新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO) 2022年3月15日

世界の概況

2022年1月末以降、新規感染者数については一貫して減少が継続していました。2022年3月7日から3月13日(以下「直近1週間」という。)に報告された新規感染者数については、前週と比較して8%増加しました(図1)。新規死亡者数については、減少傾向が継続してり、前週と比較して17%減少しました(図1)。WHO管轄の6地域全体で、11,407,714人の新規感染者数及び43,097人の新規死亡者数が報告されました(表1)。2022年3月13日時点で、全世界の累積感染者数は455,565,230人、累積死亡者数は6,039,440人となります。
 
各地域別の新規感染者数については、前週と比較して西大平洋地域、アフリカ地域及びヨーロッパ地域でそれぞれ29%、12%及び2%の増加が報告されました。その一方、東地中海地域で24%、東南アジア地域で21%及びアメリカ地域で20%の新規感染者数の減少が報告されました。
 
これらの傾向については、いくつかの国が検体採取方式を積極的に変更しているため、全体的な検査数が減少して結果的に検出される感染者数が減少するため、慎重に解釈する必要があります。
 
各国別では、新規感染者数が多い上位5か国は、韓国(2,100,171人、44%増加)、ベトナム(1,670,627人、65%増加)、ドイツ(1,350,362人、22%増加)、オランダ(475,290人、42%増加)及びフランス(419,632人、20%増加)でした。また、直近1週間における新規死亡者数が多い上位5か国は、アメリカ(9,078人、13%減少)、ロシア(4,530人、15%減少)、ブラジル(3,301人、15%減少)、インドネシア(1,994人、5%減少)及び中国(1,955人、63%増加)でした。
 
図1 2022年3月13日時点の週別又はWHO管轄地域別の新型コロナウイルス感染者数及び世界の死亡者数の推移

 
表1 2022年3月13日時点におけるWHO管轄地域別の新規又は累積新型コロナウイルス感染者の確定症例数及び死亡者数

 

WHO管轄地域別の概況

アフリカ地域

新規感染者数については、2022年1月から減少傾向を継続しており、直近1週間で38,053人と報告され、前週と比較して12%増加しました。アフリカ地域内の11か国(全体の22%)において、20%を超える新規感染者数の増加が報告されました。高い増加率のいくつかの国では、モーリシャスで180%(4,133人から11,566人)、ナイジェリアで126%(136人から308人)及びコンゴで40%(136人から190人)の新規感染者数の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で289人と報告され、前週と比較して41%の減少が報告されました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
モーリシャス 11,566人 909.4人 180%増加
南アフリカ 10,360人 17.5人 7%減少
レユニオン 8,019人 895.7人 20%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
南アフリカ 169人 1.0人未満 52%減少
モーリシャス 30人 2.4人 233%増加
ジンバブエ 17人 1.0人未満 325%増加

 

アメリカ地域

新規感染者数については、直近1週間で887,162人と報告され、前週と比較して20%減少し、減少傾向が継続しています。しかしながら、アメリカ地域内の9か国(全体の16%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告されました。仏領サンピエール島及びミクロン島で最大の550%(8人から52人)、マルティニークで326%(3,216人から13,686人)及びアメリカ領ヴァージン諸島で319%(31人から130人)の新規感染者数の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で16,093人と報告され、前週と比較して15%の減少が報告されました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ブラジル 331,315人 155.9人 16%減少
アメリカ 247,936人 74.9人 28%減少
チリ 118,141人 618.0人 23%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
アメリカ 9,078人 2.7人 13%減少
ブラジル 3,301人 1.6人 15%減少
メキシコ 976人 1.0人未満 69%増加

 

東地中海地域

新規感染者数については、2022年2月当初に頂点に達して以降、減少傾向が継続しており、直近1週間で126,257人と報告され、前週と比較して24%減少しました。しかしながら、東地中海地域内の2か国では、20%を超える新規感染者数の増加が報告されました。チュニジアで155%(9,454人から24,061人)及びアフガニスタンで47%(1,167人から1,715人)の新規感染者数の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、直近1週間で1,694人と報告され、前週と比較して49%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
イラン 35,457人 42.2人 34%減少
チュニジア 24,061人 203.6人 155%増加
ヨルダン 16,449人 161.2人 22%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イラン 1,084人 1.3人 20%減少
チュニジア 124人 1.0人 44%減少
エジプト 105人 1.0人未満 42%減少

 

ヨーロッパ地域

新規感染者数については、2021年1月末以降に減少傾向が報告された後、直近1週間で4,985,405人と報告され、前週と比較して2%の増加でした。ヨーロッパ地域内の12か国(全体の20%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告されました。モナコで最大の48%(162人から240人)、マルタで43%(621人から887人)及びオランダで42%(335,283人から475,290人)の新規感染者数の増加が報告されました。
 
新規死者数については、減少傾向が継続しており、直近1週間で14,985人と報告され、前週と比較して23%の減少が報告されました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ドイツ 1,350,362人 1623.7人 22%増加
オランダ 475,290人 2730.4人 42%増加
フランス 419,632人 645.2人 20%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ロシア 4,530人 3.1人 15%減少
ドイツ 1,469人 1.8人 3%増加
イタリア 1,000人 1.7人 27%減少

 

東南アジア地域

新規感染者数については、2022年1月中旬以降、減少が継続して報告されています。直近1週間で348,330人と報告され、前週と比較して21%の減少でした。    
 
新規死亡者数については、直近1週間で3,397人と報告され、前週と比較して15%の減少が報告されました。    
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
タイ 158,130人 226.5人 1%増加
インドネシア 141,770人 51.8人 32%減少
インド 28,038人 2.0人 40%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
インドネシア 1,994人 1.0人未満 5%減少
インド 814人 1.0人未満 38%減少
タイ 474人 1.0人未満 38%増加
 

 

西太平洋地域

新規感染者数については、2021年12月末以降に増加傾向が一貫して継続しており、直近1週間で5,022,507人と報告され、前週と比較して29%の増加でした。西大平洋地域内の7か国(23%)において20%を超える新規感染者数の増加が報告されました。バヌアツで最大の4,767%(3人から146人)、トンガで145%(280人から685人)及び米領サモアで121%(112人から257人)の新規感染者数の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、1か月間増加が継続しており、直近1週間で6,639人と報告され、前週と比較して12%の増加が報告されました。

新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
韓国 2,100,171人 4096.4人 44%増加
ベトナム 1,670,627人 1716.3人 65%増加
日本 382,278人 302.3人 16%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
中国 1,955人 1.0人未満 63%増加
韓国 1,438人 2.8人 42%増加
日本 1,240人 1.0人 18%減少
 


 

新型コロナウイルスの懸念される変異株及び注目すべき変異株についての特別な焦点

国の、当局、機関及び研究者と協力して、新型コロナウイルスの変異株が感染・伝播性や病原性に影響するか否か、感染拡散を制御するための、ワクチンの有効性、治療法、診断又は公衆衛生上の取組について、WHOは定期的に評価しています。潜在的な、懸念される変異株(以下「VOC」という。)、注目すべき変異株(以下「VOI」という。)及び監視下にある変異株(以下「VUM」という。)は、世界の公衆衛生にもたらすリスクに基づいて定期的に評価されています。科学的根拠が明らかになれば、変異株の継続的な進化及び付随する疫学の変化を反映するために、変異株の分類が改訂される予定です。変異株の分類基準、VOC、VOI及びVUMの現在の一覧は、新型コロナウイルス変異株の追跡ウェブサイトで閲覧できます。国の当局は、他のVOC及びVOIの指定を選択することができ、かつ、これら変異株の影響に基づいて調査・報告をするよう奨励されています。
 

VOCの世界的拡散及び有病率

現在の新型コロナウイルスに係る世界的な遺伝子疫学は、変異株B.1.1.529系統(以下「オミクロン株」という。)の世界的な優勢を特徴としています。デルタ株は、看過できない段階で報告される流行を伴う、唯一の他の変異株です。過去30日間に採取されてGISAIDに提出された430,487検体のうち、429,994検体(99.9%)がオミクロン株、400検体(0.1%)がデルタ株でした。世界的なVOCの分布について特筆すべきは、サーベイランスの限界を考慮し、慎重に解釈する必要がある点です(サーベイランスの限界は、報告の遅延と同様に、国・地域毎のゲノム解析能力及び検体採取方式の違いを含む。)。
 

「現在流行している」及び「過去に流行していた」VOCとして新型コロナウイルスVOCが指定されたことについて

過去6か月のあいだ、VOCのアルファ株、ベータ株及びガンマ株の流行における重要な減少がWHO管轄の6地域全体で観察されました。過去90日間において、これら変異株の検体はほとんど報告されていません。これら変異株の分類について議論するために、2022年3月7日に新型コロナウイルスの進化に関する技術諮問団体(以下「TAG-VE」という。)が招集されました。VOC及びVOIが不変のままであるその一方、VOC及びVOIは更に「現在流行している」又は「過去に流行していた」に現在の疫学的な傾向を踏まえて指定されました。2022年3月9日にTAG-VEの助言に基づき、WHOはアルファ株、ベータ株及びガンマ株を「過去に流行していたVOC」に指定し、デルタ及びオミクロン株を「現在流行しているVOC」に指定しました。
 
いくつかの基準https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/ に基づいた評価を使い、変異株がWHOによってVOCとして分類されると、VOCのままとなります。VOCの低調な流行は、ウイルスの懸念される特徴を変えることにはなりません。その初期の表現型に係る特徴は、不変のままとなります。検体採取及びゲノム解析能力が限られた地域において、これら変異株のいずれによる存在及び低調な流行に係る不確実性を加味すれば、全ての変異株については、標準的な集団での検体採取及びゲノム解析能力に係る枠組みの範囲内で監視する必要があります。
 

新型コロナウイルスVOIのうち、ラムダ株及びミュー株が「過去に流行していたVOI」と指定されたことについて

2020年12月にペルーで最初に検出されたラムダ株及び2021年1月にコロンビアで最初に検出されたミュー株が2022年3月9日に「過去に流行していたVOI」と指定されました。これらの有病率は昨年の経過で著明に減少しており、WHO管轄の6地域いずれにもいても過去90日間流行が報告されませんでした。
 
VOC又はVOIが、更に「現在流行している」又は「過去に流行していた」と分類されるにかかわらず、加盟国によって推奨される行動は同じままです。さらなる詳細はhttps://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/を参照してください。加盟国は、「現在流行している」又は「過去に流行していた」VOC及びVOIを含む新型コロナウイルス変異株を引き続き監視し、及びこれら変異株に関連して確認された症例の急増を区別する必要があります。「現在流行している」VOC又はVOIから「過去に流行していた」VOC又はVOIへの指定は変異株の流行に係る下落を反映していますが、この変異株が将来急増する可能性まで排除するものではありません。
 
図4 2022年3月15日時点における過去30日間のVOCであるデルタ株及びオミクロン株の有病率

新型コロナウイルスオミクロン株における接触者の追跡及び検疫に係る特別な焦点(中間指針)

オミクロン株の出現及び新型コロナウイルス感染の大幅な急増に伴い、多くの国々が新型コロナウイルス感染症対策の一部として包括的な接触者の追跡を効率的に行うために圧倒的な公衆衛生上の能力を経験しました。検疫を必要とする接触者に係る数の増加も、健康サービスを含む、本質的な社会サービスの崩壊に直結する可能性を孕みます。
 
これらの課題を鑑み、集団免疫が向上したため、既感染及びワクチン接種を根拠とし、WHOは2022年2月17日にオミクロン株における接触者の追跡及び検疫の更新された中間指針を発表しました。この文書は、接触者の追跡に係る指針開発グループ及び感染予防及び制御に係る指針開発グループと共同で作成されました。両方の外部専門家のグループは、WHOの技術専門家と共にオミクロン株の感染動態及び免疫の持続性についての利用可能な科学的根拠を改訂しました。指針の文書は、症例数が圧倒的に対応能力を超えたとき、全ての感染拡大防止を試みるよりはむしろ、感染による罹患率及び死亡率を減少することに焦点を置いた、いわば危機に基づく手法を推奨しています。
 

追跡調査に係る接触者の優先順位

接触者の追跡及び公衆衛生上の能力がひっ迫している状況では、本質的な社会サービスが崩壊する可能性があり、接触者の追跡の優先順位を下記の1及び2のとおり行う必要があります。
 
1 感染の可能性が最も高い接触者及び脆弱な人へウイルス拡大する可能性が高い医療・介護従事者(取り分け、看護・療養施設又は病院で働く従事者その他最前線の本質的な従事者)
 
2 重症化の可能性が高い接触者(例えば、合併症を抱える人、免疫抑制状態にある人、年少者、ワクチン未接種又は未完了で新型コロナウイルス未感染の成人)
 
このような状況では、感染者に対して接触者に通知するよう推奨及び教育を行い、可能な場合は接触者自動通知技術を駆使して同時多発的に接触者へ指針を直ちに提供することに付加価値があります。
 

新型コロナウイルス感染者の発生率が高い地域における検疫

この文書は、7日目にPCR又は迅速抗原検査の結果で陰性を得れば、検疫期間を14日から7日に短縮できる可能性についての指針を提供しています。検査能力が過剰に拡大している場合で接触者に新型コロナウイルス感染者の症状がないとき、検疫期間を14日から10日まで短縮することが可能となります。両方の選択肢もさらなる感染・伝播の可能性を示しますが、発生率の高い状況や本質的なサービスの崩壊を鑑みると、そうすることによる利益は不利益を上回ります。もし検疫が短縮された場合、接触者が残り14日間において医療用マスクを適切に装着し、症状を観察し、及び脆弱な人との接触を避けるよう、WHOは推奨しています。
 

ワクチン接種を受け、かつ既感染の接触者

ワクチンの有効性に関する利用可能な科学的根拠は、時間経過とともに感染予防は減弱することを示しています。オミクロン株に感染する可能性は、ワクチン1若しくは2回目接種又は追加接種後90日以内に減弱します。それゆえ、過去90日以内にワクチン接種を受けた接触者については、接触者の追跡の優先度が低いとされ、より短い検疫を受ける可能性があります。同様に、感染由来の免疫は時間経過とともに減衰しますが、感染後90日間は最低持続することが期待できます。それゆえ、過去90日以内に感染した接触者についても、接触者の追跡の優先度が低いとされ、より短い検疫を受ける可能性があります。
 

結論

オミクロン株の経験に伴い、将来的な変異株の出現についての科学的根拠が強固になる前に、国は政策決定を行う必要があるかもしれません。この場合、WHOは加盟国に感染流行の様々な側面(例えば、感染・伝播の強度、変異株の流行に関連した疾患の重症度、既感染及びワクチン接種歴による集団免疫の段階、接触者の追跡・同定能力、迅速かつ正確な新型コロナウイルス診断、医療・介護従事者その他本質的なサービス従事者における曝露の可能性を評価する能力、医療・介護システムにおける既存の全体的な能力)を考慮した危機に基づく手法を適用することを考慮するよう助言しています。
 
接触者の追跡活動又は検疫期間の短縮のいずれを中断しても将来的な感染・伝播の可能性が高まるため、これらについては、医療・介護面の能力、オミクロン株に対する集団免疫その他健康及び社会経済学的優先事項よりも重要視する必要があります。
 

出典

COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 15 March 2022
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---15-march-2022