新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO) 2022年2月15日

世界の概況

2022年2月7日から2月13日(以下「直近1週間」という。)に報告された新規感染者数は前週と比較して19%減少し、その一方、新規死亡者数は前週と同程度でした(図1)。WHO管轄の6地域全体で、16,097,642人の新規感染者数及び74,494人の新規死亡者数が報告されました(表1)。2022年2月13日時点で、全世界の累積感染者数は409,111,395人、累積死亡者数は5,805,825人となります。
 
各地域別では、西太平洋地域で19%の新規感染者数の増加が報告された一方、その他地域では新規感染者数の減少が報告されました。東南アジア地域で37%、アメリカ地域で32%、アフリカ地域で30%、ヨーロッパ地域で16%及び東地中海地域で12%の新規感染者数の減少が報告されました。新規死亡者数については、東地中海地域で38%、西太平洋地域で27%、アフリカ地域で14%及びアメリカ地域で5%の増加が報告されたその一方、ヨーロッパ地域で前週と同等であり、東南アジア地域で9%の減少が報告されました。
 
各国別では、新規感染者数が多い上位5か国は、ロシア(1,323,391人、23%増加)、ドイツ(1,322,071人、前週と同程度)、アメリカ(1,237,530人、43%減少)、ブラジル(1,009,678人、19%減少)及びフランス(979,228人、43%減少)でした。また、直近1週間における新規死亡者数が多い上位5か国は、アメリカ(17,225人、前週と同程度)、インド(6,686人、15%減少)、ブラジル(6,658人、44%増加)、ロシア(4,834人、前週と同程度)及びメキシコ(2,530人、7%増加)でした。
 
図1 2022年2月13日時点の週別又はWHO管轄地域別の新型コロナウイルス感染者数及び世界の死亡者数の推移


表1 2022年2月13日時点におけるWHO管轄地域別の新規又は累積新型コロナウイルス感染者の確定症例数及び死亡者数

WHO管轄地域別の概況

アフリカ地域

新規感染者数については、2022年1月当初から減少傾向を継続しており、直近1週間で69,013人と報告され、前週と比較して30%減少しました。しかしながら、アフリカ地域の4か国において、20%以上の新規感染者数の増加が報告されました。コンゴで420%(25人から130人)、リベリアで273%(22人から82人)、レソトで39%(82人から114人)及び中央アフリカで26%(104人から131人)の新規感染者数の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で1,599人と報告され、前週と比較して14%の増加が報告されました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
レユニオン 30,782人 3,438.1人 32%減少
南アフリカ 17,952人 30.3人 13%減少
アルジェリア 3,628人 8.3人 56%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
南アフリカ 1,168人 2.0人 28%増加
アルジェリア 75人 1.0人未満 12%減少
エチオピア 65人 1.0人未満 124%減少
 

アメリカ地域

新規感染者数については、直近1週間で3,236,405人と報告され、前週と比較して32%減少しました。これは、2022年1月中旬以降の新規感染者数の傾向に続くものです。しかしながら、アメリカ地域の10か国では、20%以上の新規感染者数の増加が報告されました。フォークランドで250%(2人から7人)、アンティグア・バーブーダで244%(174人から559人)、ハイチで241%(105人から358人)の新規感染者数の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で33,722人と報告され、前週と比較して5%の増加が報告されました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
アメリカ 1,237,530人 373.9人 43%減少
ブラジル 1,009,678人 475.8人 19%減少
チリ 247,900人 1296.8人 9%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
アメリカ 17,225人 5.2人 同程度
ブラジル 6,658人 3.1人 44%増加
メキシコ 2,530人 2.0人 7%増加
 
 

東地中海地域

新規感染者数については、直近1週間で712,632人と報告され、前週と比較して12%減少しました。2021年12月以降の東地中海地域において、初めて報告された新規感染者数の減少傾向でした。
 
直近1週間で、東地中海地域の2か国において20%以上の新規感染者数の増加が報告されました。イエメンで65%(251人から415人)及びシリアで48%(542人から800人)の新規感染者数の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、3,286人と報告され、前週と比較して38%の増加が報告されました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
イラン 236,616人 281.7人 7%増加
ヨルダン 136,567人 1338.5人 17%増加
レバノン 46,417人 680.1人 20%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イラン 825人 1.0人 126%増加
チュニジア 453人 3.8人 18%増加
エジプト 415人 1.0人未満 33%増加
 

ヨーロッパ地域

新規感染者数については、直近1週間で9,595,045人と報告され、前週と比較して16%の減少でした。これは、2021年1月の終盤時点で確認された頂点以降、2週連続の減少傾向でした。しかしながら、ヨーロッパ地域の4か国において、20%以上の新規感染者数の増加が報告されました。ベラルーシで77%(30,475人から53,969人)、オランダで56%(561,539人から877,154人)、アイスランドで41%(9,797人から13,802人)及びロシアで新規感染者数の増加が報告されました。
 
新規死者数については、24,817人と報告され、前週と比較して同程度と報告されました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ロシア 1,323,391人 906.8人 23%増加
ドイツ 1,322,071人 1,589.7人 同程度
フランス 979,228人 1505.6人 43%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ロシア 4,834人 3.3人 同程度
イタリア 2,282人 3.8人 13%減少
フランス 2,270人 3.5人 23%増加
 

東南アジア地域

新規感染者数については、直近1週間で915,448人と報告され、前週と比較して37%の減少でした。東南アジア地域の4か国において、20%以上の新規感染者数の増加が報告されました。ミャンマーで235%(2,647人から8,870人)、東テイモールで164%(466人から1,228人)、インドネシアで68%(173,295人から291,298人)及びタイで49%(64,467人から96,326人)の新規感染者数の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、7,983人と報告され、前週と比較して9%の減少が報告されました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
インド 443,283人 32.1人 60%減少
インドネシア 291,298人 106.5人 68%増加
タイ 96,326人 138.0人 49%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
インド 6,686人 1.0人未満 15%減少
インドネシア 622人 1.0人未満 148%増加
バングラデシュ 230人 1.0人未満 同程度
 

西太平洋地域

新規感染者数については、直近1週間で1,569,099人と報告され、前週と比較して19%の増加でした。西太平洋地域の28か国中、14か国において、20%以上の新規感染者数の増加が報告されました。トンガで520%(10人から62人)、中国で324%(1,787人から7,571人)及びブルネイで294%(1,059人から4,175人)の新規感染者数の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、3,087人と報告され、前週と比較して27%の増加が報告されました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
日本 624,240人 493.6人 同程度
韓国 340,950人 665.0人 88%増加
オーストラリア 162,079人 635.6人 25%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
日本 945人 1.0人未満 79%増加
フィリピン 716人 1.0人未満 109%増加
ベトナム 601人 1.0人未満 16%減少
 

新型コロナウイルス変異株B.1.1.529系統のPango系統であるBA.2系統についての特別な焦点

2021年11月26日に新型コロナウイルス変異株のB.1.1.529系統(以下「オミクロン株」という。)が「懸念される変異株(以下「VOC」という。)」として指定されて以降、複数の系統が特定されています。これらは、Pango系統のBA.1系統、BA.1.1系統、BA.2系統及びBA.3系統が含まれており、これらは全てオミクロン株の下位系統としてWHOが監視を継続しています。

疫学

GISAIDに提出されたオミクロン株系統の配列でBA.2系統の有病率が徐々に増加しており、2022年の第5週で21.09%に達しました。2月14日時点の10か国では、50%を上回るBA.2系統の優勢が報告されました(バングラデシュ、ブルネイ、中国、デンマーク、グアム、インド、モンテネグロ、ネパール、パキスタン及びフィリピン)。しかしながら、観察された地域間で違いがあり、東南アジア地域にあってはオミクロン株のうちBA.2系統が44.7%と最多でしたが、アメリカ地域にあっては最小の1%でした。この解析は、2022年1月13日から2月11日までに採取された検体を含む、GISAIDに提出された全ての配列に基づくものです。これらの傾向については、サーベイランスの限界を考慮し、慎重に解釈する必要があります(サーベイランスの限界は、報告の遅延及び研究室での結果出力時間と同様に、国・地域毎のゲノム解析能力及び検体採取方式の違いを含みます。)。さらに、異なる系統の拡散及び増加を解釈するときは、症例罹患率を加味してBA.2系統の配列の相対的な割合を考慮することが重要となります。
 
BA.2系統の有病率が増加している国々の例は、次のとおりです。南アフリカ(2022年2月4日の有病率が27%から2022年2月11日の86%)、英国(2022年1月17日から1月31日まで2.2%から12%)、デンマーク(2021年の第52週から2022年の第2週まで20%から45%。2022年の第3週には66%と優勢になりました。)及びアメリカ(2022年1月29日で終わる週の1.2%から2022年2月5日で終わる週の3.6%)。オミクロン株の症例で減少を経験している国及び増加傾向にある国の両方で、BA.2系統の有病率が増加傾向にあります。

感染・伝播性

BA.2系統の感染・伝播性はBA.1系統と比較して高いことについては、それを示唆する科学的根拠は初期段階にあり、かつ、研究成果は限られています。デンマークにおける増加率の見積もりは、BA.2系統がBA.1系統より30%感染・伝播性が高いことを示しています。GISAIDのデータの解析から、豊富な配列のデータ及び2つの系統の共流行を伴う43か国では、BA.1系統に対してBA.2系統の増加率の優位性を認めています。これは、世代時間が変わらないという仮定に基づいた疫学的な文脈では、平均の感染・伝播性については、84%(95%信頼区間が68%から101%。)の優位性(例えば、実行再生産数の違い)があると解釈されます。
 
BA.1系統と比較した場合のBA.2系統の曝露による2次感染率についての現在明らかな科学的根拠は、デンマーク及び英国で行われた家庭内感染に関する研究から得られました。デンマークの研究者により、BA.1系統と比較し、BA.2系統の高い2次感染率が判明しました(観察期間において、1日時点の8%と6%、7日時点の39%と29%及び14日時点の42%と36%)。同様に、英国の研究でBA.1系統(10.3%、95%信頼区間が10.1%から10.4%)と比較した場合のBA.2系統(13.4%、95%信頼区間が10.7%から16.8%)の高い2次感染率が報告されました。これらの見積もりは、更なるデータを入手することで時間経過とともに変化しうるものです。
 
現在、BA.1系統に対するBA.2系統の増加率の優位性を高める要因は不明です。予備データにより、BA.1系統及びBA.2系統に対する同様の抗体反応が示されました。これは、デンマークで行われた家庭内感染に関する研究から得られた知見を支持するものでした(この研究は、ワクチン未接種のBA.2系統感染者はBA.1系統と比較して家庭内感染しやすかったというものでした。)。新規感染者数の減少に伴う、BA.1系統に対するBA.2系統の割合の増加は、免疫回避よりもむしろ、BA.1系統と比較した場合のBA.2系統の高い感染・伝播性を同様に支持するものです。

診断検査

オミクロン株のPango系統であるBA.1系統及びBA.1.1系統と比較し、BA.2系統は、スパイクタンパク69-70欠損がありません(この欠損は、S遺伝子のPCRが陰性となるspike gene target failure(以下「SGTF」という。)の原因となります。)。かつてSGTFはオミクロン株のスクリーニングと考えられていたため、その配列の欠損を指標としてBA.1系統と、デルタ株その他のVOCを峻別することが可能でした。オミクロン株が現在の変異株で優勢である状況では、このスクリーニング手法でBA.1系統とBA.2系統を峻別することが可能となります(BA.2系統ではS遺伝子のPCRが陽性となります。)。この手法はオミクロン株の有病率が極めて高い状況でのみ可能であり、特筆すべきは、ゲノム解析が特定の変異株を確定する唯一の手法であることです。
 
公的なゲノム解析に続き、複数の抗原、抗体及びPCR検査がBA.1系統及びBA.2系統による新型コロナウイルス感染を特定するのに等しく有用であることがわかりました。他の研究では、BA.1系統及びBA.2系統を検出するためのPCR検査の感度が異なることがわかりました(0%から100%)。診断検査におけるオミクロン株Pango系統の影響を完全に理解するために、さらなる研究が進行中です。
 
オミクロン株には、市販PCR検査キットのプライマー及びプローブと重複する変異・欠損があり、これらは特定の遺伝子欠損につながるものです。一つの例では、ゲノム解析によりオミクロン株(BA.1系統及びBA.2系統を含みます。)による感染が確定した個人のアッセイでN遺伝子のPCRが陽性となる「N-gene target failure(以下「NGTF」という。)」が報告され、それは系統を定義するERS31から33の欠損によるものでしたが、デルタ株に感染した個人では異なりました。オミクロン株によってデルタ株に置換されていない状況では、N遺伝子領域を標的とするPCR検査は、NGTFのオミクロン株、N遺伝子のPCRが陽性であるデルタ株を含むその他の変異株を峻別するためのスクリーニング手法と考えることができるかもしれません。

疾患の重症度

現在、BA.1系統その他オミクロン株Pango系統に対するBA.2系統の重症度については、科学的根拠が限られています。英国では、ここ数週間BA.2系統の割合が漸増しており、入院者数及び死亡者数は一貫して減少しています。アメリカでは週連続で、入院者数の減少及び死亡者数の増加があります。この流れでは、2022年2月1日で終わる前週と比較し、2022年2月8日で終わる週の新規死亡者数は5.9%減少しました。しかしながら、これではBA.2系統の相対的な重症度について推察することはできません。これら両国では、BA.1系統又はBA.1.1系統がこの期間における優勢的なPango系統でした。
 
デンマークで行われた研究でBA.2系統又はBA.1系統感染者間で入院率の差に違いはありませんでしたが、BA.2系統は優勢的な変異株であり、直近の入院者数及び死亡者数は増加しています。ネパールでは、2022年2月1日に公開されましたが、カトマンズ大学で解析された11検体のうち10検体がBA.2系統でした。しかしながら、2022年1月23日の頂点以降、カトマンズ渓谷における病院の入院患者数については減少しており、集中治療及び人工呼吸管理下にある患者数も減少の初期段階にあります。南アフリカでは、BA.2系統が全配列の86%を占めていますが、入院数は減少し続けています。
 
全体的に、BA.2系統又はBA.1系統が優勢的な国の間では、重症度に差はありません。

免疫への影響

1 中和化
投稿前の論文によれば、ファイザー製ワクチンによる初回接種及び追加接種を受けた24名及び新型コロナウイルス感染歴のある8名は、BA.1系統及びBA.2系統に対して同等の中和抗体価を示しました。
 
2 予防接種
英国における検査結果陰性である症例対照研究からの予備データでは、ワクチン2回の初回接種後25週における発症予防についてのワクチンの有効率はBA.1系統とBA.2系統で差がないことを示しました(9%(95%信頼区間が7から10%)と13%(95%信頼区間が-26%から40%))。また、追加のワクチン接種後2週間でも同様の結果でした(63%(95%信頼区間が63%から64%)と70%(95%信頼区間が58%から79%))。
 
デンマークで実施された家庭内感染に関する研究からの予備データでは、ワクチン2回の初回接種を受けBA.2系統に感染した症例(オッズ比0.60、85%信頼区間が0.42から0.85)及びワクチン追加接種を受けBA.2系統に感染した症例(オッズ比0.62、95%信頼区間が0.42から0.91)では、BA.1系統に感染した症例と比較して家庭内感染しにくいことがわかりました。BA.1系統又はBA.2系統に感染した症例に家庭内接触した場合、ワクチン接種又は未接種にかかわらず、感受性に差はありませんでした。これは、BA.1系統と比較し、ワクチン接種がBA.2系統の獲得予防に少なくとも同等に有効であり、及びBA.2系統の感染予防により有効でありうることを示唆しています。
 

治療

現在、他のオミクロン株Pango系統と比較し、BA.2系統に対する治療の有効性の差に関する科学的根拠が不足しています。

出典

COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 15 February 2022
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---15-february-2022