地域で1.4人でした。他の4地域は、人口10万人当たりの新規死亡者数が1人未満の状況が続いています。
直近1週間における新規感染者数が多い上位5か国は、アメリカ合衆国(4,610,359人:73%増加)、フランス(1,597,203人:46%増加)、イギリス(1,217,258人:10%増加)、イタリア(1,014,358人:57%増加)、インド(638,872人:524%増加)でした。
図1 2022年1月9日時点の週別・WHO管轄地域別のCOVID-19感染者数及び世界の死亡者数の推移

表1 2022年1月9日時点のWHO管轄地域別の新規・累積COVID-19確定症例数及び死亡者数

WHO管轄地域別の概況
アフリカ地域
直近1週間の新規感染者数は26万1,720人、新規死亡者数は2,130人でした。前週と比較して新規感染者数は11%減少しており、6週連続の増加が減少に転じました。これは主に、モザンビーク(26,860人→17,667人)と南アフリカ(60,142人→53,433人)の減少が影響していますが、地域内の1/3近い国々(16/49:34%)において、50%以上の感染者の増加が報告されています。新規死亡者数は、前週と比較して84%増加しました。この増加は、南アフリカで新規死亡者500人が1月6日に遡及して報告されたため、見た目上176%増加したことが影響しています。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国

新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
南アフリカ共和国 | 53,433人 | 90.1人 | 11%減少 |
ジンバブエ | 23,628人 | 128.5人 | 10%減少 |
エチオピア | 18,999人 | 16.5人 | 34%減少 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
南アフリカ共和国 | 1,173人 | 2.0人 | 176%増加 |
ジンバブエ | 131人 | 1.0人未満 | 1%減少 |
マダガスカル | 90人 | 1.0人未満 | 190%増加 |

アメリカ地域
直近1週間の新規感染者数は611万5,409人、新規死亡者数は1万4,489人でした。前週と比較して、新規感染者数は78%増加しており、過去最高の感染者数となりました。また、新規死亡者数は25%増加しました。いずれの増加も米国の状況が大きく反映されており、加えて4か国において、前週と比較して50%以上の増加が報告されています。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国

新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
アメリカ合衆国 | 4,610,359人 | 1392.8人 | 73%増加 |
アルゼンチン | 461,408人 | 1020.9人 | 101%増加 |
カナダ | 254,299人 | 673.8人 | 15%増加 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
アメリカ合衆国 | 11,182人 | 3.4人 | 26%増加 |
ブラジル | 766人 | 1.0人未満 | 15%増加 |
メキシコ | 560人 | 1.0人未満 | 28%増加 |

東地中海地域
直近1週間で確認された新規感染者数は20万14人、新規死亡者数は1,056人でした。前週と比較して、新規感染者数は86%増加し、新規死亡者数は11%減少しました。新規感染者の35%がレバノン(38,112人)とモロッコ(31,701人)の2か国から報告されています。新規感染者数が多い上位3か国(レバノン、モロッコ、アラブ首長国連邦)が、地域全体のほぼ半分となる44%を占めています。地域内の半数以上の国々(12/22:57%)において、50%以上の感染者の増加が報告され、クウェートで369%(2,812人→13,197人)と高い増加率が報告されました。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国

新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
レバノン | 38,112人 | 558.4人 | 90%増加 |
モロッコ | 31,701人 | 85.9人 | 222%増加 |
アラブ首長国連邦 | 18,373人 | 185.8人 | 23%増加 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
イラン・イスラム共和国 | 208人 | 1.0人未満 | 29%減少 |
ヨルダン | 172人 | 1.7人 | 28%減少 |
エジプト | 170人 | 1.0人未満 | 14%減少 |

ヨーロッパ地域
直近1週間で確認された新規感染者数は714万5,424人、新規死者数は2万696人でした。前週と比較して、新規感染者数は31%増加し、新規死者数は10%減少しました。地域内の約半数の国々(27/61:44%)において、50%以上の感染者の増加が報告されています。コソボで313%(204人→842人)、グリーンランドで296% (475人→1883人)、イスラエルで273%(26,913人→100,353人)と高い増加率が報告されました。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国

新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
フランス | 1,600,121人 | 2460.2人 | 46%増加 |
イギリス | 1,217,258人 | 1793.1人 | 10%増加 |
イタリア | 1,014,358人 | 1700.8人 | 57%増加 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
ロシア連邦 | 5,645人 | 3.9人 | 10%減少 |
ポーランド | 2,150人 | 5.7人 | 34%減少 |
ドイツ | 1,822人 | 2.2人 | 同程度 |

東南アジア地域
直近1週間で確認された新規感染者数は69万9,635人で、新規死亡者数は2,309人でした。前週と比較して、新規感染者数は418%増加し、新規死亡者数は6%減少しました。新規感染者数は、2021年8月中旬以来の高水準となりました。地域内の多数の国々(7/10:70%)において、50%以上の新規感染者数の増加が報告されています。インドで524%、東ティモールで183%、バングラデシュで125%と高い増加率が報告されました。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国

新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
インド | 638,872人 | 46.3人 | 524%増加 |
タイ | 39,992人 | 57.3人 | 104%増加 |
バングラデシュ | 7,234人 | 4.4人 | 125%増加 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
インド | 2,020人 | 1.0人未満 | 同程度 |
タイ | 105人 | 1.0人未満 | 25%減少 |
スリランカ | 100人 | 1.0人未満 | 26%減少 |

西太平洋地域
直近1週間で確認された新規感染者数は73万2,464人、新規死亡者数は2,781人でした。前週と比較して、新規感染者数は2倍以上の122%増加し、新規死亡者数は同程度でした。地域内の複数の国々(10/27:37%)において、50%以上の感染者の増加が報告されています。フィリピンで880%(9,124人→89,409人)、日本で734%(2,777人→23,168人)、グアムで624%(92人→666人)と高い増加率が報告されました。
新規感染者が多い上位3か国
新規死亡者が多い上位3か国

新規感染者が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
オーストラリア | 420,079人 | 1647.4人 | 204%増加 |
ベトナム | 130,302人 | 133.9人 | 19%増加 |
フィリピン | 89,409人 | 81.6人 | 880%増加 |
新規死亡者が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
ベトナム | 1,507人 | 1.5人 | 6%減少 |
フィリピン | 590人 | 1.0人未満 | 65%増加 |
韓国 | 343人 | 1.0人未満 | 24%減少 |

変異株の状況
2021年5月31日、WHOは、懸念すべき変異株(VOC)及び注目すべき変異株(VOI)の言いやすい・覚えやすい新たな呼称を発表しました(表2・表3)
WHOは定期的な評価に基づき、定義を見直して調整しています。変異株の最新の状況については、以下のページにとりまとめています。
SARS-CoV-2変異株の追跡
https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/
最近の変化と世界レベルでのVOCの地理的分布をよりよく反映させるために、過去30日間におけるデルタ株とオミクロン株の流行状況を示しています(図2)。
現在のSARS-CoV-2の世界的な遺伝子疫学の特徴は、オミクロン株が出現するとともに、デルタ株の流行は減少しています。また、アルファ株、ベータ株、ガンマ株は非常に低いレベルの流行となっています。当初、オミクロン株は旅行者やそれに関係した症例の報告でしたが、現在は、多くの国々でクラスターや地域内の流行(市中感染)が報告されています。過去30日間に採取されてGISAIDにアップロードされた35万7,206検体のうち、20万8,870検体(58.5%)がオミクロン株、14万7,877検体(41.4%)がデルタ株、12検体(0.1%未満)がアルファ株、2検体(0.1%未満)がガンマ株、1検体(0.1%未満)がベータ株、6検体検体(0.1%未満)がその他の流行している変異株(VOIの ミュー株とラムダ株を含む)でした。
表2 2022年1月11日時点の懸念すべき変異株(VOC)

【VOCの呼称】
・イギリス由来の変異株(B.1.1.7)→ アルファ株(2020年12月18日指定)
・南アフリカ由来の変異株(B.1.351)→ ベータ株(2020年12月18日指定)
・ブラジル由来の変異株(P.1)→ ガンマ株(2021年1月11日追加)
・インド由来の変異株(B.1.617.2)→ デルタ株(2021年5月11日VOIから変更)
・複数国由来の変異株(B.1.1.529)→ オミクロン株(2021年11月26日指定)
表3 2022年1月11日時点の注目すべき変異株(VOI)

【VOIの呼称】
・ペルー由来の変異株(C.37)→ ラムダ株(2021年6月14日追加)
・コロンビア由来の変異株(B.1.621)→ ミュー株(2021年8月30日追加)
図2 2022年1月11日時点における過去30日間のデルタ株及びオミクロン株の流行状況

WHOは定期的な評価に基づき、定義を見直して調整しています。変異株の最新の状況については、以下のページにとりまとめています。
SARS-CoV-2変異株の追跡
https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/
最近の変化と世界レベルでのVOCの地理的分布をよりよく反映させるために、過去30日間におけるデルタ株とオミクロン株の流行状況を示しています(図2)。
現在のSARS-CoV-2の世界的な遺伝子疫学の特徴は、オミクロン株が出現するとともに、デルタ株の流行は減少しています。また、アルファ株、ベータ株、ガンマ株は非常に低いレベルの流行となっています。当初、オミクロン株は旅行者やそれに関係した症例の報告でしたが、現在は、多くの国々でクラスターや地域内の流行(市中感染)が報告されています。過去30日間に採取されてGISAIDにアップロードされた35万7,206検体のうち、20万8,870検体(58.5%)がオミクロン株、14万7,877検体(41.4%)がデルタ株、12検体(0.1%未満)がアルファ株、2検体(0.1%未満)がガンマ株、1検体(0.1%未満)がベータ株、6検体検体(0.1%未満)がその他の流行している変異株(VOIの ミュー株とラムダ株を含む)でした。
表2 2022年1月11日時点の懸念すべき変異株(VOC)

【VOCの呼称】
・イギリス由来の変異株(B.1.1.7)→ アルファ株(2020年12月18日指定)
・南アフリカ由来の変異株(B.1.351)→ ベータ株(2020年12月18日指定)
・ブラジル由来の変異株(P.1)→ ガンマ株(2021年1月11日追加)
・インド由来の変異株(B.1.617.2)→ デルタ株(2021年5月11日VOIから変更)
・複数国由来の変異株(B.1.1.529)→ オミクロン株(2021年11月26日指定)
表3 2022年1月11日時点の注目すべき変異株(VOI)

【VOIの呼称】
・ペルー由来の変異株(C.37)→ ラムダ株(2021年6月14日追加)
・コロンビア由来の変異株(B.1.621)→ ミュー株(2021年8月30日追加)
図2 2022年1月11日時点における過去30日間のデルタ株及びオミクロン株の流行状況

オミクロン株について(現状まとめ)
オミクロン株は、感染力が強く、他の変異株から急速に置き換わっています。これまでの株と比較してウイルス倍化時間が短く、ワクチン接種者や既感染者でも感染が発生しています。また、この変異株は、免疫回避を起こしうるというエビデンスが増えています。
デンマークでは、オミクロン株の初感染者が2021年11月22日に確認され、2021年11月末には市中感染が確認されました。未査読の論文において、2021年12月中のデンマークの家庭における二次感染率(SAR)が推定されました。オミクロン株(一次感染者総数:2,225人)及びデルタ株(一次感染者総数:9,712人)の世帯において、SARはそれぞれ31%と21%であり、全てのグループにおいて、推定二次感染率は、デルタ株よりもオミクロン株の方が高いという結果でした。
また、ワクチン未接種の世帯において、オミクロン株の感染者が確認された場合の二次感染率は、デルタ株の感染者が確認された場合の1.17倍(95%CI:0.99-1.38)でした。ワクチン既接種又はブースター接種完了の世帯においては、二次感染率がデルタ株と比較して2.61倍(95%CI:2.34-2.38)となりました。これは、オミクロン株が免疫を回避する能力を有していることを示しています。ただし、感染リスクの絶対値はワクチン接種している人が接種していない人よりも低いことに変わりありません。
重症度に関して、オミクロン株は他の変異株と比較して重症度が低いというエビデンスが増えています。未査読の論文において、2021年11月14日から同年12月11日まで(オミクロン株が流行の主流になった期間)のSARS-CoV-2感染による入院患者の重症度とベータ株及びデルタ株が流行の主流だった期間(それぞれ2020年11月29日から12月26日まで、2021年5月2日から5月29日まで)における入院患者の重症度が比較されました。この論文は、オミクロン株の流行で患者発生率が急激に増加した南アフリカのハウテン州のデータで、オミクロン株の流行期間における入院率は4.9%と、ベータ株の流行期間の入院率18.9%、デルタ株の流行期間の入院率13.7%よりも大幅に低いという結果が報告されています。また、オミクロン株流行期の重症患者の割合は28.8%(患者4,438人のうち1,276人)で、ベータ株流行期の60.1%(患者7,774人のうち4,672人)及びデルタ株流行期の66.8%(患者4,574人のうち3,058人)よりも大幅に少ないという結果も報告されています。なお、この論文では、重症の定義を、急性呼吸窮迫症候群の発症、酸素療法又は侵襲的機械換気の適応、ハイケアユニット又は集中治療室での治療、死亡のうち1つ以上に該当した場合としています。さらに、オミクロン株流行期に入院した患者は、デルタ株流行期に入院した患者よりも重症化率が73%低かったという結果(補正オッズ比0.27、95%CI 0.25-0.31)が報告されています。
2021年12月からオミクロン株が確認されたアメリカ合衆国で行われた後ろ向きコホート研究(未査読)の報告では、人口統計学的特性、合併症、投薬、ワクチン接種状況、その他の社会経済的な要因がどのように健康に影響を及ぼすか、傾向スコアマッチングを用い、SARS-CoV-2感染後3日間(SARS-CoV-2の感染が特定された初日から感染後3日まで)にどのような有害事象が発生するか、そのリスクの比較が行われました。救急医療外来(ED)受診、入院、ICU入室、侵襲的機械換気の適応という結果について、以下の2つのコホート間で比較しています。2つのコホートは、オミクロン株が優位に流行した2021年12月15日から12月24日までの期間に、SARS-CoV-2感染者を「オミクロンコホート」(n=14,054)とし、デルタ株が優位に流行した2021年9月1日から9月15日までの期間の感染者を「デルタコホート」(n=563,884)と定義しました。デルタコホートと比較して、オミクロンコホートが悪化するリスクは低く、オミクロンコホートのED受診リスク比は0.30(95%CI 0.28-0.33 )、入院リスク比 は0.44(95%CI 0.38-0.52)、ICU入室リスク比は0.33(95%CI 0.23-0.48)、侵襲的機械換気の適応リスク比は0.16(95%CI 0.08-0.32)となりました。同様に、5歳未満においても、デルタコホートと比較してオミクロンコホートは、救急外来受診(リスク比0.19、95%CI 0.14-0.25)や入院(リスク比0.36、95%CI 0.19-0.68)のリスクは低いという結果になりました。これらの結果から、現在、米国では小児の患者数や入院数は増加していますが、オミクロン株流行期は、デルタ株流行期と比較して、加えて、他の年齢層と比較しても、入院リスクはより低いことが示唆されています。
これらは、全て初期解析の結果であり、オミクロン株に関して全体的な評価や臨床像が反映されていない可能性があります。今後より多くのエビデンスが入手されることにより、解析結果が変化する可能性もあります。従って、オミクロン株に関する全体的なリスクは非常に高い状況に変わりありません。
デンマークでは、オミクロン株の初感染者が2021年11月22日に確認され、2021年11月末には市中感染が確認されました。未査読の論文において、2021年12月中のデンマークの家庭における二次感染率(SAR)が推定されました。オミクロン株(一次感染者総数:2,225人)及びデルタ株(一次感染者総数:9,712人)の世帯において、SARはそれぞれ31%と21%であり、全てのグループにおいて、推定二次感染率は、デルタ株よりもオミクロン株の方が高いという結果でした。
また、ワクチン未接種の世帯において、オミクロン株の感染者が確認された場合の二次感染率は、デルタ株の感染者が確認された場合の1.17倍(95%CI:0.99-1.38)でした。ワクチン既接種又はブースター接種完了の世帯においては、二次感染率がデルタ株と比較して2.61倍(95%CI:2.34-2.38)となりました。これは、オミクロン株が免疫を回避する能力を有していることを示しています。ただし、感染リスクの絶対値はワクチン接種している人が接種していない人よりも低いことに変わりありません。
重症度に関して、オミクロン株は他の変異株と比較して重症度が低いというエビデンスが増えています。未査読の論文において、2021年11月14日から同年12月11日まで(オミクロン株が流行の主流になった期間)のSARS-CoV-2感染による入院患者の重症度とベータ株及びデルタ株が流行の主流だった期間(それぞれ2020年11月29日から12月26日まで、2021年5月2日から5月29日まで)における入院患者の重症度が比較されました。この論文は、オミクロン株の流行で患者発生率が急激に増加した南アフリカのハウテン州のデータで、オミクロン株の流行期間における入院率は4.9%と、ベータ株の流行期間の入院率18.9%、デルタ株の流行期間の入院率13.7%よりも大幅に低いという結果が報告されています。また、オミクロン株流行期の重症患者の割合は28.8%(患者4,438人のうち1,276人)で、ベータ株流行期の60.1%(患者7,774人のうち4,672人)及びデルタ株流行期の66.8%(患者4,574人のうち3,058人)よりも大幅に少ないという結果も報告されています。なお、この論文では、重症の定義を、急性呼吸窮迫症候群の発症、酸素療法又は侵襲的機械換気の適応、ハイケアユニット又は集中治療室での治療、死亡のうち1つ以上に該当した場合としています。さらに、オミクロン株流行期に入院した患者は、デルタ株流行期に入院した患者よりも重症化率が73%低かったという結果(補正オッズ比0.27、95%CI 0.25-0.31)が報告されています。
2021年12月からオミクロン株が確認されたアメリカ合衆国で行われた後ろ向きコホート研究(未査読)の報告では、人口統計学的特性、合併症、投薬、ワクチン接種状況、その他の社会経済的な要因がどのように健康に影響を及ぼすか、傾向スコアマッチングを用い、SARS-CoV-2感染後3日間(SARS-CoV-2の感染が特定された初日から感染後3日まで)にどのような有害事象が発生するか、そのリスクの比較が行われました。救急医療外来(ED)受診、入院、ICU入室、侵襲的機械換気の適応という結果について、以下の2つのコホート間で比較しています。2つのコホートは、オミクロン株が優位に流行した2021年12月15日から12月24日までの期間に、SARS-CoV-2感染者を「オミクロンコホート」(n=14,054)とし、デルタ株が優位に流行した2021年9月1日から9月15日までの期間の感染者を「デルタコホート」(n=563,884)と定義しました。デルタコホートと比較して、オミクロンコホートが悪化するリスクは低く、オミクロンコホートのED受診リスク比は0.30(95%CI 0.28-0.33 )、入院リスク比 は0.44(95%CI 0.38-0.52)、ICU入室リスク比は0.33(95%CI 0.23-0.48)、侵襲的機械換気の適応リスク比は0.16(95%CI 0.08-0.32)となりました。同様に、5歳未満においても、デルタコホートと比較してオミクロンコホートは、救急外来受診(リスク比0.19、95%CI 0.14-0.25)や入院(リスク比0.36、95%CI 0.19-0.68)のリスクは低いという結果になりました。これらの結果から、現在、米国では小児の患者数や入院数は増加していますが、オミクロン株流行期は、デルタ株流行期と比較して、加えて、他の年齢層と比較しても、入院リスクはより低いことが示唆されています。
これらは、全て初期解析の結果であり、オミクロン株に関して全体的な評価や臨床像が反映されていない可能性があります。今後より多くのエビデンスが入手されることにより、解析結果が変化する可能性もあります。従って、オミクロン株に関する全体的なリスクは非常に高い状況に変わりありません。
出典
COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 11 January 2022
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---11-january-2022
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 11 January 2022
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---11-january-2022