新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告
COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO) 2022年3月29日
世界の概況
新規感染者数については、2022年1月末から3月上旬まで減少傾向にあり、その後2週連続で増加しました。2022年3月21日から3月27日(以下「直近1週間」という。)に報告された新規感染者数については、再度減少し、前週と比較して14%の減少でした(図1)。その一方、同期間で新規死亡者数については、前週と比較して43%の増加であり(図1)、これはアメリカ地域の複数の国(チリ及びアメリカ)における新型コロナウイルス感染症の死亡の定義に係る変更及び東南アジア地域のインドから報告された後ろ向きの調整におそらくよるものです。WHO管轄の6地域全体で、10,805,132人の新規感染者数及び45,711人の新規死亡者数が報告されました(表1)。全ての地域で新規感染者数の減少傾向が報告されており、4つの地域で新規死亡者数の減少傾向が報告されました(表1)。2022年3月27日時点で、全世界の累積感染者数は479,311,589人、累積死亡者数は6,122,118人となります。
各国別では、新規感染者数が多い上位5か国は、韓国(2,442,195人、13%減少)、ドイツ(1,576,261人、2%増加)、ベトナム(1,127,716人、40%減少)、フランス(845,119人、45%増加)及びイタリア(503,932人、6%増加)でした。また、直近1週間における新規死亡者数が多い上位5か国は、チリ(11,858人、1,710%増加)、アメリカ(5,367人、83%増加)、インド(4,525人、619%増加)、ロシア(2,859人、22%減少)及び韓国(2,471人、22%増加)でした。
図1 2022年3月27日時点の週別又はWHO管轄地域別の新型コロナウイルス感染者数及び世界の死亡者数の推移

表1 2022年3月27日時点におけるWHO管轄地域別の新規又は累積新型コロナウイルス感染者の確定症例数及び死亡者

各国別では、新規感染者数が多い上位5か国は、韓国(2,442,195人、13%減少)、ドイツ(1,576,261人、2%増加)、ベトナム(1,127,716人、40%減少)、フランス(845,119人、45%増加)及びイタリア(503,932人、6%増加)でした。また、直近1週間における新規死亡者数が多い上位5か国は、チリ(11,858人、1,710%増加)、アメリカ(5,367人、83%増加)、インド(4,525人、619%増加)、ロシア(2,859人、22%減少)及び韓国(2,471人、22%増加)でした。
図1 2022年3月27日時点の週別又はWHO管轄地域別の新型コロナウイルス感染者数及び世界の死亡者数の推移
表1 2022年3月27日時点におけるWHO管轄地域別の新規又は累積新型コロナウイルス感染者の確定症例数及び死亡者
これらの傾向については、いくつかの国が検体採取方式を積極的に変更し、全体の検査数が減少して結果的に検出される感染者数が減少するため、慎重に解釈する必要があります。WHO管轄の6地域全体で観察された新型コロナウイルスの検査の割合は全体的に低下したにもかかわらず、2022年3月上旬から中旬まで新規感染者数が再度増加し、これはウイルスが現在高い段階で流行していることを示唆しています。
WHOは、いくつかの加盟国による新型コロナウイルス検査の大幅な減少を懸念しています。データは、より控えめで、時機性及び強固さが低下します。そのため、ウイルスの所在やその拡大・進化を追跡する集合的な能力(パンデミック急性期を効果的に終焉させるために重要な情報及び解析)が阻害されます。
検査数の減少は、最も影響ある地域において強固な調査を維持するための戦略の一部として慎重に行われない限り、各国が症例を特定して適時な治療、隔離(検疫法における隔離ではない。)その他必要な制御措置を可能にするための能力に、影響を与える可能性があります。その結果、新型コロナウイルス拡大増加の危険があります。これは、特に公衆衛生及び社会的な措置が解除された地域及び新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種率が低い地域において、入院及び死亡の増加並びに医療制度への重大な負担につながる可能性があります。さらに、検査数の削減は新規の変異株を早期特定する国の能力に影響を与え、最終的には対応努力を損なうことになります。
新型コロナウイルス感染症は依然として国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態であり、調査の質の低減は早計です。新規の変異株の特性に関する不確実性は、疾患の先行きを確実に予測するための我々の能力を制限することになります。これは、新規の変異株の進化率及び危険性は依然として高く、それが予防及び緩和策を損なう可能性があるためです。
パンデミックの急性期が終焉を迎えるまで、各国は、重要な指標に関する、科学的根拠に基づいた実務上の意思決定(ワクチン接種戦略、ワクチンの構成、治療薬の使用及び調整済みで適切な公衆衛生及び社会的措置を含む。)を啓蒙するために、十分な疫学的調査を維持する必要があります。
WHOは、いくつかの加盟国による新型コロナウイルス検査の大幅な減少を懸念しています。データは、より控えめで、時機性及び強固さが低下します。そのため、ウイルスの所在やその拡大・進化を追跡する集合的な能力(パンデミック急性期を効果的に終焉させるために重要な情報及び解析)が阻害されます。
検査数の減少は、最も影響ある地域において強固な調査を維持するための戦略の一部として慎重に行われない限り、各国が症例を特定して適時な治療、隔離(検疫法における隔離ではない。)その他必要な制御措置を可能にするための能力に、影響を与える可能性があります。その結果、新型コロナウイルス拡大増加の危険があります。これは、特に公衆衛生及び社会的な措置が解除された地域及び新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種率が低い地域において、入院及び死亡の増加並びに医療制度への重大な負担につながる可能性があります。さらに、検査数の削減は新規の変異株を早期特定する国の能力に影響を与え、最終的には対応努力を損なうことになります。
新型コロナウイルス感染症は依然として国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態であり、調査の質の低減は早計です。新規の変異株の特性に関する不確実性は、疾患の先行きを確実に予測するための我々の能力を制限することになります。これは、新規の変異株の進化率及び危険性は依然として高く、それが予防及び緩和策を損なう可能性があるためです。
パンデミックの急性期が終焉を迎えるまで、各国は、重要な指標に関する、科学的根拠に基づいた実務上の意思決定(ワクチン接種戦略、ワクチンの構成、治療薬の使用及び調整済みで適切な公衆衛生及び社会的措置を含む。)を啓蒙するために、十分な疫学的調査を維持する必要があります。
WHO管轄地域別の概況
アフリカ地域
新規感染者数については、2022年1月下旬以降、減少傾向が観察されており、直近1週間で24,326人と報告され、前週と比較して29%減少しました。しかしながら、アフリカ地域内の14か国(全体の29%)については、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、赤道ギニアで2,425%(4人から101人)、レソトで78%(59人から105人)及びルワンダで48%(48人から71人)の増加が報告されました。
新規死亡者数については、直近1週間で164人と報告され、前週と比較して30%減少しました。
新規感染者数が多い上位3か国
新規死亡者数が多い上位3か国
新規死亡者数については、直近1週間で164人と報告され、前週と比較して30%減少しました。
新規感染者数が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
南アフリカ | 8,934人 | 15.1人 | 9%減少 |
レユニオン | 8,494人 | 948.7人 | 同等 |
モーリシャス | 2,410人 | 189.5人 | 77%減少 |
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
南アフリカ | 86人 | 1.0人未満 | 49%減少 |
モーリシャス | 34人 | 2.7人 | 同等 |
レユニオン | 13人 | 1.5人 | 44%増加 |
アメリカ地域
アメリカ地域の新規感染者数については、2022年1月中旬以降減少傾向が報告されており、直近1週間で634,618人と報告され、前週と比較して14%減少しました。しかしながら、アメリカ地域内の11か国(全体の20%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、シント・ユースタテイウス島で992%(13人から142人)、アンギラ島で95%(20人から39人)及び仏領サンピエール島及びミクロン島で94%(298人から577人)の新規感染者数の増加が報告されました。
新規死亡者数については、直近1週間で20,737人と報告され、前週と比較して182%増加しました(これは、チリ及びアメリカの1州の新型コロナウイルス感染症の死亡の定義に係る変更に一部よるものです。)。
新規感染者数が多い上位3か国
新規死亡者数が多い上位3か国

新規死亡者数については、直近1週間で20,737人と報告され、前週と比較して182%増加しました(これは、チリ及びアメリカの1州の新型コロナウイルス感染症の死亡の定義に係る変更に一部よるものです。)。
新規感染者数が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
ブラジル | 229,145人 | 107.8人 | 15%減少 |
アメリカ | 207,093人 | 62.6人 | 6%減少 |
チリ | 61,337人 | 320.9人 | 36%減少 |
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
チリ | 11,858人 | 62.0人 | 1,710%増加 |
アメリカ | 5,367人 | 1.6人 | 83%増加 |
ブラジル | 1,768人 | 1.0人未満 | 21%減少 |
東地中海地域
新規感染者数については、2022年2月上旬に頂点に達して以降減少が継続しており、直近1週間で50,199人と報告され、前週と比較して32%減少しました。しかしながら、ヨーロッパ地域の2か国(全体の9%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、チュニジアで643%(534人から3,969人)及びパレスチナで52%(718人から1,088人)の増加が報告されました。
新規死亡者数については、直近1週間で811人と報告され、前週と比較して22%減少しました。
新規感染者数が多い上位3か国
新規死亡者数が多い上位3か国

新規死亡者数については、直近1週間で811人と報告され、前週と比較して22%減少しました。
新規感染者数が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
イラン | 9,572人 | 11.4人 | 51%減少 |
ヨルダン | 9,135人 | 89.5人 | 64%減少 |
バーレーン | 6,527人 | 383.6人 | 14%減少 |
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
イラン | 421人 | 1.0人未満 | 41%減少 |
チュニジア | 100人 | 1.0人未満 | 426%増加 |
エジプト | 84人 | 1.0人未満 | 20%減少 |
ヨーロッパ地域
新規感染者数については、直近1週間で5,247,550人と報告され、前週と比較して4%減少しました。ヨーロッパ地域内の6か国(全体の10%)では、20%を超える新規感染者数の増加が報告され、イスラエルで最大の86%(47,796人から88,869人)、ハンガリーで57%(9,727人から15,269人)及びマルタで50%(1,628人から2,434人)の増加が報告されました。
新規死者数については、減少が継続しており、直近1週間で11,320人と報告され、前週と比較して17%減少しました。
新規感染者数が多い上位3か国
新規死亡者数が多い上位3か国

新規死者数については、減少が継続しており、直近1週間で11,320人と報告され、前週と比較して17%減少しました。
新規感染者数が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
ドイツ | 1,576,261人 | 1895.3人 | 2%増加 |
フランス | 845,119人 | 1299.4人 | 45%増加 |
イタリア | 503,932人 | 844.9人 | 6%増加 |
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
ロシア | 2,859人 | 2.0人 | 22%減少 |
ドイツ | 1,521人 | 1.8人 | 13%増加 |
イタリア | 1,008人 | 1.7人 | 11%増加 |
東南アジア地域
新規感染者数については、2022年1月中旬以降、減少傾向が継続して観察されており、直近1週間で232,702人と報告され、前週と比較して14%減少しました。しかしながら、スリランカで25%(2,156人から2,693人)の新規感染者数の増加が報告されました。
新規死亡者数については、直近1週間で6,046人と報告され、前週と比較して116%増加しました。
新規感染者数が多い上位3か国
新規死亡者数が多い上位3か国
※いくつかの州における後ろ向きの調整による。

新規死亡者数については、直近1週間で6,046人と報告され、前週と比較して116%増加しました。
新規感染者数が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
タイ | 175,116人 | 250.9人 | 4%増加 |
インドネシア | 36,470人 | 13.3人 | 49%減少 |
インド | 11,612人 | 1.0人未満 | 31%減少 |
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
インド | 4,525人 | 1.0人未満 | 619%増加※ |
インドネシア | 932人 | 1.0人未満 | 41%減少 |
タイ | 533人 | 1.0人未満 | 3%増加 |
西太平洋地域
新規感染者数については、2021年12月末以降に増加傾向が一貫して継続して観察されていましたが、直近1週間で4,615,737人と報告され、前週と比較して24%減少しました。西大平洋地域内の7か国(23%)において20%を超える新規感染者数の増加が報告されました。バヌアツで最大の251%(352人から1,234人)、グアムで243%(142人から487人)及びラオスで149%(6,449人から16,037人)の新規感染者数の増加が報告されました。
新規死亡者数については、1か月間増加が継続しており、直近1週間で6,633人と報告され、前週と比較して5%減少しました。
新規感染者数が多い上位3か国
新規死亡者数が多い上位3か国

新規死亡者数については、1か月間増加が継続しており、直近1週間で6,633人と報告され、前週と比較して5%減少しました。
新規感染者数が多い上位3か国
国名 | 新規感染者数 | 人口10万人当たりの 新規感染者数 |
前週との比較 |
韓国 | 2,442,195人 | 4763.5人 | 13%減少 |
ベトナム | 1,127,716人 | 1158.5人 | 40%減少 |
オーストラリア | 368,028人 | 1,443.3人 | 28%減少 |
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 | 新規死亡者数 | 人口10万人当たりの 新規死亡者数 |
前週との比較 |
韓国 | 2,471人 | 4.8人 | 22%増加 |
中国 | 1,453人 | 1.0人未満 | 24%減少 |
フィリピン | 861人 | 1.0人未満 | 48%増加 |
新型コロナウイルスの懸念される変異株及び注目すべき変異株についての特別な焦点
国の、当局、機関及び研究者と協力して、新型コロナウイルスの変異株が感染・伝播性や病原性に影響するか否か、感染拡散を制御するための、ワクチンの有効性、治療法、診断又は公衆衛生上の取組について、WHOは定期的に評価しています。潜在的な、懸念される変異株(以下「VOC」という。)、注目すべき変異株(以下「VOI」という。)及び監視下にある変異株(以下「VUM」という。)は、世界の公衆衛生にもたらすリスクに基づいて定期的に評価されています。科学的根拠が明らかになれば、変異株の継続的な進化及び付随する疫学の変化を反映するために、変異株の分類が改訂される予定です。変異株の分類基準、VOC、VOI及びVUMの現在の一覧は、新型コロナウイルス変異株の追跡ウェブサイトで閲覧できます。国の当局は、他のVOC及びVOIの指定を選択することができ、かつ、これら変異株の影響に基づいて調査・報告をするよう奨励されています。
VOCの世界的拡散及び有病率
現在の新型コロナウイルスに係る世界的な遺伝子疫学は、変異株B.1.1.529系統(以下「オミクロン株」という。)の世界的な優勢を特徴としています。過去30日間に採取されてGISAIDに提出された382,789検体のうち、381,824検体(99.7%)がオミクロン株、175検体(0.1%未満)がデルタ株及び649検体(0.2%)がPango系統に分類されない検体でした。世界的なVOCの分布について特筆すべきは、サーベイランスの限界を考慮し、慎重に解釈する必要がある点です(サーベイランスの限界は、報告の遅延と同様に、国・地域毎のゲノム解析能力及び検体採取方式の違いを含む。)。さらに、いくつかの国は検査及びゲノム解析の方針を過去の期間で変更している可能性があります。
新型コロナウイルスの組換え変異株について
他の新規の変異株と同様に組換え体に対してリスクアセスメントの同じ過程が適用されています。前週の更新以降、XD組換え体(デルタ株及びオミクロン株)というPango系統の組換え体がより高い感染・伝播性及び重症化に関連するという新たな科学的根拠はありません。XE組換え体(BA.1系統及びBA.2系統)は1月19日に英国で最初に特定され、以降600を超える検体が報告されて確定されています。初期の見積りでは、BA.2系統と比較して集団の増加率が10%と示唆されましたが、これには更なる確認が必要です。XE組換え体はオミクロン株に属しており、これは、重症度も含め、感染・伝播性及び病原性の有意差が報告されるまでとなります。WHOは組換え体に伴う公衆衛生上の危機の詳細な監視及び評価を、他の新型コロナウイルス変異株と平行して継続しており、更なる科学的根拠が利用可能になれば、最新の情報を提供する予定です。
出典
COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 29 March 2022
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---29-March-2022
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 29 March 2022
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---29-March-2022